北上達と別れて間宮から食事を受け取り大淀と共に席についたのだが、先程の北上の発言がどうにも引っかかる。指揮官として部下に舐められるよりは畏敬された方が良い。ただしそれは規律を守る指揮官として恐れられるのが良いのであって、罰と称した暴行や性的に襲われるかも知れないという恐怖ではダメだし、何をしでかすかわからない危険な奴として恐れられるのも問題だ。あくまでも目指すべきは信賞必罰を正しく実行する厳格な指揮官であるべきだ。
「Ah・・・提督、少しいいデスか?」
「金剛か。どうした?」
金剛から声をかけてくるとは珍しいな。それこそ金剛は自分にというよりは提督という存在そのものにトラウマがあったはずだ。そしていつもどおりというか金剛の後ろに残りの金剛姉妹も揃っている。比叡は少し心配そうに、榛名は少し嬉しそうに、霧島は少し緊張したような雰囲気か。
「えっと・・・そ、そうデス!!今日の出撃の話を聞きに来たヨ!!」
「ふむ、大淀からの通達はあったはずだが、今回の戦いではまだ敵の規模が判明していない。だから川内が現地に行って索敵をして、その結果次第で作戦行動が変わる事になる。だが敵の拠点を叩くならば火力が必要だ。お前達金剛姉妹には敵を蹴散らす火力を求めている。」
「お、OK。Ah・・・何故ヤマト達じゃなくて私達なのか聞いても良いデスか?」
「速力の問題だな。夜戦の中心となるのは川内だ。そして川内が得意とするのは、索敵能力を活かした奇襲と闇夜に乗じた離脱だ。速力が低いと奇襲には問題がなくても離脱に支障が出る。だから高速戦艦であるお前達を選んだ。」
「な、なるほどネェ、わかったヨ。Ah・・・ウン、仕事はちゃんと頑張りマース。Resultには期待してヨ。」
「一応聞いているとは思うが、無理をしてまで攻略する必要はないからな?可能であれば殲滅するが、威力偵察程度でも充分だ。変に気負うなよ?」
「OK 命大事にデスね。Ah・・・」
・・・それにしてもさっきから金剛はどうしたんだ?どうにも先程から落ち着きもなく目線もあちこちブレているし、会話にも集中しているようには見えない。それに先程から何か言い淀んでいる雰囲気だ。
「はぁ・・・それで?本題はなんだ?」
「Why!?どうしてそれを!?」
「さっきから挙動不審過ぎるぞ。流石に何か言い淀んでいる事くらいはわかる。」
「Oh・・・提督にはお見通しネ・・・Ah・・・」
「お姉様!!気合です!!気合!!」
「金剛お姉様、提督ならきっと大丈夫です。」
「金剛お姉様、事前情報から考慮した結果、成功率はかなり高いとの結果が出ています。お、落ち着いていきましょう。」
「Thank you そうネ、これ以上妹達にカッコ悪いとこ見せるのはNOデース。提督!!」
「なんだ?」
問い返すと金剛が静かに膝をついて深々と頭を下げて土下座をした。
「Sorry!!今まで提督にとっても嫌な態度とってしまったネ。許して欲しいデース。」
「・・・ん?ああ、いや、別にそこまでされるほどの事はされてないと思うのだが?とりあえず土下座はやめてくれ。」
正直なところ金剛がこれまでこちらから距離を取ろうとしていた態度よりも、大勢の艦娘が集まる食堂で土下座される方が困るのだが・・・食堂の艦娘達がざわついているし、遠くから「おあ!?これがニッポンのドゲザハラキリ!?ニッポンの文化ですね♪」などと不穏な声も聞こえてくる・・・土下座も勘弁だがこんなとこで切腹されたら大惨事だぞ・・・
「Oh・・・想像以上にあっさりネ・・・」
「そもそも金剛は言う程問題を起こしていないから、そこまでして謝られる理由が無い。」
「Why!?私提督を避けてたヨ!?」
「だからその程度だろ?別に命令に反抗したりこちらを侮辱するような発言は受けていない。」
「Uh・・・だったら許してくれマスか?必要ない時は関わらないでと言ったけどネ、それも無かった事にしてくれマスか?私達少しずつでも提督に歩み寄りたいヨ。」
「それは構わないが・・・急にどうしたんだ?」
あれだけ頑なだった金剛がここまで態度を変えるとはどういった心境の変化だ?いや、秘書艦の仕事を金剛姉妹で手伝うと申し出て来たときには、すでに歩み寄ろうとする兆候はあったか。
「Ah・・・可愛い榛名が提督は良い人だってずっと言ってくれたからネ。それから提督の事を見てたヨ。寝不足で顔色悪くてもお仕事頑張る姿見てたら、邪魔してる私が悪い人に思えてきたヨ・・・それに・・・」
「それに?」
「提督と幸せそうに話してる娘達を見てたらちょっと羨ましくなったデース。でも私が心を閉ざしたままだと私だけじゃなくて、可愛い妹達も遠慮して幸せを手に入れられないヨ・・・だからちゃんとオトシマエつけにきたよ。」
「落とし前って・・・まあいい。先程も伝えたが私は金剛に対して怒っていない。他の艦娘達と同様に扱って良いと言うならそうしよう。」
「Thank you!!提督が優しい人で良かったヨ。」
「そうか。だが私はお前達に軍人としてきちんと働く事を求めている。まずは今日の夜戦だな。あまり他の夜戦メンバーを待たせるのは良くないから、早く準備を整えて来い。」
「Yes!!私達の実力、見せてあげるネー!!」
「気合!!入れて!!頑張ります!!」
「勝利を!!提督に!!」
「データ以上の活躍が出来るように頑張りますね。」
金剛姉妹はそれぞれに宣言をすると清々しい表情で駆け出して行った。これで金剛姉妹が集中して戦闘に挑めるのであればなによりだ。今後の活躍にも期待が出来そうだ。
「なぁ大淀。」
「どうされましたか?」
「当たり前かもしれないが、艦娘からの私の評価も色々あるようだな。」
「そうですね。私達には個性もありますし立場やこれまでの経験など様々な違いがありますから。同じ艦娘ですら別の鎮守府の艦娘とは違う個性が現れるものですからね。いろんな目線で提督を見ているのが当たり前だと思います。」
「それもそうだな。」
「イクは当然獲物を狙うエロスな目線で見てるのね!!提督は軍服姿がカッコいいけど露出が少ないのね。だからそのぶん軍服の袖からチラッと見える引き締まった腕にエロスを感じるのね♪でも襟元を緩めて鎖骨あたりまでチラ見せするとよりエロスを感じるはずなのね!!」
はぁ・・・イクはどこでも唐突に出てくるな・・・それにしても獲物を狙う目線か・・・どれだけ肉食系なんだこいつは?本当に懲りない奴だ・・・
「村雨はこの広い肩幅が良いと思いま〜す♪ガッツリしてて男らしくてカッコイイで〜す♪鹿島さんはどう思います?」
「えぇ!?えっと!?落ち着く香りがするというか安心感があると言うか・・・ぷ、プリンツさんは!?」
「Hm・・・Admiralのカッコイイとこですか?若いのに落ち着いた良い声してると思います!!次はヤマカゼの番ですね!!」
「・・・え?指・・・とか?いや・・・別に気になる事なんてないけど・・・」
「さ、最後は秋月ですか!?え、えっと?えっと?ここはお腹一杯美味しいご飯が頂けて幸せです!!」
イクと村雨につられて一緒にいたドロップ艦組も変な事を言い始めた・・・イクはともかく村雨もそっち側なのか・・・今後に警戒だな。
「はぁ・・・バカな事言ってないでさっさと食事を済ませておけ。状況次第ではお前達に出て貰う可能性もあるのだぞ?」
「了解なのね!!いつ呼び出されても良いように待機しておくのね!!出撃でもベットでもどっちでも遠慮なく呼んで欲しいのね♪」
「・・・なんだったら営倉で待機しておくか?」
「・・・営倉は営倉で悪くないシチュエーションだと思うのぐぇ!?」
「し、失礼しました!!」
イクの対応に困っているといつものようにイムヤが多慌てで引き摺っていく。イムヤも段々とイクに対して遠慮がなくなって、問答無用で連れて行ってくれる。本当に助かる。
山城が強気で出たのに反論されると弱いコミュ症なとこが地味に可愛い。