今後もこの作品にお付き合い頂き、楽しんで貰えれば幸いです。
先行して食堂に向かって走り出した海外艦の人達を不知火と二人で抜き去る。たとえ陸上であっても私達駆逐艦がスピードで負ける訳にはいかないからね♪
「あっ!?笑ったわね!!待ちなさい!!」
「おっさき〜♪」
悔しがるビスマルクさんを尻目にあとは不知火と一対一の真剣勝負!!不知火の方が先行してるけど、先頭を走る不知火は食堂のある生活棟の扉を開かなくてはならない。そこでの減速の隙をついて追い抜いてやる!!なんで競争してるのかわかんないけど、長女として絶対に負けられない!!
「って!?うわっ!?」
不知火が生活棟の扉の前で急ブレーキをかけるのは予想してたけど、扉を開かないですって!?私も慌てて急ブレーキをかけるけど、不知火が扉を開けた隙に追い抜くつもりだったから、このままだと扉に突っ込んで!?
「っ!?陽炎!?」
「ぐふっ!?」
咄嗟に不知火が私の襟元を掴んで止めてくれたから、扉に突っ込む大惨事は避けられたけど・・・
「ゲホッゲホッ!!あーもう、助かったけどなんであんた扉を開けなかったのよ!?」
「静かに。これを見て下さい。」
「え、なに?メモ?」
生活棟の扉には『裏から静かに食堂に入った方が良いです。』と書かれたメモが貼ってある。
「え、なにこれ?こっそり忍び込めって事?」
「陽炎もこのメモには見覚えがありますよね?」
「あー、小森さんがケーキを確保してくれてた時の奴と同じメモ用紙だよね?って事は小森さんからの警告って事かな?」
「そう考えるのが妥当でしょう。」
う〜ん?小森さんがどういう人かわからないけれど、私達の為にケーキを確保してくれた人だし、たぶん優しい人だと思う。ならこの警告には従っておいた方が良いのかも?
「追い付いたわよ!!さっきはよくも!!」
「あ、ビスマルクさん達。お静かにお願いします。よくわかんないけどこっそり裏から入れて書かれてるから、裏から行きましょう。案内します。」
そう言って海外艦の三人に扉のメモを見せる。
「は?なんでこの私がそんなこそこそしなきゃいけないのよ?食堂はすぐ目の前よ?行くわよオイゲン!!」
「え!?Ja!!」
「あっ!?ちょ!?行っちゃった・・・」
「陽炎、私達だけでも裏から行きましょう。」
「Ah・・・私もなんか嫌な予感するからそっちから行くよ。」
「了解。じゃあこっそり行きますか。」
うーん?よくわからないけど、何か意味があるはずなんだけどなぁ?
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艦娘達が大盛りあがりしている食堂を出ると、廊下の向こう側からビスマルクとプリンツオイゲンがかなりの速度で走って来ていた。
「はぁ・・・ビスマルク!!プリンツオイゲン!!」
「Bäh!?Admiral!?な、なんの用かしら?」
「子供じゃないんだから廊下を走るな!!艦娘でしかも戦艦のパワーで走り回って何かにぶつかったら、大惨事になるだろうが・・・壁に大穴でも開けるつもりか?」
戦艦のパワーは身をもって体験したところだ。艤装を装着していなくても艦娘達の身体能力はとても高い。筋力だけでみても子供のような体格の駆逐艦達が、自分のような男性軍人より少し強いくらいだ。当然大型艦になれば人間離れした筋力になる。本当に壁をぶち抜けるかはわからないが、わざわざ自分が管理する鎮守府で試したい話ではない。
「わ、悪かったわよ・・・」
「プリンツオイゲンはおそらくビスマルクについて来たのだろうが、ビスマルクを盲信してついて行くんじゃなくて、きちんと止められるようになってくれ。」
「Es tut mir leid・・・あっ、ごめんなさい。」
「それで?こんな時間までなにをしていたんだ?ほとんどの艦娘はもう昼食を食べ終えているぞ?」
「え、Ah・・・ちょっとオイゲンと大事な話をしていたのよ。ねぇオイゲン?」
「あ、はい!!そうです!!」
なんだ今の間は?何か隠し事たろうか?じっと見つめるとビスマルクとプリンツオイゲンがあからさまに動揺している。目線を逸して汗をダラダラと流して、これはもう隠し事をしていますと全力でアピールしているみたいだ。
「・・・本当か?」
「嘘は言ってないわ!!Ah・・・ちょっとお喋りに夢中になってしまっただけよ。そうよねオイゲン?」
「え、ええ。その通りです。アトランタさんとカゲルゥさんとシラヌゥイさんは先に食堂に向かったから、食堂に行くのが遅れたのは私達二人だけです。」
「あ、バカ!!なんで名前出しちゃうのよ!!」
「おあ!?な、な、なんでもないです!!」
なんだこいつらは・・・どれだけ嘘をつくのが下手なんだ?おそらく上官である自分から仲間が怒られないように庇っているのだろうが、わかりやす過ぎて追求する気も失せてくる。大方自分と別れたあとに海外艦の三人と不知火が話し込んでいて、不知火を探していた陽炎も加わってなにか話したのだろう。
「はぁ・・・不知火や陽炎となにか揉め事か?」
「っ!?そんな事無いわ!!ソーセージを食べるくらいありきたりな事しかなかったわ!!」
「そ、そうです!!喧嘩なんてしてません!!」
「そ、そうよ!!怖い事なんてなにも無いわ!!」
はぁ・・・おそらく海外艦・・・というかビスマルクと不知火が喧嘩をしたのだろう。プリンツオイゲンはビスマルクを支持するだろうし、アトランタはあまり積極的に関わりそうに無い。となると後から合流した陽炎が仲裁したってところか。後で不知火と陽炎にも話を聞いておくか・・・艦娘同士の揉め事など頭が痛くなる。
「はぁ・・・・・・隠し事をしたいならもう少し上手くやれ・・・もういい。何があったかは聞かないから早く昼食を食べてこい。特に用事も無いのに食事の時間を遅らせて、間宮に迷惑をかけるのは良くない。以後気をつけるように。」
「ええ、悪かったわね。じゃあもう行くわね。」
「ごめんなさい。」
「ああ。」
とりあえずこの件は後回しだ。さっさと妖精さんに金平糖を渡して休ませて貰おう。
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他の娘達が間宮アイスで盛り上がっている中で、たまたま外に出ようとしていた私は、偶然提督さんが声を荒らげたのを聞きつけて足が止まる。提督さんが声を荒らげたって話はあんまり聞かないし、天龍や青葉が罰せられた時も淡々と言ってらしいし・・・でも話を聞くと海外艦の娘達が廊下走ってたのを注意しただけかな?あと昼食の時間に遅れた事も注意されてるみたい?
「もう・・・瑞鶴?盗み聞きなんて良くないわよ?」
「翔鶴姉、たまたま聞こえただけだって・・・」
「そんなに扉に近付いて聞き耳立ててるのに、たまたまなんて言い訳はダメよ?」
「いやほら、誰かが怒られてるところに出くわすなんて気不味いからさ、ちょっと様子見してるだけだって。」
正直に言ってうちの提督さんはかなり怖い。直接暴力を振るってくるような人ではないみたいだけど、どこか底知れない恐ろしさを醸し出す人だ。心が折れた私にもう一度立ち上がるチャンスをくれたので、冷酷な人では無いと思うんだけど・・・『翔鶴姉を守れるくらい強くなれるかな?』と縋るように問い掛けた私に対して、溜息を吐いて『その調子では無理だろうな。』とばっさり切り捨てて『それを私に聞いてくる時点でダメだ。強くなりたいなら他人任せにするな。なれるかななんて半端な意思では強くなれん。自分自身で強くなると決めて努力を続けろ。』そう突き離すように答える厳しい人だ。
・・・・・・でもその言葉がなければ私は今も甘ったれたままだったかもしれないと考えたら、あれは提督さんなりの優しさなのかもしれないけど。
「五航戦、何をしているのかしら?」
「げ、加賀さん・・・ちょっと提督さんが怒ってるみたいで外に出にくくて・・・」
「そんな事を言ってる暇はないわ。午後の演習をするから早く準備しなさい。午前中はまだまだ手ぬるかったみたいですし、午後はもっと厳しくするわよ。」
「う・・・望むところよ!!」
あの鬼のような演習が手ぬるかった!?でも加賀さんに鍛え直して貰って、翔鶴姉を護れるようになるって決めたんだ!!弱音なんて吐いてられない!!
「行きましょう加賀さん。私も手伝いますから、瑞鶴さんをビシバシ鍛えましょう。」
「ええ、赤城さん。一緒に頑張りましょう。」
・・・・・・え?加賀さんがスパルタなのは元からだから今更気にならないけど、なんか赤城さんまで戦場に赴くかのような真剣な表情だ。
「あ、赤城さん?あんまり瑞鶴に無理をさせ過ぎると、瑞鶴が倒れてしまうかと・・・」
「翔鶴さん・・・あの光景を見て何か思うところは無いのですか?」
ん?赤城さんが指差すのは間宮アイスで大盛り上がりしている娘達だ。正直に言って間宮アイスを食べる事が出来るのは羨ましいけど、あれは戦闘でしっかりと結果を出したご褒美だ。私も戦場に出られるようになれば、ああやって提督さんからご褒美を貰えるのかな?
「ええっと・・・皆さん喜んでいるようで、とても良い事だと思いますが・・・」
「ええ、とても良い事だと私も思います。ああやって提督から功績を認めて頂く事は、私達艦娘にとってなによりも誇らしい事です。」
「ええ、それは理解出来ますが・・・」
「ですが!!私達は提督から間宮アイスを頂けませんでした!!」
「え?あ、はい・・・」
「つまり私達の演習は提督に満足して頂けなかったと言う事です!!」
「そ、そうなのでしょうか?」
それは流石に極論じゃないかな?戦闘と演習じゃ危険度も段違いだし・・・
「私も間宮アイスが食べたい「赤城さん?」じゃなくて提督に認めて頂いて間宮アイスが食べたいです!!」
赤城さん・・・そんなにも間宮アイス食べたかったんですね・・・加賀さんのツッコミで一度は間宮アイスから離れようとしたけど、どうしても頭から間宮アイスが離れなかったんですね・・・私も間宮アイスは気になるけど。
「はぁ・・・赤城さん?別に私は食欲で動いているわけではなく、あくまでも提督に認めて頂けなかったのが悔しいだけなのですが?」
「加賀さんは間宮アイス食べたくないんですか!?」
「・・・・・・それとこれとは話が別です。」
あ、加賀さんが目を逸して言い淀んだ。やっぱり加賀さんも間宮アイス食べたいんだ。
「と言うわけで特訓あるのみです!!提督にご納得頂けるように頑張りますよ!!」
「行きますよ五航戦。夕食の時間まで何度でも叩きのめしてあげます。」
一航戦の二人が間宮アイス欲しさに暴走してる!?だけどどうせ特訓しなきゃ強くなれないんだから、腹をくくるしかないわね!!
「ああもう!!やってやるわよ!!」
この小説を書き始めた頃は一話あたり2千〜3千文字くらいだったのですが、最近では4千文字くらいないと物足りない体になってしまいました。これも成長なのでしょうか?