疑心暗鬼提督のブラック鎮守府再建   作:ライadgj1248

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 皆様長らくお待たせしました。
 前回の投稿から三ヶ月も経過してしまいましたが、とりあえず作者は死んではおりませんでした。長らくモチベーションがなかなか上がらなかったのですが、自分がとても気に入っている作品が久々に更新された事に影響を受けて、久しぶりに執筆出来ました。
 今後も気まぐれ更新になりますが、気長にお付き合い頂けると幸いです。


236話

 食事中に話した夜戦演習の編成に関しては、艦娘側から様々な意見が出てきた。今までも艦娘達からの意見は聞いてきたと思うが、今回得られた情報は今までのものとは少し毛色が違っていた・・・と思う。なんというか艦娘達の能力の話ではなくて、関係性の話を聞かせてくれたというか。とはいえ艦娘達の関係性の情報がどれだけ意味を持つかは、今からの夜戦演習で垣間見えてくるはずだ。既に食事は終えて艦娘達に演習の準備をするように通達して執務室に戻っているので、あとは艦娘達の準備が整うのを待つだけだ。

 

「・・・・・・提督、佐世保鎮守府所属の香取さんから通信です。明日からの演習の日程について相談したいとの事です。」

 

 そう言えば佐世保傘下の鎮守府との演習の打ち合わせが残っていたな・・・

 

「ああ、代わろう。・・・代わりました、北九州鎮守府所属の葛原です。」

 

「佐世保鎮守府所属で秘書艦を務めております香取と申します。夜分遅くに申し訳ございませんが、佐世保鎮守府傘下の提督達と北九州鎮守府での演習の件でご連絡させて頂きました。今少しお時間宜しいでしょうか?」

 

「ええ、もちろん大丈夫です。」

 

「ありがとうございます。ああ、それと今回島津提督がご迷惑をおかけしてしまった件、改めてお詫び申し上げます。」

 

「いえいえ、その件に関しては熊井提督がきちんと仲裁に入って頂けましたし、佐世保鎮守府側からの誠意ある対応はきちんと理解しております。この件に関しては円満に解決したと認識しております。」

 

「うふふ、そう言って頂けると助かります。なにせ私達は葛原提督が今回の件でご納得頂けていなかったのではないかと、少し心配しておりましたので。」

 

 ・・・ん?ずいぶんと下手に出てくるな。丁寧なのは艦娘の香取の性質として違和感は無いが、ここまで佐世保鎮守府側が下手に出る必要は無いはずだ。これは少し警戒すべきか?

 

「ははは、自分はただの一提督に過ぎないというのにも関わらず、過分な心配り痛み入ります。」

 

「あらあら?過分な心配りでしたか?こちらとしてはてっきり私達の配慮が足りなかったせいで、葛原提督が佐世保鎮守府の庇護を受けようとしているように思えたのですが?」

 

 ・・・・・・猿田提督をあしらう為に島津提督と古鷹さんを利用した事を怒っているのか?耳の早い事だ。だがその程度ならば想定の範囲内だな。

 

「何故そのような事まで心配されるのか心当たりがありませんが、佐世保鎮守府の傘下に入らないと明言している以上、佐世保鎮守府の庇護を受けないというのは自明の理です。ですが軍事的な話であれば協力出来る場面もあるかと考えていたのですが・・・佐世保鎮守府側との認識の齟齬があったのでしょうか?」

 

「ええ、もちろん軍事的なお話であれば協力する事は吝かではありませんよ。熊井提督は葛原提督の指揮能力を高く評価されております。もちろん新人の提督としてはの一言が入りますが。」

 

「それはありがたいお言葉です。今後も提督の一人として日々努力致します。」

 

「ええ、是非頑張って下さい。とはいえ話を戻しますけれど、協力する事が出来るのはあくまでも軍事的なお話に限ります。政治の場でまで力を貸すつもりはありませんので、そこはご理解頂けますか?」

 

「ええ、もちろん理解しております。ああ、ですが一つだけ政治的に協力して頂く必要がありますが、当然忘れてはいませんよね?」

 

 そう伝えれば通信機の向こう側で少し香取さんが黙ってしまう。だがやはり頭が良いのですぐにこちらの意図を理解してくれる。

 

「・・・・・・島津提督が葛原提督に暴行した件で広まった、葛原提督と佐世保傘下が敵対しているという噂の払拭でしょうか?」

 

「そのとおり。仲良くする必要はありませんが、敵対していると世間に思われるのも困ります。ですからきちんと和解したとアピールするために、私が佐世保鎮守府を訪れて演習を見学するという話を世間に広める必要があります。それは熊井提督御本人から了承頂きましたが、まさか反故にはしませんよね?」

 

「え、ええ。もちろんです。その時には私がしっかりとご案内させて頂きます。ですがその件ではなくて北九州鎮守府に大本営からの監査が入った時に、私達が巻き込まれた件についてのお話です!!」

 

「あー、あれですか。あの件に関しては抜き打ちでしたので、鹿児島鎮守府からの輸送物資の搬入と被ってしまったのは、私にはどうする事も出来ませんでした。大本営からの命令書が出ていたので拒否する事は出来ませんでしたし。それに私は監査を受けている最中であっても島津提督への配慮は怠ったつもりはありません。むしろ島津提督が下手に情報を隠そうとされるので、私があらぬ疑いをかけられてしまって困ったものです。」

 

「それは・・・その・・・」

 

「ああいえ、別に怒っているわけではありません。監査に来た猿田提督の横暴な態度をみれば、島津提督が反感や不信感を抱くのも無理はありませんから。それに猿田提督も何故か島津提督との会話を嫌がったので、話が余計に拗れてしまったのですよ。ですから島津提督の対応だけが悪かったとは言えませんから。」

 

「くっ・・・そう言って頂けると助かります。では猿田提督の眼の前でわざわざ私達との演習の件や佐世保鎮守府への見学の件について言及した事については、どのような意図があったのでしょうか?」

 

「・・・ん?ただの確認だったのですが、何か隠す必要がありましたか?演習に関しては特に隠し立てするような話ではないですし、佐世保鎮守府への見学に関しては公にする話なのですよ?鹿児島鎮守府からの資材受け渡しに関しては島津提督の感情に配慮して、島津提督に事前に確認を取りましたが・・・佐世保鎮守府側としては演習の件で何か隠さねばならない理由でもあったのでしょうか?そうであれば私の配慮が足りなかった事をお詫びしたいのですが?」

 

「う・・・確かに隠し立てするような事では・・・ないですね・・・葛原提督のおっしゃる通りです。」

 

 猿田提督の前でわざわざ演習の話をしたのは、当然北九州鎮守府と佐世保鎮守府が繋がっていると猿田提督に誤解させる為だが、猿田提督が勝手に誤解した事にまで自分が責任を負う必要はない。それに佐世保鎮守府側が演習の件を隠すべきだと主張すれば、それは何かやましい理由があると認めるようなものだ。例えば実績を上げた新人提督のメンツを潰そうとしてるみたいなしょうもない理由があるなどと。とりあえずこれで香取さんからの追及は振り切れただろう。だが佐世保鎮守府との関係はある程度確保しておきたいので、香取さんをやり込めたままで反感を買ったままというのも面白くない。少しだけ下手に出て相手を立てておくか。

 

「ご理解頂けたようでなによりです。ですが私の言動で佐世保鎮守府側に不要な誤解を招いてしまった事はお詫び申し上げます。今後は気を付けますのでご容赦頂きたい。」

 

「・・・・・・はぁ。葛原提督の事情とお考えは把握致しました。こちらも疑うような真似をして申し訳ございません。」

 

 香取さんも自分の言葉を全部信じた訳ではないだろうが、とりあえずお互いに謝ってこの件については終わりという事にしてくれるようだ。このあたりの柔軟性は余裕のある大人な対応といったところか。

 

「いえいえ、熊井提督程の立場のお方であればよからぬ輩がすり寄って来る事も多いでしょうし、警戒されるのも致し方ない事かと。まあ、幸いにも誤解は解けたようですので、そろそろ実務的な話をしませんか?」

 

「そうですね。本題は佐世保鎮守府傘下の鎮守府と北九州鎮守府の演習のお話でしたね。今回の演習は博多鎮守府・佐伯鎮守府・天草鎮守府の提督と演習して頂こうと思います。」

 

「ん?宮崎鎮守府は不参加ですか?」

 

「ええ、色々と事情がありまして・・・」

 

 事情・・・か。色々と濁しているあたりあまり詮索されたくは無いのだろう。となると軍事的な理由では無さそうだな。一番あり得るのは島津提督の一件で熊井提督が睨みを効かせるようになったので参加を辞退したってところか?もしくは宮崎鎮守府の提督が性格に難があって弾かれた可能性も充分ある。理由について追及する事も可能だが、追及したところでたいした話は出てこないだろうし、やぶ蛇になっても面倒くさいか。

 

「それならば仕方ないですね。話を進めて下さい。」

 

「ありがとうございます。今回は夜戦の演習という事ですし、20時頃から演習を開始するように考えておりまして、その時間に合わせて北九州鎮守府を訪問したいと思います。具体的には1〜2時間前に北九州鎮守府に到着するのがベストかと。」

 

「そうですね。演習前の挨拶や準備の時間も必要ですので、妥当な時間設定だと思います。」

 

「それと演習のルールについては、一艦隊六人編成で佐世保鎮守府側は巡洋艦と駆逐艦のみの編成かつ一人新人の重巡洋艦を入れる。北九州鎮守府側の編成は自由ですが必ずプリンツ・オイゲンさんを入れる。これが以前決めた条件だったと思います。これに関して異論はありますか?」

 

「いえ、問題ありません。」

 

「ちなみにですが・・・ビスマルクさんとアトランタさんも演習に参加して頂く事は可能ですか?もちろん一回の演習で三人を参加させるのではなく、3回演習をするので一人ずつ参加して頂く形で構いませんので。」

 

 演習の条件を決めた時にはプリンツ・オイゲンだけしか居なかったが、ビスマルクとアトランタが加入したとなれば当然そちらも気になるよな。

 

「そうですね・・・ビスマルクであれば参加させる事は可能ではあります。ですがアトランタはとても難しいですね。そもそもアトランタは対空に特化した防空巡洋艦ですので、空母の居ない夜戦ではその真価を発揮出来ません。」

 

「なるほど・・・確かにアトランタさんの参加は難しいですね・・・ではビスマルクさんは参加して頂けるのですね?」

 

「条件次第と言ったところでしょうか?希少な海外艦の情報を差し出すのですから、タダという訳にはいかないでしょう?」

 

「むぅ・・・資材や資金で解決出来ればとても簡単なのですが、これ以上北九州鎮守府に支援を送るのは問題がありますので・・・」

 

 ふむ・・・佐世保鎮守府が資材や資金不足に陥る事など無いはずだ。ならば猿田提督との一件で警戒されていると考えるのが妥当か?なら他にも欲しいものはある。

 

「では海外艦の情報には海外艦の情報でどうでしょう?佐世保鎮守府にも海外艦のガングートさんが在籍されていたと記憶しておりますが?」

 

「ガングートさんですか・・・葛原提督が佐世保鎮守府を訪問される時にお会いする事は可能ですが、同じ海外艦とは言え練度に差があり過ぎて対等な条件とは思えませんね。それに葛原提督はガングートさんとお話したいのではなくて、演習等でその実力を知りたいとお考えですよね?」

 

「まぁ、一番気になるのは実力ですが、他にも色々と気になってはいますよ?海外艦ゆえに文化の違い等から艦隊に馴染む事にも苦労があったでしょうし、運用についても難しいものがあったでしょう。そういう話も今後私が海外艦達を指揮する上で参考になるかと考えております。」

 

「あー、海外艦ゆえの苦労ですか。そう言われれば気になるところではありますよね。ではこういうのはどうでしょう?葛原提督が佐世保鎮守府に訪問される際に海外艦の三人も一緒に来て頂いて、うちのガングートさんとお話する機会を設けるというのは如何ですか?もちろん葛原提督も同席されて構いませんよ?」

 

 ・・・こちらからは海外艦三人分の情報を提供することになるが、先任の海外艦から直接話を聞けるのはとても魅力的だ。落とし所として悪くない。

 

「・・・悪くありませんね。」

 

「それとその時にアトランタさんの対空演習を見せて頂けませんか?弾薬等はこちらで持ちますし、相手役の空母もこちらで用意致しますので、当日艤装を準備して頂ければ大丈夫です。その代わりこちらもガングートさんの砲撃演習をお見せ致しますので。」

 

「・・・・・・その条件であれば構いません。それにしても熊井提督はずいぶんと海外艦にご興味がおありのようですね?」

 

「ええ、葛原提督も情報の大切さはご存知でしょう?未知の艦娘に興味があるのは当然では?」

 

「仰る通りですね。では明日からの演習、宜しくお願いします。」

 

「ええ、こちらこそ宜しくお願いします。もし何か問題があれば私にご連絡下さい。」

 

「ありがとうございます。それでは失礼致します。」

 

「ええ、失礼致します。」

 

 香取さんとの通話を終えると、つい安堵の吐息を漏らしてしまう。香取さんは理性的で佐世保鎮守府の権力を振りかざすような真似や、こちらを威圧するような事はしなかった。もちろん理性的な相手の方が話は進むのだが、油断すれば相手の良いようにされてしまうので気が抜けない相手だった。正直に言えば熊井提督が言葉数が少なく判断が早いので、佐世保鎮守府相手の交渉は楽だと思っていたのだが・・・やはり四大鎮守府の一角だから油断出来ない・・・だがこちらにも十分にメリットのある結果だ。良い交渉が出来たと前向きに考えよう。




 今回はドロドロ具合は控えめの小競り合いですね。うん、とても健全な感じですね。
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