疑心暗鬼提督のブラック鎮守府再建   作:ライadgj1248

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 今回は妖精さんのお話です。妖精さんは謎が多すぎて、設定を決めるのも難儀しますね。


51話(妖精さん挨拶)

 夕張が工廠に入ってしばらくすると、数人の妖精さんを連れて来てくれた。夕張の肩に乗っている者や腕に抱えられた者がいたが、全員夕張にしがみついていて、こちらをかなり警戒しているようだ。妖精さんの数がこれだけということは無いはずなので、おそらく代表で出てきたか、もしくは夕張が声をかけて比較的警戒心の少ない者達を連れて来たかだろう。士官学校時代に見た妖精さん達は、どこかのほほんとした気まぐれなイメージだったが、艦娘達と同様に環境でここまで変わってしまうものか・・・

 

「あー、とりあえず作業台の上に並んで貰えるか?」

 

 妖精さん達は夕張に諭されながら、しぶしぶ夕張から離れて作業台の上に並んでいく・・・と思ったが青髪でモンキーレンチを持った妖精さんを先頭に、後ろに隠れるように集合している。この青髪の妖精さんがリーダー的な存在なのだろうか?それにしてもかなり怯えてしまっている。こうやって怯えられると、士官学校の同期だった小森を思い出す。いや、呼んだら姿を現してくれるだけ妖精さんのほうがマシかな?きちんと並ぶように注意しようとしていた夕張を制して、作業台の前で膝立ちになる。怯える相手の警戒心を和らげるには、目線を合わせるのが効果的だったはずだ。自分はそこそこ背が高いので、見下ろされる恐怖はよく分からないが、小森相手に有効だったのできっと妖精さんにも通用するはずだ。妖精さん達もかなり驚いているようだが、さっきよりは警戒心が薄れた気がする。

 

「では改めて、先日からこの鎮守府に着任した葛原だ。鎮守府を運営していくうえで、諸君等には協力して貰う事も多々あるだろう。諸君等は前任者から不当な扱いを受けて来たと聞いているが、私はそんな真似をするつもりはない。だから諸君等も力を貸して欲しい。宜しく頼む。」

 

 敬礼をして真っ直ぐ見つめていると、妖精さん達はお互いに顔を見合わせた後に、整列してビシッと敬礼を返してくれた。とりあえずは認めて貰ったといったところか。妖精さんは喋れないので、行動によって判断するしかない。まあ、ごく稀に妖精さんの声が聞こえる提督もいるらしいが、生憎自分にはそこまでの才能はなかったようだ。とりあえず手土産として持っていた金平糖を妖精さんの前に置くと、興味津々のようだ。

 

「これは挨拶代わりの贈り物だ。仲間の妖精さん達と分けて食べて欲しい。今後の諸君の活躍に期待している。」

 

 そう伝えると金平糖に一気に妖精さんが群がって行く。ここまで大喜びなら掴みとしては上々だろう。・・・いつの間にか妖精さんの人数が増えてる気がする。どこかで隠れて様子を見ていたのだろうか?

 

「いやー、提督良かったですねぇ。妖精さん達も大喜びみたいです。それにしても甘い物で買収するとは、なかなかやりますね~」

 

「鎮守府の運営には欠かせない存在なのだから、関係を良好に保つのも提督の仕事だ。それに相手の好物を知っているならば、関係改善にそれを贈るのは常套手段だろう?」

 

「あーなんと言うか・・・打算を一切隠さないその発言はどうかと思いますが・・・いや、むしろ正直で良いのかな?」

 

 目の前でその事を口にしてしまった夕張も、かなり分かりやすい方なのではないだろうか?正直なところ人間と友好的な関係を築くのは苦手な方だという自覚はある。これがお互いの利害がはっきりした関係や、こちらと敵対するような相手なら慣れたものだが・・・

 

「私も軍人だ。馴れ合いよりは利害関係で動いた方が良いだろう。軍とは合理性を求めるものだと考えている。しかし艦娘達や妖精さんにも感情があって、しかも通常の軍人とはかけ離れた性格の者も多いとなると、普通の軍隊のようにはいかないから苦労するだろうな。」

 

「と言いますと?」

 

「例えば士官学校時代に居た霞だが、頻繁に提督を罵倒する存在として有名だが、普通の軍人が上官にそんな事しようものなら、即座に懲罰ものだ。うちの鎮守府でも本当に真面目な性格で、軍人らしい者は少ないのではないか?特に駆逐艦達は精神的に幼い者も多い。」

 

「あー、それはそうかもですねぇ。でも駆逐艦の娘達だって軍艦としての誇りを持っていますし、任務には真面目に取り組んでいると思いますが?」

 

「ああ、そこに関しては信頼している。だからこの話は戦闘時以外の話だな。まあ、ある程度妥協しなければ鎮守府の運営そのものが成り立たない事は、士官学校できちんと学んだつもりだ。あまり心配する必要はない。」

 

「提督も色々と考えられてるのですね~私は兵器の開発とか整備とかには詳しいですが、その辺りの事はよく分からないです。」

 

 夕張は難しそうな顔をして、首を捻っている。やはり軍人というよりは職人気質なのだろうか?

 

「その辺りの調整も私の仕事なのだろう。規律を大きく乱すようならば、罰を与える必要があるだろうが、ある程度の許容力が無ければ上手く艦娘達を扱えないだろうからな。」

 

「提督も大変ですね~」

 

 確かに大変ではあるのだが、素直で純粋な者が多い艦娘の相手なんてまだ楽なほうだ。人間相手の苦労とは段違いだ。しばらく夕張と話をしていたら、夕張の肩に一人の妖精さんが登っていた。両手に金平糖を持っていて、一つ夕張に差し出しているようだ。

 

「あ、私にも分けてくれるの?ありがとう♪」

 

 その妖精さんは夕張の口に金平糖を投げ込んで、肩の上で自分の金平糖を食べて満足そうな表情だ。しばらく妖精さんの様子を眺めていると、こちらに向かって敬礼をした後に、少し光ったかと思うと夕張に吸い込まれるように消えていった。

 

「・・・今のはどうなったんだ?」

 

「あら?提督は初めて見るのですか?今の娘は普段私の中で計器とかの制御をしてくれている妖精さんで、金平糖に釣られて出てきてたのですが、満足してまた私の中に帰って来たんですよ。」

 

 そうだったのか・・・知識として妖精さんが艦娘に搭乗して、主砲や艦載機などの制御をしている事は知っていたが、実際に乗り込む姿は初めて見た。やはり艦娘も妖精さんも謎が多いな。改めて作業台の上を見ると、満足してごろごろしてるもの、仲間に持って行くのか金平糖を背負ってどこかへ行く者など様々な動きをしている。

 

「さて、妖精さん達、そろそろ仕事の話をしても構わないか?」

 

 作業台の上の妖精さん達に声をかけると、改めて整列してから敬礼をしてくれる。どうやらやる気は十分のようだ。

 

「今日は執務室の修繕と私室の改装を頼みたい。執務室は壁が崩れてしまっているので、そこを修理して貰いたい。そして私室だが無駄に豪華で広すぎるので、シンプルな部屋を二部屋にしたい。大仕事になるが頼めるか?」

 

 そう聞くとハチマキを頭にしてノコギリを持った妖精さんが、腕捲りをしてドヤ顔をしている。どうやらやってくれるようだな。

 

「ああ、提督、妖精さんに頼むのは良いんですが、妖精さんが作業している間は中に入れなくなりますけど大丈夫ですか?」

 

 少し慌てたように夕張が注意してくるが、特に問題はないだろう。

 

「ああ、問題ない。忠告感謝する。」

 

 さてと、これで執務室と私室の問題は解決しただろう。夕食までまだ時間が残っているし、一組くらい面談でもしておくか。本当ならば演習の結果を見てからが良いのだが、流石にまだまとめ終わって無いだろう。

 

「それではこれで失礼する。夕張のおかげで妖精さんとも良好な関係が構築出来た。感謝する。」

 

「い、いや~当然のことをしただけですよ~」

 

 若干照れた様子の夕張に改めて礼を言って、工廠を出て執務室に向かう。さて、誰を呼ぶべきだろうか?

 

「提督さ~ん!待って下さ~い!」

 

 振り返ると夕張が工廠から慌てて出てきた。何か忘れ物だろうか?

 

「今大淀さんから連絡があって、正門にお客様が来てるみたいです。門番をしている憲兵さんは『北条麗子』さんが来られたと言ってます。お付きの執事さんも居るそうですが、お知り合いですか?」

 

「はぁ・・・士官学校の同期だ。大淀と長門は作業中で、陸奥も報告書を作っているだろうな。加賀に連絡して応接室に案内するように言ってくれないか?」

 

「はい・・・加賀さんから了解しましたとのことです。」

 

「分かった。助かる。」

 

 それにしてもあのお嬢様は、アポ無しで唐突に来やがったな・・・




 以上妖精さんのお話でした。でも夕張もなかなか登場シーンが多かった気もする。解説役ご苦労様です。
 それと次回は主人公の同期組二人目の登場です。予告があった小森さんよりも早い登場となりました。

もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。

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