疑心暗鬼提督のブラック鎮守府再建   作:ライadgj1248

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 今回は葛原提督の知らない裏のお話です。
 あと今回は可愛い艦娘は出てきませんのでご了承下さい。


230話(鶴野提督の暗躍)

 猿田提督との通信を終えられた鶴野提督が小さく溜息を吐かれる。少しだけ困ったご様子でしょうか?

 

「もう宜しかったのですか?」

 

「少し想定外の事も起きておるようじゃが、向こうはどうとでもなろう。それよりも客人を待たせておる方が問題じゃ。」

 

「・・・そうですね。」

 

 鶴野提督がどこまでの事を考えておられるかは、浅学非才の身では理解出来ませんが、今回のお客様がかなり重要な人物だと言うのは理解出来る。なにせ・・・

 

「ただいま戻りました。お待たせして申し訳ありませんなぁ北条会長。」

 

「いえいえ、お構いなく。鶴野提督がお忙しい事は存じ上げておりますから。」

 

 今回のお客様はあの北条工業の会長様だ。今の日本で最も力を持つ企業はどこか?それはもちろん北条工業だと子供でも答えられる。深海棲艦が現れる以前はただの金属加工工場であったにも関わらず、この数年で工業・農業・物流・建築などなど様々な分野に手を出して、日本国民の生活は北条工業が支えていると言っても過言では無い。とはいえ北条会長が社長として辣腕を振るっていたのは深海棲艦襲来後の2年くらいまでで、ここまで会社を大きくしたのは北条会長の息子さんである現社長だが、北条会長は未だに影響力の大きい人物だ。

 

「そう言って下さると助かります。それでええと、どこまで話をしましたかな?」

 

「私の孫娘の麗子のお話でしたな。」

 

「おお、そうでしたな!!わしも麗子さんのご活躍はよく耳にしております。なんでも提督としての才能だけでなく、北条工業や国の為になる事にどんどん挑戦していらっしゃるとか?いやはや優秀なお孫さんに恵まれて羨ましい限りです。」

 

「ははは。ありがとうございます。自慢の孫娘なのですが、その分幼い頃から好奇心旺盛で気になる事があればすぐに駆け寄るお転婆な娘でして・・・ヒヤヒヤさせられた事は数え切れませんよ。」

 

「そうだったのですか?」

 

「ええ、勝手に工場内に入り込んでは作業員を捕まえてあれこれ質問するような娘でして、本当に困った娘でしたよ。従業員達も私の孫だからと強くは出れず・・・いや、従業員達もあの娘の事ををとても気に入っていましたから、ついつい甘やかしてしまったのかもしれませんなぁ。とはいえ私にとってもたった一人の孫娘ですし、一番甘やかしていたのは私かもしれませんね。」

 

 そう言う北条会長の顔はとても穏やかな表情だ。困っていたと言いつつも、とても懐かしく良い思い出となっているのでしょう。これも北条工業のご令嬢の人徳でしょうか?

 

「うーむ、そのお気持は分かります。わしの孫達も本当に手のかかる子ばかりでして。どうにかしたいとは思ってはいても、やはり孫は可愛くて仕方ないのでついつい甘やかしてしまいまして。」

 

 ・・・・・・確かに鶴野提督のお孫さん達は我儘な方が多いですが、その孫達からもかなり恐れられてるのによくすらすらとそんな事が言えますね。

 

「そうですかそうですか。やはり孫は可愛いですから、仕方ない事ですな。」

 

「ええ、仕方ありませんなぁ。そう言えば話題に出た麗子さんですが、提督として新しい派閥を立ち上げようと頑張っておられるとか?」

 

「あー、そうなんですよ。私と息子は麗子にいずれは北条工業を継いで貰おうと思って育てたせいか、人の上に立つのが当然と考える娘でして・・・いやはや提督としては未熟者でしょうに困ったものです・・・」

 

「いえいえ、わしは良いと思いますぞ?近頃の若者は覇気に欠ける者が多いというのに、麗子さんの行動力には目を見張るものがありますからなぁ。それに新たな派閥を立ち上げたからと言って、他の派閥と争おうとは思っていないようではないのでしょう?実際に士官学校では派閥の垣根を超えて人脈を作り、近頃は各地の鎮守府をあちこち回っているとか?もちろんわしのところにも挨拶に来てくださいましたな。」

 

「その説はどうもご迷惑をおかけしました。」

 

 北条会長が申し訳無さそうに頭を下げられた。確かにお忙しい鶴野提督に対して当日の朝に訪問出来るかを尋ねて、飛行機で飛んで来るという電撃訪問。おかげでこちらは大慌てでスケジュールの調整やらもてなしの準備をすることになり、とても大変なイベントでした。けれども北条工業のご令嬢が高価な食材やお酒などを差し入れして下さったので、舞鶴鎮守府で働いている事務員や憲兵隊は凄く喜んでいましたね。

 

「いえいえ、迷惑だなんてとんでもない!!むしろこの老骨に次代の若き力を感じさせて頂き、次代の為にまだまだ頑張らねばと思わせて頂きましたよ。」

 

「そう言って下さるとありがたいです。」

 

「それに派閥を立ち上げると言っても、別に先駆者である我々を蔑ろにするわけでは無さそうでしたしな。ならば若者の挑戦は大いにけっこうですな。」

 

「鶴野提督にそう言って頂けると心強いです。」

 

「あー、しかし一つ気になる事もありましてな・・・」

 

「と言いますと?」

 

「老人の余計なお節介と思われるかも知れませんが、どんな人間とも関わりを持とうとするのは少し危うく見えるものでしてなぁ・・・何かと問題のある人間ばかりを派閥に入れるのはどうかと思うのですよ。」

 

「う、それは・・・」

 

「ええ、もちろん他の派閥に入れなかったあぶれ者達を集める事で、自分の派閥を立ち上げたいと言うのは理解出来るのですよ。しかし性格に難があったから他の派閥に入れなかったと言う事は忘れてはいけません。特に性格面に問題のある者だらけというのは如何なものかと心配しておりましてな。」

 

「それはそうかも知れませんが・・・息子も麗子も『変わった性格の持ち主こそ新たな可能性を生み出すかもしれない人材だ』と言って聞く耳を持たなくてですね。実際に息子はその方針で会社をここまで大きくしましたので、私からは何も言えませんなぁ・・・」

 

「なるほどなるほど。そのお考えも一理ありますな。部下として迎え入れて、手綱を握れるのであればそれもまた良い事でしょう。しかし・・・将来の伴侶と考えてみると、そんな悠長な事は言えないのでは?」

 

 鶴野提督の一言で困り顔だった北条会長の表情が一気に変わる。

 

「しょ、将来の伴侶ですか!?い、いったいなんの話ですか!?私はそんな話は聞いていませんぞ!?」

 

「まあまあ、落ち着いてください。と言われても急にこんな話をされたら驚きますか・・・これ、北条会長にお茶のおかわりを。」

 

「はっ!!北条会長、失礼しますね。」

 

「す、すみませんなぁ。」

 

 北条会長は少しだけお茶を飲んだが、やはりまだ落ち着かない雰囲気だ。

 

「そ、それで、麗子に良き人がいると噂でも?私はそんな話を聞いた事も無いのですが・・・」

 

「ええ、あくまでも噂に過ぎない話ではありますが、この前北九州鎮守府に着任した葛原という男をご存知ですか?」

 

「ええ、麗子からも何度か話は聞いておりましたし、最近何かと話題になっている提督ですよね?」

 

「ええ、その何かと問題を起こしている葛原です。なんでも士官学校時代から麗子さんが何度も声をかけて気にしておられたとか?一匹狼を気取る葛原に対して、何度も何度も根気強く派閥への勧誘を行い、北九州鎮守府に着任してからも支援を惜しまず投資しているとか?あとは士官学校時代に何度か麗子さんの権限で、葛原と共に外出していたという話も聞きます。」

 

「そ、それは・・・私も少し耳にはしてます・・・」

 

「そして葛原という男は士官学校でも素行不良で有名な男でしてなぁ・・・教官に逆らって営倉送りになる事も日常茶飯事で、士官候補生同士で暴力沙汰になった事も少なくはありません。しかも提督となってからも長門鎮守府からの協力要請を無視したり、平気な顔で佐世保鎮守府から手柄を掠め取ったり、鹿児島鎮守府の島津提督と揉め事を起こしたりと、好き放題している困った男でして・・・ついには大本営も葛原提督の横暴なやり方に我慢出来ず、監査の為の人員を送り込んだと聞いております。」

 

 ・・・いや、監査の人間を送り込んだのは鶴野提督じゃないですか!?逆らったら恐いから私は何も言いませんけど・・・

 

「そ、そんな事に・・・これはまたずいぶんと・・・癖のある人物というか・・・」

 

「若くて覇気と野心と気骨のある若者はわしも好きなのですが、葛原という男はどうにも自己中心的で他者との協調性がなく、とにかく周囲をあらしてしまう人物というのがわしからの評価です。このような人物に近付き過ぎるのは、どれ程危険な事かとついつい心配してしまうのですよ・・・」

 

「ううむ・・・どうしたものですかね・・・」

 

「この件に関してはわしは部外者ですからなぁ・・・心配する事は出来ても、何か口出しするのはお節介が過ぎると言うものです・・・麗子さんにはもっと良い相手を見つけて欲しいと願っておりますが、こればかりはなんとも・・・」

 

「ありがとうございます。一度麗子にそれとなく話を聞いてみようと思います。」

 

 ふぅ・・・相手の不安を煽るだけ煽って相手に自分から動いて貰う。鶴野提督が良く使っていた手ですね。最近は権力をしっかり握っているので、命令を下したり脅したりするほうが多かったですが・・・流石に北条工業の会長相手にそんな恐ろしい真似は出来ませんからね。

 

「ご家族でよく話し合ってみると良いかもしれませんなぁ。おっと、いかんいかん。歳をとると心配事ばかりしてしまいますな。それよりももっと明るい話でもしましょうか。実は・・・」




 そろそろドロドロ展開を抜けて艦娘とほのぼのしたいです。
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