心配そうな大淀から電話を受け取り、一呼吸置く。これから魔物と対峙するのだ、それ相応の覚悟が必要だ。大淀は気を効かせて録音機器を持って来たが、首を横に振って断る。これから話す内容は証拠を残しておきたくない。それを確認した大淀は席を外してくれた。
「お電話変わりました、提督の葛原です。」
「呉鎮守府の久藤だ。要件は分かってるよな?」
「心当たりが多くてどれのことか分かりませんね。」
「おい、とぼけてんじゃねぇぞ?」
ふむ、これくらいで怒って感情剥き出しにはして来ないか・・・
「私が久藤提督の傘下に入らない件ですか?前任者の調査の件ですか?それとも平川市長から言質を取ったことですか?・・・それとも私が鶴野提督の傘下に加わった件ですか?」
「全部気に食わねぇが・・・最後の冗談が一番気に食わねぇなぁ!?」
「すみません、最後のはまだでしたね。」
「『まだ』か・・・舐めた態度とるなら、俺への宣戦布告と見なすぞ?」
やはり簡単な挑発じゃ冷静さを崩せないか、まあこの程度でどうにかなる相手ではないか・・・
「失礼しました。しかし本格的に敵対される場合はそれしか手段が無いことはご理解頂きたい。私の力だけでは久藤提督に簡単に潰されてしまいますので。まあ、本当に最後の手段ですがね。」
「だったら何故さっさとあいつの傘下に入らないんだ?」
「それは簡単な話ですよ。鶴野提督が嫌いだからです。信用出来ない人間の傘下に入るのは恐ろしいですから。」
「クックックッ。それはなんとも単純な理由だな。なら俺の傘下に入らねぇのも同じ理由か?」
「そうですね。しかし鶴野提督よりはマシなので、交渉するなら久藤提督だと思っていますよ?」
電話越しに久藤提督が大笑いしている。掴みとしてはまずまずか・・・
「ずいぶんはっきりと言うじゃねぇか。だがコソコソ嗅ぎ回っておいて今更交渉だと?あまり舐めた事言ってんじゃねぇぞ?」
「調査に関しては大本営からの命令ですので、面倒でも仕事はこなさなくてはならないので。何もありませんでしたで納得させられる状況では無いでしょう?久藤提督が大本営の命令を撤回させて頂けるなら、すぐにでも打ち切りたい仕事ですが?」
まあ、そんな事が出来るなら最初からやっているだろうがな。
「ッチ!だから最初から俺の傘下に入れと言ったんだ。そしたら上手く隠蔽して、お前にもそれなりの見返りを用意したのによぉ。」
ふん、そんな話は久藤提督が信用出来ない時点であり得ないな。そろそろ話を進めるか。
「それは無理な相談ですね。さて、交渉の話ですがこちらの手札としては、憲兵隊の黒川さんにはまだ開示していない証拠があります。鶴野提督に渡せば久藤提督の陣営に大打撃を与えるくらいの決定的な証拠です。」
「ほう?何を見つけたんだ?」
「それを伝えてしまったら情報操作したり、証拠隠滅の為に人を送り込むのでしょう?」
「お前はどんなカードを持っているかも伝えずに信じろと言うつもりか?」
「用心の為には仕方ないかと。相手が大き過ぎるのも問題ですね。」
しばらく沈黙が続くが、どうやら話を進めてくれるようだ。
「それで?俺を脅してどんな要求を押し通すつもりだ?」
ふぅ・・・とりあえず話は聞いてくれるか。第一関門は突破かな?次はどこまで要求を通せるかだな。
「私の要求としては汚職捜査の件を解決する事です。つまり犯人を捕まえて大本営に解決したと認めて貰うことです。あと不正に売られた艦娘達を取り戻す事も要求します。」
「バカなこと言ってんじゃねぇぞ!?それだと交渉にすらなってねぇだろ!?」
ここまでなら当然の反応だな。
「ですから落とし所として、久藤提督には生け贄にする人物を選んで頂きたい。その人に罪を全て擦り付けて他の陣営の方を守る。この辺が落とし所としては納得出来る場所ではないですか?」
「ほぅ・・・つまりこっちで捜査の終わりを作って、被害を最小限に留めようって話か。そしてお前は事件を解決した功績を得ると。」
「ええ、こういうのお得意でしょう?私一人では大本営から認められないでしょうが、久藤提督が圧力を掛ければ可能なのではないですか?」
そう問いかけると数秒の沈黙があった後に、深いため息が聞こえてきた。
「まったく・・・お前さんやっぱり俺の傘下に入らないか?その悪辣な性格ならうちで上手くやっていけると思うぞ?」
「それはお断り致します。」
「ッチ、言ってみただけだ。大本営に圧力かけるのは問題無いが、筋書きは考えてあるんだろ?」
「もちろんです。大森提督が平川市長と結託して艦娘の不正利用をしていた。その際久藤提督がバックについていると嘘をついて周囲を脅していた。捜査の結果不正に売られていた艦娘を保護して、平川市長は余罪の捜査の為に大本営へと護送される。こんなところでしょうか?それ以降の話はお任せしますが。」
「悪くはないな。本当に性格悪い奴だ。」
「お褒めにあずかり恐縮です。」
「ではそういう話で進めるが・・・裏切ったらどうなるか分かってるよな?」
「もちろんですよ。私の目的はこの鎮守府で提督を続けることですので、これ以上危ない橋は渡りたくないです。なのでそちらが裏切らない限りは大丈夫です。」
「ああ、なら契約成立だ。艦娘が売られた先にはこちらから勧告しておく。従わない奴は平川と同じようにすれば良い。今後も宜しく頼むぞ。」
「ありがとうございます。ですが今回限りのお付き合いとなるように願っております。」
「ッチ、いけすかない野郎だ。もう切るぞ。」
久藤提督が電話を切ったことでやっと交渉が終わった。極度の緊張が緩んだ反動で机に突っ伏して大きなため息をつく。正直汚職の隠蔽に加担するのは気が進まないが、こうでもしないと久藤提督と鶴野提督の間に挟まれて磨り潰される。どちらかの傘下に加わるのが嫌な以上、この辺が妥協点だろう。とりあえず大まかな流れは決まったが、今後久藤提督に出し抜かれないように気を付けなくてはいけない。契約は成立したが、信頼出来る相手ではない。・・・気晴らしに演習の様子でも見に行くか・・・
ということで、久藤提督との戦争は一応回避されました。その代償として汚職の隠蔽に加担してしまうことに・・・普段はリスクを恐れるくせに、ここぞと言うときには大きなリスクを背負うヤバい奴です・・・
もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。
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主人公葛原提督率いる問題児四天王
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大淀
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長門・陸奥
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第七駆逐隊
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川内・神通
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明石・夕張・間宮・鳳翔
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第六駆逐隊
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北上&大井
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青葉&衣笠
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金剛姉妹
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伊19・伊168
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赤城&加賀
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翔鶴&瑞鶴
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白露型姉妹
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島風&雪風
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天龍&龍田
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龍驤・五十鈴・球磨・摩耶・高雄
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朝潮・木曾・陽炎・不知火
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叢雲ちゃん率いる横須賀艦隊
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俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!