軽くパニック状態のアトランタさんをなんとか落ち着かせて、ビスマルクさんがプリンツオイゲンさんを宥めてくれたので、ようやく話が出来る状態にまで落ち着いた。
「ほら、不知火。」
「・・・皆さんを少々脅し過ぎてしまいました。申し訳ございません。」
「うちの妹が暴走して皆さんを脅かしてしまってごめんなさい。」
二人で深々と頭を下げてきちんと謝る。仲直りするにはこれがまず一歩目だ。
「そ、そうね。私は別にちょっと脅かされたくらいじゃ動じないけれど、オイゲンとアトランタは少し怖がってしまったのは事実ね。もちろん私は全然平気だったけれどね!!」
え?ビスマルクさんもけっこう危ない状態だったような・・・いや、ビスマルクさんがそう言ってくれるなら無粋なツッコミはやめておこう。
「え?ですがビスマルクさんも「どわぁ!!ちょっとタイム!!」
無粋な事を真面目な表情で言おうとする妹を慌てて止めて、海外艦の三人から少し離れてからコソコソ話が出来る距離まで不知火に近づく。
「あんたは馬鹿か!!せっかくビスマルクさんが歩み寄ってくれて、たいした事なかった事にしてくれようとしてるのに、なんでその好意を無駄にするような事言うのよ!?」
「・・・え?そういう事だったのですか?」
「分かったらもう余計な事は言わない!!分かった?」
「・・・はい。」
不知火に釘を刺してから海外艦達の元に戻る。ああもう!!今のやり取りの間でビスマルクさんがちょっと涙目でプルプルしてるじゃん!?強がったのが私達にバレたの理解して恥ずかしがってるよ・・・ちょっと不知火を止めるのが遅かったか・・・
「急にお話を中断してごめんなさい。そ、それで続きをですね・・・」
「うっ・・・そ、その・・・確かにオイゲンとアトランタを脅かした罪は重いわ。でもシラァヌイが過去に辛い経験をしてきた事はよく理解したし、何も知らない私達に警告しようとしてくれてたのも理解したわ。だからもう許してあげるわ。オイゲンももう良いわね?」
「流石はビスマルク姉さま、強い心をお持ちです。私もビスマルク姉さまみたいに強くなりたいから、このお話も真正面から受け止めなくちゃですね・・・シラヌゥイさんも辛かったのですよね・・・」
「・・・・・・はい。」
「だったら私は仲間として支えてあげたいです。」
「・・・・・・ありがとう・・・ございます。」
うーん、ドイツ艦の二人は強いなぁ。あたし達の過去って事はけっこうハードな内容だと思うけど・・・
「Ah・・・陽炎だったかな?一つ良いかい?」
「アトランタさん、なんですか?」
「その・・・さ・・・陽炎は不知火の姉で同じ鎮守府の出身なんだよね?」
「はい、そうです。」
「って事はその・・・陽炎も・・・なのかい?」
「あー、まあそうですね・・・ついでに言えばこの北九州鎮守府も似たような感じだったらしいです。今の葛原提督が着任してからはそんな事無いみたいですけど、昔は酷かったそうですね・・・」
艦娘達が金儲けの道具として消費される鎮守府。派閥は違っても裏でやる事なんてそんなに変わらないみたいだからねぇ・・・あえて違いを言うなら、こっちでは駆逐艦は弾除けとして消費されるけど、長門鎮守府では特攻と称して無謀な突撃を強いられたくらいかな?結局特攻したら敵の攻撃はこっちに集まるから、轟沈する確率で言えば大差無さそうだけど・・・
「そっか・・・そっかぁ・・・・・・」
アトランタさんはため息をついてから空を仰ぎ見る。やっぱり着任したばかりでこんな重い話をされても困るよね・・・
「あー、でも今の葛原提督はすっごく良い人ですよ。顔は怖いしすっごく真面目で不知火と大差ないくらいカタブツですけど、きちんと衣食住は保証してくれるし、作戦はきっちりと考えて立案してくれる。それに活躍したらきちんと評価してくれますし、頑張ったらご褒美も貰えます。なんか私達を艦娘として軍人としてきちんと扱ってくれる提督って感じですね。その代わり悪い事をしたらしっかり罰を与えられるみたいですけど。」
「Ah・・・確かに真面目そうな人だったね。いやらしい視線も向けて来ないしさ。記者会見ってやつ?あそこではそういう視線が集まるのを嫌でも感じたからさ。提督がそういう視線を向けて来ないのは正直助かるよ。」
あー、やっぱりアトランタさんはそこ気になるかぁ。すっごく大っきいもんね。後でちょっと揉ませて貰えたりしないかな?
「陽炎?」
「あ、いえ、なんでもないです。聞いた話だとうちの提督は女性への興味・・・というか人への興味自体が薄いんじゃないかって噂ですね。なんか雑談一つするのでも苦労するらしいですし。」
「・・・提督さんはサイボーグかなにかなのかな?」
「あー、あり得ないですけど似たようなものかも?仕事に関する事はスラスラ喋るから、コミュニケーションが出来ないのとはまた違いますし。敵対する人にはすっごく攻撃的で恐ろしい姿を見せるとも聞きますし。」
「Ah・・・確かに島津って人には物凄く冷たい対応だったね。大勢の人の前だから冷静に振る舞ってたみたいだけど、人気が無いところならどうなっていたか・・・」
「・・・そんなに恐ろしかったですか?」
「そうだね・・・人気が無いとこだったら銃を取り出して迷わず撃ってたかも・・・そんな目をしてた・・・ビスマルクとプリンツオイゲンも見たでしょ?」
「え?そうかしら?ただ睨んでただけでしょ?」
「ですよね?殴り合いの喧嘩くらいはしてもおかしくないかもですけど?」
う〜ん?これはどっちだ?アトランタさんが気にし過ぎなだけかな?ドイツ艦の二人が鈍感なだけかな?
「まぁまぁ、司令だって顔は怖いけど人殺しなんてしないですって。」
「・・・ですが陽炎、葛原提督は敵対した人物を輸送船に乗せて、自らの手で深海棲艦の目の前まで連れて行ったとの話を聞きました。帰り道はその人を救命ボートに乗せて、輸送船で引きずり回しながら帰還したとか。司令はやるときは容赦しない方だと思いますが?」
なんで不知火は余計な事を言っちゃうかなぁ!?その噂は私達の間でもドン引きエピソードなのに!!でも確かに護衛がいるとは言え司令が自ら船に乗って深海棲艦のところまで行くとか、狂気の沙汰にしか思えない行動なんだよなぁ・・・
「え?なにそれ?Admiralは狂ってるわよ・・・」
「ビ、ビスマルク姉さまぁ・・・」
「・・・crazy」
「だぁもう!!やっぱりこんな反応になるじゃん!!ちょっと待って下さい!!弁明させて!!なんかその人が私達をまた娼婦扱いしようとして、司令がブチ切れたって話らしいですから!!司令は私達の為に怒ってくれたってところだけは理解してあげて下さい!!」
「そ、そう・・・」
「あ、はい・・・」
「Ah・・・うん・・・」
「不知火ももっと良いエピソードあったでしょ!?」
「良いエピソードですか?前任者の大森提督と共に悪事の限りを尽くしていたこの街の元市長がいて、司令が憲兵隊を引き連れてその元市長を粛清しに行った話とかですか?」
「なんでそういう血生臭さい話に持って行く!?」
「不正を許さない誠実な提督として、素晴らしい行いだと思いますが?その行動のお陰で奴隷扱いされていた艦娘達を助ける事が出来たのですよ?」
「そ、そうなんだけど・・・そうなんだけどね!!」
ほら、海外艦の人達が引いてるじゃん!!司令にだって優しいところはあるんだから、そういうとこをアピールするべきでしょうが!!
「Admiralが過激な人物って事は良く分かったわ。でも相手は散々ルールを破ってきた悪人なのよね?」
「ええ、そこは間違いないです。実際に奴隷扱いされてた娘達からも話は聞きましたし。」
「なら当然の行いね。ええ、当然の行いよね。」
「そ、そうですね。悪い人は許しちゃダメですよね?」
「Ah・・・撃たれても仕方ない奴なら、まあ、それほど騒ぐ事でもない・・・よね?日本人にしては珍しいってだけでさ。」
海外艦の人達の一言に不知火がうんうんと頷く。
「ええ、そうです。悪事を働いた者達が罰せられただけです。司令にはなんの落ち度もありません。もちろん司令を恐れる必要もありません。司令は私達を理不尽に罰する方ではありませんから、私達が悪い事をしなければ罰せられる事はありません。」
それって悪い事したら粛清されるぞって脅しに聞こえるんだけど・・・
「な、なら問題ないわ。私達ドイツ軍人はルールに厳格な事に誇りを持っているもの。ねぇオイゲン?」
「Ja!!もちろんですビスマルク姉さま!!」
「まあ、私も悪い事をするつもりはないよ。うん、きっと大丈夫。大人しくしてるよ。」
「まあまあ、そんなに固くならないで。普通に仕事してたら問題無いですから。あ、それよりけっこう長く話し込んじゃいましたし、そろそろお昼ごはん食べに行きましょ♪」
「ええ、そうですね。食事を疎かにする行為も司令は嫌うと聞きました。」
「っ!!オイゲン!!急ぐわよ!!」
「Ja!!」
あ、ドイツ艦の二人が真っ先に駆け出して行った!!
「まずったかな・・・先行くよ。」
「アトランタさんまで!?ああもう!!不知火追い掛けるわよ!!」
「はい・・・・・・陽炎。」
「ん?なに?」
「ありがとうございました。・・・では先に行きます。」
「ふふっ、照れちゃって可愛い妹ね。って私を置いてくなぁ!!」
かなーり問題はあったけど、とりあえなんとかなったかなぁ?あとは司令にバレないように上手くやれば完璧ね♪
こうやって噂は尾ひれがついたり事実がねじ曲がったりするのです。