世界は深海棲艦が現れてから激変した。始まりは漁船や貨物船などが襲われていたが、次第に沿岸部の街が襲撃されるようになり、各国の軍隊が戦いを挑んだものの新たな怪物にはあまり効果がなかった。そして世界中の海路と空路そして通信網が寸断されてしまった。
そんな時一筋の希望として現れたのが艦娘・妖精さん・提督の存在だった。深海棲艦と戦える艦娘、その艦娘をサポートする妖精さん、そして妖精さんを見ることが出来るという希少な才を持つ提督。彼らの存在を知った日本政府は、提督の才を持つものを探し出し各地の港に鎮守府を築いていった。数多の犠牲を払ったものの日本の沿岸部から深海棲艦を追い払い、防衛網を構築することに成功した。
そこから十年間日本と深海棲艦は一進一退の攻防を繰り返していた。
そんなある日事件は起こった。
とある地方の鎮守府の提督が執務室で何者かによって殺されたのだ。深海棲艦の襲撃で殺されたのであれば、近年では珍しいことではあるがそこまで問題にはならなかった。問題は執務室の中から砲撃された痕跡があることだ。その日は深海棲艦の襲撃はなくレーダーの記録にも何もない。しかし艦娘に提督を殺すことは出来ない。艦娘は人を殺すことを禁忌として感じる意識がとても強く、艦娘が故意に人を殺したことはない。深海棲艦との戦闘中に一般人が巻き込まれた事故は確認されているが、執務室で砲撃している以上事故の可能性も考えにくい。
この事件の捜査は難航しているが、それでも早急に解決しなくてはならない問題がある。後任を誰に任せるかだ。提督の居ない鎮守府に所属する艦娘は徐々に力を失い、最終的には消え去ってしまうらしい。防衛の要である鎮守府を滅ぼす判断は出来ない。しかし原因不明の事件が起きた鎮守府に着任したい物好きは居ないし、そもそもその鎮守府は悪い噂の多い場所でもあった。あるグループは悪事の証拠を集めるために人を送ろうとしたが、別のグループが証拠隠滅のために妨害をしてくる。未解決の事件と権力者の争いにより人選は難航した。
結果として上層部はどこの派閥にも所属していない新人提督を着任させることとした。表向きは士官学校で成績優秀だったのでいきなり提督に昇進した期待のルーキーとのことだったが、その実態は地雷原を歩かせる生け贄のような扱いであった。
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送迎の車の窓から外を眺めていたら海沿いの街が見えてきた。深海棲艦襲撃の傷跡はまだまだ残っているが、復興が進んでいて活気がありそうなところだ。海沿いの街は危険だからと内陸部に移住する者も多いが、鎮守府付近では比較的安全と思われているので復興も進み易いようだ。まあ現在は近海に近付かせないくらいで深海棲艦との勢力が拮抗しているだけで、防衛網が破られた場合真っ先に狙われるのが鎮守府だということは考えないのだろうか?
そんなとりとめもないことを考えつつ、自分が着任する鎮守府が近付いてきたことにため息をつく。これほどの悪条件を突きつけられた新人は自分が初めてではないかと思う。
まず提督になれる資格を持ったものが半強制的に入学させられる士官学校をまだ卒業していない。本来2年で提督としての基礎を叩き込まれるはずだが、1年ちょっとしか通えていない。教官から「昔はなんの知識もない状態で手探りで提督をしていたのだ、軍人が甘えるな!!」などと言っていたが、時代は変わったので知ったことではない。
次に前任の提督が殺された事件だ。上層部の連中は「この事件について調査し、犯人を見つけ出すのも貴様の役目だ!!必ず犯人を突き止めろ!!」などと偉そうに言っていたが、自分達が必死になって捜査して成果が得られなかったはずなのに、新人提督に無茶を言うものだ。この件に関しては若干心当たりはあるものの、所詮はただの推測に過ぎないし、なんなら外れて欲しいと思うほどの話だ。
最後に鎮守府の悪評の件だ。正直これが一番厄介なのではないかと考えている。現状を見ていないのでどれほど腐っているかは分からないし分かりたくもない。ただ腐っているのは確実と分かるのが最悪だ。なぜならある上官からは「前任者の不正の証拠を調べあげて報告しろ、誰と繋がっていたかもきっちり調べあげろ」と命令され、別の上官からは「提督たるもの国防のための仕事だけを全うすべきだ、些事は気にせず護国に努めなければ提督としてやっていけないぞ」と余計なことに首を突っ込むなと釘を刺されたので間違いない。
あとは普通に提督としての仕事が大変で責任があるが、これに関しては妖精さんが見えるからには覚悟はしている。でもどうせなら他の新人提督のように、新しい鎮守府を一から作りあげる方がよっぽど楽に出来るはずだ。ある程度練度の高めな艦娘が最初から揃っていて、設備と資材もそれなりに揃っているのは大きなメリットだろうが、それを上回るデメリットが多すぎる。
これからのことを考えてブルーになっているとついに車が停まった。どうやら鎮守府についてしまったようだ。
「鎮守府に到着致しました」
今まで寡黙に運転してくれていた初老の運転手が声をかけてきた。正直人と話すのは好きではないので、寡黙で職務に忠実な彼が運転手でとても助かった。
「送迎ありがとうございました。」
「御武運を」
言葉少なく敬礼で見送ってくれる彼に敬礼を返し車を降りる。静かに発進する車を背に鎮守府の門を眺める。曇天のもとでそびえ立つ立派な門は、まるで自分を追い返そうとするかの如き威圧感を放つ。だがここまで来た以上引き返す事など出来ない。そして門の横で待っていた黒髪の女性が駆け寄って来て敬礼をしてきた。
「軽巡洋艦大淀です。提督様をお迎えに参りました。」
大淀・・・たしか資料に載っていたな、戦闘よりも事務仕事などが得意な艦娘だったか。おそらく前任者が秘書艦として使っていたのだろう。それにしても顔は若干青ざめ、震えも隠し切れていない。想像通りとはいえ厄介な鎮守府のようだ。
「出迎えご苦労、新任の
「ハッ!!かしこまりました。」
そう言って震える手で門を開ける大淀に続いて鎮守府へと足を踏入れた。
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提督が鎮守府に着任しました
これより艦隊の指揮を執ります
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もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。
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主人公葛原提督率いる問題児四天王
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大淀
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長門・陸奥
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第七駆逐隊
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川内・神通
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明石・夕張・間宮・鳳翔
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第六駆逐隊
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北上&大井
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青葉&衣笠
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金剛姉妹
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伊19・伊168
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赤城&加賀
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翔鶴&瑞鶴
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白露型姉妹
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島風&雪風
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天龍&龍田
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龍驤・五十鈴・球磨・摩耶・高雄
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朝潮・木曾・陽炎・不知火
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叢雲ちゃん率いる横須賀艦隊
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俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!