前任者の私室を出て倉庫の方に向かう。途中すれ違った艦娘達は自分の姿を見かけると、道の端に寄ってそそくさと通りすぎて行く。昨日は端に寄って直立不動の状態で敬礼をしていたので、少しはマシになったと言ったところか?作業の手を止められるのも困るしな。そんなことを考えながら歩いていると、曲がり角を曲がろうとした時に、誰かが走って来る気配を感じ踏み留まる。一瞬遅れて目の前に電が現れて、驚いた表情のまま盛大に転んでしまった。あのまま進んでいたら、ぶつかってしまうところだったな。
「はわわわわ!!」
「ちょ!!電!?」
しかも後ろから走って来ていた雷が、転んだ電に躓いて2次災害を引き起こす。艦娘がこの程度でどうにかなるとは思わないが、巻き込まれるのは勘弁願いたいものだ。
「いったーい!もう電!気をつけないとダメじゃない!」
「ごめんなさいなのです・・・
ハッ!!司令官さんは大丈夫なのですか!?」
「ぶつかってないから大丈夫だ。」
顔を真っ青にした電が安否確認をしてきたが、どう見ても大丈夫じゃないのは電と雷の方だろう。後からやって来た暁と響もやれやれといった感じか。
「まったくもう、落ち着きが無いと一人前のレディにはなれないわよ!」
「まあ、司令官が無事みたいで良かったよ。」
「作業を急いでくれてるのは分かるが、危ないことはしないようにな。」
戦闘時以外での負傷なんてバカらしいからな。
「ご、ごめんなさいなのです・・・」
「では私はもう行くから気を付けて作業するように。」
「分かったわ司令官!輸送任務なら暁に任せて!」
第六駆逐隊を送り出してまた倉庫に向かって歩き出す。この作業は輸送任務になるのだろうか?名目上は調査と片付けだが、荷物を運び出すということだけを取り上げれば、輸送任務になるのかも知れないな。どうでも良いことだが。
倉庫前にたどり着くと陸奥・赤城・加賀の3人が、運ばれた物を検品してから倉庫に収納していたが、こちらに気が付いた陸奥が近づいてくる。見た感じ多少緊張はしているようだが、他の艦娘達よりは余裕がありそうだ。
「あら?提督、視察ですか?」
「そんなところだ。指示を出すだけで終わらせたら、想定外のことが起きることもあるから、確認はきちんとしないとな。」
さもないと天龍が拘束されたような事件も起きてしまうしな。
「そうねぇ、今は他の娘達が運んでくれた物を調べて倉庫にしまっているわ。品物も種類ごとにわけているし、リストも作っているのだけれど良かったかしら?」
「ああ、問題ない。壺や絵画みたいな小物は良いが、タンスやベッドなどの大物は念入りに頼むぞ。二重底などの仕掛けがあるかも知れないからな。」
「分かったわ。大物と言ったらあの石像だけど、天龍に任せて本当に良かったのかしら?」
「ん?もうその話を聞いたのか?さっき上で天龍に伝えたばかりなのだが。」
「艦娘には電信があるもの、普段は混線を避ける為にあまり使わないのだけれど、急ぎの報告とか大掛かりな作業の時は使うわ。大淀も使っていたと思うのだけど?」
そう言われれば大淀が報告を受けていたな、あの時は特に気にしなかったが、艤装を使っていなくても通信が可能だったのか。
「艤装無しでも通信が出来るのは便利だな。」
「ええ、艤装を使った時みたいに遠距離では使えないけれど、鎮守府内くらいなら問題なく使えるわ。その代わり私達でルールを決めて使っているわね。」
「ほう、ルールとは?」
「まず基本的に使って良いのは秘書艦の大淀とのやり取りだけね。そして大勢で作業する時はその代表者が使えるようにしていて、今回は長門と私ね。あとは川内が夜戦のメンバーを集める時くらいかしら?」
なるほど、便利な機能だが混線しないように気を付けているのだな。
「だからさっき天龍が石像を任された、思いっきりぶっ壊してやるぜ!って言ってたから心配になって・・・」
「それならば私が命令したから問題ない。何か気になることでもあるのか?」
「いえ、その・・・壊してくれるのは心情的には嬉しいのだけれど・・・一応前任者が大切にしていた物だから、壊してしまって問題にならないのかなって・・・」
「ふん、上からは徹底的に調査しろと命令されていて、調査に必要だったからやるだけだ。上が何か言ってくるならそれで押し通すから気にするな。」
「あらあら、真面目な軍人さんかと思っていたけれど、ただ命令に従うだけの人では無いのね。」
陸奥はクスリと笑いながらそう言った。まるで悪戯をした弟を見るような表情だな。
「命令にはちゃんと従うさ、軍人だからな。だが石像を壊すななんて言われていないし、提督には鎮守府の運営に関して大きな権限を持っているからな。この程度なら何も問題無い。」
「なら良かったわ。天龍ったら広場に人を集めて、公開処刑みたいなことやるみたいだからびっくりしたわ。」
「その話は初めて聞いたな・・・」
陸奥の表情が一気に強ばる。自分の表情も強ばっているのを感じる。なんとも言えない沈黙が流れてしまって、陸奥もどうしたら良いか迷っているようだ。まあ、前任者に恨みがある艦娘も多いし、これくらいは見逃してしまおうか?だが流石に公開処刑はやり過ぎな気もする・・・
「そうだ!天龍には周囲の邪魔にならないように壊せと命じた。だから破片が飛び散る範囲に人が来ないように、見張りを何人か立たせていた。あと破片を拾い集めるのも一人では大変だ。これで問題無いな。」
「・・・そういうことにしておきましょう。天龍にはあまり派手にやり過ぎないように伝えておくわ。」
陸奥は頭を抱えながらもそう言ってくれた。こうやって柔軟に対応してくれるのは、上に立つ人間にとっては非常に助かる。長門が皆を引っ張る役なら、陸奥はそれを上手くフォローする役といったところか。
「ああ、助かる。では他の見回りに行くから、ここは任せたぞ。」
「ええ、分かったわ。」
優しく微笑む陸奥に見送られて、その場を後にする。後は明石達の様子を見てから会議室に戻るか。
金剛型姉妹のお話が纏まらないので、また第六駆逐隊を出してしまった。とりあえず時間稼ぎに視察のお話を入れてます。あと陸奥は魅力的なお姉さんです。
もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。
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主人公葛原提督率いる問題児四天王
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大淀
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長門・陸奥
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第七駆逐隊
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川内・神通
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明石・夕張・間宮・鳳翔
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第六駆逐隊
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北上&大井
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青葉&衣笠
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金剛姉妹
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伊19・伊168
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赤城&加賀
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翔鶴&瑞鶴
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白露型姉妹
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島風&雪風
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天龍&龍田
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龍驤・五十鈴・球磨・摩耶・高雄
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朝潮・木曾・陽炎・不知火
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叢雲ちゃん率いる横須賀艦隊
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俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!