疑心暗鬼提督のブラック鎮守府再建

43話

　一応ほのぼの回。多少黒いところが見え隠れするのはご愛嬌。

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　大淀を伴って海上演習場へと向かう。大淀は自分の顔を見た瞬間に何があったのですか？と心配していたが、久藤提督の相手で疲れただけだと言って、そのまま連れてきたのだ。演習場に近づく前から砲撃音が鳴り響いており、順調に演習が進んでいるようで安心する。海上演習場にたどり着くと、陸奥が重巡洋艦達の航行演習をさせているところだった。

「演習の調子はどうだ？」

「あら、提督・・・なんだかお疲れみたいね。演習は順調に進んでいるわ。でもやっぱりまだ立ち直れてない娘達もいるから・・・そういう娘達は演習の成績にも大きく影響してるわね・・・」

　やはり精神面の不安定さで性能の低下を引き起こしてしまっているか・・・こういう所が艦娘がただの兵器では無い部分だろう。やはり士気の管理も重要な仕事だな。

「でももちろんやる気な娘達もいるわ。今走らせてる重巡洋艦の娘達も、最初に比べたら格段に良くなってるわよ。」

「なるほど、他の艦娘で気になる者はいるか？」

「その・・・成績が悪いから処罰の対象にしたりはしないのかしら？」

　陸奥は少し躊躇って質問してきた。気になる者がいるが、自分の発言でその者達が処罰を受けるのは嫌なのだろう。

「今後の参考にするだけだから安心しろ。状況を把握しなければ対策も練れない。」

「そう・・・なら調子が悪い娘達だけ伝えるから気にかけてあげて欲しいわ。まず五航戦の娘達の動きが硬いわね。次に金剛姉妹はなんというか、動きが雑というかなげやりというか・・・ただメニューをこなしてるって感じね。でも榛名は真面目に取り組んでいたわ。川内さんはお昼だからあんまり調子が良くないわね。あの娘夜は凄いけどお昼はちょっと苦手みたい。駆逐艦の娘達だと曙が一番良くないわね・・・彼女は前の提督から目の敵にされていたから・・・あと吹雪・睦月・如月の３人もまだまだ不安ね・・・」

　なるほど・・・川内は夜戦で活躍させれば問題無いが、他はやはり気になるところだ。五航戦は面談の感触からすると、少しずつ改善しそうな見込みがあるが、榛名を除く金剛姉妹は何かしら対策が必要だろう。幸い榛名がやる気になってくれているので、見込みが全く無い訳ではない。問題はまだ面談を行っていない駆逐艦の娘達か。特に曙が重症のようなので要注意だろう。

「潜水艦の二人はどうだ？」

「そうですね・・・イムヤさんは元が真面目な人なので、演習にはしっかり取り組んでいますね。イクさんは・・・格別悪い訳ではないけれど、良くも悪くもマイペースな娘だから・・・」

　なるほど、可もなく不可もなくってところか。最悪の状態でないだけマシだな。

「あと大和はどうだ？戦艦の中では唯一話をしていないのだが？」

「そうねぇ。彼女も調子を取り戻しつつあるわ。優しい娘だからかなり苦しんでいたけれど、提督が代わってちょっと前向きになれた感じかしら？今は長門の所で砲撃演習しているはずだけれど、なかなか良い音じゃない？」

　さっきから聴こえていた砲撃音は大和のものだったか。砲撃音で良し悪しを判断出来るほどではないが、陸奥が良いと判断しているならそれを信じておこう。

「それなら設備の方は問題無かったのか？」

「そこは明石と夕張が頑張ってくれたわ。元々整備されずに放置されていただけで、壊れていた訳ではないもの。すぐに整備をしてくれたわ。」

「分かった、色々と参考になって助かった。」

「あら、お役に立てたなら良かったわ。」

　そう言って微笑む陸奥は、余裕があるお姉さんといった雰囲気で頼りになる。凛々しい長門と良いコンビだな。

「ではそろそろ昼飯の時間だから、長門にキリの良いところで休憩するように伝えてくれ。」

「分かったわ。最近は美味しいご飯が食べられるから嬉しいわ。」

「それは良いことだ。今日改めて士気の重要性を確認したところだからな。しっかり食べて調子を整えてくれ。」

「ええ、ありがと。」

　とりあえず演習の様子は聞けたから、自分も食事にするか。そう思って食堂に向かおうとしたら、大淀が近くに居ない事に気がついた。辺りを見回すと少し離れた所で何か通信をしているようだが、なんだか困った顔をしている。

「どうした？」

「あ、提督、その提督にお電話なのですが、相手がよく分からなくて・・・」

「相手が分からない？名乗らないってことか？」

「ええ、その名前を聞いても『葛原に汝の盟友からだと伝えれば分かる』とだけ・・・」

　ッチ！面倒な奴からの電話か。悪い奴ではないのだが、相手をするのが面倒な奴だ。しかし何かしら伝えたい事があるのだろうから仕方ない。

「はぁ・・・士官学校の同期だ・・・代わってくれ。」

「あ、はい、どうぞ。」

　さて、どんな話を持ってきたのだろうか？

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　演習を監督している長門の出番かと思ったら、陸奥が出てきてしまった。作者もびっくりしてます。