そして敵潜水艦に囲まれてピンチの時に、空から差し込む光と共に現れた天使達。素晴らしい演出でした。
織田との通信も終えてふと時計見ると、既に深夜の3時を過ぎている。時間的にももうそろそろ夜戦に出していた艦娘達が帰ってくる頃か。
「陸奥、川内達はどのあたりだ?」
「もうすぐ北九州鎮守府に帰って来るわよ。道中特に問題はなかったみたいね。」
「そうか。では迎えに行ってくる。」
「・・・それは皆喜ぶと思うけれど、明日に備えてそろそろ寝ておくべきじゃないかしら?明日も朝から記者会見で忙しいのでしょう?休める時に休んでおくのも仕事のうちよ?」
「それはそうだが・・・出来れば少しでもビスマルクとアトランタと話をしておきたい。二人がどういう奴かを把握しておかないと、明日の会見で問題を起こすかもしれないからな・・・それに明日の会見で喋らせる内容も検討しておかねば・・・」
「はぁ・・・分かったわ。でも二人と少し話をしたらちゃんと寝ること!明日会見で使う原稿についてはお姉さんが海外艦の娘達とやっておくから、提督はちゃんと寝ておきなさい。」
「・・・陸奥もそろそろ疲れているだろう?あまり無理をするものではない。」
「はぁ・・・・・・一番無理してるあなたに言われたくないわよ・・・・・・それに私達は艦娘よ?一日徹夜するくらいなら心配しなくても大丈夫よ。」
確かに陸奥に明日の会見の準備をして貰えれば、短くとも睡眠時間を確保出来る。元々は問い合わせが殺到して明日の朝までろくに眠れないつもりだったが、予想に反して静かな夜だ。そして明日からも面倒な事が続くと考えれば、今のうちに休んでおきたいところだ。それに陸奥ならば無難に会見の原稿作成も出来そうだ。もし不備があっても明日の早朝に修正すれば問題ない。最悪の場合は海外艦には喋らせずに、自分で海外艦の紹介をしても良い。
「・・・・・・なら頼めるか?」
「ええ、任せて。」
「挨拶に関しては自己紹介として軍艦としての来歴を簡単に語って貰うつもりだ。あまり長く語らせる必要はないから簡潔にな。」
「ふうん?海外艦の顔見せはするけど、あまり情報は出したくないってとこかしら?まあいいわ。」
「では出迎えて一言声をかけたら休むとしよう。大淀、お前には明日も働いて貰う必要がある。そろそろ休んでおけ。」
「・・・了解しました。それではきりの良いところまで終わらせたら休ませて頂きます。」
「ああ、分かった。」
それにしても少し頭が痛い・・・連日の夜戦での寝不足や面倒な奴らの相手で疲労が溜まっているのか?そろそろ鎮守府の運営も落ち着いて欲しいのだが・・・なかなか難しいものだな・・・
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「総員、提督に敬礼!!」
出撃港で艦隊の帰還を迎えると、満面の笑みの川内が嬉しそうに号令をかける。軍隊らしくビシッと揃った敬礼をする姿は頼もしい。まあ、ビスマルクとアトランタが遅れてしまうのは仕方ないし、その程度の事で口うるさく言うつもりもない。
「諸君、夜戦での敵艦隊の撃滅よくやってくれた。今回の戦いは相手の数も多かったが、諸君の奮闘によって大きな被害なく戦闘を終える事が出来た。この調子で今後も私の指揮下での奮戦し、生きて帰ってくる事を期待している。」
「「「はっ!!」」」
「そしてビスマルクとアトランタ。北九州鎮守府へようこそ。私は貴官らの着任を歓迎する。早くこの北九州鎮守府に慣れて、戦場でその実力を見せてくれる事を期待している。よろしく頼む。」
「ええ、この海でも縦横無尽に活躍するわ。期待しなさい!!」
「ああ、うん、よろしくね。」
ビスマルクは自信満々な態度だな。ドイツ人は真面目な人間が多いと聞く。ビスマルクはそれに加えてやはりプライドの高い人間か?逆にアトランタは気軽な態度というか少し自信が無さそうというか・・・夜と日本の駆逐艦が苦手だと言っていたからその影響か?
「では各自艤装を外して休め。入渠は損傷を受けた者達を優先するように。それと報告書は明日の昼までに提出すれば良いので、ゆっくり休むように。あとビスマルクとアトランタは明日にプリンツオイゲンと共に記者会見で挨拶をしてもらう事になる。だから悪いが今夜のうちに陸奥と明日の原稿を考えて欲しい。以上だ。」
「総員、提督に敬礼!!」
さて、 やることは済ませたし早目に寝て明日に備えておくか。艦娘達も解散してそれぞれ移動を始め・・・
「ごっしゅじんさまぁ♪なにか忘れているものはないですかな?」
部屋に戻って休もうとしたら漣が満面の笑みで話しかけてきた。それにしても忘れているもの?
「・・・ん?すまない、なんの話だ?」
「いや〜またまたご主人様たらぁ〜漣達も今日はすっごく頑張ったと思うのですよ。ならばご褒美があってもおかしくないと思いますぞ?」
確かに信賞必罰は必要だったな。いよいよ疲労で頭が回らなくなってきたか・・・まずはきちんと・・・褒めておかなければな・・・
「ちょっと漣!!みっともない真似は辞めなさい!!」
「ん〜?ぼのたんはご褒美が欲しくなほわぁ!?」
悪雨のアドバイス通りに漣の頭を撫でると漣が奇声を上げて驚く。かなり驚いたようだが・・・本当にこれで良かったのか?
「漣も良く戦ってくれた。」
「あ、えっと、これは、その、ちょっと予想外な展開ですなぁ。なんて、あはは。」
「漣・・・あんた動揺し過ぎじゃない?」
「いやいやいや!?だって甘い物をねだったつもりが、急に頭を撫でられたら驚きますぞ!?しかもあのご主人様からですぞ!?」
「ん?ああ、甘味が欲しかったのか。すまないな。間宮に・・・いや、もう寝ているか。甘味は明日用意させるから今日は我慢してくれ。」
「あっ、別に頭撫でられるのが嫌だった訳ではないのですぞ?かなり驚きましたがこれはこれで良いかと。甘味の方も明日ありがたく頂きますが。あ、とはいえ漣だけ撫でられるのはいささか不公平ですな。という事で次はぼのたんの番ですぞ♪」
「は、はぁあ!?なに言ってんのよクソピンク!?」
「ぼのたん良いのかなぁ?この機会を逃せばご主人様に撫でて貰える機会なんてそうそうないかもよ?」
「べ、べべ別に私は頭撫でられて喜ぶほど子供じゃないわよ!!」
ふむ・・・悪雨は撫でるのも効果的だと言っていたけれども、この反応を見るとやはりあれは悪雨の個人的な主観であり、個人差が大きいもののようだな。ならば安易にするべきではないか?
「ほら、ぼのたんが素直にならないからご主人様がまた難しい顔してるじゃん。そんな態度だとこのボーナスタイムが終わっちゃうよ?」
「だから私は要らないって!!・・・ボーナスタイムってなによ?」
「はぁ・・・これだからぼのたんは・・・漣はご主人様とはまだ短い付き合いですけれども、ご主人様の突然の行動には心当たりがあるのです。ずばり!!艦娘の誰かから頭を撫でるのが効果的だと言われて試してみた!!ご主人様、違いますかな?」
まさかたったこれだけの行動でそこまで読み取られたのか。漣はコミュニケーションが得意なのが長所と言うだけあって、たったこれだけの情報を分析して答えにたどり着くとはな。漣の評価を上げておこう。
「はぁ!?そんなわけ・・・」
「ほぉ?よく分かったな。」
「・・・・・・え?」
「ふっふっふっ、ほれ見た事か。おやおやどうしたのかなぼのたん?そんなに驚いた顔をしてぇ?まさか秘書艦補佐ともあろうお方が、漣よりもご主人様の事を理解していなかったのかなぁ?」
「ぐ・・・うっさいわね!!」
「そしてぼのたんよりもご主人様の事を理解している漣には、これからどういう展開になるかも当然分かりますぞ。ぼのたんに拒否されたご主人様は『頭を撫でるのはあまり効果的では無いようだ』とか考えて、頭を撫でるのを辞めてしまうのです!!つまりご主人様が優しいボーナスタイムの終了ですな。そしてぼのたんは多くの艦娘達から白い目で見られてしまい・・・ああ!!ぼのたんはなんと罪深い事を・・・およよ・・・」
「な、いや、ぐぅ・・・」
ニヤニヤしながらからかう漣と、顔を真っ赤にして怒りながらも悔しそうに黙る曙・・・これはコミュニケーションとして成功なのか?失敗なのか?よくわからない反応だな・・・
「まあ素直になれないぼのたんは置いといて、おぼろんと潮ちゃんカモン!!」
「あ、うん。」
「え?あ、うん。」
「ん?朧と潮は頭を撫でた方が良いのか?」
「うーん?褒められるのは素直に嬉しいと思います。」
「そ、そうだね。」
「そうか。二人共良く頑張ってくれた。」
「ありがとうございます。次も頑張ります。」
「う、潮もが、頑張ります。」
そう言って二人を撫でると朧は少し満足そうに笑い、潮は最初少し怯えた雰囲気をしていたが、すぐに安心した表情になった。ふむ、この二人は問題なさそうだな。となると事前に許可を得たのが良かったのか?いきなりだと大淀や漣のように驚くのだろうか?
「こんな感じで良いのだろうか?」
「ええ、素晴らしい撫で方ですぞ。さあ、この調子で他の艦娘達も撫でまくって経験値を稼ぎましょう♪ご主人様のコミュ力はまだまだ低いですから、どんどん実践を重ねるのです!!次はぼのたん・・・はまだ難易度高そうですなぁ・・・あ!!あそこで羨ましそうに見てる金剛さんにしましょう♪」
「What!?Ah・・・ササナミー?ワタシ達は提督と少しお話したかったから待ってただけヨ?」
ふむ、金剛達の話か。金剛と霧島が中破しているにも関わらず、この場に残って話したいことがあるのか。
「おっとこれは失礼しました。ささっご主人様、金剛さん達のお話を聞いてあげて下さいな。漣達は入渠してきますのでこれで。」
「あ・・・」
「ん?曙、どうかしたか?」
「いや・・・なんでもないわ・・・」
「あー、ご主人様?ぼのたんにも一言頂けますかな?あと第七駆逐隊でぼのたんだけ撫でられて無いのはバランスが悪いのでそちらのオプション付きでおなしゃす。」
そんなものなのか?曙は必要無いと言っていたのだが大丈夫なのか?とりあえず頭を撫でる為に一歩近付いてみたが逃げる気配は無い。
「曙も良く頑張ってくれた。明日からも忙しくなるだろうから、秘書艦補佐としてしっかり働いて貰う。だから休める時に休んでおけ。」
「うん、分かったわ。おやすみなさい。」
そう言い残して曙は小走りで去っていき、他の第七駆逐隊も曙を追い掛けていく。漣の言う通りにしたが、これで良かったのか?まあ、少なくとも曙は怒ってはいないようだったから良しとするか。
「待たせたな。それで話とはなんだ?」
「Ah・・・ワタシと霧島は見てのとおり中破しちゃったヨ・・・sorry」
「ん?何故謝る?金剛達は作戦通りに動いてくれたし、あれだけの敵を相手に無傷で終われるわけない。むしろ想定していたよりも損害が少ない大戦果だぞ?」
「本当デスか?ワタシ達はちゃんと提督の期待に応える事が出来てマスか?ワタシ達提督に認めて欲しくていっぱい頑張ってきたヨ。」
「ああ、さっきも言ったが素晴らしい戦果だ。この調子で戦果を上げて、そして生きて帰って来い。」
そう伝えると金剛は目を潤ませながらこっちをずっとみつめてくる。何も言わないので良く分からずに姉妹達の方に視線を向けると、比叡は金剛に熱い視線を向けていて、榛名はこちらの視線に気が付いて優しく微笑む。そして霧島もこちらの視線に気が付いて少し目を合わせていたが、その視線を金剛の頭と行き来させる。ああ、これは金剛を撫でてやれという事か。さっき漣も金剛が羨ましそうにしていたと言っていたな。とりあえず第七駆逐隊にしたように近づいてからそっと頭を撫でる。
「金剛、良く頑張ってくれた。」
「うっ・・・うっ・・・提督と仲直り出来たデース。提督に認めて貰う事が出来たデース。」
「やりましたね金剛お姉様!!」
「榛名は金剛お姉様なら大丈夫だと信じていました。」
「これにて作戦完了ですね。データの想定より良い結果になりましたね。」
ふむ、夜戦の出撃前にきちんと話をしたつもりだったのだが、想像以上に金剛は気に病んでいたようだ。人の心というのは難しいものだな。
「うっ・・・うっ・・・うっ・・・テイトクー!!」
「おわっ!?」
いきなり金剛が抱き着いて!?力強!?倒れ!?
「がっ!?」
「テイトクー!!テイトクー!!テイトクー!!」
「こ、金剛お姉様!?お、落ち着いて下さい!?」
「っ!?て、提督!?提督!!」
「え、衛生兵!!衛生兵!!」
金剛の力強い抱き締めと、バランスを崩して後ろ向きに倒れた衝撃が・・・薄れいく意識の中で何故こんな事にと問う・・・艦娘は人間に危害を加えられないはずなのに・・・まさか・・・攻撃の意志が・・・まったくなかったから・・・なのか・・・・・・
駆逐艦の抱き付きは問題なくても、金剛の抱き付きには耐えられなかったよ・・・排水量が文字通り桁違いだからね・・・