砲撃を受けてしまい体勢が整う前に敵の魚雷が向かっている事に気が付いてしまった・・・これはもう避けきれない・・・
「神通!!」
振り向くと探照灯を捨てた姉さんが全力疾走でこっちに向かって来て、私の前に滑り込んで魚雷を受けてしまう。
「姉さん!?姉さん!!」
激しい爆音と共に水柱が視界を遮る。視界を取り戻した先には大破した姉さんの姿があった。私のせいで姉さんが・・・姉さんが・・・
「一旦下がるよ!!私は川内を連れてくから大井っちは神通をお願い!!島風と雪風は援護!!」
「はい!!分かりました!!」
後方から北上さんと大井さんが救助に来てくれる・・・けど姉さんが・・・
「しっかりしなさい!!下がるわよ!!」
「す、すみません・・・」
大井さんに怒鳴られながらも撤退を開始する。先程受けた砲撃のせいであまり速度が出ないけれど、大井さんに曳航して貰ってなんとか撤退出来ている。しかし姉さんを曳航している北上さんの速度はもっと遅い。こちらの雷撃で敵艦隊もかなりダメージを負っているはずだが、こちらを逃がさないように必死で追い掛けて来ているようだ。雪風さんと島風さんが牽制射撃をしているが、果たして無事に逃げ切れるだろうか?
「うぅ・・・北上さん・・・天龍達に連絡して援護に来て貰って・・・探照灯捨てたから一旦下がったと思うから・・・」
ボロボロの状態にも関わらず、姉さんが北上さんに指示を出す。一度離脱したはずの天龍さん達の助けが間に合えば・・・間に合わないならせめて姉さんだけでも助けなくては・・・
「わかった・・・ってもう天龍達が突撃始めたみたいだよ?」
――――――――――――――――――
「オラオラ!!天龍様のお通りだぁ!!」
「うふふ♪一隻も逃がさないけど、覚悟は出来てるかしらぁ?」
「狙うはボロボロの敵旗艦!!お姉ちゃんが絶対にいっちばんになるんだから!!」
「夕立が一番暴れるっぽい!!」
「やれやれ、春雨、僕達は皆を援護するよ。」
「が、頑張ります、はい!!」
ボロボロになりながらも川内達を追い掛けていた敵艦隊に襲い掛かる。死力を尽くして追撃していた所に横槍が入ったから、敵の統制は完全に崩れ去って大混乱だぜ!!
「よぉし!!このまま殲滅すっぞ!!」
――――――――――――――――――
「提督、戦闘が終わったようです。天龍さんから連絡が入ってます。」
「ん?川内からではなくて天龍からか。」
大淀から通信機を受け取ったが・・・これは川内に何かあったのだろうな・・・
「天龍、報告してくれ。」
「おう、資材溜まりに居た敵艦隊は無事に殲滅したぜ!!けどよ、こっちもかなりやられちまってよ・・・川内と白露が大破、神通が中破、俺と夕立と島風が小破だ。」
「そうか・・・川内がやられたか・・・」
「まあな・・・どうも神通を庇って大破しちまったらしくてよ・・・神通が責任感じちまったみたいなんだよ・・・」
「そうか・・・川内は何か言ってたか?」
「川内も川内でよぉ・・・大破しちまったくせにまだ夜戦続けるつもりみたいで困ってんだよ。なんか小規模の艦隊が近づいてるから倒さなきゃいけないってさ・・・」
大破してもなお夜戦の感覚が鈍らないのか、本当にたいした奴だな・・・
「ならば艦隊の編成を少し変えよう。天龍を旗艦として龍田・北上・大井・島風・雪風で資材溜まりの防衛を続けてくれ。川内・神通・白露型姉妹は鎮守府へと帰還させろ。」
「了解したぜ!!追加の雑魚共くらいまた蹴散らしてやるよ!!」
「ああ、任せたぞ。」
とりあえず川内が脱落するならば、資材溜まりでの攻防は次の戦いで切り上げるべきだな。そうなると・・・
「大淀、球磨と吹雪・睦月・如月を出撃させるから呼んでくれ。」
「分かりました。」
――――――――――――――――――
「提督、球磨の出番かクマ?」
「ああ、球磨達には川内達を迎えに行って貰いたい。」
「ん!?川内達がやられたクマか!?北上と大井は無事クマ!?」
「北上と大井は無事だし、轟沈した者は居ないから安心してくれ。しかし川内と白露が大破してしまったのでな・・・今損傷の少ない者と損傷の多い者で部隊を分けて、片方を撤退させているところだ。撤退する部隊にも護衛は居るし何も無いとは思うが、念のために迎えに行って貰いたい。」
「分かったクマ。戦闘で敵艦隊にぶっぱなせないのは残念クマ・・・けど味方を守るのも大事な仕事クマ。夜戦の航行練習と思って迎えに行って来るクマ。」
食事の時にも感じたが、球磨は敵艦隊にストレスをぶつけたがっているのだろうか?そう言えば球磨は売られた先で、艦娘新教の御神体の役割をさせられていたのだったな。苦しむ人々を騙して金を搾り取る仕事を手伝わされていたと考えたならば、もしかしたら体を求められる以上のストレスを感じていたのかも知れないな。
「悪いが急いで行ってやってくれ。頼んだぞ。」
「任せるクマ。」
さてと、これで次はどう出て来るだろうか?夜間の索敵を川内の感覚頼りにしていたから、計画を大幅に変更しなくてはならないか・・・
――――――――――――――――――
鎮守府への帰り道、僕は白露姉さんを、夕立は川内さんを、春雨は神通さんを曳航しながら進んで行く。いつも夜は元気な川内さんも流石に疲れたのか今日は静かだし、神通さんも暗い雰囲気だし、春雨も戦闘が終わった後はなんだか暗い雰囲気をしていたから、少し気になってしまう。春雨の判断のお陰で誰も轟沈しなくて済んだと思うと、今日一番の活躍は春雨だと思うんだけどなぁ。
「うぅ・・・時雨ぇ・・・敵の旗艦を倒したのはお姉ちゃんなんだからねぇ・・・お姉ちゃんがいっちばんなんだから・・・」
「はいはい、分かってるから・・・」
白露姉さんはかなりダメージを負っていた敵の旗艦である重巡リ級eliteに止めを刺した。しかし重巡リ級eliteが最後の意地で撃った砲弾が直撃してしまい、相討ちで大破してしまった・・・その後慌てて僕と春雨で救援に向かい、姉さんを大破させられた事に怒った夕立が縦横無尽に暴れ回ったものだ。撃破数だけで言えば間違いなく夕立が一番だろう。夕立もかなり暴れ回って疲れたようなので口数が少なくなっている。だから今喋っているのは僕と姉さんくらいだ。大破してもなおこれだけ喋れるのだから、心配はいらないかも知れないね。
「帰ったらお風呂入って・・・提督にいっちばん褒めて貰って、甘いものを貰うんだから・・・」
「そうだね、僕達頑張ったからきっと提督も褒めてくれるよ。」
僕も皆のフォローを頑張ったから褒めてくれるかな?敵艦の撃破みたいな派手な戦果では無いけれど・・・提督は僕達を無駄に沈めるつもりは無いっていつも口酸っぱく言ってるから、皆が生きて帰れるように頑張ってるのも認めてくれそうなんだけどなぁ。
「それとあれだね・・・たぶん今回は提督が撫でてくれる時間が短かったから被弾してしまったと思うんだよ・・・だから今度はもっと撫でて貰ってから出撃するんだ・・・」
「う~ん?それ本当に関係あるのかな?」
確かに提督に頭を撫でられるのはなんだかちょっと嬉しいけれど、それだけで勝てるようになるものなんだろうか?被弾した責任を提督に押し付けるのは流石にどうかと思うけど・・・
「いや、ほら、なんか提督に撫でられるとなんだか頑張ろうって気になるでしょ?あんなに優しくされる事なんて無かったし・・・」
「うん・・・そうだね・・・それはちょっと分かるかな?」
「やっぱり時雨も嬉しいんじゃない・・・」
「それは・・・優しくされて嬉しくないわけないよ。」
「なら早く鎮守府に帰ろう?時雨ぇ・・・全速前進だぁ・・・」
「はぁ・・・無茶言わないでよ・・・気持ちは分かるけど・・・」
夜戦の前半も後半も視点がコロコロ代わるお話でした。普段は提督目線だけなので、たまにはこういうのも良いかも知れない。大変だけど・・・
もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。
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主人公葛原提督率いる問題児四天王
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長門・陸奥
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第七駆逐隊
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第六駆逐隊
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朝潮・木曾・陽炎・不知火
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叢雲ちゃん率いる横須賀艦隊
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俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!