疑心暗鬼提督のブラック鎮守府再建   作:ライadgj1248

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 ドロドロしてくると筆がのる。深夜になるとアイディアが浮かんでくる。作者の悪い癖ですね。


217話(会見前)

 車内で会見での挨拶の練習をさせたが、特に指摘するところもなかった。あとは記者達から投げかけられる質問をこっちで適当に流してしまえば問題無いだろう。

 

「葛原提督、もうすぐ会場に着きます。」

 

 運転手から声をかけられたがもうそんな時間か。

 

「ええ、分かりました。ではお前達も心の準備をしておけ。車から降りたらすぐに大量の記者達に囲まれて、写真をバシバシ撮られながら質問が浴びせられるだろう。だがそこで一切答える必要は無い。無視して堂々としていろ。常に見られている事を意識して、あまり無様な姿を晒すなよ。」

 

「ふーん?まあいいわ。ドイツ軍人がどういうものかを日本人に見せてあげるわ。オイゲン!!気を引き締めなさい!!」

 

「Ja!!私もビスマルク姉さまの隣に立つのに恥じない姿を見せましょう!!」

 

 ほう?ビスマルクとプリンツオイゲンのまとう空気が変わったな。先程までは少し楽しそうな雰囲気だったのに、まるで戦場に向うかのような雰囲気だ。プライドが高いぶんこういう見栄を張るべき場所では気合が入るのかもしれないな。

 

「Ah・・・まっ、礼儀作法は自信無いけど、軍人らしく振る舞えってくらいなら出来るよ。」

 

「軍人ならその程度で大丈夫だ。不知火も大丈夫か?」

 

「ええ、問題ありません。」

 

 アトランタはあまり緊張していないようだし、不知火に至っては表情こそ変わらないものの、ビスマルク達よりも真剣な目をしている。これなら問題無さそうだな。そしてちょうど車も停車して周囲を憲兵隊が囲んで護衛の準備も整ったようだ。

 

「では行こうか。私、不知火、ビスマルク、プリンツオイゲン、アトランタの順でついて来い。」

 

 そう言って車を降りると途端にフラッシュの嵐が巻き起こる。眩しくて鬱陶しいが、とりあえず無視して憲兵隊が確保してくれる道を進む。ざっと周囲に目を配ってみるが、かなりの数の人間がこの付近一帯に集まっているようだ。この数は記者達と有力者どころか、もっと関係無い野次馬までいるはずだ。どれだけ海外艦の情報が流れているんだ?まあ、野次馬達は会場には入れないのだ。気にする必要は無い。

 

「葛原提督!!海外艦を手に入れたお気持ちをお答え下さい!!」

「どうやって海外艦を二人も獲得したのですか!?」

「海外艦の今後についてどのようにお考えですか!?」

「周囲の鎮守府や四大鎮守府との関係性をどのようにお考えですか!?」

 

 鬱陶しい記者達を憲兵隊が掻き分けながら進むと、ぽっかりとスペースの空いた場所に出た。・・・・・・記者会見の事だけを考えていたのですっかり忘れていた。面倒事というものは一つ一つ順番に起こるのではなく、いくつも同時にやってくるという事を・・・・・・

 

「貴様ぁ!?よくもこんな場所にのこのこと顔を出せたものだなぁ!?」

 

 記者達を掻き分けた先には顔を真っ赤にした島津提督と顔を真っ青にした古鷹さんが立っていた。島津提督と直接会うのは初めてだが、写真は見た事あるしあの怒声は間違いない。向こうも護衛の憲兵隊がスペースを確保していたようだが、こちらの憲兵隊と協力して自分と島津提督が会話するスペースが作られる。はぁ・・・どうしてこうもトラブルの方から寄ってくるのやら・・・

 

「はぁ・・・・・・島津提督、なんのご用ですか?ご覧の通り今から記者会見を開きますので、いきなり会いに来られても時間を作る余裕は無いのですが?」

 

 ずんずんと近付いて来て胸ぐらを掴まれる。こいつ公衆の面前で立場ある人間が暴力行為だなんて正気か?とりあえずこの場で抵抗するのはマズイ。ここで提督同士の殴り合いなど演じれば、島津提督に巻き込まれて自分も処罰を受ける事になる。そうなれば大本営や虎視眈々と北九州鎮守府の秘密を探ろうとする奴らに大きな隙を見せる事になる。幸い証人となる奴らはそこらじゅうでバシバシと撮影しているので、いくらでも言い逃れは出来るはずだ。

 

「貴様という奴は!!いい加減に自分の立場を理解したらどうだ!?」

 

「そのお言葉をそっくり返させて頂きます。ご自身の立場とこの状況をしっかりと考えて下さい。これが提督として正しい振る舞いですか?」

 

「貴様ぁぁああ!?その腐った性根を叩きなおしてくれる!!」

 

「ぐっ!?」

 

「司令!?」

 

 頭に血が上った島津提督から顔の右側に重い一発を貰ってしまった。老いているとはいえ鍛えている軍人からの一発は流石にキツイな・・・駆け寄って来た不知火に助け起こされながら立ち上がるが少し足元がふらつく。島津提督が思いっきり殴った事でようやく憲兵隊も割って入ってきたか・・・というか島津提督が胸ぐらを掴んだ時点で割って入って欲しかった。

 

「ちょっと!!私のAdmiralになにするのよ!!」

 

「ビスマルク、下がっていろ!!他の者もだ!!島津提督、この一発は重いですよ?」

 

「あたり前だ!!貴様のようなひょっことは覚悟も鍛え方も違う!!」

 

 いや、別に痛かったぞと言いたいわけではない・・・いや、物凄く痛いけれども・・・それと口の内側を切ったようで血の味がする・・・歯が折れて無さそうなのは幸いだな。

 

「はぁ・・・そういう意味では無いのですがね・・・とりあえず会見の邪魔です。道を開けて下さい。」

 

「なんだと貴様ぁ!?貴様のようなクズの性根は一発では治らんか!?クソッ!?離せ!!」

 

 なおも暴れる島津提督を憲兵隊が抑える姿を周囲の記者達が大喜びで撮影している。これだけの証拠があれば言い逃れは出来ないだろうし、後は憲兵隊に任せてさっさと会見を・・・

 

「なんの騒ぎだ?」

 

 自分の後方から重く響く声が聞こえる。このざわつく群衆の中でもはっきりと聞こえるし、それまで騒いでいた群衆が静まり返るくらいの圧を感じさせる。割れるように道を開ける群衆の先には・・・

 

「熊井提督・・・ですか。」

 

「ああ、これはなんの騒ぎだ?」

 

 巌の如き体格に軍人らしく鋭い目つき。他者を威圧する圧倒的な存在感。写真や通信越しではそこまで感じられなかったが、これこそが生粋の軍人なのだと言わんばかりだ。深海棲艦出現後にとりあえず軍人に仕立て上げた奴らとは格が違うな。

 

「お初にお目にかかります。北九州鎮守府所属の葛原です。ご存知かもしれませんが、本日海外艦の件で会見を開こうと思って来たのですが、そちらの島津提督に妨害されて困っているところです。」

 

「妨害とはどういう言い草だ!?貴様が「島津。」

 

 また怒鳴り散らそうとした島津提督をたった一言で黙らせる。

 

「島津、説明しろ。」

 

「先日からこのひよっこがふざけた態度をとるので性根を叩きなおしてやろうと「そんな仕事をお前に任せた覚えは無い。下っていろ。」

 

 島津提督はなお言い募ろうとしたが、熊井提督に睨まれて引き下がった。流石の島津提督でも派閥のトップには噛み付けないか。

 

「・・・怪我をしているな。部下が迷惑をかけた。すまない。」

 

「いえ、島津提督を止めて下さって助かりました。ですが熊井提督はどうしてここへ?」

 

「会見を見に来た。構わんな?」

 

「ええ、それは構いませんが・・・」

 

「会見後に時間が欲しい。迷惑をかけた部下にけじめをつけさせねばならん。話し合いの場が欲しい。」

 

「ええ、分かりました。この会見の後に控室でお話しましょう。」

 

「分かった。憲兵隊の方もこの件は私が預からせて貰いたいが構わんな?」

 

「はい、熊井提督であれば信頼出来ますので。」

 

「助かる。」

 

 北九州鎮守府から護衛としてついて来ていた金子さんに確認をとって、熊井提督は島津提督を連れて去って行く。

 

「では我々も会見の準備をしましょう。」

 

 はぁ・・・・・・本当に想定外の事態だ。島津提督の殴り込みはまあわかる。ここから島津提督が泊まっていた博多鎮守府まで車で2時間かからない距離だ。自分が確実に姿を現す会見の場に来るのはある意味当然とも言える。しかし熊井提督がわざわざ足を運んで来たのは何故だ?普段から政治の話には一切興味を示さない熊井提督が何故?わざわざ会見を見に来たと言う事は、熊井提督も海外艦に興味があると?それと島津提督は熊井提督が会見に来る事は知っていたのか?知っていたらあんな問題を起こすような真似はしないと思うが、熊井提督の思惑でわざと問題を起こした可能性も否定は出来ない。さてどうしたものか。

 

―――――――――――――――――――――

 

「司令、まずは治療をしましょう。」

 

「ああ、頼む。」

 

 控室に入ると真っ先に不知火にそう言われた。とりあえずうがいをすると吐き出した水に血が混ざっているのがわかる。やっぱり口の中を切っていたか。そして施設の職員が用意してくれていたであろう氷や救急箱やらを不知火が持って来る。

 

「司令、ここに座って口を開けて下さい。」

 

「ああ。」

 

「っ!?やはり出血が・・・でも傷はそこまで大きく無さそうですね。止血をしますのでそのままじっとしていて下さい。アトランタさんは頬の腫れを抑える為に氷を当てて下さい。いえ、氷の袋を直接ではなくてタオルで包んで、そう、そのままお願いします。」

 

 不知火はピンセットでガーゼを掴んで頬の内側の傷に押し付けて圧迫する。外側はアトランタによって氷の袋が押し付けてある。傷も小さいようなのですぐに止血も終わるだろう。

 

「司令は普通に喋れていたので骨折はしていなさそうですが・・・少しずつ触っていきますので、痛いところがあったら右手を上げて下さい。」

 

 不知火が頬骨や顎骨に沿って触っていくが、特に折れてる場所は無さそうだ。それにしても治療の手際が良いな。これも軍艦時代の記憶のおかげか?

 

「・・・・・・治療が終わりました。」

 

「ああ、助かる。」

 

「・・・あまり無茶はしないで下さい。」

 

「・・・気をつけよう。」

 

 表情からは読み取れないが、不知火に心配をかけてしまったようだな。今回はわざと島津提督に手を出させたところもあるので、言い訳もないな。

 

「ねぇAdmiral、なんであいつを殴り返さないのよ?いきなり殴られたのに殴り返さなかったらなめられるじゃない?無様な姿を見せるなってあなたが言ったのでしょう?」

 

「ビスマルクさん。司令にも立場やお考えがあります。考えなしに発言するのは控えて下さい。」

 

「なっ!?この私が考えなしですって!?」

 

「ええ、そうです。それとここは軍隊で司令は私達の上官です。上官を侮辱するのがドイツ軍人の礼儀作法なのですか?」

 

「へぇ?私に喧嘩を売るつもり?故国を侮辱されたら私も黙っていられないわよ?」

 

「ビスマルク姉さま、お、落ち着いて下さい!!」

 

 はぁ・・・今日も次々と面倒事が起こるな・・・島津提督達の問題の次は艦娘同士の喧嘩か・・・天龍に言われたみたいに、私は本当に呪われているのではないだろうか?

 

「不知火もそのへんにしておけ。」

 

「・・・すみません司令。出過ぎた真似をしました。」

 

「それとビスマルクも先程の発言は考えなしと言われても仕方ないぞ。あんな衆人環視の中で殴り合いなんて出来るか。それこそ後先考えない無様な姿だ。そんな直情的な人間は指揮官に向いて無い。」

 

「それは・・・そうかもしれないけど・・・」

 

「この話はここまでだ。さっさと会見を済ませる。打ち合わせ通りにするからついて来い。」

 

「はっ!!」「「Ja!!」」「OK」

 

 ・・・・・・バラバラな返事がこの四人のまとまりのなさを象徴しているようだ。海外艦を自分の艦隊として運用するのは、自分が想定しているよりもかなり難しいのかもしれないな・・・

 

 

 

 

 

「戦艦に真正面から喧嘩売るなんて・・・やっぱり日本の駆逐艦は恐ろしい奴らだね・・・」




 トラブルの連撃が葛原提督の胃に襲いかかる!!そしてさらっと巻き込まれてる古鷹さんの胃は無事なのだろうか!?胃痛と腹痛が交差する時、物語は始まる!!
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