いつも皆様の応援に感謝しております。感想コメントやいいねを見てニヤニヤするのが日課のようなものですし、誤字報告職人の皆様には頭が上がりません。
今年も不定期更新の気まぐれな活動になると思いますが、今年も疑心暗鬼提督を楽しんで頂ければ幸いです。
中井さんとの通信を終えて大淀に明日の準備をさせていたが、いきなり大淀の手が止まった。これは通信が入ったようだな。
「提督、舞鶴鎮守府の鶴野提督から通信です。」
「はぁ・・・まあ、当然動くよな・・・・・・北九州鎮守府の葛原です。」
「舞鶴の鶴野じゃ。要件は分かっておるじゃろう?」
「ある程度予測は出来ますが、誤解を防ぐ為にも要件は明確にしてください。」
「貴様がまた海外艦を手に入れたというのは事実か?それも2隻も手に入れたと聞いたが?」
「ええ、間違いありません。」
「ふむ・・・で、どのような手段を使った?」
「作戦行動に関しては現在大本営への報告書を作成しているところです。後日大本営へ請求していただければ詳細が確認出来ると思います。」
「貴様しらばっくれるつもりか?」
「しらばっくれるもなにも私から出せる情報はその程度のものです。」
しばらく沈黙が続くが自分から出せる情報など本当にその程度しかないからな・・・もし仮に何か情報を持っていたとして、鶴野提督にわざわざ教えるかと問われればまた話は別なのだが。
「とりあえず貴様はわしに協力する気が一切無いと言う事じゃな?まあ貴様は久藤の若造に尻尾を振っておるから当然の反応ではあるのう。」
「私は久藤提督の傘下になんぞ入ったつもりはありません。久藤提督の事は取引が出来る相手だとは考えていますが。」
「ふん、白々しいのう。まあいい、そろそろ本題にうつるとしよう。察しはついておると思うが、今回の作戦は益田鎮守府の協力があってこそのものじゃ。ドロップ艦を北九州鎮守府だけで独占というのは、ちぃとばかし虫が良すぎると思わんか?」
「思いません。その件は私と狐塚提督ですでに話がついています。そこを蒸し返そうとする方が虫が良すぎると思いますが?」
「わしにも狐塚の奴にもメンツというものがある。この話に応じないのであれば、こちらもそれ相応の対応をせねばならんのう?」
「はぁ・・・そういう事を鶴野提督から言われたら、私としては不本意ながら久藤提督と交渉をするしか手が無くなるのですよ。私が久藤提督の派閥だと勘違いされる原因は鶴野提督にあるのですよ?」
まあ、当然他にも抗う為の手札は用意するつもりだ。久藤提督に借りを作るのはリスクがあるので、出来る限り使いたくない手だ。
「ならば四大鎮守府のどの派閥にも参加せず、それぞれから甘い汁を吸おうとするのをやめるんじゃ。中途半端な奴は目障りじゃ。中立を気取って調子に乗っているようじゃが、中立とは全員の味方ではなくて全員の敵だと言う事は理解しておるか?」
「ははは、鶴野提督は御冗談が得意なのですね。」
「何が冗談か!!」
「いえ、私ほど周囲が敵だらけだと考えている人間もそういないと思いますよ?そんな人間にお前は敵に囲まれているぞと言われても、もちろんそのつもりですとしか言えませんよ。」
「つまり四大鎮守府全てを敵に回す覚悟があると言う事じゃな?」
「ええ、派閥争いをするならばですがね。少なくとも軍事的に必要があれば協力するつもりですし、こちらにちょっかいを出して来ない相手に手を出すつもりはありませんよ?そんな余裕ありませんから。」
・・・・・・今はだがな。
「よかろう。最後に確認じゃが今回手に入れた海外艦を譲るつもりはないのじゃな?」
「ええ、誰にも渡すつもりはありません。」
「そうか。では好きにしろ。」
そう言って鶴野提督は通信を切った。好きにしろとは言われたものの、この程度で鶴野提督が引くとは思えない。潰してやるからそれまで勝手にしろと言われたと考えておこう。
「提督、お疲れのところ申し訳ございませんが、先程久藤提督から通信がありまして、手が空き次第折り返せとの事ですが・・・」
「わかった。すぐに繋いでくれ。」
久藤提督も耳が早いものだ。大方大本営から情報が渡ったのだろう。
「了解しました。・・・・・・どうぞ。」
「北九州鎮守府の葛原です。」
「おう、呉の久藤だ。お前のところで海外艦が2隻もドロップしたそうじゃねぇか?」
「ええ、想定外の事態で頭を悩ませているところです。」
「だろうな。一応確認しておくが、新しく手に入れた海外艦を売るつもりはあるか?」
「いえ、プリンツオイゲンの時にもお伝えしましたが、私は艦娘を売るつもりはありません。これは久藤提督に対してだけではなく、他の提督が相手でもです。」
「なら次だ。海外艦を手に入れる方法を売るつもりはあるか?もちろんこれも高く買うぞ?」
艦娘の売買に関しては前回同様にあっさり引いたな。そして情報を寄越せではなくて売ってくれか。島津提督や鶴野提督よりもずいぶんと理性的だな。
「申し訳無いですがそれも無理です。」
「ほう?理由はなんだ?」
「自分でも海外艦がドロップした理由がわからないからです。プリンツオイゲンの時は戦艦棲姫という大物を撃破したので、幸運だとは思いますが納得出来ます。しかし今回の相手はル級やヲ級、それもelite程度の個体でした。それで二人も海外艦がドロップするなんて訳がわかりません。そして売れる情報が無いのに交渉は出来ません。」
「ほほう?偽の情報すら売らないか。」
「ええ、私と久藤提督は交渉の出来る節度ある敵対関係だと思っています。であるからこそ交渉の内容で嘘をつくのは避けたいところです。そんな事をすれば交渉すらも出来なくなりますからね。」
「確かに交渉の場に下手な嘘は良くねえな。こっちもお前の言う事を鵜呑みにするつもりはねぇが、お前なりの誠実な対応だと受け取っておこう。裏切る時までは節度ある敵対関係ってのを維持しようじゃねぇか。」
ふむ。ずいぶんと聞き分けのいい事だ。こちらとしては圧力をかけられたところで何も情報を出す事が出来ないので助かるが、久藤提督はやけに落ち着いているのが気になるところだ。
「ああ、もちろんここ最近の戦闘記録などは大本営に提出しますし、それが自分が出せる情報の全てですね。」
「いや、まだ海外艦についての情報を聞いてねぇな。どんな艦がドロップしたんだ?」
どうせ明日の朝にお披露目するのだから、ここで隠すメリットは無いな。
「ドイツの戦艦ビスマルクとアメリカの巡洋艦アトランタですね。性能や戦歴などは流石にまだ把握していません。」
「まあ、まだゆっくり話をする時間も性能試験をする余裕もねぇか。また後で情報が欲しいとこだな。」
「とりあえず明日にプリンツオイゲンも含めた海外艦三人のお披露目をしようと考えていて、今は会場の手配や記者達への告知をしているところです。戦歴などはその時に語らせる事になると思います。性能試験の結果については大本営に報告する予定ですので、そちらから情報を引っ張って下さい。」
「ほう?海外艦を公開するのか。意外だな。お前は記者達に囲まれるのは嫌いだと思っていたが、大本営にでも命令されたか?」
「いえ、私自身の意志です。確かに記者達が集まる事には辟易としますが、必要がある事ならばやりますよ。」
「ほほう?何か企んでるってわけだな。まあいい、とりあえず最後の話だ。そしてこれが本題と言っても良い。」
ほう?これまでの話が前置きか。それで久藤提督も無理に問い詰めたりしなかったわけか。いや、元々ダメ元で話をしただけで期待はしていなかったのか。
「分かりました、お聞きしましょう。」
「俺と俺の傘下の奴らで大規模な調査隊を編成して、海外艦がドロップした海域を調査したいと考えていて、日本海側に出るには関門海峡を通る必要がある。だからお前のとこを通過させて貰うが構わないな?」
「ええ、通行するだけなら問題ありません。お気遣い感謝します。」
「それと北九州鎮守府を補給拠点として利用する事は可能か?呉鎮守府傘下で最も北九州鎮守府に近いのは柳井鎮守府なのだが、北九州鎮守府まで片道3時間はかかる事になる。海域の調査が長期化する可能性も考えれば、時間も燃料も節約しておきたい。もちろんこっちで使う資材は準備するし、それ相応の礼はするつもりだ。」
・・・・・・なるほど。一見すれば筋も通っていて悪くない条件に思えるが、北九州鎮守府を補給拠点として貸し出せば北九州鎮守府に呉派閥の艦娘達が多く滞在する事になるだろう。もしくは前線で指揮をするためだと言って、呉派閥の提督達が滞在させろと言う可能性もある。そんな状況では全員の動きの把握は困難だし、色々と嗅ぎ回られる事になる。ドロップ艦の件に関しては嗅ぎ回られたところで知った事ではないが、もし万が一にも悪雨の情報が漏れたら大変だ。
「・・・・・・それは難しいかもしれないですね。明日からは佐世保傘下の提督達と北九州鎮守府で連日演習をする予定になっています。しかも今日は鹿児島鎮守府と演習する予定だったのを延期して深海棲艦の討伐をしました。そんな状況で海外艦が二人もドロップしたので島津提督はこちらをかなり疑ってました。なので明日から盛大に揉める予定です。そこに呉鎮守府傘下の人間も関わってくると、そちらにも飛び火して余計に大きな問題になるかと。」
「ほう?佐世保傘下の奴等が喧嘩売ってるって話は本当だったのか。」
「表向きはあくまでもただの演習です。しかも北九州鎮守府で行うのに資源は向こう持ちと好条件です。ただ少なくとも鹿児島鎮守府の島津提督とは喧嘩腰の言い争いに発展してます。ろくな事にはならないでしょうね。」
「まあ確かに佐世保の連中と揉め事を起こすのは面倒だな・・・あいつらはなんだかんだで実力がある。政治的な駆け引きならどうとでもなるが、それであいつらの戦力を削ってしまえばこっちとしても都合が悪い。さらにあいつらは軍人気質で他の派閥に対しても上から目線でキャンキャン吠えてくるからな。」
「はぁ・・・・・・あの横柄な態度は島津提督だけじゃないのですか・・・・・・」
「例外はいるがそんなもんだ。そんな奴等と鉢合わせたら、俺の傘下の奴らも抑えが効かねえかもしれん。しょうがないから補給拠点にするのは諦めよう。」
ふぅ・・・まさか島津提督が役に立つ時が来るとは思わなかった。人よけに使えると言う事は覚えておこう。
「そうして貰えると助かります。では通行する人員が決まればご連絡下さい。」
「おう。じゃあな。」
そう言って久藤提督は通信を切った。なんというかそれなりに有意義な話が出来たな。相変わらず油断出来ない相手だが。
新年一発目からドロドロ展開。うん、話の流れからして仕方なかったし、これぞ疑心暗鬼提督かな?