そして疑心暗鬼提督ではドロドロパートです♪
古鷹を送り出してもまだやる事はある。正直面倒な事になるのは目に見えてるが、どうせ避けられない話だ。
「大淀、大本営に通信を繋げてくれ。」
「了解しました。・・・・・・人事部の中井さんが対応されるそうです。」
「ああ、わかった。それと少し席を外して貰えるか?」
「あ、はい。部屋の外で待機していますので、終わったらまたお呼び下さい。」
大本営相手にはあまり人には知られたくない手を使うつもりだ。まあ、軍用回線で記録が残るので小細工程度しか出来ないがな。
「・・・・・・北九州鎮守府所属の葛原です。」
「人事部の中井だ。こんな忙しい時になんの用だ?」
ほう?かなり夜遅いにも関わらずまだ仕事をしているのか?そう言えば朔真が大本営側は謝罪会見の件で久藤提督と鶴野提督から睨まれたと言っていたな。その対応に追われていると言ったところか?
「益田鎮守府付近に居た深海棲艦を討伐しましたので、その報告をと。」
「そんな事でわざわざ通信してくるな!!報告書の提出でもすれば充分だろうが!!なんだ?貴様は自分の戦果自慢でもしたかったのか?」
「いえ、戦闘後に海外艦が2人ドロップしたので大本営に報告をと思いましたが、余計な事だったようですね。これは失礼致しました。では私はこれで。」
「・・・・・・待て待て待て!?海外艦がまたドロップしただと!?今度は2隻もか!?」
「ええ、ドイツ出身のビスマルクとアメリカ出身のアトランタの2人です。」
「いったいどんな手を使ったんだ!?」
「それが心当たりが全く無いので困っているのですよ。ここ最近の軍事行動の報告は既に送っていますし、今回の分もすぐに送るつもりです。ですがそれ以外に参考になりそうなものが無いのも事実です。」
「馬鹿な事を言うな!!そんな簡単に海外艦がドロップするわけ無い!!何か心当たりがあるはずだ!!」
まあ、想定通りの反応だな。では予定通りに小細工を仕掛けるとするか。
「そうですね・・・心当たりと言う訳ではありませんが仮説は2つ立ててます。」
「言ってみろ。」
「まずは海域の方に異常が発生している場合です。こちらは今後調査をするしか無いので、私からは特別な事は言えません。」
「もう一つは北九州鎮守府になにか細工がされている場合です。これに関しては私に心当たりが無い以上、別の人間が細工したと考えて良いでしょう。」
「別の人間だと!?・・・前任者の大森提督が何かしたと言いたいのか?」
「可能性はあるかと。一応もう一人候補がいますが。」
「・・・誰だ?」
「その前に以前憲兵隊の黒川さんに大森提督の暗殺についての仮説を伝えたのですが、中井さんはご存知でしょうか?」
「仮説・・・大森提督を殺害したのは艦娘でも深海棲艦でもなく、提督の才能を持った人間かもしれないというあれか!?」
「ええ、その仮説です。」
この話は大本営から前任者の大森提督暗殺の犯人を特定するようにと命令され、その催促が面倒なのででっち上げた仮説だ。結局あのあと大淀を問い詰めて春雨が自白したのでこの仮説は完全にデタラメなのだが、せっかく大本営の捜査を春雨から遠ざけるチャンスだ。利用しない手は無い。
「まさかその犯人が!?いや、だがなんの為に!?」
「これも仮説に過ぎませんが、大森提督と犯人はそれなりに仲が良く共に海外艦を出現させる為の研究をしていた、もしくは大森提督の研究に出資をしていたのではないでしょうか?それか大森提督の方が出資者で犯人が北九州鎮守府を使って実験していた可能性もあります。それで大森提督が犯人を裏切って研究成果を独占しようとしため、犯人が大森提督を殺したという事が考えられます。」
「あの大森提督がそんな研究を!?だが証拠品として抑えた書類などにはそんな記述はなかったぞ!?」
「そうでしょうね。犯人が大森提督の研究成果が目的ならば、資料はすでに確保しているはずです。殺害した当日に奪ったかもしれないし、大森提督殺害事件の調査として入った時かもしれないし、隠し通路から侵入して事を済ませた可能性もあります。」
「あり得ない・・・・・・とは言えないな・・・そしてその研究成果が今頃現れたと・・・」
「ええ、そういう事です。」
「信じ難い話だが・・・筋は通っている・・・」
そうだろうか?自分で言うのもなんだが、自分の望むドロップ艦を手に入れる研究と言う時点で怪しい。しかも誰も見た事の無い海外艦の艦娘をどうやって選ぶと言うのだ?それに何故ドロップ現象が起きるかも理解していないのに、その操作なんて夢のまた夢だろう。さらに言えばドロップ艦は深海棲艦を倒した時に出てくるものなのだ。それが鎮守府への細工でどうこうなると考えるのは不自然だ。
「ちなみに大本営での捜査で何かしら手がかりは掴めているのですか?私には他の提督を調べる権限がないのでこれ以上の捜査は難しいとお伝えしたはずですが?」
「馬鹿を言うな!!これだけの難事件だ!!捜査がたった数日で進む訳がないだろうが!!」
「そうですか。残念です。」
こっちにはそのたった数日で犯人を見つけられたのかと催促してきたくせに、随分悠長な事を言うものだ。まあ、真犯人の春雨を見つけられたら本当に困るので、ずっと変わらず迷走し続けて貰いたいものだが。
「それで、この話を知る者は?」
「少なくとも私は黒川さんにしか伝えていません。誰が犯人なのかわからないのですよ?安易に情報を流せば犯人に警戒されたり、証拠の隠滅をされる危険があるのです。こんな事を軽々しく口には出来ません。」
「・・・そうだな。悪くない判断だ。」
「ですからこの海外艦がドロップする異常事態についても、私は他の提督達から追求されても、知らぬ存ぜぬを突き通さなくてはいけません。もちろんここ最近の軍事行動の記録などは、大本営経由で開示して貰って構いません。逆にそこを隠してしまえばこちらが何か隠しているという疑いが強くなる。ですがそれ以上の情報を提供するつもりはありませんが構いませんね?」
「分かった。だが貴様は鎮守府内に怪しいものが無いかしっかりと調べて報告しろ。わかったな?」
「ええ、了解しました。ではこれで失礼します。」
ふぅ・・・・・・上手く騙せたな。そもそも今回の件は海域の異常の方があり得る話だ。にも関わらず大森提督殺害の件との関連を臭わせるだけで、ここまで都合良く勘違いしてくれるとはな。とにかくこれで今回のドロップ艦の件で大本営からの圧力は減るはずだ。そして北九州鎮守府を調べたいと考える提督達への牽制にも繋がる。鶴野提督や久藤提督あたりが大本営からの命令で北九州鎮守府を調べるという状況を作りかねなかったが、これでその企みを事前に潰す事が出来た。
さて、これで仕込みは終わったし次の動きを始める為に大淀を呼ぶか。執務室から出ると執務室から離れた位置で大淀と陸奥が立っていた。これならば盗み聞きの心配も無さそうだな。
「大淀、待たせたな。執務室に戻ってくれ。それと陸奥はどうした?」
「古鷹さんを送ったから戻って来たのよ。そうしたら大淀さんが執務室前に居たから、事情を聞いて一緒に待ってたの。」
「なるほど。であれば陸奥にもまだ手伝って欲しいのだが構わないか?」
「ええ、もちろん良いけれど何をしたら良いの?」
「陸奥には出撃している艦隊が戻ってくるまで、艦隊との通信を担当して欲しい。大淀には別件で動いて貰う必要がある。」
「分かったわ。」
「では私はなにをすれば良いのでしょうか?」
「急な話ではあるが、明日の朝に記者達を集めて海外艦三人のお披露目をしたい。会場の手配と新聞各社に通知をして貰いたい。」
そう伝えると大淀も陸奥も物凄く驚いた表情になる。
「それは構いませんが・・・本当によろしいのでしょうか?かなり大事になるかと思いますが・・・」
「それに提督って記者とかが嫌いなイメージがあったのだけど・・・謝罪会見をさせられた時もかなり警戒していたと思うのだけど?」
「ああ、それは理解している。だがそのデメリットを受け入れてもやっておきたい事がある。」
「ふ~ん?また何か悪巧みしているのかしら?」
「悪巧みとは失礼な。ドロップ艦達を他所の鎮守府に奪われない為の小細工をするためだ。海外艦の情報というエサを使ってでも記者達を集めたいだけだ。」
「ふふっ♪私達の仲間を守るためなのね♪ならちょっと悪い事しても目を瞑ってあげるわ♪」
「そうしてくれ。大淀、会場は出来ればこの前会見で使った場所が良い。これも綾瀬さんに確認をとってくれるか?」
「はい!!お任せ下さい!!」
これでひとまずの仕込みは良いだろう。あとは大本営から情報を聞いた奴らがどう動いてくるかだな。
人間側は主人公も含めてヤバい奴ら。それがこの作品です。