夜戦組を見送った後で大淀を連れて営倉へと向かう。本来なら明日の朝まで青葉には反省させるつもりだったが、今回の戦いはなにが起こるか分からないので、戦力になる者はいつでも戦える状態にしておきたい。曙には他の者達に夕食を食べさせるようにと指示を出したので、さっと青葉を出して食事にしたい。営倉に入ると殊勝な事に青葉は正座で待機していた。
「ほう?ずっと正座していたのか?」
「あ、いえ・・・その、人が近づく気配がしたので、もしかしたら司令官かなぁと思いまして。」
「まあ、その様子なら反省しているようだな。」
「それはもちろんです、はい!!」
そのわりには口元によだれの跡が見えるが、そこは見なかった事にしておこう。自分も士官学校の時は営倉でよく寝ていたからな。人が近づいた気配で姿勢を正すのなら、ずいぶんと可愛いものではないか。
「では今後は盗聴や盗撮をしないこと。撮影をする時はきちんと許可を取ること。新聞を掲載したい場合はまず私に見せに来ること。これらをきちんと守るように。良いな?」
「はい、以後気をつけます。」
「では今回の営倉入りはここまでとする。今から夕食の時間だから食べに行くぞ。」
「はい、分かりました!」
川内達が接敵する前には執務室に戻らなければならないので、急いで食事を済ませよう。その間にも資材溜まりを確保された場合の手段をいくつか考えておかなければな・・・それともしかすると資材溜まりを迂回して、鎮守府を直接攻撃される可能性も捨てきれない。鎮守府防衛の計画も必要だし、夜戦組の退路を絶たれる可能性も考慮しなくては・・・
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司令官のお許しを得て営倉の鍵を大淀さんに開けて貰いましたが、司令官はなにやらぶつぶつ呟きながら難しい顔をして営倉を後にしているようですね。どうやら青葉の事はもう意識から外れているご様子ですね。これなら小声で話せば気が付かないかな?
「あ、大淀さん、先程は電信で司令官が来ることを教えてくれてありがとうございました。おかげ様でうたた寝してしまったのがバレずに済みました・・・」
「はぁ・・・営倉でうたた寝とは・・・ある意味凄い度胸ですね・・・」
「うぅ・・・恐縮です・・・」
「はぁ・・・本当に恐縮して下さいね?」
「はい・・・すみません・・・」
とはいえ現在の営倉は綺麗に掃除されたばかりなので嫌な臭いはせず、床や壁も綺麗になっているうえに拘束される事もないし、一応簡素な寝具も用意されている。前任者の大森提督の時代では部屋にまともな寝具は無く、納品で使われた段ボールを集めて寝具にしていた事を考えれば、むしろ今の営倉のほうが良い環境だ。ついついうたた寝してしまうのも無理は無いと言うものだ。
「それにしてもなんだか切羽詰まったご様子ですが、あまり戦況が良くない感じでしょうか?」
「いえ、そんな事はありませんが・・・相手は集積地棲姫が送り込んでくる部隊ですから・・・ただ襲ってくるだけじゃなくて戦略的な動きをするので、色々と考えられているのでしょう。」
「それは確かに恐ろしい話ですね・・・」
「ですが作戦をきっちりと考えて下さるのは頼もしい事です。大森提督ではあそこまで考えられる事はなかったですから・・・」
確かに大森提督の時は、敵艦隊を見つけたら戦艦や空母で倒すくらいしか考えてなかったですからねぇ・・・私達重巡洋艦はほとんど使われなかったですし、軽巡洋艦や駆逐艦達も対潜か戦艦達の盾としか使われなかったので、大森提督が作戦で悩んでる姿など誰も見たことが無いのではないでしょうか?夜戦は川内さんに丸投げでしたし。
「そう考えると今の司令官は優秀な方なのかもですねぇ。」
「まだ日が浅いので判断出来ませんが、少なくとも大森提督よりはかなり優秀でしょうね。ですから私は秘書艦として、あの方を支えたいと思っています。・・・だからあまり迷惑をおかけするような事は謹んで下さいね?」
「うぅ・・・気を付けます・・・」
大淀さんも少し変わられたようですね。大森提督の時は全てを諦めた暗い目をしていましたし、大森提督が亡くなってからは私達艦娘を守る為に必死に動いてくれてました。それが最近はなんだか忠誠心の塊のような人になりましたね。もちろん今の司令官は良い人ですし、司令官の下で働いて活躍したい気持ちは青葉にも分かりますが。もしかしたら青葉を起こしてくれたのも青葉を助ける為ではなくて、司令官に余計な時間を取らせない為の配慮だったのでは?と思ってしまいます。いや、うたた寝していた青葉が一番悪いのですけれど・・・
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大淀と青葉を伴って食堂に着くと艦娘達は既に食事を始めていた。いつもよりは多少空気が重いが、深海棲艦との戦闘がどういう形になるか分からないので、緊張感を持って行動したほうが良いだろう。
「座ったままで構わないから聞いてくれ。皆も知っているとは思うが、現在集積地棲姫がこちらに侵攻部隊を送り込んできている。幸い集積地棲姫自体は敵の拠点から動かないので、直接戦闘する事はないが、油断は出来ない状況だ。なので今日は早めに入渠を済ませて自室で待機して、いつでも出撃出来る心構えをして欲しい。また空母と軽空母は夜間の出撃は無いので早めに就寝して、明日の日の出と共に出撃出来る準備をしてくれ。一応明日の朝には横須賀からの応援が来る予定となっているので、まずはそこまで持ちこたえる事に集中してくれ。以上だ。」
話を終えると艦娘達は食事を再開する。せっかくならば美味い食事を会話しながら楽しみたいところだろうが、状況が状況なので我慢して貰いたい。自分も早急に食事を済ませておきたいので間宮の下へ向かう。
「提督、お疲れ様です。」
「ああ、間宮も先程はおにぎりを用意してくれていて助かった。それと今夜は寝る余裕も無いかも知れないから、夜食を用意しておいて貰えるだろうか?執務室で食べられるものを頼む。」
「分かりました。手軽に食べられるものをご用意しておきます。」
「宜しく頼む。」
「ですがあまり無理はされないで下さいね?」
「悪いが今は無理をするべき状況だ。もちろん私も馬鹿では無いから休める時にはきちんと休憩を取るが、それで艦隊の指揮が滞る事を容認出来る余裕は無いと考えている。」
「そう・・・ですか・・・分かりました。そこまでのお覚悟ならばもう何も言いません。私に出来る事は少ないですが、しっかりと支えられるように頑張ります。」
「ああ、頼んだぞ。」
間宮に食事を貰って空いている席に座って食事を始める。大淀は一緒に座ったが、青葉は衣笠の所に行ったようだ。
「ねぇ、提督、ちょっと良いかしら?」
「ん?五十鈴か、どうした?」
「神通が出撃したって本当かしら?」
「ああ、本人の強い希望と川内の推薦があったからな。」
「そう・・・あの神通がね・・・分かったわ。なら五十鈴もいつでも出られるから、出番になったら呼んでちょうだい。」
神通に続いて五十鈴もか。やる気があるのは良いことだが、あまり無理をさせて沈まれると困るのだがな・・・
「神通にも同じ事を言ったが、怪我は高速修復材で治ったはずだが疲労は溜まっているし、しばらく戦場に出ていないので感覚が狂っているはずだろう?あまり無理をするべきでは無いと思うのだが?」
「神通も同じ事を言ったのだと思うけど、体調くらいはすぐに回復したし、今日の演習で戦闘の感覚は取り戻したわ。あまり艦娘をなめないでくれるかしら?それにさっき間宮さんに言ってたじゃない、今は無理をするべき状況だって。提督が無理をしてるのに呑気に寝ていろだなんて冗談じゃないわよ。」
ふむ・・・ただの強がりかどうかは判断出来ないが、ここまで言うのであれば戦力として考えておいても良いだろう。
「分かった。ならば必要になれば出撃して貰うから、いつでも出られるように準備しておけ。」
「ええ、五十鈴に任せておきなさい。」
「そういう事なら球磨もいつでもいけるクマ。むしろしばらく出撃して無いから鬱憤が溜まってるクマ。だから戦場でぶっぱなしたいクマ。」
「あたしと高雄姉も行けるからな!!むしろガンガン起用しろよ?」
「分かった、分かった。お前らも準備してろ。ただし言ったからにはしっかりと働いて貰うから覚悟しておけよ?」
何はともあれ選択肢が増えるのは良いことだ。これで防衛の計画も少し楽になるな。
やだ、うちの艦娘達血気盛ん過ぎ?
―追記―
加賀If投稿しました。
もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。
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主人公葛原提督率いる問題児四天王
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大淀
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長門・陸奥
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第七駆逐隊
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川内・神通
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明石・夕張・間宮・鳳翔
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第六駆逐隊
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北上&大井
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青葉&衣笠
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金剛姉妹
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伊19・伊168
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赤城&加賀
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翔鶴&瑞鶴
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白露型姉妹
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島風&雪風
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天龍&龍田
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龍驤・五十鈴・球磨・摩耶・高雄
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朝潮・木曾・陽炎・不知火
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叢雲ちゃん率いる横須賀艦隊
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俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!