昼食も終わり大淀を東雲さんの出迎えに行かせて、曙と二人で連絡を待つ。
「曙、演習の様子はちゃんと聞けたか?」
「聞けたけどあんまり良くない感じみたいね。やっぱり病み上がりなのと、ブランクが長いのがキツイわね。」
「そこは想定内だから仕方ない。演習に対してやる気があれば、そのうち解決する問題だからな。演習に集中出来ていそうだったか?」
「その・・・別行動してた私が心配だったみたいで、少し集中出来てなかったみたいね・・・午後からも私は参加出来ないけど、私の分まで気合い入れなさいって言って来たわ。」
漣達が心配しているのは、別行動な事よりもその張りつめた雰囲気の方だと思うのだが・・・無理をしているのが伝わっているのだと思う。
「それで上手くいけば良いのだが・・・」
「上手くいくようにするわ。・・・ん、大淀さんから連絡で、東雲さんが到着したそうよ。」
「分かった。球磨は悪人では無いとは言っていたが、念のため録音を頼むぞ。」
「ええ、分かったわ。」
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「初めまして、明日への希望党の代表を務めております、東雲と申します。御目にかかれて光栄です!」
大淀に案内されて来た東雲さんは、まだ20代の若々しい人で、明るく挨拶をしてきた。体格もスラリとしていて、清潔感のあるスーツ姿が良く似合う。
「北九州鎮守府に新しく着任しました葛原と申します。以後お見知りおきを。」
「護国の為に日々戦って下さりありがとうございます。提督様や艦娘の皆様方のおかげで、我々一般人は安心した日々をおくる事が出来ます。」
東雲さんは真っ直ぐこちらの目を見て感謝の言葉を伝えてくる。その雰囲気からはご機嫌取りをしようだとか社交辞令的なものは感じられず、本心からそう思っているのだろう。
「これはご丁寧にどうも。提督の一人として護国の為に力を尽くしましょう。」
「これはとても頼もしいお言葉です!!そこで今日の本題なのですが、私も鎮守府の皆様方のお力になりたくて、この度市長選へと出馬する事になりました。若輩者ではありますが、私の熱い思いに賛同して下さるベテランの党員の方々の支えもあり、今回明日への希望党を代表して出馬を決意した次第です。もし当選したならば、全力でこの北九州鎮守府をサポートし、人、艦娘、そして提督が力を合わせて深海棲艦の脅威に立ち向かいましょう!それこそが艦娘を遣わせて下さった神のご意志に報いる事になるのです!!」
ヤバい・・・本気で圧が凄い・・・このセリフを一切の邪念なく言えるあたり、宗教家の脅威を感じてしまう。一個人としてなら問題無いのだろうが、仮にも一つの市のトップに立とうとしている人間だ。上に立つならば広い視野を持つべきだと思うのだが、それは期待出来そうにないな。
「ちなみにですが、鎮守府のサポートとおっしゃいましたが、どのような案をお持ちですか?」
「我が党内でも様々な意見が出ております。市の予算から鎮守府の為に使う予算を作成し、物資の手配や艦娘の為の施設の拡充等を行い、少しでも鎮守府の皆様が戦い易い環境を整えたいと思っております。また交流会や各地で行われている鎮守府の一般公開イベント等を企画して、市民への艦娘への理解を深めて頂き、市全体が一丸となって支援していきたいと思います。また何か提督様からご要望があれば、即座に対応させて頂こうと思っております。」
これは市の予算をかなり注ぎ込むつもりだろうな。現状では鎮守府の予算は国が出していて、つまりは税金を使っている。もちろん国防の為には必要不可欠なので、ほとんどの国民が復興中の苦しい生活に耐えながらも納得している。しかしそこからさらに市の税金を使うのは話が別だろう。それは本来復興に使うべき予算も鎮守府に回す事になるので、当然反発が起こるはずだ。それを国の為に戦っている鎮守府に協力するべきだという事で、市民を納得させられると信じているのが恐ろしい。ついでに言えば東雲さんを推しているベテランの党員達と言うのも怪しいものだ。もし本当に政治能力が有るのならば、若手に市長を任せずに自分で立候補すれば良い。おそらくはクリーンなイメージの東雲さんを全面に出して、裏で甘い蜜を吸うつもりだろう。そして汚職がバレれば東雲さんに罪を擦り付けるつもりではないだろうか?
「・・・お話は分かりました。鎮守府を良く思って下さる事はとても伝わりました。まだもう一人市長候補の方とはお会いしていませんので、ここではまだお返事出来ません。」
「分かりました。私の熱い思いはお伝え致しましたので、後は葛原提督のご判断にお任せ致します。」
「・・・話は変わりますが、うちの球磨をご存知ですか?」
「ええ、存じ上げております!!私は艦娘新教と言う宗教を信仰しておりますが、球磨様は我々を安心させる為に、度々教会の方に足を運んで下さっていたのです。最近は深海棲艦の脅威が深刻化した為に、しばらくお会い出来ないと聞きましたが・・・」
なるほど。そういう設定になっていたのか。ここで球磨に証言させてその嘘を暴いても良いのだが・・・宗教家がどういう思考をするか全く分からない。論理的に話をして伝わる相手なら問題無いのだが、それはあまり期待しないほうが良いだろう。提督の言う事ならばと信じてくれれば良いが、提督のふりをした悪魔だなどと言い始める可能性も否定出来ない。・・・触らぬ神に祟り無しと言うことか。
「そうですね。球磨には鎮守府でやるべき事が多いですからね。」
「それは理解しております。球磨様を始め鎮守府の皆様方のご健闘をお祈りしております。」
「ありがとうございます。ではお話はここまでとさせて頂きましょう。本日はお越し頂きありがとうございました。」
「いえ、こちらこそ貴重なお時間をとって頂きありがとうございました。」
深々とお辞儀をする東雲さんを大淀に送って貰い、退室したところでため息を吐く。球磨の言っていた通り良い人ではあった。しかし市長として人の上に立って良い人だとは思えないな。せめて3人目の綾瀬さんが、もう少しマシな人である事を期待したいところだ・・・
宗教家怖い・・・ぽいぽい教徒ならもっとほのぼのしてるはずなのに・・・
もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。
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主人公葛原提督率いる問題児四天王
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大淀
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長門・陸奥
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第七駆逐隊
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川内・神通
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明石・夕張・間宮・鳳翔
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第六駆逐隊
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北上&大井
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青葉&衣笠
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金剛姉妹
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伊19・伊168
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赤城&加賀
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翔鶴&瑞鶴
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白露型姉妹
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島風&雪風
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天龍&龍田
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龍驤・五十鈴・球磨・摩耶・高雄
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朝潮・木曾・陽炎・不知火
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叢雲ちゃん率いる横須賀艦隊
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俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!