いきなり自分を解体しろと言ってきたか・・・これはまた厄介な話だな。
「・・・理由は?」
「・・・艦娘の販売に関わっていたからよ。」
「そうか・・・だが前任者の大森提督の命令でやらされていたのだろう?」
「それはそうだけど・・・だからって許される事ではないわ。それに憲兵隊にもあなたにも何も言わなかったわ。」
確かにそれは一理あるが、どうせ脅されていたとかだろう。前任者のやりそうな手口だ。
「とりあえず知ってる事を全て話せ。判断はそれからだ。」
「ええ、分かったわ。」
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そこから聞いた話は想像通りの胸糞悪い話だった。きっかけはやはりと言うか、曙が着任時に大森提督を罵った事から始まる。当然激怒した大森提督は曙に罰を与えたが、それでも曙は他の艦娘達への仕打ちが許せずに反抗を続けた。結果は瑞鶴の時と同様に、曙への罰を他の艦娘に与えてその姿を曙に見せ付けて心を折った。さらには第七駆逐隊を人質にして、艦娘の販売を手伝わせたそうだ。平川市長の元へ第七駆逐隊が送られて、あいつ等に酷い事をされたくなければ黙って手伝えとの命令だった。艦娘を販売する時は大淀に代わって秘書艦を務めて、隠蔽工作に協力させられていたという。そもそも提督が命令すれば逆らう事が出来ないのに、わざわざ人質を使って脅すなんて悪趣味極まりない。大森提督が殺された後に助けを求めようとしたが人間は信用出来ないし、何より姉妹が平川市長の所にいるので、下手な事をすれば酷い事をされてしまうので動けなかったそうだ。しかし実際に帰って来た姉妹はボロボロの状態で、他の艦娘達も酷い扱いを受けていた事実を知ってしまった。
「とりあえず話は分かったが・・・やはり悪いのは大森提督と平川市長と艦娘達を買って虐待していた奴等だろ。曙が責任を負う必要はないと思うが?」
「そんな訳ないわ!!私が大森提督に逆らったからこんな事が起きたのよ!?私に勇気がなかったから誰にも助けを求められずに、あの娘達はずっと苦しい思いをしてきたのよ!?それなのにあの娘達は私の事を責めないの!!泣いて謝っても辛かったねって慰めてくるの!!辛い思いをしてたのはあの娘達なのに!!こんなのが許されるわけ無いじゃない!!」
「だから私から罰を与えて貰おうと思ったと言うことか。」
「ええ、そうよ。提督としても今までこの事を黙っていたんだから、罰を与えるには十分な理由でしょ?」
これは本当に厄介な話だ。はっきり言って曙に非があるとは思えない。強いて言えば最初に大森提督に反抗した事だが、それは大森提督自身から罰を与えられているし、その罰を他の艦娘に与えていたのは大森提督に非がある。だからその件は当事者同士の話で自分には関係が無い。自分に助けを求めなかった件も、人間不信と人質がある状態で助けを求めるべきだったと言うのは酷な話だし、自分が直接質問して隠していた訳でもない。だから曙に非が無いと考えるのだが、曙はそれを認めようとはしないだろう。しかし曙を解体すれば第七駆逐隊は勿論だが、他の艦娘達にも悪影響を与えてしまう。非が無い者を罰するのは許容出来ないが、罰を与えなくては曙が納得出来ないという矛盾。本当に面倒な話だ。
「話を聞いたがやはり解体をするには理由が足りないな。」
「なんでよ!?」
「今この鎮守府は立て直している最中だ。そんな状況で私が罪が無いと思う者に罰を与えれば、組織としての規律が揺らぐ。」
「だから私は罪を犯したから罰を受けるって言ってるのよ!?」
「はっきりと言うが、お前の感情に巻き込まれても迷惑なだけだ。お前の感情で罪があると考えていようが、ここでは判断を下すのは私だ。それもこの鎮守府の責任者としての仕事だ。」
そう伝えると曙は呆然と立ち尽くす。曙は罰を受ける覚悟は出来ていても、許される覚悟はなかったのだろう。
「じゃ、じゃあ私はどうすれば良いのよ・・・」
「他の奴らに迷惑をかけたと思うなら、その分働いて取り戻せ。」
「そんな都合の良いこと許される訳がない!!」
「それは誰が許さないのだ?」
「え?」
「私は許した、聞いた話では売られていた艦娘達も許しているそうだな。なら誰が許さないと言うのだ?艦娘達が表向きでは許していても、裏では怨み言を言っていると考えているのか?」
「そんな訳ないわ!!あの娘達がそんなに性格が悪い事をするわけ無い!!だから・・・私が私を許せない・・・だけね・・・」
やはり問題は曙自身の自責の念か。そうなると後は曙も納得出来る方法で、しかもあからさまな罰では無いものか・・・
「なあ、曙。お前は解体される事を望んでいたがそれは出来ない。これは私としては譲れないところだ。さらに言えば前任者のように体罰を加える等の罰を与える事も、規律を守る為にはもちろん出来ない。」
「そう・・・」
「でもそれだと曙は納得出来ないのだろう?だから妥協案だ。曙にはきつい仕事をして貰う。自責の念に耐えながらその仕事をする事を罰として受け入れて貰う。」
「・・・私は何をすれば良いのよ?」
「秘書艦の補佐だ。」
「はぁ!?」
完全に想定外だったようで、思わず叫んでしまったようだ。
「あんた何を考えてるのよ!?私は今まで大淀さんの代わりに秘書艦代行をさせられて、悪事に加担させられてたのを忘れたの!?」
「だがそれは曙自身の意思ではなくて脅されていただけだろう?だからやり直すチャンスを与えているのだ。大淀は秘書艦としては優秀だが、一人では手が回らない時もあるし、休みを与える事も出来ない。補佐くらいは付けておいたほうが良いだろう。」
「でもそんな事を罰にだなんて・・・もっと厳しい最前線に行くとか・・・」
「そんな事だと?秘書艦の仕事を舐めるなよ?」
「え?いや、舐めてる訳じゃ・・・」
「秘書艦は後方支援の要だぞ?情報伝達が遅れれば現場の艦娘達の命に関わる重要な仕事だ。半端な覚悟で務められると思うなよ?」
「ご、ごめんなさい・・・」
これで秘書艦の重要性は認識して貰えたようだな。後はこの話に納得して貰うだけか。
「それでこの話を受けるか?言っておくが曙が秘書艦に対してトラウマを持っている事を知った上でこの話をしている。逃げるのならば今のうちだぞ?私としては覚悟の無い者に秘書艦を補佐とは言え任せる事は出来ない。だがこの仕事をしっかりと務める事は鎮守府に大きく貢献し、艦娘達を助ける事に繋がる。それを曙自身の罪の意識への罰としろ。」
曙は目を瞑ってしばらく考え込んでいた。秘書艦を務める事への恐怖や嫌悪感、艦娘達への罪悪感、これで本当に罰になるのかと言う疑問。それらを整理して折り合いを付けるのは、なかなか難しい事だろう。しかし目を開けてこちらを真っ直ぐ見る瞳には、確かな覚悟を感じられた。
「分かったわ。その仕事引き受けるわ。もちろんやるからには全力を尽くすから。」
「当然だ。これから宜しくな。」
「ええ、宜しくお願いします。」
「ならば最初の仕事だ。大淀を呼んでくれ。」
「はい!!」
ひとまずはこれで落ち着くだろう。大淀も一人では大変だろうから、人手が増えたほうが助かるだろう。
この決断がどういう事件を生むのかは、まだ誰も知らない・・・
―追記―
龍田If公開しました。
もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。
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主人公葛原提督率いる問題児四天王
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大淀
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長門・陸奥
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第七駆逐隊
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川内・神通
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明石・夕張・間宮・鳳翔
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第六駆逐隊
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北上&大井
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青葉&衣笠
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金剛姉妹
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伊19・伊168
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赤城&加賀
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翔鶴&瑞鶴
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白露型姉妹
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島風&雪風
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天龍&龍田
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龍驤・五十鈴・球磨・摩耶・高雄
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朝潮・木曾・陽炎・不知火
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叢雲ちゃん率いる横須賀艦隊
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俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!