鎮守府が用意出来る最も需要の高い商品・・・
「やはり鎮守府独自のものと言えば戦力、それを背景とした『安全』でしょうか?」
「はっはっは!やはり葛原提督は優秀なお方ですなぁ。そうです、安全こそが鎮守府にしか提供出来ず、最も需要の高い商品です!言い換えれば安心、さらに正確に言えば安心して暮らせる土地とも言えますな。」
一応正解のようだが、まだ続きがあるのか。
「安心して暮らせる土地ですか?」
「ええ、そうです。私は深海棲艦の出現前は不動産業を営んでおりまして、その辺の機微には敏感な方ですから。何故鎮守府の近辺が再建のスピードが早いのか?それはもちろん鎮守府が守ってくれるという安心感があるので人が集まり易く、街の再建が進むのです。そしてこれは精強な艦隊を持っている4大鎮守府付近では特に顕著に現れています。後は地形的な話で、瀬戸内海近辺もかなり良いスピードですな。次いで日本海側ですかな?」
「そして人が集まると当然土地の値段も上がると?」
「ええ、そうです。更に言えば土地の値段だけではありません。人が集まれば経済が活性化しますからなぁ。物価も上がり、動く金も大きくなるのです。当然その土地の市長であれば、使える予算も多くなりますな。」
そして使える予算が増えれば、懐に入る金も多くなると。
「それは理解出来ました。それで。私と距離を置こうという話とどう繋がるのですか?」
「そちらに関しては葛原提督のご機嫌取りと言った意味合いが大きいですな。調査の結果葛原提督は他人をあまり寄せ付け無い性格だと判断しました。特に悪意がある者やこちらを下に見てくる者には激しく反発するでしょう?かと言って正義感に溢れる方ではない。葛原提督自身に被害が無い事であれば、基本的に無関心だと判断しましたがどうですか?」
狐のような細い目でニマニマしながら尋ねてくるが、ほとんど確信している内容なのだろう。そしてそれは間違いでは無い。
「はぁ・・・本当に私の事を調べられたようですね。この短期間にどうやってそこまでの情報を集めたのですか?」
「先程も言いましたが、幸運の女神が微笑んで下さったのですよ。北条麗子さんという女神が。」
「北条ですか!?」
「ええ、一昨日の話です。私が葛原提督の情報を集めている時に、北条工業のご令嬢で士官学校に通われている北条麗子さんが、飛行機を使って葛原提督に会いに来るという話を聞きましてな。大急ぎで会食の約束を取り付けて、そこで葛原提督についての話をたくさんさせて頂きました。」
なるほど、情報源は北条だったのか。あいつなら在学中の自分の情報をかなり持っているだろうから納得だ。しかしあのお嬢様の話から、正確な情報を読み取る綾瀬さんの実力も侮れない。そもそも思い付きで会いに来た北条に、会食の約束を取り付ける手際と判断の速さも見事だ。
「北条ならば在学中の私についてはかなり知っているでしょうね。それにしても急な話なのによく会食の約束を取り付けられましたね。」
「そこは本当に幸運でした。市の方に空港を使用したいと打診がありまして、その話を聞き付けて大急ぎで連絡しましたから。幸い街の再建には北条工業が深く関わっておりますから、会食のお誘いは快諾して貰えました。だから本当に幸運が重なった結果、ここまでの情報を集める事が出来たのですよ。」
「なるほど、良く分かりました。話を戻しますが、私と距離を置く事で綾瀬さんにどんなメリットがあるのですか?」
「メリットと言うよりはデメリットの回避ですかな?私の性格では葛原提督と仲良くしようとすれば反発されるのは目に見えていますし、葛原提督は久藤提督や鶴野提督から目を付けられていると聞いておりますから、仲良くするのはリスクが高い。そして葛原提督は放っておいても精強な艦隊を作る努力をして下さるのでしょう?なら私としては距離を取って、美味しい所を頂くのが一番です。そして葛原提督はこの街の市長から余計な事をされないと思えば、私を選んで下さるのではないですか?」
ここまで調べられているのなら完敗だな。実際綾瀬さんに利益がある事も理解出来るし、市長に余計な事をされないというのは、自分にとって大きなメリットだ。それにここまで考える事が出来る人ならば、政治の腐敗で街を食い潰すような事はしないだろう。小遣い稼ぎくらいはするだろうが。
「分かりました。綾瀬さんを支持しましょう。最低限の取り決めとして、表向きは友好的な態度を取る事、鎮守府とその取引業者の妨害をしない事、これらを守って頂きたい。」
「ありがとうございます。その条件はしっかり守りましょう。その代わり有事の際には迅速に情報を頂きたい。避難勧告が遅れる事態は避けたいですからな。」
「承知しました。軍事機密に触れない限りは、情報をお伝えする事をお約束しましょう。」
「そのお言葉が頂けたのなら満足です。ではこれで失礼させて頂きます。本日はお時間を頂きありがとうございました。今後も宜しくお願い致します。」
「ええ、こちらこそ宜しくお願い致します。大淀、綾瀬さんを送ってくれ。」
「はい、ではこちらへ。」
綾瀬さんが大淀と共に退室した後に大きくため息を吐く。やはり格上の相手をするのは神経を削られるものだな・・・話がスムーズに進むのはありがたいが、やはりこちらを見透かされているのは不安を感じる。これならばもう少し綾瀬さんの情報を調べておきたかったが、着任してからそこまでする余裕はなかった気もする。今後の為にも情報を仕入れておきたいところだな。
「提督、かなり疲れてるみたいね。」
隣の部屋で録音していた曙が少し心配そうに声をかけてくる。
「まあな、格上相手は疲れる。源さんみたいな三下の相手も疲れるが、格上相手だと緊張感が段違いだ。」
「・・・確かにずっと綾瀬さんのペースで話が進んでいた気がするわね。本当にあの人が市長で良かったの?あの人多分汚職するわよ?」
「少なくとも残りの二人よりはかなりマシだ。こちらに被害がなければ、あとは向こうの問題だから、首を突っ込む必要は無い。お前達艦娘を戦闘に集中させる事が出来るならば十分だ。」
「そう、提督がそう言うなら文句はないわ。」
曙もあまり興味が無さそうな感じだな。でも内心市長と関係が薄い事で、少し安心しているのではないだろうか?無闇に尋ねてトラウマを刺激するような事はしないがな。
「それで、これからどうするつもり?少し休憩でもしたらどうなの?」
「そうだな、一息ついたら演習の様子を見に行きたい。帰還組の様子が気になるからな。」
「分かったわ。その・・・コーヒーでも飲む?」
曙がそっぽ向きながら尋ねてくる。
「淹れてくれるのか?」
「それも秘書艦の仕事だもの。今大淀さんが来客対応で忙しいなら、秘書艦補佐の私がやるべき仕事でしょう?それだけよ。」
若干頬を赤くしながら話す姿は、なんとなく士官学校で見た曙の姿と被るものがあるな。
「ああ、では頼む。」
「そう。分かったわ。」
テキパキとコーヒーの準備をしてくれる姿を眺めながら、今後の予定を考える。とりあえず演習の様子を見て、夕方に仙崎さんが取材に来るから対応をするとして、その前に一組くらい面談が出来るだろうか?そう言えば営倉の奥にあった拷問器具を証拠として、憲兵に引き渡す準備もしておきたいし、そろそろ前任者の大森提督の私物も売り払いたいところだな・・・やるべき事はまだまだ山積みだな・・・
ぼのたんにコーヒーを淹れて貰いたい人生だった。
もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。
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主人公葛原提督率いる問題児四天王
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大淀
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長門・陸奥
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第七駆逐隊
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川内・神通
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明石・夕張・間宮・鳳翔
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第六駆逐隊
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北上&大井
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青葉&衣笠
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金剛姉妹
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伊19・伊168
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赤城&加賀
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翔鶴&瑞鶴
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白露型姉妹
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島風&雪風
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天龍&龍田
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龍驤・五十鈴・球磨・摩耶・高雄
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朝潮・木曾・陽炎・不知火
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叢雲ちゃん率いる横須賀艦隊
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俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!