疑心暗鬼提督のブラック鎮守府再建   作:ライadgj1248

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 思ったよりも早い更新です。


2話

 表向きは取り繕っていたものの、見え隠れしている問題点に頭を抱えながら広場に出ると、大淀が駆け寄って来た。

 

「提督、艦娘総勢40名集合致しました。」

 

「・・・早かったな

 揃っているならもう始めよう」

 

「ハッ!!かしこまりました!!」

 

 短く返答した大淀が艦娘の列に戻って行く、広場には学校にもあった簡易的なお立ち台があり、たった三段の階段が地獄への入り口にすら見えてくる。だがここから始めなければ成果は出せず、大本営の連中はニコニコ笑顔で罵倒してくるに違いない。あんなクズどもに良い思いをさせてやるのは反吐が出る。どうせやるからには自分のやり方で目にもの見せてやろうじゃないか。

 

「総員、提督に敬礼!!」

 

 階段を登り終えると号令と共に艦娘達が敬礼をしてくる。号令をかけたのは大淀ではなく・・・確か戦艦の長門だったはずだな。おそらく長門が艦娘達の取りまとめ役なのだろう。敬礼で答えて手を下ろせば一斉に気をつけの姿勢へと戻る。本当にこういうところは訓練が行き届いているようだ。ざっと見渡したところ全員が緊張で強ばっているのは予想通りだが、もう一つ気になったのは艦娘の構成が偏っていることだ。戦艦と正規空母はかなり揃っているが、その他艦種が少ないのは問題だ。前任者は戦艦と正規空母でごり押しする戦いを好んでいたのが良くわかる。そんな資源をどうやって集めていたかは・・・先が思いやられる。唯一良いことは被弾したままの艦娘が居ないことだろうか、まあどうせ汚職を隠すために上の連中の誰かがやったことだろうが。

 

 いつまでも黙ったままでは居られないし始めるか。

 

「初めまして、今日からこの鎮守府に着任した葛原だ。士官学校に在学中だったが殉職した前任者に変わって急遽着任することになった。至らないところもあるとは思うが宜しく頼む。」

 

 さてここからが本番だな。

 

「まず始めに着任にあたって大本営からの指令がいくつかある。通常の提督としての任と平行して前任者の汚職の調査と鎮守府の建て直し・・・そして殺された前任者の死因の究明だ。」

 

 やはりか・・・前任者の汚職の話では微動だにしなかったが、死因の調査の件では動揺が見られる。特に幼い駆逐艦達は動揺を隠しきれていないな。

 

「この件に関しては事前に大本営が調査を行ったが原因究明に至っていない。なので引き続き調査を私が引き継ぐこととなった。そして諸君らも知っているとは思うが、大本営は今回の事件を深海棲艦か艦娘のどちらかが犯人として捜査している。」

 

 どちらかと言えば艦娘が犯人だと言う説が濃厚だが、証拠もなく提督が艦娘に殺されたとなると初めてのケースなので、なぜそんな事が起こったのかを調べなければ安心出来ないのだろう。そうでなければ鎮守府の艦娘全員を解体することで解決しようとしただろうし。

 

「この件に関しては大本営側でもかなり揉めていて、過激なものは鎮守府の全艦娘を解体するべきだという意見もある。」

 

「そんなのあんまりだろうが!!」

 

「て、天龍ちゃん!?」

 

 おお、プレッシャーをかけてみたらさっそく一人耐えきれなかったか。

 

「前のクソ野郎がなにをしてきたかわかってんのか!?命令に逆らえないのを良いことに無茶な戦いで仲間が何人も沈められた!!罰として笑いながら拷問されたこともある!!さらには娼婦の真似事だってさせられた!!あんなクソ野郎は死んで当然なんだよ!!」

 

「天龍ちゃん!!もうやめて!!」

 

 ああ、やっぱり前任者はクソ野郎だったか。改めて聞くとずいぶんと好き勝手やってたようだ。そして突っ掛かって来た天龍は姉妹艦の龍田に抑えられながらも睨んで来る。

 

「前任者の悪行については予想はしていた、追って調査と報告もするし、死んで当然の奴だったってのは同意見だ。だがここは軍だ。上官殺しが起こった可能性があるなら調査しなくてはならない。しかも大本営が痺れを切らして全艦解体命令を出す前にだ。だから諸君らも調査に協力して貰いたい。」

 

「理不尽だろうが!!

 そんな話に納得出来るか!!」

 

 これだけ反応すると言うことはやはり深海棲艦の線は薄そうだな。ざっと見回したら張りつめた表情の戦艦や空母達と青ざめている駆逐艦達が対照的だ。

 

「ああ、理不尽だし納得なんて出来ないことは知っている。だがこれは命令だ。いくら上の連中が腐っていようとも軍に居る以上命令に従わなくてはならない。それは捨て石としてこの鎮守府に着任させられた私も同じだ。」

 

「捨て石だと?」

 

「ああそうだ、誰が好き好んで提督殺しが起きた危険な鎮守府に着任したいと思う?誰が前任者が好き放題やった後始末をやりたいと思う?生憎私は上の連中からは嫌われていてね、奴らからしたら私が殺されようが一向に構わないし、もし鎮守府の建て直しに成功したのなら、適当な罪を擦り付けて解任しようぐらいに思っているだろう。幸いこの鎮守府ならば問題になるようなことは山程あるからな。」

 

「なんだよそれ、なんで人間は皆そんな奴らばかりなんだよ・・・」

 

「軍人としての職業倫理のない一般人を提督の才能があるからと言って、力と権力を与えてしまった弊害だろうと私は考えているが、権力を持った人間は大概そんなもんだという気もするな。」

 

 現実に絶望する天龍が黙ってしまった。つい辛い現実ってやつを語ってしまったか。他の艦娘の反応も似たり寄ったりだな。

 

「とりあえず話は以上だ、今後の諸君らの協力を期待する。今後の予定については夕食前に改めて通達する。何か質問がある奴はいるか?」

 

「では質問してもいいだろうか?」

 

 そう言って挙手したのは長門だった。やはり艦娘達の取りまとめ役として責任感を持っているのだろう。

 

「ああ、なんだ?」

 

「提督は私達を、この鎮守府をどうしたい?」

 

「私も上の連中の良いように使われて終わるつもりはない。だから真っ当な鎮守府として建て直し、汚職等で付け入る隙を与えないようにし、上を黙らせる程の戦果をあげて提督の地位を守るつもりでいる。だから私は私のために諸君らの待遇を改善することを約束しよう。」

 

「わかった、理由はどうあれ待遇を改善して貰えるなら文句はない。私達は私達のために戦果を約束しよう。」

 

「他に質問がある奴はいるか?

 ・・・居ないのであればこれで解散とする。あと大淀・間宮・明石・長門の四名は今後の予定の打ち合わせをするので会議室に来るように。では解散」

 

「提督に敬礼!!」

 

 敬礼をする艦娘達に敬礼を返しお立ち台から降りる。伝えることは伝えたし、色々と情報も得られたが先の事を思いやると憂鬱だ。それでもどんな形であれ最初の一歩は踏み出したのだ。上の連中に目にもの見せてやると決めた以上、歩みを止める気はない。




とりあえず書きたいところの一番目は書き終えた感じです。ここから上層部とのどろどろな戦いが待っていると思うと、心が踊りますね。いや、深海棲艦と戦えよ。

もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。

  • 主人公葛原提督率いる問題児四天王
  • 大淀
  • 長門・陸奥
  • 第七駆逐隊
  • 川内・神通
  • 明石・夕張・間宮・鳳翔
  • 第六駆逐隊
  • 北上&大井
  • 青葉&衣笠
  • 金剛姉妹
  • 伊19・伊168
  • 赤城&加賀
  • 翔鶴&瑞鶴
  • 白露型姉妹
  • 島風&雪風
  • 天龍&龍田
  • 龍驤・五十鈴・球磨・摩耶・高雄
  • 朝潮・木曾・陽炎・不知火
  • 叢雲ちゃん率いる横須賀艦隊
  • 俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!

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