哨戒部隊の出撃を確認し演習の手筈を整えてから、大淀を市長候補の出迎えに行かせた。場所も執務室から応接室へと移り到着を待つ。
「提督、正門に源さんが到着したそうよ。」
「分かった、大淀に案内させてくれ。」
やはり秘書艦の補佐が居れば連絡に困る事がなくて助かるな。
「録音の準備は整っているか?」
「ええ、明石さんに使い方も教えて貰ったし大丈夫よ。」
「なら録音は頼んだぞ。とりあえずこいつに関しては汚点を探って失脚させるのが目的だ。」
「はぁ・・・なんか悪い事してる気がするけど、また前みたいな人が市長になっても迷惑だものね・・・ちゃんと協力するわ。」
悪い事か・・・まあ、間違ってはいないが、この程度なら人間同士のやり取りとしては、まだ穏便な方だと思う。やはり艦娘は素直な者が多いのだろうな。
「では、隣の部屋で待機していてくれ。」
「ええ、分かったわ。」
さて、どんなクソ野郎が来るのだろうか?
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コンコンコン
「失礼します。源様をご案内致しました。」
「入れ。」
大淀に案内されて来た源と言う男は、雰囲気が前任者の平川市長に近いものがある。権力者と言うものは似通うものなのだろうか?
「お初にお目にかかります。北九州市で副市長を務めている源と申します。現在は市長が不在の為市長代理を務めております。」
「北九州鎮守府の葛原と申します。以後お見知り置きを。」
「ええ、もちろんですとも!こちらからも宜しくお願い致します。なにせ着任されて間もないと言うのに、平川市長を排除してくださるなんて!なんとお礼を言えば良いものやら!」
いきなり本音をぶちまけやがったな・・・こんな奴が上に立って大丈夫なのか?
「上から命じられた汚職調査の結果ですので、私の意思で排除した訳ではありません。」
「それもそうですなぁ。なにせ平川市長はずいぶんと間抜けなところがありましたから、下手に証拠を残して自滅したのでしょう。その点私は優秀ですから、そんなヘマは致しませんよ?」
こいつが優秀だと?冗談ではない。汚点を探って失脚させようとしていたのに、開幕から汚点を大放出しているこいつが優秀な訳無いだろ?こちらはまだ探りすら入れてないのだぞ?
「はぁ・・・とりあえず本日は市長選挙の応援要請との事でしたが?」
「はっはっは、そうでしたなぁ。とは言っても残りの二人では話になりませんから、私の勝ちで決まりのような話ですがな。」
「と言いますと?」
「なにせ私には副市長として政務に関わってきた実績がありますし、新聞やらを使って民衆をコントロールする方法も熟知しております。それに比べて東雲は経験不足で何も出来ん若造ですし、綾瀬は嘘つきで臆病な狐みたいな奴ですから、そんな奴らに負ける要素は一切ありませんなぁ。」
いや、いくら他の二人が無能であってもこいつ以下と言うのは流石に考えたく無い話だな。確かに政務経験と言う部分では勝るかも知れないが、前任者の平川市長と並ぶくらいの無能ぶりに見えるのだが・・・
「なるほど、お話は分かりました。」
「それでは私を支援して下さると言う事で宜しいですかな?」
「それは残りの2人とお会いしてから決めさせて頂きます。ですのでまた改めてご連絡しましょう。」
「うーむ?葛原提督は少し慎重になられておるのかな?まあ、若く経験も浅いのであれば無理もありますまい。悩むのは若者の特権とも言いますしなぁ。はっはっは。」
は?こいつは何を言っているんだ?悩むのは若者の特権だと?私は思考を放棄した無能ですと宣伝しているようなものだぞ!?
「ずいぶんと自信をお持ちのようですね?」
「それはもちろん、年季が違いますからなぁ。私を選べば損はさせませんよ?せっかくですから年長者からのアドバイスを一つ、鎮守府を強くする為に最も必要な物はなんだと思いますか?」
「そうですねぇ。やはり徹底した管理でしょう。軍の一員としてどうやって力を引き出し、どうやって育てるか。そして敵に対してどう戦うか。これを管理するのが提督の役割だと思います。」
「うむうむ、悪く無い答えですがまだまだお若いですなぁ。最も必要な物、それは金ですぞ。金さえあれば資材を湯水の如く消費し、精強な軍隊の維持が出来るのです。実際に前任者の大森提督はその辺を良く理解して、この北九州鎮守府を精強な鎮守府へと成長させたのです!」
は?この北九州鎮守府が精強な鎮守府だと?馬鹿かこいつは?いや、馬鹿なんだった。精強を名乗りたければせめて姫級と戦える程度には強くなるべきだと思うが、今の北九州鎮守府にそんな実力なんてあるわけがない。呆れて物も言えない。
「その点私にお任せ頂ければ、艦娘を使って平川以上に稼いでみせましょう!もちろんあんな愚か者のように逮捕される事も無いでしょう。」
「・・・それで、その見返りとして私に求める事はなんですか?」
「いえいえ、そんな求める事だなんて。ただ私に艦娘の運用をお任せ頂ければ良いのです。特に大森提督が独占していた戦艦や空母達も預けて頂ければ、もっと大きな利益を得られますぞ?私のような経験豊富な人間に任せる事で、葛原提督のような経験の浅い方でも上手く艦娘を運用する事が出来るのです。そのお力になれればと願っておりますぞ。」
自信満々に言い切る所はいっそ清々しさを感じるくらいだ。いくらなんでもこいつを市長にはさせたく無いな。私に決定権が無いのが悔やまれるが、今のうちに対処しておくべきか。
「なるほど、これは想像以上の方が来られたようですね。これは何もおもてなしをせずにお帰り頂くのは私の沽券に関わりますね。少し準備をしますのでお待ち頂いても宜しいですか?」
「ほほう!それはありがたい申し出ですな。午後まで予定は入れて無いので構いませんよ?」
「では少しお待ち下さい。大淀、源さんにお茶とお菓子を準備してくれるか?」
「・・・はい、分かりました。」
「では少し準備をしますので、一旦失礼しますね。」
「ええ、楽しみにしております。」
クソ野郎の相手を一旦大淀に任せて、隣の部屋で録音している曙の元に向かう。
「曙、録音はもう十分だ。今から言う物を大至急準備させろ。」
「ひぃ!な、なによ。」
「確か資材輸送用の船があったよな。あれを動かせるようにしてくれ。」
輸送船は本来鎮守府間で資材を輸送する時に使う物だ。あまり大型では無いものの、それなりの航行速度と艦娘を遥かに凌駕する積載量を誇る。およそドラム缶40個分の資材を運ぶ事が可能だ。その代わり艦娘よりも大きく敏捷性は皆無なので、深海棲艦に見付かれば当然簡単に沈む。一応多少の砲撃には耐えられるが、魚雷や重巡クラスの砲撃は耐えられないだろう。
「良いけど何に使うの?」
「 」
「はぁ!?何を考えているのよ!?」
「ちなみに曙は輸送船の運転は出来るか?」
「ええ、私だって艦娘だから出来るけど・・・本当にやるの?」
「ああ、それと摩耶・天龍に演習を中止して出撃の準備をさせろ。あと吹雪・睦月・如月の3人もだ。」
「わ、分かったわ。でも絶対に無茶な事はしないでよね?」
曙が若干青ざめた顔で警告してくる。
「当然だ。準備を急いでくれ。」
さぁて、おもてなしをしようではないか?
次回は源副市長をおもてなしするよ?
もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。
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主人公葛原提督率いる問題児四天王
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大淀
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長門・陸奥
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第七駆逐隊
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川内・神通
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明石・夕張・間宮・鳳翔
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第六駆逐隊
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北上&大井
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青葉&衣笠
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金剛姉妹
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伊19・伊168
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赤城&加賀
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翔鶴&瑞鶴
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白露型姉妹
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島風&雪風
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天龍&龍田
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龍驤・五十鈴・球磨・摩耶・高雄
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朝潮・木曾・陽炎・不知火
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叢雲ちゃん率いる横須賀艦隊
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俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!