疑心暗鬼提督のブラック鎮守府再建   作:ライadgj1248

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 さあ、皆さんお待ちかねのドロドロ会見パートです。


218話(海外艦お披露目会見)

 憲兵隊の先導で会見の場に入ると、当然の如く猛烈なフラッシュに歓迎される。だが流石に主催者の自分が喋る前に質問する馬鹿はいないようだな。自分が中央のマイクの前に立ち、不知火が左後方で待機、右手側一歩引いたところから海外艦達が並ぶ。事前の打ち合わせ通りに出来ているようだし始めるか。

 

「北九州鎮守府所属の葛原です。本日は海外艦の情報公開の会見にお集まり頂きありがとうございます。今回は先日北九州鎮守府にて保護した3名の海外艦について簡単に自己紹介をしてもらいます。彼女達海外艦の艦娘はその名の通り外国生まれ軍艦の魂を持つ者です。当然の事ながら我々とは違う文化や考え方の国から来ていますので、考え方の違いに驚かれる方や偏見を持ってしまう方も多いかも知れません。ですがこの会見をきっかけに皆様に海外艦についての理解や見識を、もっと言えば艦娘や鎮守府についても理解を深めて頂ければ幸いと思っております。今日はどうぞ宜しくお願い致します。」

 

 そう言って一礼すると会場から大きな拍手が聞こえてくる。押し寄せている記者や有力者達からしたら、海外艦の情報が欲しいところに会見を開いたのだ。邪魔をする馬鹿は居ないか。少なくとも今はな・・・

 

「それではさっそく海外艦の自己紹介に移りましょう。ビスマルク。」

 

 ビスマルクに声をかけてマイクの位置を明け渡すと、堂々とした態度でビスマルクがマイク前に立つ。当然の事ながらカメラのシャッター音が響き渡るが、ビスマルクは一切動じない。

 

「Guten Tag 私はビスマルク型戦艦のネームシップ、ビスマルク。ドイツの誇るビスマルク級超弩級戦艦のネームシップ、それが私よ。ライン演習作戦でイギリスの巡洋戦艦フッドを沈め、最新鋭の戦艦プリンス・オブ・ウェールズを追い払う戦果を上げたわ。この日本でもその実力を見せつけてあげるから期待してなさい!!」

 

 堂々と言い切るビスマルクに会場はどよめく。日本人にはあまり見られない強気な自己紹介に慣れていないからか?なんにせよ滑り出しは順調だな。ビスマルクが挨拶を終えてプリンツオイゲンと交代する時になって、ようやく大きな拍手が鳴り響く。

 

「Guten Morgen.、ドイツ生まれの重巡、プリンツ・オイゲン。アドミラル・ヒッパー級3番艦です。ビスマルク姉さまとライン演習作戦に参加し、その後もツェルベルス作戦、バルト海での対地支援、ハンニバル作戦と様々な戦いをくぐり抜けてきました。ここ日本でもビスマルク姉さまとともに戦い抜く事を誓います!!」

 

 ほう?プリンツオイゲンと話した時はなんというかもう少し優しそうな雰囲気だったが、こういう凛々しい姿も見せられるのだな。会場もビスマルクで慣れたからかすぐに大きな拍手が鳴り響く。さて、最後はアトランタか。

 

「How is everything?あたしは、Atlanta級軽巡洋艦、その一番艦のAtlanta。アメリカのBrooklyn生まれ。防空巡洋艦として造られたから私がいるところでは、敵空母に好き勝手させないよ。大戦時は日本とは敵国だったけれど、今はこの日本で共に深海棲艦と戦う仲間だね。よろしく。」

 

 一番不安だったアトランタも問題なく、会場に拍手が響き渡る。一応大戦時の敵国アメリカの艦娘だが、横須賀のタシュケントも佐世保のガングートも旧ソ連、つまり敵国側だった艦娘だ。その二人が活躍している下地があったからこそ、ここまですんなりと受け入れられたのかもしれないな。さて、あとは自分の番だな。

 

「えー、これで海外艦の挨拶は以上となります。今後の彼女達の活躍にご期待下さい。それでは私が皆様からの質問にいくつかお答えしようと思いますので、質問がある方は挙手をお願いします。」

 

 そう声をかけると前の方に集まっている記者達が一斉に手を上げる。逆に後ろの方に控えている有力者達は静観の構えか。それにしてもきちんと挙手して質問をしようだなんて、記者達は随分とお行儀良いじゃないか。こちらが情報を出す姿勢でいるから、下手に刺激して会見を中断する事を恐れているのか?

 

「えー、たくさん挙手頂いていますね。では前列右端の方から順番に一つずつお答えしましょう。」

 

「では、葛原提督は今回希少な海外艦を二人も獲得しましたが、その経緯についてお伺いしても宜しいでしょうか?」

 

「今回の戦闘は復興中の長門鎮守府を防衛するために、周辺海域の哨戒を行った事から始まりました。横須賀鎮守府が掃討した資材溜まりの調査も含めて哨戒していたところ、敵艦隊と遭遇しこれを撃滅。敵艦隊に輸送艦隊が居ましたので、輸送艦隊を送ってきた大元を探して撃破する為に、益田鎮守府と協力して索敵を行いました。その後おおよその位置を特定してから夜戦部隊を送り込み、北九州鎮守府の独力での撃破を達成し、ドロップ艦として現れた二人を保護しました。次の方どうぞ。」

 

「先程のお話では益田鎮守府と協力したとの事ですが、成果であるドロップ艦を北九州鎮守府のみが獲得するのはなぜでしょうか?」

 

「良い質問ですね。確かに益田鎮守府に索敵の協力はして頂きましたが、敵艦隊の撃滅は北九州鎮守府のみで行っております。もちろん事前にドロップ艦が出現した時は北九州鎮守府が貰い受けると、益田鎮守府の狐塚提督と取り決めをしております。軍の通信記録にもきっちりと残してありますので何も問題ありません。次の方どうぞ。」

 

 この事をはっきりと公表するのが今回の重要な目的の一つだ。軍の通信記録に残してあると言えば信憑性も高まる。提督目線で見ると大本営は信用ならないが、世間一般としては信用されているはずだ。というか深海棲艦への対抗組織が大本営率いる海軍しかないので、信用せざるをえないと言ったところか?

 

「では海外艦の今後についてはどうお考えですか?新人の葛原提督の元に海外艦が三人も集まる事を疑問視する声も上がっておりますが?」

 

「彼女らは北九州鎮守府の所属です。今後は北九州鎮守府の一員として、他の艦娘達同様に扱うつもりです。それと海外艦の移籍については一切考えておりません。この事については先日の会見でも少しお話させて頂きましたが、強さの象徴とも言われる海外艦を自分達の力ではなく他所から譲渡してもらう。こんな恥ずかしい話も無いでしょう?ですから身の丈に合わないと思われようとも譲渡するつもりはありません。次の方どうぞ。」

 

 まあ、本当は政治的なゴタゴタや艦娘達の士気に関する問題など色々あるが、とりあえず体外的にはこれで押し通すとしよう。出来れば北九州鎮守府に海外艦の譲渡を要求する鎮守府を非難する空気感を作りたい。

 

「プリンツオイゲンさんに始まり、ビスマルクさんとアトランタさん。この短期間に3名もの海外艦を獲得された葛原提督ですが、希少な海外艦がこの短期間に3名も現れたのは異常な事だと思います。葛原提督はこの事についてどうお考えですか?」

 

「私としても異常さを感じているところです。海外艦がドロップした海域の異常については、各地の鎮守府が調査に協力して下さっているようですので、じきに皆様に報告出来る事があるかもしれません。私が把握しているだけでも呉鎮守府傘下の方々と横須賀鎮守府傘下の方々が調査に向かっています。次の方どうぞ。」

 

 異常があるのはあくまでも海域である。そのスタンスは絶対だ。そうでなくても北九州鎮守府は疑われているのだから、付け入る隙は与えたくない。

 

「葛原提督はこの短期間で多数の深海棲艦と戦い、その全てに勝利しているとお聴きします。この事についてはどうお考えでしょうか?」

 

「・・・ん?質問の意図がよくわかりませんね。私としては普通に哨戒と戦闘をさせているだけですし、深海棲艦の多さについては集積地棲姫の影響とその残党だと考えています。戦勝が続いている件に関しては決して自分の実力だけでなし得た事ではありません。特に横須賀鎮守府の艦隊の助力が無ければ、北九州鎮守府は壊滅していました。これで構いませんか?」

 

「ええ、ありがとうございます。」

 

 なんだ今の質問は?なんというか先程までの記者とは毛色が違うというか・・・よくわからん奴だ。

 

「では次の方どうぞ。」

 

「葛原提督は先程周囲の協力得て深海棲艦に勝利する事が出来たと仰っていましたが、亡くなられた原田提督や先程暴力沙汰に発展していた島津提督との関係を見てしまいますと、他の提督達との協力関係が上手くいっているようには見えません。しかも四大鎮守府の傘下に収まらずに独自で動いていますよね?そのあたりを含めて葛原提督の今後の方針をお聞かせ下さい。」

 

 ほう?海外艦の事よりも私自身の事を聞いてきたか。まあ、あれだけ派手に島津提督は暴れたのだ。そこに触れないわけはないか。

 

「まず私はどこかの派閥の傘下に入るつもりはありません。その上で軍人として協力出来る範囲で協力してきましたし、今後もそうするつもりです。もちろん私はこの北九州鎮守府に派遣された提督ですので、北九州鎮守府とその周辺地域の安全確保が最優先です。他の鎮守府の事は要請と余裕があれば手を出す。これが私の方針です。次の方どうぞ。」

 

「葛原提督は士官学校で優秀な成績を修めていたとお聞きしますし、実際に提督として働き始めて短期間で優秀な成果を出されております。葛原提督をここまで鍛え上げて下さった士官学校の教官の方々になにか一言ありますか?」

 

「・・・・・・は?ああ、失礼しました。生憎ですが私は士官学校の教官達のやり方が気に入らずに反発していましたし、当然教官達からは嫌われていましたのでなにか一言と言われても困りますね・・・ああ、でも一人だけこんな私を認めて下さって根気強く指導して下さった方が居ましたね。その方には感謝しています。そろそろ時間ですし、次の方で最後にしましょうか。」

 

 本当ならば士官学校の教官共はクズばかりで使い物にならないと言ってやりたいが、今はこのくらいで抑えておくべきだろう。ただでさえ島津提督や原田提督のせいで印象が悪いのだ。こんな状態で大本営や士官学校の実態を語ったところで、周囲の人間に対して攻撃的な葛原提督という印象が強まるだけだ。いずれは引きずり降ろしたい連中だが、もっと実力と実績を手に入れて発言権を得なければ相手にされないだろう。

 

「えー、では、葛原提督の今後の動向について、多くの国民が注目しております。ですので今後もこういう場を開いて、葛原提督や艦娘の皆さんや鎮守府についての理解を深めていきたいと考えております。ですからまたこのような会見の場を開いて頂く事は可能でしょうか?」

 

 最後の質問が次もまたこんなチャンスが得られるかどうかかの確認・・・というか要請だな。一蹴するのも問題になるだろうし、かと言ってここで言質を取られるのも面白くない。最後の最後で面倒だな。

 

「あくまでも私の仕事は提督として北九州鎮守府とその周辺地域を守る事です。結局のところその仕事をする上で必要だと感じた事を実行するまでです。今回の件は海外艦についての見識を広める事が北九州鎮守府の利益になると判断しましたので、このような会見を開かせて頂きました。今後についても同様の判断を致します。」

 

 これならば会見をまた開くとも開かないとも断言せずに済む。そして記者達に対して『こちらの足を引っ張るような記事を書けば、今後は会見を開かないかもしれないぞ?』と伝える事が出来る。記者達の様子も少し緊張感を増したように見える。

 

「それではこれにて会見を終わらせて頂きます。本日はお集まり頂きありがとうございました。」

 

 全員で一礼して盛大な拍手に見送られて会見の場を後にする。ふぅ・・・・・・とりあえずなんとかなったようだな。あとは熊井提督との話し合いか・・・こちらはこちらで気が重いが、島津提督から殴られて迷惑をかけられたぶんは吹っ掛けないとな。それに熊井提督の思惑も気になるところだ。




 想定していたよりも穏やかな(当作品比)会見になりました。罵詈雑言の飛び交う会見も良いですが、こういう笑顔でチクチクやり合うのも嫌いじゃないです。
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