艦娘達の多くは困惑していた。新しい提督が理解出来ない。最初はただただ怖がっていたし、着任の挨拶では悲観的な話をしていたので、また前任者の時のような悲しい日々を過ごすものだと思っていた。しかし実際には大急ぎで待遇改善に取り組んでくれて、今日は久し振りの食事まで出来るし、艦娘側からの要望にはきちんと応えてくれている。それなのに口調や態度は冷めた感じなのが不思議なのだ。優しく接する人だったら信じられただろうか?いや、最初は優しくしてきた人に何度も裏切られたから無理だ。かと言って前任者のような傲慢で粗暴な人間は二度とごめんだ。
「皆さん思うところはあると思いますが、まずは食事にしましょう。お皿を持って並んで下さい。皆さんに行き渡ったら揃って頂きましょう。」
間宮の言葉にまず駆逐艦達と赤城が我先にと列を作る。一部が動き出すとやはり期待はしていたようで、全員並んでカレーを受け取る。長らく補給として燃料等しか与えられて居なかったので、ただのカレーとサラダがご馳走に見える。
「わわわ、とっても美味しそうなのです!」
「電、ぶつかってこぼしたりしたらダメよ」
「皆おっそーい!」
「赤城さん、まだ食べてはダメよ。」
「じゅる、わ、わかってます。」
「ケッ、皆食べ物なんかで釣られやがって。
俺はあいつなんかを信用しないからな。」
「天龍ちゃん?あの人を信用してないのは一緒だけど~、あんまり突っ掛かったらダメよ~」
全員に行き渡ったのを見て間宮が前に出る。
「それでは皆さん、腕によりをかけて作ったのでたくさん食べて下さいね。頂きます。」
「「「頂きます。」」」
そこからはしばらくは幸せな時間を過ごす。久し振りのまともな食事に感動し、仲間と和気あいあいと会話をしながら楽しむ姿があった。そこには辛い現状を一時忘れるだけのものがあった。
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間宮の作ったカレーはとても美味かった。流石は給糧艦と言ったところか。軍での楽しみなど食事くらいなものだから、その食事の質が高いのは凄く良いことだ。
以前の作戦の資料を読んでみたが、これは杜撰なものだった。戦艦達が深海棲艦を撃退した戦いについては、それなりに詳しい資料が残っていたが、遠征の記録や哨戒での遭遇戦などの記録が曖昧なものが多い。中でも気になったのは少数で遠征に行き、全員轟沈した回数が多いことだ。しかも戦闘内容はほとんど記載がなく、ただ深海棲艦と遭遇し轟沈とだけ書かれている。そもそも重巡2名で遠征に出てたりするのが不自然過ぎる。とりあえず食器を返す時に大淀に資料を集めるように伝えるか。そろそろ艦娘達の食事も終わっているだろう。
食器を持って食堂に行くと、ちょうど艦娘達が寮へと戻って行くところだった。久し振りの食事のお陰か表情も明るい者が多い。やはり美味い飯は人生を豊かにするものだな。入り口に近づくとこちらに気がついたようで、壁際に寄って敬礼をしてくる。日に何度も敬礼されるのはなんだか慣れないものだ。軽く手を上げて応えると、足早に艦娘寮の方へと去って行くものが大半だった。
「司令官、カレーとっても美味しかったわ。
ありがとうございます。」
律儀にお礼を言ってきたのは・・・たしか駆逐艦の暁だったか。お風呂の件を聞いて来たのもこの娘だったな。
「おう、作ってくれた間宮にもちゃんと言ったか?」
「もちろんよ。お礼はちゃんと言えるし。
あ、お風呂とお布団もありがとうございます。」
「その辺も真っ当な鎮守府なら当たり前のものだから気にするな。その代わり仕事はきっちりやって貰うからそのつもりでな。」
「暁は一人前のレディだもの、立派に働けるわ」
「ああ、期待している。」
ぺこりと頭を下げて仲間の元へと戻って行く暁。心配そうな仲間にドヤ顔しているのはなんだか微笑ましい。しかし多くの艦娘が提督を怖がっている中で、初めて仕事以外のことで話しかけたということは、かなりの勇気がいることだと思う。一人前のレディと言ってるのもあながち馬鹿には出来ないな。
食堂の中に入ると楽しそうに話をしていたのが一瞬で静まり、全員が立ち上がって敬礼してくる。またか・・・とりあえず応えて奥に居る間宮のところに行く。
「御馳走様、美味かった、今後も頼むぞ。」
「お粗末様でした。久し振りに皆に料理を出せて嬉しかったです。食事に関しては今後もお任せ下さい。」
食器を渡してから大淀を探してみるが見当たらない、まあ後で執務室に来るだろうからその時で良いか。その代わりと言ってはなんだが、重巡の鈴谷と熊野が居た。面談は明日からとは言ったものの、一度も出撃していないのはかなり気になるので、出来れば早めに話を聞いておきたい。
「重巡の鈴谷と熊野、少し話がしたい。今から会議室について来てくれ。」
その瞬間空気が凍るのを感じた。大淀や長門達以外を呼んだのは初めてだが、ここまで空気が重くなるものなのか・・・
「わ、分かりました・・・」
顔を青ざめさせながらなんとか答えた鈴谷は、士官学校時代に見た別の鈴谷と全く別の存在だと思えるほど暗かった。これはよほど前任者に酷い扱いをされたのだろう。
「ほら見ろ本性を現しやがった、食事だ布団だとこっちのご機嫌取りしておいて、結局これじゃねぇか!!やっぱり人間なんて信用できねぇぜ!!」
「どういうことだ天龍?」
「しらばっくれるつもりかよ!!てめぇら人間が散々やってきたことだろうがゲス野郎!!」
「なにが言いたいかは分からないが、あまり上官を侮辱するようなら、規律を守る為に罰を与えなくてはならなくなる。これは警告だぞ天龍。」
「お前ら人間はいつもそうだ!!こっちが逆らえないのを良いことに、罰なんて言い掛かりをつけて楽しんでやがる!!そんな奴を誰が信用するかって話だ!!」
はあ、警告はしたのだが仕方がないか・・・
ちょうど騒ぎを聞きつけたのか食堂の入り口から長門が飛び込んで来る。
「どうした!?なんの騒ぎだ!?」
「長門、天龍を営倉に入れておけ。警告を無視して侮辱をしたのだ、罰を与えなくては示しが付かない。」
「なっ!!いや、しかし」
「長門、これは命令だ。天龍を一晩営倉で頭を冷やさせろ。」
「長門さん、俺も覚悟はしてる。営倉に連れて行ってくれ。だけどなぁ提督、俺は納得もしてないし信用なんて全くしてねぇからな!!」
「・・・分かった、私が責任持って営倉に連れて行こう。」
長門は凄く悔しそうに、そして若干失望したような目で見てきたがこればかりは仕方がない。信賞必罰が出来ない組織は簡単に崩れてしまう。まあ今回は初犯だし前任者に酷い扱いをされてきたこともあるので、一晩営倉で過ごすという軽い罰で済ませておこう。しかしこれが続くようならまた考えなければならないが。
長門に連れて行かれる天龍を見送る。これから営倉行きだと言うのに、天龍は堂々と胸を張って歩いている。間違ったことは一切していないという自負があるのだろう。その姿は士官学校時代の自分と被るものがある。反対に長門は見るからに気落ちしていて、どちらが連行される罪人なのか分からなくなりそうだ。
「鈴谷、熊野、待たせたな。会議室に行くぞ。」
「「・・・は」」
こっちの二人は既に諦めきったような表情で応える。確かに嫌な過去を聞き出さなくてはならないが、よほど嫌な思いをしてきたのだろうか?本当に先が思いやられる。
ドロドロ感が大事な作品だと思ってます。人によっては不快感があるかも知れませんが、組織を維持するためには信賞必罰は必須だと思います。
もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。
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主人公葛原提督率いる問題児四天王
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大淀
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長門・陸奥
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第七駆逐隊
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川内・神通
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明石・夕張・間宮・鳳翔
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第六駆逐隊
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北上&大井
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青葉&衣笠
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金剛姉妹
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伊19・伊168
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赤城&加賀
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翔鶴&瑞鶴
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白露型姉妹
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島風&雪風
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天龍&龍田
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龍驤・五十鈴・球磨・摩耶・高雄
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朝潮・木曾・陽炎・不知火
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叢雲ちゃん率いる横須賀艦隊
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俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!