大淀に白露型姉妹を呼び出して貰ったら、すぐにドタバタと足音が聞こえたかと思うと、失礼します!と叫びながら会議室に白露型姉妹が入って来た。
「春雨!?どうしてお姉ちゃんに黙ってこんな事をしたの!?皆で頑張るって決めたのに!?」
「お姉ちゃん・・・ごめんなさい・・・」
「ごめんなさいじゃなくて理由を聞いてるっぽい!ちゃんと答えて欲しいっぽい!?」
「二人とも落ち着いて、提督の前だよ。」
この中では時雨が一番落ち着いているかな?時雨も冷や汗をかいているが、他の姉妹よりは話がしやすいか。
「白露・夕立、後で時間はとってやるから今は大人しくしていろ。時雨、現在の状況がお前達にとって危険な状態なのは分かるか?」
「・・・もちろんだよ。実行犯の春雨だけじゃなくて、秘密にしてた僕達も罰を受けるよね?」
その言葉に春雨が反応して、絶望的な表情をしている。これ以上姉妹に迷惑をかけたくないと思ってやった行動が、姉妹を窮地に追いやってしまったことに気が付いたからだ。
「そ、そんな!?やったのは私です!罰を受けるなら私だけを!」
「私はともかく大本営の奴等は、艦娘達が罪人を庇って嘘をついた、我々大本営に反旗を翻したとか言って騒ぐのは間違いないだろう。鎮守府ごと処分される可能性も否定は出来ん。」
愕然とする春雨とは対照的に、時雨は真っ直ぐこちらを見据えてくる。
「今提督は私はともかくって言ったよね?つまり提督には何か僕達を助けてくれる余地があるのかい?」
「まだ情報が足りないから判断が下せないだけだ。だからお前達を呼んで話を聞こうと思ったのだ。とりあえず事件当時の話をしてくれ。」
「分かったよ、嘘偽りなく話すよ。」
―――――――――――――――――
そこから聞いた内容は大淀の話とあまり差は無かった。大淀に呼ばれて駆け付けた白露型姉妹だが、部屋の惨状に衝撃を受けたが、倒れ込んでいる春雨に駆け寄った。春雨は不明瞭な言葉をブツブツと呟いていた。その後大淀の指示で入渠させて部屋に連れ帰った。憲兵達には提督に乱暴されたショックで話が出来ないからと言って、白露達が代わりに対応したらしい。しばらくすると春雨も落ち着いて会話も出来るようになったが、まだ悪夢にうなされているらしい。それでも新しく着任した提督が成果を求める人だったから、姉妹で協力して戦果を上げて、春雨の恩赦を勝ち取ろうとしていたとのことだ。
「話はだいたい分かった、それにしてもよくそんな状態で出撃させようと思ったものだ・・・」
「最初は僕達だけでやるつもりだったけど、春雨がそれだけは嫌だって泣き付くから・・・それでも春雨は明石さんの検査では問題無かったし、顔色も良くなったんだ。最初はもう本当に青白くて心配したよ・・・」
「ちょっと待て!今なんって言った!?」
「えっ?えっと、春雨の顔色が悪かった話がどうしたんだい?」
「他に変わったことは無かったか?」
「変わったことって言われても・・・あの時の春雨はボロボロで、いつも通りのことのほうが少ないよ・・・」
「髪もピンクが薄くなってて元気が無かったっぽい・・・」
これは顔色が青白く髪の色が薄くなる、つまり白に近づいているってことは、深海棲艦に近づいているってことだろう。しかし今の春雨を見てもそんな感じは無い。確かに顔色は少し悪いが、あくまで体調が悪い人程度のものだ。髪の色に関しては全く変わっていない・・・と思う。これが事実なら軽度の深海棲艦化を引き起こしたにも関わらず、元の状態まで戻ったことになる。兄が探し求めて手がかりすら掴めなかった、深海棲艦化した艦娘を元に戻す方法。その手がかりを春雨が持っているかも知れないと言うことか!?
「もう一度聞くが、明石の検査では本当に何も悪い所は無かったんだな?」
「もちろんだよ。そうでなければ流石に戦闘には連れて行けないよ。」
いや、この精神状態で連れていくのも大概なのだが、そこはもう何も言うまい。実際に戦果は上げているのだ。
「・・・分かった。他に何か言っておきたいことはあるか?」
「僕達は妹を助ける為ならどんな命令にも従うよ。過酷な戦場でもきっと戦果を上げて見せます。だからどうか春雨を助けて下さい。」
「私からもお願いします。もうこれ以上妹達を失いたくないんです!」
「提督さん!夕立ももっともっと頑張って、いっぱいいっぱい敵を倒すっぽい!だから助けて欲しいっぽい!」
「お姉ちゃん・・・」
妹の為に覚悟を決めて頭を下げる白露型姉妹。ここまで来たら覚悟を決めるしかないか・・・大本営の連中に深海棲艦化の話をしても、相手にされないだろうし、艦娘達が大本営に対して嘘の報告をしていたのは、鎮守府を解体する良い口実になってしまう。かと言って知っている者を解体して証拠隠滅しようとすれば、大淀・長門・明石も解体することになるので、鎮守府の機能が麻痺するのは確実だ。それに深海棲艦化について調べるならば、春雨の希少価値は計り知れない。その代わりこの件が漏れたならば、一発で全てが終わる。それほど危ない賭けをせざるを得ない状態だ。誰かの庇護下に入るのも手だが、流石に生殺与奪の権を預けられるほど信用出来る者はいない。
「この件については箝口令を敷く。この件に関して口にすることを禁ずる。大淀、長門と明石にも伝えてくれ。春雨に関しては今後も要観察だ。定期的に明石に検査して貰えるようにする。検査で問題なければ出撃もさせる。あまり長く休ませても疑われるかも知れないからな。」
「と言うことは助けてくれるのかい?」
時雨が恐る恐るといった感じで聞いてくる。だが最後にまだやらなければならない事がある。
「助けると言うよりは共犯者になったってほうが正しいか・・・私はその覚悟を決めた。だから春雨、お前も覚悟を決めろ。」
「覚悟を決めろと言われても・・・どうすれば良いんですか?もう私は皆の足を引っ張りたく無いんです!」
春雨が悲痛な叫びをあげるが、はっきり言ってそんなものは甘えだ。
「足を引っ張りたく無いなら、必死に訓練するしかないだろう?強くなるしか道は無い。はっきりと言っておくが、もし春雨が居なくてもこいつらには戦場に出て貰う。その時にお前が強くなっていれば、こいつらを助けられるかも知れない。だが蹲って動かなければ、そんなことは絶対にあり得ない話だ。」
「・・・努力はしました!!それでも・・・皆には追い付けないし・・・村雨姉さんは私を庇って沈んだんです!!」
普段大人しい春雨が心の叫びを発するが、こいつは現実に立ち向かう覚悟が足りない。だが叫べるくらいの気概は残っているようだ。
「努力すれば結果が伴うなんて現実はそんなに甘く無い。努力をしても覆せないことなんていくらでもある。だからと言って努力を怠れば、もっと多くのものを失うだろう。これは戦争だ、絶対に勝てるなんて保証は無い。ならばより勝率を上げる為に出来ることをするしかない。もちろんそれは戦闘だけではない、哨戒も遠征も工房や食堂で働く後方支援の者達も、全てが必要なのだ。そこに甘えが許される余地は無い。だから苦しくても辛くても歩みを止めるな!お前達がそこまで努力したならば後は私の責任だ、私が勝つ為に全力を尽くすことを誓おう。だから春雨、覚悟を決めろ。」
春雨は涙を流しながらもこっちの目を真っ直ぐ見ている。ようやく覚悟を決めたか?
「分かり・・・ました。私も戦います。もう姉妹を沈めないで済むように、もっともっと強くなります、はい。」
なんだか最後の最後がしまらない感じだが、まあ及第点だな。これで晴れて自分も共犯者だな。
「ふー、良かったぁ!これでおとがめ無しかぁ。お姉ちゃん安心しちゃったぁ!」
「すごく心配だったけどなんとかなるっぽい。」
「これで安心して眠れるよ。」
おとがめ無しか・・・いくら秘匿するからと言って、一応犯人を匿っていた訳だし、全く罰を与えないのも良くないか・・・
「残念ながら罰は与えるぞ?秘匿する必要があるから、あまり派手なものは出来ないがな?一応提督殺しの犯人を匿っていたのだ、それくらいは受け入れろ。」
喜びムードが一瞬にして静まり返る。まあ、あまり浮かれたままにするのも不味いしちょうど良い。
「え、えっとぉ・・・罰って何かな?お姉ちゃんちょっと怖くなってきたんですが・・・」
「白露型姉妹と大淀・長門・明石は罰として明日は営倉の掃除をしてもらう。嫌な仕事だろうが、本来なら解体されてもおかしくないんだ。諦めて受け入れろ。」
そうして複雑な表情をする白露型姉妹と大淀に今日はもう休むように伝えて、自分も応接室へと休みに行った。
やっとドロドロ展開が終わったんだ。次回はほのぼの展開が書きたい・・・(内容はまだ白紙)
もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。
-
主人公葛原提督率いる問題児四天王
-
大淀
-
長門・陸奥
-
第七駆逐隊
-
川内・神通
-
明石・夕張・間宮・鳳翔
-
第六駆逐隊
-
北上&大井
-
青葉&衣笠
-
金剛姉妹
-
伊19・伊168
-
赤城&加賀
-
翔鶴&瑞鶴
-
白露型姉妹
-
島風&雪風
-
天龍&龍田
-
龍驤・五十鈴・球磨・摩耶・高雄
-
朝潮・木曾・陽炎・不知火
-
叢雲ちゃん率いる横須賀艦隊
-
俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!