護送車の中は暗い雰囲気が漂っていた。散々人間の玩具にされてきたのだから無理も無い。ひとまず鎮守府に連絡をしておくか。
「春雨、大淀に通信を繋げてくれるか。」
「はい、少しお待ち下さい・・・どうぞ。」
「大淀、聞こえるか?」
「はい、大丈夫です。」
「今売られていた艦娘達を11人全員保護して鎮守府に連れ帰っている所だ。帰還したらまず入渠させるつもりだが、かなり損傷が激しい者もいる。自力での移動と入渠が困難だと思われるので、運べるように準備を整えてくれ。」
「了解しました。出力のある戦艦や空母達を中心に準備をしておきます。」
「それと高速修復材の準備も頼む。」
「・・・分かりました。そちらも準備をしておきます。」
「ああ、頼んだぞ。」
通信を閉じると近くに来ていた球磨が不思議そうな顔をしている。
「提督、これから球磨達はどうなるクマ?もしかして球磨達は久しぶりにみんなに会えるクマ?」
「鎮守府に戻ったらまず入渠を済ませて貰う。その時に他の艦娘達とも顔を合わせるはずだ。」
「みんなに会えるのは嬉しいクマ!」
流石に疲れているようだが、多少は表情が明るくなったか。
「ちょっといいか?」
声がしたほうを見るとこちらを睨んでくる艦娘がいた。たしか・・・摩耶だったか?
「高雄型重巡洋艦3番艦の摩耶だ。お前が新しい提督だって事は聞いたが、これからアタシ達をどうするつもりだ?」
「先程入渠させる話はしたのだが・・・その後の待遇の話で良いのか?」
「ああ。」
「私としては諸君には鎮守府の戦力として活躍して貰いたいと思っている。現在の北九州鎮守府は戦力の偏りが大きい。特に巡洋艦が不足しているので、出来るだけ早く実戦投入可能な練度になって欲しいものだな。」
「そんな良い話が信用出来るとでも思ってるのかよ?こっちがどれだけ酷い扱いを受けて来たのか分かって言ってるのか?」
まあ、摩耶の言う事ももっともだな。球磨は純粋に喜んでいたようだが、他の艦娘達は疑いの目で見ている者も多い。
「信用出来ないならばそれでも構わない。むしろ口先だけでどうにかなる話では無いだろう。私は信用は行動によってしか得られないと考えているしな。だが諸君は軍隊に所属している事は忘れるな。上官を信用してなかろうが、命令には従って貰うからそのつもりでいろ。」
「チッ・・・これだから人間って奴は・・・」
摩耶はかなり不機嫌そうだが、今はこれでも仕方ないだろう。衣食住揃って礼節を知ると言うものだ、こんなボロボロの状態ではまともに話は出来ないだろう。それに戦場に復帰する話を良い話と考えてくれているのならば今は十分だ。春雨がおろおろと心配そうにしているが、いきなり信頼を得る等無理な話なのだから、そこまで気にする必要は無いのだがな。
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しばらく重苦しい雰囲気で移動すると、ようやく鎮守府に着いたようだ。護送車を降りると正門の所に多くの艦娘達が集まっている。早く仲間に再会したいのは分かるが、これだけ集まると通行の邪魔だな・・・
「道を開けろ、まずは入渠させるのが優先だ。戦艦や空母は負傷者を運ぶのを手伝ってくれ。」
艦娘達が左右に分かれて道を作り、その間を通って戦艦達が負傷者を運んでいく。途中で姉妹艦達が負傷者に付き添っていたが、そのくらいは許容範囲だろう。負傷者の運び出しが終わると大淀が近づいて来た。
「提督、お帰りなさい。入渠と高速修復材の準備は整っています。」
「助かる。高速修復材の使用を許可するから、早く傷を治してやれ。あと間宮に連絡して、昼食には少し早いが何か食べる物を準備してやって欲しい。食事を済ませて少し落ち着いたら、帰還した者達と話をする。」
「分かりました。」
「それと哨戒に出た鳳翔からは連絡はあったか?」
「いえ、まだですね。ですがもうそろそろ索敵範囲に入る頃だと思います。」
「分かった。ならば帰還組の世話は陸奥に指揮を任せて、長門と大淀は会議室に来てくれ。鳳翔からの連絡が届き次第、作戦会議を始める。」
やるべき事が多くて困ったものだ。いつになったら落ち着けるのだろうか?
――――――――――――――――――
会議室に集まってからしばらくすると、鳳翔から連絡があった。報告の内容をまとめると。
空母ヲ級2
軽空母ヌ級1
戦艦ル級2
重巡リ級3
軽巡ヘ級1
軽巡ホ級2
駆逐イ級5
駆逐イ級後期型2
計18隻の3艦隊
前回より数が多いが、こちらの艦隊でどうにか出来ない訳ではない微妙なラインだ。ただし空母が多いのが気になるところだ。前回はこちらの空母の数が多く、制空権を確保出来て有利に戦えたが、今回は敵のほうが空母が多い。可能ならば五航戦のどちらかに出て貰えれば助かるのだが、昨日の演習結果を見るとまだ不安が残る。それに鳳翔達哨戒組は敵艦載機の迎撃を受けて、多少損害を受けているため参戦はさせない方が良いだろう。
「編成としては相手に合わせるなら、空母を中心とした航空戦部隊と戦艦を主力とした打撃部隊、そして水雷戦隊と言ったところか。水雷戦隊は天龍に白露型姉妹と島風で良いだろう。航空部隊の主力は一航戦に出て貰い、その下に重雷装巡洋艦の二人を付ける。この航空部隊の護衛には誰が適任だと思うだろうか?」
そう尋ねると長門が頭を抱えて悩みだす。
「敵の空母のほうが多いから対空能力の高い者が良いのだが・・・対空能力なら摩耶なのだが、今は出せる状態では無いからな・・・」
「ふむ、やはり対空能力が必要か・・・ならば夕張を出そう。夕張に対空砲を積ませて出せば対空能力も補えるだろう。欠点の速力も空母の護衛ならばそこまで気にならないからな。」
「悪くない考えだ。もう一人だが・・・雪風には打撃部隊での護衛を頼みたいので、候補から外すとすると・・・残った駆逐艦の中では吹雪が一番動けるだろうか・・・軽巡は川内しか残っていないが、夜間哨戒に出した川内を昼間から出撃させるのは不安だからな。」
「それならば吹雪のほうがまだマシか・・・それでも不安は残るが、贅沢は言えないな。打撃部隊だが、演習結果を見ると金剛姉妹だと不安が残るから、長門・陸奥・大和が主力で護衛に雪風とすると残り二人か・・・」
「提督、少しよろしいですか?」
大淀が真っ直ぐとこちらを見つめている。
「どうした?」
「私は今回の作戦に金剛姉妹の起用を提案します。」
ほう、これは意外だな・・・
「理由は?」
「まず金剛姉妹は前任者の時から戦闘で結果を出しています。ですので戦闘に参加するだけの力はあると判断します。」
「ふむ、それだけでは長門達と比べてメリットが薄いな。」
「それと今気になっているのは、提督側についた榛名と他の姉妹との間に距離が出来てしまった事です。ですのでこの戦闘をきっかけに、金剛さん達にも提督のやり方を理解して貰って、榛名さんとの関係を取り戻して欲しいと思っています。もちろん感情論だけで言うのではありません。戦力として考えても、榛名さんを除く金剛姉妹がいつまでも協力的で無い事は大きな損失になります。ですので早めに対策を講じるべきだと思うのですが?」
まあ、意見としては悪くない話だろう。この状況でやる必要があるかは少し疑問だが、戦力として使えると言うのであれば試してみる価値はあるだろう。
「分かった。長門もそれで良いか?」
「ああ、私の力を提督に見せ付けておきたかったが、それは次の機会にさせて貰おう。」
「では金剛姉妹と雪風と・・・青葉を出すか。青葉は一応実戦経験があるはずだ。」
大淀も長門も他に意見は無さそうなので、これできまりだな。
戦闘に向けて準備中です。
もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。
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主人公葛原提督率いる問題児四天王
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大淀
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長門・陸奥
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第七駆逐隊
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川内・神通
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明石・夕張・間宮・鳳翔
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第六駆逐隊
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北上&大井
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青葉&衣笠
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金剛姉妹
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伊19・伊168
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赤城&加賀
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翔鶴&瑞鶴
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白露型姉妹
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島風&雪風
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天龍&龍田
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龍驤・五十鈴・球磨・摩耶・高雄
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朝潮・木曾・陽炎・不知火
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叢雲ちゃん率いる横須賀艦隊
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俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!