疑心暗鬼提督のブラック鎮守府再建   作:ライadgj1248

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 ようやく今回で猿田提督とのお話も終わりですね。なんと言うか人間サイドが長引くとどうしても艦娘達の出番が削られてしまい、これって艦これの小説だよな?と思う事もしばしば・・・
 きっとまだ艦これ小説のはず?


232話(北条への確認・猿田提督撤退)

 とりあえず部屋から出ると扉から少し離れた所で待っていた曙が駆け寄ってくる。無言のまま真剣な表情でこちらの頭の上から足元まで視線を動かしていたが、いったいなんなのだろうか?

 

「曙、北条と話がしたい。通信を繋げてくれ。」

 

「え?北条さんと?分かったわ。・・・・・・繋がったわよ。」

 

「葛原だ。」

 

「今朝ぶりですわね。貴方から連絡なんて珍しいですけれど、どうしましたの?」

 

「少々厄介事でな・・・」

 

「あら、いつもの厄介事ですの?」

 

「いつもの厄介事だ。」

 

「おーほっほっほっ!!相変わらず厄介事を引き起こしますわね!!それでこそ葛原ですわ!!」

 

 厄介事だと言っているのに喜ぶとは・・・北条こそ相変わらずだな・・・

 

「単刀直入に言う。出雲鎮守府の猿田提督が北条に会いたがっている。時間を作ってやってくれるか?」

 

「ええ、それは構いませんけど、貴方が人を紹介したいだなんて言うのは初めてですわね。明日は雪や槍でも降って・・・イ級くらいなら降ってもおかしくありませんわね・・・」

 

「そこまで珍しい・・・かもな。というか初めてだったか?で、どうだ?」

 

「ええ、まあ、構いませんわよ。いずれは全ての提督と会うつもりでしたし、向こうからのお誘いならば話が早そうですわ。」

 

「そうか、助かる。」

 

 やはり北条ならそう言ってくれるか。これで心置き無く厄介事を押し付けられる。

 

「それで?猿田提督を紹介したいとの事ですが、葛原から見て猿田提督はどのような方かしら?」

 

「あー、クズだな。それもかなりの。」

 

「・・・・・・私は今までいろんな人を紹介して貰って繋がりを作って来ましたが、そんな紹介をされたのは初めてですわね。ふふっ、でもそれでこそ葛原ですわ!!良いでしょう!!なんだか面白くなりそうな気がしますわ!!」

 

「面白くなるかは北条次第だ。じゃ猿田提督と代わるから後は任せたぞ。」

 

「えぇ、よろしくてよ!!おーほっほっほっ!!」

 

 もう少し状況説明やら交渉やらで時間を取られるかと思ったが、面白くなりそうというだけで承諾してくれるとは・・・相変わらずすごいやつだな。

 

―――――――――――――――――――――

 

 その後部屋に戻って猿田提督に通信機を渡すと話はスムーズに進んだようで、猿田提督はご満悦な表情で通信機を返してきた。

 

「北条との交渉は上手くいったようですね。」

 

「ああ、近日中にうちを尋ねてくれて会食の場を設けてくれる事になったぜ。」

 

「それでは約束通りに撤収して頂きましょうか?」

 

「ああ、良いぜ。おい、赤嶺に撤収の準備をしろと伝えろ。」

 

「えっ!?もう撤収されるのですか!?」

 

 猿田提督が部屋の入り口で見張りをしていた若い憲兵に命令すると、突然の方針転換に若い憲兵は驚きを隠せなかったようだ。

 

「俺の決定だ。文句あるか?」

 

「いえ!!すぐに撤収準備をします!!」

 

 大慌てで駆けてゆく憲兵隊を見て、ようやくこの厄介事も終わりが見えてきたのを実感する。とりあえずこいつを追い出せば一先ず安心だが、鶴野提督が次にどんな手をうってくるのかは気になるところだ。

 

「なぁ、おい。」

 

「・・・なんでしょうか?」

 

「お前が提督になってからやった事で、他の提督がやって無さそうな事とかねぇか?」

 

「・・・まだ何か探るつもりですか?北条との顔繋ぎをすれば即座に撤収するという約束をしているのをお忘れですか?」

 

「そう言うなよ。こんなの撤収の準備が終わるまでの雑談だろ。そうかたい事言わずに教えろよ。」

 

 はぁ・・・図々しい奴だな・・・こちらとしてはそんな雑談に付き合う必要は無いのだが・・・どうせ撤収準備まで多少の時間はかかるだろうし、嫌がらせも含めて少し話をするか。

 

「そうですねぇ・・・・・・そう言えば猿田提督は深海棲艦を見た事はありますか?」

 

「は?まぁ、資料で見た事はあるぜ。」

 

「つまり直接見た事は無いのですね。」

 

「当たり前だろうが?あいつらを見る奴なんて、襲撃から逃げ遅れた奴だけだろ?んで生き残ってる奴はそうとうな幸運の持ち主だな。・・・・・・まさかお前は見た事あんのかよ?」

 

「ええ、輸送船に乗って深海棲艦を見に行きました。見れたのは駆逐イ級が3隻のしょぼい艦隊でしたし、もちろん艦娘達に護衛して貰って安全を確保した上での話ですが。」

 

「おいおい、冗談キツイぜ。あれか?もしかしてそんな事言ったら俺が騙されて試してみるとでも思ってやがるのか?そんなもん自殺と変わんねぇよ。」

 

「いえいえ、冗談ではありませんよ?信頼出来る護衛が居ればなにも問題ありませんでしたよ。なぁ曙?」

 

「っ!?問題だらけよクソ提督!!あんな危ない事は二度とやるんじゃないわよ!!」

 

「・・・そう言えばお前達からは反対されていたんだったな。」

 

 おっと、初めてこの曙からクソ提督と呼ばれてしまった。そう言えば艦娘達はあの一件に対してはかなり否定的なんだったな。だが曙の本気の罵倒を聞いて、猿田提督はどうやら本当にあった話だと信じてくれたようだ。

 

「おいおいマジかよ・・・お前・・・頭イカれてんじゃねぇのか?」

 

「これは心外な反応ですね。猿田提督も私と同じで護国に命を捧げた軍人でしょう?それにいつも艦娘達に命をかけて戦えと命令していますよね?それなのに深海棲艦をそこまで恐れるとは・・・士道不覚悟とやらじゃ無いですか?」

 

「俺は武士じゃねえし、誰だって自分の命が一番だろうが!!」

 

「私だって犬死したくはありませんよ?だからきちんと偵察もさせましたし、護衛だってきちんとつけていました。そうやってきちんと安全が確保出来たから、深海棲艦を見れたのです。」

 

「・・・・・・なんでだよ?」

 

「はい?」

 

「なんで深海棲艦なんか見に行こうと思ったんだって聞いてんだよ!?」

 

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず。有名な孫子の言葉ですからご存知でしょう?だから敵である深海棲艦について知りたい、自分の命令で戦う艦娘達の事も知りたい。そのためには実際に戦場で艦娘達が戦う姿を見るのが一番だと考えた。ただそれだけです。別におかしな話では無いと思いますが?」

 

「・・・・・・噓だろおい。」

 

 まあ、噓だ。本当は市長候補だった源さんに、深海棲艦の脅威を理解させる為に連れていっただけだ。ただあの荒療治でも源さんの考えが変わらなかった事を考えると、あまり効果は期待出来ないのかもしれない。とはいえどうにも猿田提督はこの話でひいているようなので、少し話を盛ってそのままお引取り願おうか。

 

「無理強いは出来ませんがとても良い経験になると思いますよ。深海棲艦から感じる本物の殺意、死をもたらす砲弾が近くに着弾してまき散らす爆風と水飛沫、そんな恐怖に負けずに立ち向かう艦娘達の勇姿、沈む敵艦隊を眺めて生き残れたと確信出来る安心感。このような感覚は執務室でふんぞり返えっているだけでは感じられません。」

 

「そ、そんなものがなんの役に立つってんだ!!俺達は提督だ!!指揮官だ!!前線に出るのは艦娘の仕事だろうが!!」

 

「その前線を知る事も指揮官の仕事です。というか先程は少し大袈裟に話しましたが、私が見たのはイ級が3隻だけの艦隊ですよ?我々が日常的に討伐しているような相手ですよ?この程度の相手に突破を許すような艦隊を率いる無能提督であれば、さっさと殉職したほうが国の為になるでしょう。」

 

「・・・・・・」

 

「猿田提督、お話中失礼します。ご命令通り撤収準備が整いましたが・・・」

 

 おっ、赤嶺さんが猿田提督を迎えに来たから、茶番はここで終わりか。

 

「っ!?おう、すぐに帰るぞ。」

 

「は、はぁ。ですが本当に宜しいのでしょうか?鶴野提督からのご命令もありますが・・・」

 

「すぐに帰るって言ってんだろうが!!俺の命令が聞けねぇのか!?」

 

 そのまま猿田提督は挨拶もせずに逃げるように北九州鎮守府から去って行った。猿田提督の異様な雰囲気を感じとったのか、赤嶺さんを含む出雲鎮守府の憲兵隊達もそれ以上文句は言わず、こちらを警戒しながら去って行く。

 

「ふぅ・・・ようやく面倒なのが出て行ったな。」

 

「ねぇ。」

 

「ん?どうした?」

 

「さっきの言葉はどこまで本気なのよ?」

 

 曙にそう尋ねられるが・・・

 

「どの言葉だ?」

 

「深海棲艦を見に行った理由とかよ。」

 

「ん?曙も知っているだろう?あの一件はお前達艦娘を軽視する源さんに、深海棲艦と艦娘がどういう存在なのかを教える為のものだぞ。」

 

「ええ、それは知ってるわ。けど・・・全部がデタラメで嘘をついてるようには見えなかったわ。そんな薄っぺらい言葉じゃ無かった。本気の目、いいえ、少し狂気すら感じる目をしてたわよ。」

 

「そうか。まあ、話した内容自体にあまり嘘は無かったからな。源さんに体感させたかった事を自分が体感したかった事にしたくらいだ。」

 

「そう・・・・・・」

 

 曙は黙りこくってしまったが、いったい何を考えているのだろうか?それにしても狂気すら感じる目か・・・猿田提督を脅かす為に少し力が入り過ぎたか?とはいえ臆病な猿田提督を脅かそうと少し大袈裟に話したが、内容としてはわりと普通の事なのだがなぁ。

 

「さて、邪魔者も居なくなった事だし厳戒体制も解除して通常業務に戻そう。全員の自室待機を解除するように通達をしろ。」

 

「・・・分かったわ。」

 

「それともうすぐ日も沈む時間だから、昼に予定していた演習は中止だな。夕食後に夜戦演習をしておきたいから編成を考えておかねばな。夕食の時に川内に相談しよう。」

 

「それが良いわね。」

 

「では執務室に戻るぞ。」

 

 そう言って執務室へと歩き出したのだが・・・曙が立ち止まって付いて来ない。

 

「・・・どうした?」

 

「その・・・あんたは死ぬのが怖くないの?」

 

「は?怖いに決まっているだろう?死を恐れないなんて言う奴は感覚が狂ってる。私がそういう頭のおかしい人間に見えるか?」

 

「・・・・・・少し。」

 

 少し見えてしまうのか・・・

 

「はぁ・・・そうか・・・」

 

「・・・・・・普通の人間なら自分の命が一番大事なはずよ。」

 

「私は普通の人間ではなくてお前達と同じ軍人だ。死を恐れてなお踏み出すべき人間だ。だから死を恐れないわけではなくて、死の恐怖に直面しても冷静な判断力を失わないように心掛けているだけだ。」

 

「そう・・・・・・確かにそうね。」

 

「それだけならもう行くぞ。ただでさえあいつらに邪魔をされて執務が滞ったんだ。時間は無駄に出来ない。」

 

「ええ、分かったわ。」

 

 どうにも曙の様子が少しおかしい気がするが・・・猿田提督関連で少し疲れているのかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

 

「軍人なら死を恐れてなお踏み出せ・・・か。」

 

 それは理解出来る。私だって軍人だもの。どんな敵が相手でも立ち向かう気概は持ってるし、戦場で死ぬのが怖く無いとは言わないけれど・・・戦場で死ぬ覚悟は出来てる。出来てるけど・・・・・・

 

「私は・・・あんたが死ぬ方がよっぽど怖いわ・・・」




 ようやくドロドロ展開終了!!
 しばらくは頭空っぽにしてギャグ展開や夜戦の事でも考えていたいですね。
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