出撃する艦娘達を見送って、ようやく帰還して来た艦娘達と対話する時間が取れた。接敵するまでまだ時間がかかるだろうから、今のうちに話をしておきたい。大淀に帰還組を会議室に集めて貰った。
「では改めて、この北九州鎮守府に新しく着任した葛原だ。ここに居る者達は前任者から不当な扱いを受けていたと聞いている。私の希望としては諸君等には私の指揮下で、深海棲艦と再び戦って欲しいと思っている。その場合まずは十分な休息を取り、演習で戦場に出るのに問題が無いと判断するまでは鍛えるつもりだ。本来ならば命令で強制的に指揮下で戦わせる事も出来るのだが、心が折れた奴を艦隊に入れたくはない。だからこれが受け入れられない場合は、すぐに退役して貰う事になる。」
帰還組は押し黙っていたが、こちらを睨んでいた摩耶が声を上げる。
「つまり従わなければ解体するぞって話だろ?人間って奴は本当に身勝手な奴等だぜ。」
「解体はするつもりは無いが、似たような話にはなるな。退役する者には前任者が着服していた分の給与をまとめて渡す事になる。これは建造されてからの日数で計算した額を渡す。その後は余生を好きに生きろ。消え去るまでにやりたい事をするか、もしくは自分で気に入った提督を見つけて仕えるか、そこは自分で考えて自分で決めろ。」
「おいおい、そんな事して本当に大丈夫なのかよ?」
「一応前例が無い訳ではない。東北や北海道地方に追いやられた人権派のやり方だな。本来は艤装に修理不可能な損傷が出た場合の措置らしい。人権派って奴等は意地でも解体をしたがらないようだ。幸せな環境で消えていくのが一番の供養だとさ。」
さすがに摩耶も押し黙ってしまったか。温情のある処置とは言え、消え去るのは恐ろしいと言ったところか?
「まあ、そんな事はアタシには関係ねぇ!アタシは摩耶さまだぜ!?ビビって安全な所でガタガタ震えてるなんてごめんだぜ!!」
「ならば私の指揮下で戦え。やる気があるならば鍛えて戦場に送ってやる。こっちとしては戦力はまだまだ足りないからな。」
「チッ!だからテメエを信用なんざ出来る訳ねぇだろうが!?」
「はぁ・・・ならどうやって戦うつもりなんだ?お前にいくらやる気があろうが、提督の指揮下でないと深海棲艦とは戦えない事くらい知っているだろう?人間不信なのは分かるが少しは頭を冷やせ。」
「そ、それは・・・」
理屈は分かるが感情では納得出来ないと言ったところか。本当に面倒な奴だな。しかしこれも天龍が言っていた誇りを守る為の行動なのか?自分には駄々をこねてる子供にしか見えないが?
「そもそもなぜ私の指揮下で戦う事に、私を信用する事が必要なのだ?ここは軍隊だ。指揮系統をはっきりとさせる事に、信用が必要では無いだろう?もちろん上官と部下が信頼関係で結ばれたほうが、より戦果を上げられるのは知っているが、最初からそれを求めるのは無理だろう?そもそも私も会ったばかりの奴を信頼しろなど無理だ。」
「なんだよ・・・それ・・・」
摩耶はショックを受けているようだが、こんなものは当たり前ではないのか?信用は行動でしか得られないものなのに、会ってすぐに信用するなど愚の骨頂だろう。利害関係で結ばれる契約も、回数を重ねる事で信用になるのだ。
「あー、熱くなってるところちょっと良いかな?」
「えっと・・・衣笠だったか?どうした?」
「私は提督の指揮下で戦うわ。青葉が怖い人だけど信頼出来るって言ってたから、私は青葉の言葉を信じるわ。だから青葉ともども宜しくね!」
「ああ、宜しく頼む。」
衣笠が手を差し出してくるので、握手を交わす。重苦しい雰囲気の中で、自分の意思をきちんと示せるのは好印象だな。
「あー、それで提督さんに提案なんだけど、衣笠さんもやっぱり疲れてるからゆっくり休みたいんだよね。だからこの話は明日にしない?考えをまとめたい娘も居ると思うし。」
それもそうか、入渠を済ませたとは言え疲労が溜まっている状態ではまともに考えられないか。
「良いだろう。こちらとしては指揮下で戦って欲しいという要望も伝えたし、退役する話も説明出来た。あとは各自で鎮守府の様子を見るなり、他の艦娘達に話を聞くなどして決めれば良い。ただし待つのは明日までだ。それまでに結論を出すように。では他に言いたい事がある者はいるか?」
「あ、球磨も提督の指揮下で働くクマ。大井は置いといて、北上は提督の事褒めてたクマ。球磨にはそれで十分クマ。」
「軽巡洋艦神通です。私も国を守る為に戦います。それが私達艦娘の使命ですから。それに姉さんも心配ですし。」
「私は五十鈴よ。悪いけど私はまだあんたを信用出来ないわ。それでも安全な所で余生を過ごすなんて絶対に嫌よ!だからあんたの指揮下で戦ってあげる。でも娼婦の真似事なんて二度とごめんだからね!!」
ほう。軽巡洋艦の3人は指揮下に入ってくれたか。これだけでもずいぶんと助かるな。
「分かった、宜しく頼む。」
「あー、ウチは一旦保留にさせて貰うで。大先輩の鳳翔さんがおるらしいやん。あの人の話聞いてから決めるわ。」
「重巡洋艦の高雄です。せっかく時間を頂けるなら、摩耶と一緒に考えたいと思います。摩耶もそれで良いわね?」
「あ、ああ。」
「えっと・・・重巡洋艦の羽黒です・・・私は提督の指揮下で戦います・・・もう一人きりは辛いので・・・」
羽黒は参戦したが、高雄・摩耶・龍驤は保留のようだ。保留組は良いが、おどおどしている羽黒のほうが気になるところだな。戦う理由が一人きりが嫌だというのはどうなのだろう?まあ、これは今後の課題だな。
「分かった。保留組は明日の夜までに結論を出してくれれば構わない。」
「あーえっと、これ最後は私達って流れみたいですよね・・・」
声がしたほうを見ると、挙動不審な漣、こっちを睨んでいる朧、その後ろに隠れている潮が居た。
「言いたい事があるなら言っておいたほうが良いと思うぞ?」
「じゃあぼのたんの事も心配だし、私達も保留で一つお願いします。」
「分かった、ゆっくりと話をすれば良い。ではこれで解散とする。各自自由にして構わないが、現在作戦行動中だ。私もだが大淀と長門も忙しくなるだろうから、何か聞きたい事があれば陸奥を頼ってくれ。以上だ。」
とりあえず帰還組との話はこれで良いだろう。これで深海棲艦との戦いに集中出来る環境が整ったな。
天龍と同様に反抗的な摩耶さまは、話の構成に使い易いな。
もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。
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主人公葛原提督率いる問題児四天王
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大淀
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長門・陸奥
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第七駆逐隊
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川内・神通
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明石・夕張・間宮・鳳翔
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第六駆逐隊
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北上&大井
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青葉&衣笠
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金剛姉妹
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伊19・伊168
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赤城&加賀
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翔鶴&瑞鶴
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白露型姉妹
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島風&雪風
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天龍&龍田
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龍驤・五十鈴・球磨・摩耶・高雄
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朝潮・木曾・陽炎・不知火
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叢雲ちゃん率いる横須賀艦隊
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俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!