一通り報告書作成と周囲の鎮守府に警戒の呼び掛けを終えた。大淀の話では長門鎮守府は無反応で、佐世保鎮守府と博多鎮守府からは最近の戦闘記録の共有を求められたので、情報を共有したとの事だった。もちろん大本営のほうにはきちんとした報告書を提出しているので、明日あたりには届くだろう。
「提督、間宮さんから夕食の準備が整ったとの事です。」
「分かった。」
今晩は祝勝会と伝えていたが、何が出てくるのか楽しみだな。
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大淀と共に食堂に近づくと中からざわざわとした気配を感じる。中に入ると艦娘達は中央にスペースを作って並んでおり、食堂の奥からは良い匂いが漂ってくる。自分が入って来たからか私語は謹んでいるようだが、それでも期待でそわそわしている者も見受けられる。これはあまり待たせるのも酷だな。
「提督、総員51名揃っております。」
「分かった。」
いつもの簡易的なお立ち台に登って挨拶の準備をする。
「総員、提督に敬礼!!」
いつもの長門の号令で艦娘達が敬礼してくるが、今まで売られていた艦娘達も遅れる事が無いのを見ると、やはり生まれながらの軍人なのだなと感じる。
「まずは先程は諸君の活躍により、資材溜まりに陣取っていた深海棲艦の部隊を殲滅することに成功した。現状の戦力を考えれば大きな戦果と言えるだろう。諸君の奮闘に感謝する。よって今日はささやかながら祝勝会を開く事にした。おおいに楽しんで明日からの活力に繋げ、より一層職務に励む事を期待する。また、今日は長らく不当な扱いを受けていた者達の帰還祝いも兼ねている。これを機に交流を深め、命を預ける者として絆を深めて欲しい。何はともあれ今宵は宴だ、しっかりと楽しめ。以上だ。」
「総員、提督に敬礼!!」
話を終えると長門や陸奥を中心に手際良く準備が進められる。艦娘達が左右に避けて中央にいくつか机が配置され、食堂の奥からどんどんと大皿に乗った料理が運ばれて来る。どうやら今日は立食形式での食事になるようだ。料理を運ぶ途中で危うく電と雷が衝突しそうになっていたが、ギリギリ回避に成功して料理を台無しにする惨劇からは逃れられた。料理が並べられて各自に食器が配布されたが、微妙な雰囲気で誰も動こうとしないのだが・・・ああ、そうか、自分に気を使ってしまっているのか。ならばさっさと動いたほうが良さそうだな。
「遠慮するな。せっかくの料理が冷めてしまうぞ。」
料理を取りながらそう声をかけると、艦娘達は一斉に動き出して、そこはまるで戦場のような混雑ぶりだった。早々に自分の欲しいものを手に入れて、食堂の隅の方を陣取ると間宮が水を持って来てくれた。
「提督、お疲れ様です。」
「ありがとう。間宮こそお疲れ様。急な話だったのに良く準備を整えてくれた。感謝する。」
「いえいえ、鳳翔さんや翔鶴さん達にも手伝って貰いましたので。それに皆さんがこうやって喜んでくれるのが何よりの喜びですので。」
「頼もしい言葉だな。」
「提督には感謝しています。前の提督さんの時にはこんなに笑顔が溢れる事は有りませんでしたから。」
「しっかり戦果を上げて来たのだ。それにはしっかりと報いるさ。間宮も自分の分を確保しないと無くなるぞ?」
「あらあら、いっぱい用意したのにもうあんなに。これはちょっと作り足した方が良いかもですね。それではこれで失礼しますね。」
艦娘達が料理を取り終わって座席を確保しているようだが、残された大皿にはほとんど料理が残っていない状態だった。おかわりするのが前提の大食艦達もいるので、準備する量が足りなかったようだな。間宮は困りましたねぇと言いながら食堂の奥へと消えて行ったが、その背中はなんだかとても嬉しそうだった。
「司令官!お食事中にすみません、取材宜しいですか!?」
「ちょ、青葉!」
声をかけられた方を見ると、目を爛々と輝かせた青葉と、かなり困惑気味の衣笠が居た。二人共しっかりと料理は確保済みのようだ。
「はぁ、構わんが早く食べないと料理が冷めるぞ?」
「ではご一緒させて頂きますね。ほら、衣笠も座って座って。」
「え、ええ!?本当に大丈夫ですか?」
「ああ、気にするな。」
「じゃ、じゃあ失礼します。」
自分の前の席に座った青葉型姉妹だったが、好奇心旺盛な猫のような目をした青葉と、借りてきた猫のように大人しい衣笠が対照的だ。まあ、衣笠は今日初めて会ったので、慣れていないのは当たり前だな。むしろこの短期間でぐいぐい来る青葉のほうがおかしいのではないだろうか?
「まずは深海棲艦相手の大勝利おめでとうございます。」
「ありがとう。青葉も金剛達と共に良く戦ってくれたそうだな。」
「いえいえ、青葉はサポートに回ってましたので、金剛さん達について行っただけのようなものですよ。金剛さん達にしっかり守って貰ってましたし。」
「まあそう言うな、サポートもちゃんとした仕事だ。」
「ははぁ、有り難きお言葉恐縮です。では大規模戦闘を無事に乗り越えた感想など頂けますか?」
「そうだな、まずは勝てて安堵している。勝つ為に情報を集めて編成も考えているが、戦場では何があるか分からないからな。だが深海棲艦の脅威がなくなった訳ではないから、油断は禁物だ。」
青葉はふむふむと頷きながらメモに書き込んでいく。いや、ちゃんと食事しろよ。
「なるほど、勝って兜の緒を締めよですね。参考になります。それにしても今日は豪勢な祝勝会を開いて頂いてありがとうございます。皆さんとっても喜んでいますよ。」
「そう思うならちゃんと食事も楽しめ。」
「あはは、これは失礼しました。」
「えっと、じゃあ私も質問良いかな?」
衣笠が恐る恐るといった感じに手を上げて質問の許可を取ってくる。
「どうした?」
「その、今日は摩耶に結構厳しい事を言ってたよね。でも今は祝勝会なんて開いて優しくしてくれてるし、どっちが本当の提督の姿なのかなぁと思って。」
「本当の姿も何も私は私だ。軍人として必要な事をしているだけだ。規律を守る為には厳しくしなければならないが、成果を上げたならばきちんと報いることも重要だ。組織に必要なのは信賞必罰だ。よく罰のほうに意識がいってしまいがちだが、賞もまた疎かにしてはならないものだ。功績にはきちんと報いなければ、誰も頑張ろうとは思わなくなってしまう。」
「・・・そっか。青葉が言ってた、怖い人だけど信用出来る人だってのが少し分かったかも。」
「ふふん、そうでしょう。青葉も一人の艦娘として、そして一人の記者として司令官の事を見てますからねぇ。司令官はしっかりした人ですよ!」
青葉がどや顔で自慢しているが、まあいいか。一応信頼はしてくれているようだしな。
「あ、そう言えば信賞必罰で思い出したが。」
そう言って青葉のほうに目線を向けると、可愛らしく首を傾げていたが、何かに気が付いて冷や汗をダラダラとかき始める。
「いやいやいや、今は楽しいお祝いの席ですから。こういう時は楽しいお話だけにしておきましょうよ!ほ、ほら、お料理もとっても美味しいですよ!」
「え、なに?青葉何かやらかしたの?」
「ちょ、衣笠!今はそういう事言わないで!」
あたふたと慌てている青葉を見ると、なんだかもうどうでも良くなってしまうな。
「はぁ・・・まあ今回は初犯で未遂だったし、今日の功績も考慮して恩赦と言う事にしよう。」
「ははぁ!寛大な処置に感謝致します!」
その後少し大人しくなった青葉と、少し嬉しそうな衣笠と共に食事を楽しんだ。
盗み聞きの件は許された青葉。良かったね、盗み聞きの件は許されたよ!!
もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。
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主人公葛原提督率いる問題児四天王
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大淀
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長門・陸奥
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第七駆逐隊
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川内・神通
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明石・夕張・間宮・鳳翔
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第六駆逐隊
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北上&大井
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青葉&衣笠
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金剛姉妹
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伊19・伊168
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赤城&加賀
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翔鶴&瑞鶴
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白露型姉妹
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島風&雪風
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天龍&龍田
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龍驤・五十鈴・球磨・摩耶・高雄
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朝潮・木曾・陽炎・不知火
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叢雲ちゃん率いる横須賀艦隊
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俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!