出撃港でしばらく待っていると、出撃していた艦隊が帰還して目の前に整列した。
「第一から第三艦隊および遠征部隊、無事に帰還しました。目標の殲滅及び資材の回収に成功しております。」
「素晴らしい戦果だ。諸君等の活躍に感謝する。これより各自入渠を済ませ、午後8時に食堂へ集合するように。暁率いる遠征部隊は資材の計量をして納品して来てくれ。明石に資材の帳簿をつけさせているから、正確に計量を頼むぞ。」
「ええ、暁は一人前のレディだから、お仕事はちゃんと出来るわ。いっぱいいっぱい持って帰ったんだから!!」
駆逐艦6人にドラム缶だけを装備させて向かわせたのだ。かなりの量が期待出来そうだ。
「ああ、それは楽しみだな。それと金剛は少し話があるから残るように、では解散。」
各自艤装を外して入渠に向かう中で金剛がこちらを睨み付けている。一応金剛だけに残るように伝えたが、金剛姉妹全員が残っていて榛名が心配そうな目をしている。
「Hey 提督。お話はなんデース?」
「まずは今回は見事な戦果を上げてくれた。良く戦ってくれた。しかし今回の戦いではかなり無茶な戦い方をしたそうだな?」
「What?それが何か問題でもありますカ?提督の命令通り誰も沈んでないデース。」
「ああ、今回に関しては問題無い。今の練度で味方艦隊の被害を押さえようと思ったら、突撃して被害担当を引き受けるしかないだろう。練度の高い雪風はともかく随伴艦の青葉の損傷も少ないから、そこにも配慮をしていた事が感じられる。」
「なら何も問題無いネー。」
「私が心配しているのは今後の話だ。今回の敵はこちらにとって面倒な相手だったが、それでも格下だ。強引な戦法でも押しきれただろう。しかし今後もそんな相手ばかりな訳はない。格上の敵が相手ならば突撃したお前達は、集中砲火で潰されて艦隊が壊滅しているだろう。」
「・・・そんなもしもの話をされても困りマース。状況に応じて戦い方を変えるなんて当たり前の事デース。」
「それは当然の事だ。問題は何故今回突撃をせざるをえなかったかだ。答えは簡単だ、お前達の砲撃の精度が良くないからだ。」
金剛は反論出来ず悔しそうに俯き、比叡と霧島が鋭い目で睨んでくる。
「以前の戦い方ならば遠距離から数撃ちゃ当たるとやたらに撃ちまくっていたそうだな。戦艦と空母だけで戦うなら接近する必要が無いのでそういう戦い方だったのだろう。しかし今回は水雷戦隊が参加したから、早急に援護に行く為に突撃を敢行した。いくら精度が悪くても近付けば当たるからな。違うか?」
「その通りデース。でも提督は速やかに敵艦隊を排除して援護に回れと命令したネ!!それに従って何が悪いネ!?」
「ああ、誤解しているようだが、今回の件を責めているつもりはない。むしろ今回は慣れない突撃戦法でしっかりと戦果を上げて、損害も押さえられているので、そこは褒められるべきだと考えている。しかし私としては今後の事を考えなくてはならない状況だ。今後主力艦隊として働いて貰うならば、突撃だけでは生き残れない事は理解して欲しい。状況次第では有効な戦術だが、それだけしか出来ないようでは話にならないからな。」
「・・・それで私達に何をしろと言うネ?」
「演習を真面目に取り組め、特に砲撃の精度向上が最優先課題だ。それと機動力関係だな。同じ突撃でもただ真っ直ぐ突っ込むのと、敵の砲撃を予測して避けながら進むのでは大きな差が出る。」
「OK それが提督の命令なら従いマース。なら話はこれで finish ネ?」
半ばなげやりに金剛は話を打ち切ろうとする。このままではたぶん口約束だけで、金剛達はたいして変わらないだろう。
「いや、最後にもう少しだけある。今回の戦いを任せてみて感じたが、お前は味方の損害を押さえようとする為に自分自身の損害を許容しているようだ。そんな思考ではいつか沈むぞ?」
「・・・提督は私達が兵器なのを忘れてマース。兵器で戦う以上損耗するのは当然の事デース。それを提督が気にするのはおかしな話ネー。」
「ならばどうして味方を守ろうとする?戦略価値だけを考えて駆逐艦や巡洋艦とお前達戦艦を比べたならば、どちらがより重要になるかは分かるだろう?」
「ッ!!ならば提督はまた駆逐艦達を盾にして戦えと言うのデスカッ!?また救える命を救えない無力感を味わえと言うのデスカッ!?そんな地獄のような日々を・・・諦めきった目で沈んでいく仲間を見送る日々を!!誇りも希望も踏みにじられた日常を過ごせと言うのデスカッ!?」
涙を流しながら激昂する金剛。ついに金剛の本音を垣間見た気がする。榛名から聞いてはいたが金剛の本質は優しいのだろう。その優しさを踏みにじられて出来上がったのが、無気力で命令に従うだけの金剛だ。それでも誰かを守ろうとしてしまう優しさを捨てきれないから、自身を犠牲にしようとしてしまったのだろう。
「ようやく金剛の思いを聞けた気がするな。そんなお前に私から言える事は一つだけだ。仲間と誇りを守りたいのならば強くなれ。それしか道は無い。演習を重ね、実戦を切り抜け、数多くの戦い方を身に付けろ。それが味方も姉妹も自分自身をも守る唯一の方法だ。最初に言ったが私はお前達艦娘を無闇に沈めるつもりはない。それはお前達艦娘の練度を上げなければ、いざという時に何も出来ない無力な鎮守府になるからだ。はっきり言うがもし今この鎮守府に姫級なんて来たならば、ろくな抵抗も出来ずに潰される。それこそ4大鎮守府に助けを求めるお荷物へと成り下がる。今すぐに強くなるのは不可能でも、私はいつまでもそんな底辺を這いずり回る気は無い。だからお前達が強くなろうとするならば、それを支えるのが私の仕事で、障害になるものがあれば全てを排除する覚悟がある。」
激昂していた金剛も、隣で鬼の形相で睨んでいた比叡と霧島も、どうして良いか分からずに悲痛な面持ちをしていた榛名も、何も言えずに押し黙る。こちらの覚悟と意思が伝わったのであればもう十分だな。
「長くなったが私から言いたい事は一つだ。強くなれ。以上だ。艤装の解除と入渠を済ませておけ。」
そう言って呆然と立ち尽くす金剛姉妹の前から立ち去った。
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提督が立ち去った後も私達はしばらく動けずにいました。金剛姉様も比叡姉様も霧島も少し怯えているように感じます。
「金剛姉様、大丈夫ですか?」
「ふぅ・・・Thanks you 榛名、大丈夫ネ。あれが榛名が信じた提督ですカ?静かなのに凄く怖い目をしてたネ・・・」
「そう・・・ですね。榛名も少し怖かったですけど、それでも榛名は提督を信じてます。提督の覚悟は本物です。私達を強く鍛え上げて、精強な鎮守府を作る覚悟があります。その為には私達を簡単に沈めるつもりはないと言う話に嘘は無いと思います。ならば榛名は信じてついていこうと思います。金剛姉様はどう思われますか?」
「Oh・・・理由は本当にそれだけですカ?」
流石は金剛姉様です。榛名の事を良く見てくれています。ですが提督と約束しましたので全てを話す訳にはいきませんね・・・
「・・・提督を信じる根拠はまだありますが、これは金剛姉様達にも話は出来ません。提督の信頼を裏切る事は出来ません・・・でもいつか金剛姉様達も信頼して貰って、提督から話して貰えたら榛名は嬉しいです。」
「OK 大事な約束があるなら無理には聞かないネ。比叡、霧島、二人は提督を見てどう思いましたカ?」
「怖かったです・・・でも榛名が信用するのも少し分かる気がします。」
「そうですね・・・前任の大森提督とは全く違う存在ですね。少なくとも嘘をついているようには見えませんでした。」
「OK ならばワターシももう少し提督を信じる事にしマース。だからまずは提督が言っていた演習を頑張りマース!ついて来て下さいネー!!」
「はい!!金剛お姉様にどこまでもついて行きます!!」
「はい!!榛名頑張ります!!」
「もちろんです。金剛お姉様。」
「それでこそ私の妹デース!!」
やっと金剛姉様の笑顔が見れて、榛名は嬉しいです。
復活の金剛姉妹。今後の活躍に期待ですね。
もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。
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主人公葛原提督率いる問題児四天王
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大淀
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長門・陸奥
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第七駆逐隊
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川内・神通
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明石・夕張・間宮・鳳翔
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第六駆逐隊
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北上&大井
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青葉&衣笠
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金剛姉妹
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伊19・伊168
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赤城&加賀
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翔鶴&瑞鶴
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白露型姉妹
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島風&雪風
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天龍&龍田
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龍驤・五十鈴・球磨・摩耶・高雄
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朝潮・木曾・陽炎・不知火
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叢雲ちゃん率いる横須賀艦隊
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俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!