疑心暗鬼提督のブラック鎮守府再建   作:ライadgj1248

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 最強寒波が襲い来るなか皆様ご無事でしょうか?作者の住んでいるところは滅多に雪なんて降らないし、降っても積もる事なんてそうそうないのに・・・積もってしまいました。雪国の皆さんからすれば鼻で笑うような積雪ですが、雪に慣れて無い地域の人間からすれば恐ろしいものなのです・・・
 皆様が無事にこの寒波を生き延びられる事をお祈りしております。


215話(9日目朝)

 ぼんやりと意識が覚醒し始めると、すぐ近くに人が居る気配がする。近くに一人と少し離れたところにもう一人・・・ここまで無防備な姿を晒しても襲って来ない相手のようだが、状況が分からないので相手に気付かれないように薄っすらと目を開けて周囲を探る。ここは自分の私室で近くに居るのは・・・

 

「・・・長門か。」

 

「ん?目が覚めたか。良かった。具合はどうだ?」

 

「・・・問題無さそうだ。それにしてもいつの間にか寝ていたようだな・・・それで、あれはなんだ?」

 

 自分が指差した先には部屋の入り口の横で正座している金剛が居た。しかも首から『ワタシは提督を危険な目にあわせました』と書かれた板を下げている。

 

「昨日の事はどこまで覚えている?」

 

「えっと・・・川内達を出迎えて第七駆逐隊と話をして最後に金剛姉妹と・・・ああ、なるほど。」

 

 そう言えば金剛に抱きつかれてそのまま後ろに倒れてしまい、そこからの記憶が無い。つまりそこで気を失って眠っていたと言うことか。

 

「Sorry テイトク・・・提督に認めて貰って感極まって抱き着いてしまったヨ・・・まさかあんな事になるなんて思わなかったデース・・・」

 

「はぁ・・・以後気をつけろ。それでなんでそんな格好で正座している?」

 

「あー、提督が気を失ったあとの事を説明しよう。提督が気絶した事で大騒ぎになってな。事態の収集の為に私が陸奥に呼ばれたのだ。とりあえず提督に外傷はないようだしそのうち起きるだろうと私室のベッドに寝かせ、大泣きする金剛を入渠施設に放り込んだ。金剛が損傷したままなのは提督にとって都合が悪いと判断したがどうだろう?」

 

 いささか対応が雑ではあるが、対応に問題があるかと問われると微妙だな。とりあえず痛みは無いから、後頭部を強く打ったわけでは無さそうだし、今は良しとしておくか。

 

「その判断で問題ない。それで?」

 

「私が護衛も兼ねて秘書艦代理として提督が目覚めるまで近くにいる事になった。大淀と陸奥から引き継ぎはしているから安心すると良い。それと入渠を終えた金剛がまた提督に泣き付こうとしたからとりあえず正座させておいた。あの看板については私は知らん。」

 

「なるほど。」

 

「Ah・・・ワタシはテイトクに怪我させてしまいましたネ・・・だから何か罰を・・・」

 

 確かに提督である自分に怪我をさせた以上、なにかしら罰を与えなくては示しがつかないか。一応ずっと正座して待っていたようだが、それはあくまでも長門と金剛が勝手にした事だしな。

 

「とりあえず金剛は今日一日営倉に入っていろ。」

 

「Why!?そんな軽い罰じゃダメだヨ!?」

 

「悪いがこれ以上金剛に構ってる時間は無い。それよりも長門、会見の件はどうなっている?それと間宮に頼んでなにか手軽に食べれる物を執務室に用意してくれ。」

 

「・・・ああ分かった。会見は9時からだから8時半までに憲兵隊が用意してくれる車に乗れば良い。それとこれは陸奥と大淀から提督に渡してくれと頼まれたものだ。」

 

 そう言って渡されたのは今日の会見に関する資料だ。時間は長門が言っていた通り9時から。場所は先日と同じ会場で、集まる記者の数は・・・先日よりも多そうだな。というか海外艦を一目見ようと有力者という名の野次馬もかなり来るようだ。そして陸奥に頼んでおいた海外艦達の挨拶原稿も無難で問題ない。

 

「ふむ、これなら一安心だな。あの二人は良い仕事をしてくれる。」

 

「ふっ、後で直接言ってやれ。その方が二人とも喜ぶだろう。それともう一件、5時くらいに呉鎮守府傘下の艦娘達が関門海峡通過の許可を求めてきた。久藤提督との間で事前に話はついていると大淀に確認したので、そのまま通行させている。呉鎮守府傘下代表が提督に直接挨拶したいと言っていたが、提督がまだ起きていないと伝えたらまた伺うと言っていた。」

 

「そうか。久藤提督がさっそく動き出したか。とりあえず関門海峡の通行に関しては自由に通して構わない。だがそれ以上の事を言い出したら必ず私に確認してくれ。それと通過した艦隊の編成は分かるか?」

 

「6艦隊36人だな。おそらく索敵メインの艦隊が4 つに主力艦隊が2つ。しかもそれが第一陣と言っていたからまだ増えるぞ。」

 

「久藤提督もずいぶんと力を入れているようだな。では準備をしてから執務室に行くから先に行ってくれ。」

 

「ああ・・・金剛、行くぞ。」

 

「・・・・・・OK ナガト。」

 

 さて、久藤提督が大きく動いたという事は、おそらく鶴野提督も対抗して大きく動くはずだ。海外艦の争奪戦で負けたくは無いだろうからな。横須賀傘下の奴らも動くし、島津提督の態度から考えて佐世保も動くはずだ。こうなると北九州鎮守府から益田鎮守府あたりまでの海域で多数の艦娘が索敵をする事になるだろう。これでしばらくは深海棲艦の心配をしなくて済みそうだ。

 

―――――――――――――――――――――

 

 執務室に入ると長門と大淀が話をしていた。昨夜も遅くまで執務をしていて、さらに自分が起きてくるよりも早く執務室に来ているか・・・

 

「提督、おはようございます。」

 

「ああ、おはよう。大淀、ちゃんと寝たのか?」

 

「数時間ですが寝ていますので問題ありません。もし気になるのであれば昼前には曙さんも起きてくるはずですので、曙さんに引き継ぎをしてから少し休ませて頂きます。」

 

 昼前には自分も会見を終えて鎮守府へと戻っているはずだし、それまでは大淀に任せるしか無いか。

 

「・・・分かった。それまでは頼む。あれから何か連絡はあったか?」

 

「いえ・・・驚くほど静かです。呉鎮守府傘下の艦娘達が通行許可と提督への挨拶を求めてきただけです。」

 

「他は何かあるか?」

 

「昨夜の戦闘に関する報告書が出来ていますので、ご確認下さい。」

 

「ん?川内達には今日の昼までに提出すれば良いと伝えたはずだが?もう作って来たのか?」

 

「その・・・気付いた時には私の机の上にあって、艦娘は誰も知らなかったのでおそらく小森さんかと。」

 

「なるほどな。」

 

 そう言えば昨日の夕食のあたりから小森を見ていない気がする。どうにも余裕が無い時は小森の事を忘れてしまいがちだ・・・だからこれも小森なりに存在感を示す為のアピールなのか?

 

「・・・・・・提督、北条さんから通信です。」

 

「北条からだと?この忙しい時に面倒な・・・とりあえず代わろう・・・・・・葛原だ。」

 

「おーほっほっほっ!!聞きましたわよ葛原!!また新たに海外艦を二人も獲得したそうですわね?流石は葛原ですわ!!これで私の派閥の名声も高まると言うものですわ!!おーほっほっほっ!!」

 

「はぁ・・・それでなんの用だ?」

 

「まずは頼まれていた件の報告ですわ!!」

 

 ・・・頼まれていた件?北条に何か頼んでいたか?

 

「・・・・・・すまない。心当たりが無いのだがなんの事だ?」

 

「あら?昨夜遅くに珍しく小森さんから連絡があって、協力して欲しいと言われましたわよ?てっきり葛原からの依頼かと思っていましたが?」

 

「いや、小森の個人的な依頼だろう。それで小森から何を頼まれた?というか私からの依頼ではないのに私が聞いても良いのか?」

 

「ええ、これは葛原が欲しがる情報ですし、隠すような話でもありませんわ。本郷。」

 

「葛原様、失礼致します。小森様の依頼で各地の鎮守府の動向を探っておりました。あくまでも鎮守府の外から鎮守府の出入りを監視しただけですが、それなりの情報を集めております。」

 

 各地の鎮守府の動向だと!?確かにおおよその想像は出来るが、確実な情報が得られるならばそれに越した事は無い。昨夜小森が北条に無茶振りして、北条が執事の本郷さんに丸投げしたのだろう。本郷さんとその部下には同情はするがせっかく集めてくれた情報だ。無駄にするほうが失礼だ。

 

「それはとても興味があります。」

 

「後ほど詳しい資料は送りますのでざっくりとした説明だけ。まず呉鎮守府傘下の鎮守府ですが、小森様から連絡を受けて人員を派遣した時には既に動き始めていたようです。各地の鎮守府から艦隊が出撃したり輸送船が出港するのを確認していますし、柳井鎮守府で出入りする姿も確認出来ています。既に関門海峡を通過している艦隊もおりますので、葛原様もご存知かと?」

 

「ええ、それは確認しております。」

 

「次に舞鶴鎮守府傘下の鎮守府も慌ただしく動いております。こちらは益田鎮守府を拠点として動くようなのですが、各地から出撃した艦娘の数と益田鎮守府に到着した艦娘の数に大きな差があります。平時とは違い全ての鎮守府が一斉に動いておりますので、何か別の意図があるものと考えられます。」

 

 ふむ・・・益田鎮守府に集まる者達は海外艦狙いの海域調査で間違い無いだろう。ならば残った艦娘達は通常の海域の警備ってところか?いや、もしかしたら広範囲を捜索するつもりか?日本海側を支配している鶴野提督ならばそれも可能だ。

 

「なるほど・・・」

 

「次は横須賀傘下の鎮守府ですが、つい先程動き始めた鎮守府が多いです。輸送船も多数動いているのも確認しております。こちらは長門鎮守府を拠点に動くと聞いておりますが、秋田鎮守府に動きがないのでおそらくそこで一度合流して長門鎮守府に向うのかと。それと横須賀鎮守府からは大規模な艦隊が出撃したのも確認しておりますので、横須賀鎮守府も本気かと。」

 

 ふむ、横須賀鎮守府傘下の奴らは呉や舞鶴に比べて一歩出遅れたか。呉や舞鶴がトップの権限で強引に動かしたのに対して、横須賀傘下は有志が集まるから仕方なく横須賀鎮守府が監督する事になっている。トップの熱量の差が如実に現れたか。それと横須賀鎮守府から出撃した大規模な艦隊は、おそらく叢雲が言っていた別海域の調査というやつだろうな。

 

「分かりました。それで佐世保傘下はどうでしょう?」

 

「佐世保傘下の鎮守府ですが、こちらはほとんど動きがありません。もちろん出撃する艦娘はおりますが、平時と比べてあまり差がないかと。もちろんこの後も監視は続けますのでご安心を。」

 

 佐世保傘下の動きが鈍いか。島津提督の態度から考えると、熊井提督はともかく傘下の提督達は海外艦の獲得に強い関心があるはずだ。それに軍隊気質の佐世保ならば、上が命令を出せば迅速に動くのが当然で・・・逆に上からの命令で動け無いのか!?熊井提督の性格ならば今回の件に関与しないのも頷ける。そして北九州鎮守府との演習であれば特に問題なくても、海外艦を探すために大規模な艦隊を組んで捜索しようとすれば、少なからず通常の艦隊運用に支障が出る。だから熊井提督に一蹴されて参加出来ない可能性は高いと思う。

 

「ありがとうございました。お陰様で大まかな動きが把握出来たので助かりました。ですがこれ以上は皆様の負担を増やすだけですし、欲しい情報はもう手に入りましたので。ご協力ありがとうございました。」

 

「そうですか。お気遣い感謝致します。またお役に立てる事がございましたらなんなりとお申し付け下さい。」

 

「ええ、また頼りにさせて頂く事もあるかもしれませんので、その時はどうぞ宜しくお願い致します。」

 

 やはり北条工業の力は絶大だ。組織として大きいという事は自由に使える人員の確保が容易という事だ。北条に力を借りれば自分の手持ちでは出来ない事も簡単に行えてしまう。だからこそ頼り過ぎるのはマズイ。今回の件も北条への大きな借りになってしまうし、こんな事を続ければ北条の派閥として取り込まれるのも時間の問題だ。北条自身は悪い奴ではないが、北条工業内部の派閥争いに巻き込まれるのは避けたいところだ。

 

「では私はこれで失礼致します。お嬢様。」

 

「ええ本郷、ご苦労様ですわ。どうですか葛原?私の本郷は優秀でしょう?おーほっほっほっ!!」

 

「ああ、本当に優秀だな。それでここまで大きな情報を貰ったのだ、見返りに何を求める?」

 

「見返りですの?特に考えていませんわね?葛原も織田も小森さんも私の派閥ですから、派閥の主として支援するのは当然ですもの!!この調子で実力と名声を高める為に頑張りなさい!!おーほっほっほっ!!」

 

「いや、私は派閥に入ったつもりは無いと何度言えばわかるのだ・・・それでなにか無いのか?派閥に入れ以外でだが。」

 

「そうですわね?葛原が借りを作るのを嫌うのは知っていますが、そもそも今回は小森さんからの依頼ですわよね?ならば私に借りを作ったのは小森さんになりますから、葛原は心配しなくて良いでしょう?だから葛原が恩を感じるならば小森さんに対してですわね。」

 

 確かに今回は何故か小森が独断で動いた話だから、北条の主張も理解出来る。このまま北条と言いあっても埒が明かないか・・・とりあえず個人的に借りを作ったと思っておくとして、後で小森から何故こんな事をしたのか聞き出さないといけないな。

 

「・・・・・・分かった。ひとまずおいておこう。私もあまり時間に余裕が無いのでな。とりあえず今回は助かった。」

 

「また何かあれば遠慮なく言いなさい!!私は私の派閥を強化するためであれば、協力を惜しみませんわ!!おーほっほっほっ!!」

 

「・・・ああ、分かった。ではこれで失礼する。」

 

 ふう・・・・・・貴重な情報は手に入ったが・・・小森の奴は本当に何を考えているんだ?小森が苦手にしている北条を頼ってまで動いたのはなぜだ?




 小森ちゃんのまさかの行動で葛原提督も困惑中。でも得られた情報は大きいので・・・
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