突然の追及に大淀が絶句している。しかし少し考えたら想像がつくだろう。敵の接近の報告が無く味方も演習をしていない夜の鎮守府だ、急な敵襲に備えて艤装を取りに行く者、状況把握の為に確認を急ぐ者、命令があるまではと待機する者。混乱する鎮守府の中で一番に執務室に駆け込むのは誰か?そんなもの秘書艦に決まっている。当然憲兵隊もそう考えただろうが、犯人が見つかっていないので、なんとか追及を逃れたのだろう。
「・・・ど、どうしてですか?」
「大淀が秘書艦なのだから、一番情報を持っていそうだと考えるのは当然だろう。それにさっき電話で話した内容は、推理と言うよりは妄想に近いレベルで証拠が無い。」
「ですが黒川さんの質問にちゃんと答えてましたよね?」
「予め話を作っていたからな。それなりの準備は考えていたさ。」
そうでなければただの妄言と思われて終わりだ。ただの推察に過ぎない話に信憑性を持たせようとするのだから、相手を混乱させた上で、相手に犯行が可能だと考えさせるように誘導しなくてはならない。質問の予測くらいやって当然だ。
「それではなんであんな話を作ったのですか?」
「・・・大淀、質問を続ける事で話を反らそうとするな。大森提督が殺された日に何を見た?」
「うっ・・・私が見たのは・・・壊された壁と机とバラバラに散った大森提督です・・・」
大淀は顔を真っ青にしながら答える。ここまで追い詰められても口を割ろうとしないのは、なかなかの胆力だな。
「ふむ、嘘は言っていないが本当の事を隠しているな。他にも見たのだろう?艦娘の誰を庇っている?」
「そ、それは・・・それは・・・」
ついに大淀が膝から崩れ落ちる。その時椅子に当たって倒してしまい、ガタンと大きな音が会議室に響いた。するとドアの向こうから「ひぃ!」と声がした。
「誰だ!?」
誰かにこの会話を聞かれてしまったか、普段なら気配を感じるはずだが、黒川と大淀の相手に集中し過ぎてしまったか・・・
「あ、あの、春雨です、はい。」
「はぁ・・・とりあえず中に入れ。」
「し、失礼します、はい。」
入って来た春雨は足を震わせながら、おどおどとした様子で入ってくる。
「盗み聞きとはいったいどういうつもりだ?理由によっては重い処分を下さなくてはならなくなるが?」
「い、いえ、そんな!盗み聞きをするつもりはありません、はい。その・・・提督にお話がありまして応接室に伺ったのですが、いらっしゃらなかったので・・・会議室から声が聞こえたので、話が終わるのを外で待っていました。もちろん会話が聞こえないように、扉からは離れてました、はい。」
これが事実かどうかは分からないが、ここでやったやってないを議論してもらちが明かない。
「分かった。話したいことがあるなら時間は作るつもりだが、大淀との話が先だ。悪いが後にして欲しい。」
春雨の話も気になるが、まずは大淀から前任者殺害の件について聞くほうが先だ。しかし春雨はなかなか部屋から出ようとしない。
「・・・もしかして、大森提督殺害の件でしょうか?」
「春雨さん!?」
まだ話を続けようとする春雨に大淀が驚いて声をあげる。
「やはり、盗み聞きしていたのか?」
「いえ・・・その・・・なんだか大淀さんが追い詰められているようでしたので・・・この件だと思いました、はい。」
「まあいい、とりあえずまだ話の途中なんだ、一旦席を外してくれ。」
そこまで言ってもなお春雨は下がろうとしない。しかも普段は俯いている顔を上げて、真っ直ぐこちらを見据えてくる。震えながらもこちらを見る目に、それ相応の覚悟を感じてしまう。
「それなら私の話も無関係ではないです・・・その・・・私が大森提督殺害の犯人です、はい。」
「春雨さん・・・」
「ちょっと待て!今なんと言った!?」
流石にこれは耳を疑う話だ。
「ですから、私が大森提督殺害の犯人です、はい。」
正直これは想定外だ。このタイミングで犯人自ら名乗り出るのももちろんだが、一番驚くべきことは、春雨が普通に出撃していたことだろう。自分の推測では今回の事件は艦娘が犯人だと考えていた。さらに言えば艦娘の深海棲艦化が関わっていて、それが原因で提督に攻撃したのではないかと疑っていた。確かに春雨は事件当日に遠征失敗し、所属する艦隊が春雨を残して全滅していたので、容疑者の有力候補だった。しかし2度も出撃して戦闘を行っていたので、容疑者からは外してしまっていた。
「その話は本当なのか?誰かを庇ったりしているのではないのか?」
「いえ、本当だと思います、はい。」
「本当だと思いますだと!?曖昧な表現だな。」
「その・・・撃った時の記憶が無いので・・・でもあの時執務室には私と大森提督しか居ませんでしたし・・・大森提督に鞭で叩かれた時に視界が真っ赤に染まって・・・気が付いたら大森提督を砲撃していたようです、はい・・・」
撃った時の記憶が無いか・・・これはまた厄介な話だが、状況証拠で言えば完全に黒だろう。
「その後の事は覚えているか?」
「大淀さんが部屋に入って来て、お姉ちゃん達を呼んで、お姉ちゃん達に入渠させて貰って、部屋で震えていました・・・憲兵の方に質問された時も怖くて、何も話せなくて・・・お姉ちゃん達が代わりに答えてくれました、はい。」
「つまり、白露達もこの事は知っているのか?」
「そ、そうです、はい。だから私を助けて貰えるように頑張ろうって・・・」
なるほど、それで功績を得る為に焦っていた訳か。まだ話す覚悟が無いと言っていたのも無理はない。提督殺しを許される程の恩赦なんて並大抵のものでは無いだろう。個人的には前任者が殺されたのは自業自得だと思うが・・・
「はぁ・・・大淀。」
「は、はい!なんでしょうか?」
「隠していたことはこれで間違いないか?」
「はい・・・そうです・・・」
大淀も項垂れてこの世の終わりのような雰囲気だ。この様子なら嘘をついていないようだな。
「分かった、もう少し詳しく聞かせてくれ。」
今夜は長くなりそうだ。
と言うわけで前任者は春雨ちゃんがやっちゃいました。でも可愛いのでついつい許してしまいたくなります。あいつクズだったからやっちゃても良いさと言いたいところですが、それではお話がおかしくなってしまうジレンマ・・・
もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。
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主人公葛原提督率いる問題児四天王
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大淀
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長門・陸奥
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第七駆逐隊
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川内・神通
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明石・夕張・間宮・鳳翔
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第六駆逐隊
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北上&大井
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青葉&衣笠
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金剛姉妹
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伊19・伊168
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赤城&加賀
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翔鶴&瑞鶴
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白露型姉妹
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島風&雪風
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天龍&龍田
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龍驤・五十鈴・球磨・摩耶・高雄
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朝潮・木曾・陽炎・不知火
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叢雲ちゃん率いる横須賀艦隊
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俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!