「さて、夜戦のメンバーはとりあえず決まったが、編成をどうしたものか?今回の目的は川内のやり方に海外艦の二人を慣れさせるという目的があるので、川内を旗艦としてその下に海外艦の二人を付けるとすると、相手側に青葉衣笠神通の三人を入れて駆逐艦を3人ずつ付けるのが無難だろうか?」
「うん、そうだねぇ。海外艦の二人が夜戦でどれくらい動けるかわかんないけど、それを試す為の夜戦演習だもんね♪旗艦はもちろん私と神通ね♪」
「川内は当然だし神通もあの性格なら立派に旗艦を務めてくれそうだな。駆逐艦の分け方はどうする?」
「戦力を均等に分けるなら第六駆逐隊を二人ずつに陽炎達を一人ずつかなぁ?陽炎も不知火もこの間の夜戦でけっこう良い動きしてたしさ♪」
確かに戦艦棲姫に止めを刺したのは陽炎不知火朝潮の三人だったな。練度で言えば第六駆逐隊と大差はないのだが、修羅場を潜り抜けたという経験は大きい。川内もそこの部分を評価しているのだろう。
「確かに戦艦棲姫との戦いは陽炎と不知火の大きな経験になっただろうからな。」
「それにほら、第六駆逐隊の娘を三人と一人で分けちゃったら仲間外れみたいでなんか可哀想でしょ?」
「ん?そういうものなのか?」
川内の良くわからない発言に疑問を覚えて第六駆逐隊の方を向くが、暁と雷はなんだかよくわかってなさそうな顔をしていて、響はこちらから目線を逸らすように顔を背け、電は苦笑いをしている。これはどう判断するべきなのだろうか?
「そういうもんなんだって。絶対に気にしてあげなきゃいけないって話ではないけど、今回みたいに切羽詰まってない状況なら多少のわがままは許して欲しいなぁ。」
「まぁ、川内がそう言うなら構わないが・・・陽炎と不知火の二人を分けるのは良いのか?」
「あー、あの娘達は負けん気が強いしお互いにライバル視してるみたいだから、むしろ積極的に戦わせた方が良いと思うよ?」
ふむ、姉妹での関係性も艦娘毎に変わってくるのは当然だな。士官学校で艦娘達の容姿と名前や性能そしてその来歴等は頭に叩き込んだが、性格についてはそこまで深く理解出来てはいない。そもそも同じ艦を元にした艦娘でであっても個人差が出るので、一律にこの艦娘はこの性格だと言えない。今後艦隊を指揮するならば艦娘達の性格についても把握していく必要があるか?艦娘達を甘やかして艦隊の編成に影響が出てしまうのは問題だとは思うが、相性の良い艦娘達を組ませる事で士気や連携に良い影響があるかもしれない。
「なるほど、ではその分け方で進めよう。お前達第六駆逐隊からは編成に関して何か要望はあるか?」
「暁は一人前のレディだから川内さんの艦隊でも神通さんの艦隊でも問題ないわ。どんな人と組んでもちゃんとお仕事出来るのが一流のぷろふぇっしょなるよ!!」
「噛まずに言えたね。」
「噛まなかったわ!?」
「ちょっと発音は気になるけど難しい言葉をちゃんと言えたのです。」
「もう!!これくらい当然言えるわよ!!さっきから長女の暁をバカにしてない!?ぷんすか!!」
「Извини そんなつもりはなかったんだ。暁は私達の頼れるお姉さんだよ。」
「そ、そう?それなら良いのよ♪」
響のその一言で怒っていた暁はすぐに機嫌をなおしてしまった。ずいぶんと簡単に機嫌がなおるものだとは思ったが、元から本気で怒っていたわけではないだろうしちょっとじゃれ合ってるだけか。
「あっ!!はいはい司令官!!私は海外艦の人達と一緒の艦隊が良いわ!!きっと海外艦の人達も初めての演習で心細いだろうから私がサポートしてあげるわ!!」
「雷ちゃんはやっぱり優しいのです。だったらもう一人は響ちゃんが良いのです?たしか響ちゃんは海外に縁のある艦なのです。だからきっと海外艦のお二人とも仲良く出来るのです。」
「Нет 確かに私はソ連と縁があるけれど、ソ連とビスマルクさん達の故国のドイツはその・・・あまり仲が良くなくてね・・・私は気にしないけれど・・・」
ドイツとソ連は艦娘達の記憶にある第二次世界大戦の時だけでなく、第一次世界大戦の時も敵国だったか?とはいえ響は元々日本の艦艇なのだから問題無い気もするのだが?まぁ、どちらにせよ自分の艦隊に所属した以上は仲良くとまではいかなくとも上手くはやって貰わないと困る。
「そんなんじゃ駄目よ響!!昔はどうだったかわからないけれど、今は背中を預けて戦う仲間なのよ!!せっかくの機会なんだから今日は一緒の艦隊になってちゃんと仲直りしてきなさい!!」
「いや暁、別に喧嘩した訳ではなくて・・・」
「はわわわ!?電が余計な事を言ってしまったせいで響ちゃんが怒られてしまったのです!?」
「ん?よくわからないけど響は海外艦の人達が苦手なのよね?なら私が響と海外艦の人達との仲を取り持ってあげるわ♪」
「ちょっと雷!!そういうのはお姉ちゃんである暁の仕事よ!!」
「え?雷なら大丈夫よ♪」
「そういう問題じゃなーい!!」
「ふ、二人共喧嘩は駄目なのです〜!!」
はぁ・・・第六駆逐隊に意見を求めてみたが、これでは収集がつかないな・・・
「んんっ!!」
軽く咳払いをすると大騒ぎをしていた暁と雷と電の三人がハッとした表情をして気まずそうに席に座る。
「響、ソ連とドイツに因縁があるのはわかったが、ここは北九州鎮守府でお前達は北九州鎮守府所属の艦娘だ。変な苦手意識を持たれては困る。せっかくの機会だからドイツ艦の二人と話してみるべきだと思うが?」
「Дар ちゃんと話してみるよ。遠くから見てたけど二人共良い人だとは思うからね。」
「では響と雷が川内の艦隊、暁と電は神通の艦隊に入ってもらう。あとは・・・」
陽炎と不知火をどちらの艦隊に入れるかだが・・・不知火がこちらに駆け寄って来て、そのあとから陽炎も追い掛けて来ている。先程川内が二人を演習に組み込んだのは伝わっているし、私達がここで編成の話をしているのも聞こえているだろうから、慌てて食事を済ませて参加しに来たってところか。別にそこまで急ぐ必要は無かったのだが。・・・・・・特に不知火はかなり急いで来たみたいだな。
「司令、お待たせしました。不知火も夜戦演習の打ち合わせに参加させて下さい。」
「あ、ああ。それは構わんが・・・」
「はぁ・・・不知火、あんた食事くらいゆっくり食べさせなさいよ。」
「・・・?陽炎に食事を急ぐように強要した覚えはありませんが?」
「いや、あんただけ先に打ち合わせに参加するのはなんか違うと思ぶふっ!?」
陽炎が不知火に文句を言おうと顔を上げた瞬間吹き出して、それを不審に思った不知火が鋭い眼光で陽炎を睨む。
「・・・不知火に何か落ち度でも?」
「あはははは!!落ち度よ!!落ち度!!子供じゃないんだから口元のケチャップくらいちゃんと拭いておきなさいよ!!あはははは!!」
「ッ!?!?」
「はいはい!!不知火さん、雷が拭いてあげるからじっとしててね♪」
「いえ、大丈夫です。ナプキンだけ頂きます。」
そう言って不知火は雷からナプキンを受け取って口元を拭う。表情こそ全く変わらないが、心なしか顔が赤くなっている気がするので恥ずかしがっているのか?こういう表情を取り繕える相手は感情が読めないのでなかなか厄介だ。まあ、不知火は軍人として忠誠度の高い生真面目な性格をしているので、よほどの事が無ければ自分の敵にはなりそうにないと思うので問題なさそうだが。
「司令、お見苦しいところをお見せしてしまい申し訳ございません。」
「あー、次から気をつけてくれれば良い。」
「くふっ・・・し、失礼しました。」
「・・・・・・」
陽炎はさっきの一件での笑いがまだ収まっていないのか、なんとか堪えている様子だ。その陽炎を不知火がかなり睨んでいるが、睨めば睨む程逆効果だな。不知火をずっと晒し者にするのも良くないので、さっさと話題を変えてやるか。
「あー、夜戦演習の件だが、現状決まっているメンバーは川内を旗艦としてビスマルク・プリンツオイゲン・響・雷、神通を旗艦として青葉・衣笠・暁・電だ。そこに陽炎と不知火が一人ずつ参加して六人編成にしようと思う。二人から何か要望はあるか?」
「いえ、特にありません。陽炎と戦える機会を頂きありがとうございます。」
「おっ?不知火やる気じゃない?不知火と戦えるのは私も嬉しいけど・・・私が勝っちゃうわよ?」
「陽炎・・・・・・徹底的に追い詰めてやるわ。」
川内が言っていたように陽炎も不知火もお互いにかなり意識しているようだな。まあ、張り合って競い合うだけならずいぶんと健全な関係性だな。
「お互いにライバル視するのは構わないが、今回は個人戦ではなく艦隊戦だ。そこは忘れるなよ。」
「「はっ!!」」
「さて、不知火はどちらの艦隊でも良いとの事だが、陽炎はどうだ?」
「私もどっちでも大丈夫だけど、しいて言うなら神通さんの方かな?」
「理由は?」
「ほらやっぱり海外艦の二人って気になるでしょ?だから一度戦ってみたいかなぁって。」
ふむ、そこで一緒に戦ってみたいではなくて敵として戦ってみたいと言うあたり、陽炎もかなり好戦的な性格なのだな。士官学校にいた陽炎はなんというかもう少し姉として姉妹艦をまとめている印象だったが、やはり以前所属していた長門鎮守府の環境で性格に影響が出ているのだろうか?今度機会があれば長門鎮守府での話も聞いておくか。
「わかった。では不知火を川内の艦隊に、陽炎を神通の艦隊に入れる。川内もそれで良いな?」
「うん!!楽しい夜戦になりそうだね!!」
楽しいかどうかはともかく、どんな夜戦演習になるかはとても気になるところだな。さっさと食事を済ませて準備をするか。
あー、川内と夜戦したいなぁ。