カナエととら   作:ぶんた

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「鬼滅の刃」と「うしおととら」のコラボになります。
 が、にわかの勢いからの作品となります。
 ご容赦をば。


カナエととらであうの縁

 鴉からの鬼出現の報を受け、急いで駆けつけたそこに居た鬼は上弦「弐」だった。

 思わぬ大物との遭遇に息を飲みつつも、胡蝶カナエは部下と連携して包囲し迎撃体勢を取る。被害者の娘を貪っていた鬼は、ぴくりと反応した。

 

「ううん?これはこれは美味しそうな娘がきてくれたみたいだねぇ」

 

 ゆっくりとふりかえった鬼は腐った瞳でまっすぐにカナエを見つめ、にんまりと微笑んだ。

 生理的嫌悪にカナエの肌が泡立つ。コレは、女を人ではなく、女としか見ない存在だ。

 

 元は人間だった鬼。わかりあう可能性があるのではないか?カナエは常々そう思っていた。

 でも……コレは無理だ。コレとは相容れることはできない。人とか鬼とかって問題じゃあない。女の敵。最愛の妹たちにも牙をむく存在だ。滅ぼさなくてはならない。カナエは刀を強く握った。

 鬼殺隊最高戦力である柱が一柱、花柱である胡蝶カナエとその百戦錬磨の部下達が、阿吽の呼吸で一斉に飛び掛かかる。

 

 だが、その絶対的連携のとれた無数の必殺の刃は、躱され、またはびらりと広げた両手に持った鉄扇でいなされ、不死身なことをいいことに致命傷にならない部位にもらわれたりと、全てを無効化された。

 

「いやはや、なかなかだね」

 

 にんまりとした口角がさらに深まる。……圧倒的戦力差っ!

 それだけではない。これだけの攻撃を片手間にいなしつつ、その視線を一身に浴び続けているのを感じ、カナエの全身が嫌悪に震えた。柱であり部隊の頭であるカナエは即座に判断し、刀から外した左手で部下に合図を送る。

 

『囮になる。撤退せよ』

 

 部隊としての最緊急最重要の合図に部下達が息をのむ。

 この鬼は異常に自分に執着している。この圧倒的敗戦の被害を最小限にするためには、自分が囮になるしかない。

 

 ――ごめんね、みんな……。

 

 目を閉じ一瞬、最愛の家族に思いをはせる。開かれた瞳は決死の覚悟に瞬いた。

 

「あはは!いいね、とっても美味しそう!」

 

 決死の覚悟も鬼の嗜好をそそるだけという事実を、カナエは理解しないようにした。もう、やるべきことをやるしかない。自分が囮となって、できるだけを逃がすのだ。

 

「花の呼吸!弐ノ型 御影梅」

 

 最速の連撃を近場の植木を巻き込んで撃ち、目くらましとする。

 

「陸ノ型 渦桃!」

 

 続けて死角に放った必殺の一撃だが、易々と扇で防がれており、鬼はますますご満悦だ。部下たちの退避を確認し、カナエはすかざす反対方向へと跳躍した。

 

 

*****

 

 

「はぁはぁ……」

 

 追ってきている。逃げなくては。時間を稼がなくては。

 

「きゃっ……!」

 

 雑に、無造作に放たれる追撃に吹き飛ばされる。いつでも殺せると、もて遊んでいるのだろう。部下を逃がす時間を稼げているとはいえ、この下種を楽しませている悔しみに唇を噛み、逃げ続ける。

 

 

*****

 

 

「やれやれ。ここに逃げ込んだのかな」

 

 隊長格の女鬼殺隊員をなぶりつつ追っていた上弦弐は山寺の山門を眺め、ゆっくりと階段を上る。

 あれだけの娘を食べるのは久しぶりだ。とても美味しいだろう。にんまりと微笑む上弦弐が足を止めた。

 その視線の先。境内の真ん中に立つ人影を確認したからだ。

 それは上弦弐の追跡していた隊長格の娘。月明りに照らされ、ゆらりと立つその様は花のようだった。

 

「……お待ちしておりました」

「ええと?」

 

 娘からの言葉に上弦弐は首を傾げる。

 

「まず。私は花柱、胡蝶カナエ。皆を巻き込まぬ場所にと、ご足労願いました」

「へえ?ここへの誘導だったのかい?」

「ええ。あなたほどの鬼との闘いならどれだけのことになるかわかりませんし……」

「ふうん」

 

 手に持つ扇で口元を隠しつつ、にまにまとする上弦弐を見つつカナエは思う。この鬼は自分ですらどこまでできるかわからない程の使い手。部下達は戦力になりえない。それどころかカナエを動揺させるため、まわりの人間を盾にとるような下種な輩に間違いない。ゆえに誰もいない場所へとの誘導だっのだ。

 

「あなたのような鬼をみすみす返しては柱の名折れ。一手お相手願いますね」

「ふふ、いいね。とってもいいよ。私は上弦弐、童磨。お相手願おうか」

 

 カナエは日輪刀を構え童磨と対峙する。

 両手に鉄扇を持つ童磨の鉄壁の防御はわかっている。だが距離をとれば氷の血鬼術の餌食。接敵しなければお話しにならない。

 

「では」

 

 カナエは滑るように童磨へと歩を進める。

 

「…………」

 

 そのカナエが移動が止まった。

 

「ちっ。勘のいいこは嫌いだな」

 

 童磨が眉をひそめる。

 カナエは月明りに輝く童磨が纏う輝く氷の結晶を警戒したのだ。氷術を操る鬼が発生しているもの。間違いなく危険な物だろうと。童磨の反応からどうやら間違いはなさそうだ。屋外だからまだよかったものの、閉鎖された空間だったらとんだ初見殺しだ。

 

「やれやれ。ではこっちからいこう。血鬼術 冬ざれ氷柱」

「!」

 

 カナエの驚きの視線の先。童磨の背後空中に幾本もの丸太の様な氷柱が出現したのだ。

 それらが凄まじい勢いまま降り注ぎ、轟音が起こる!その着弾で巻き起こった土煙の晴れた境内は氷柱が林のように突き刺さり、寺の一部や蔵などすら破壊されることとなった。

 

「死んではいないと思うけど……」

 

 童磨は扇で口元に当てながら、惨状を見つめつつ首を傾げた、その時。

 

「花の呼吸、肆ノ型 紅花衣」

 

 凍気の中、呼吸を止め一気に童磨へと接近していたカナエは、すかさず斬撃を放った!

 

「おっとあぶない。ふふ、美しい。素晴らしいね。血鬼術 葉氷」

 

 カナエの放った大きな円状の剣輝の軌跡は、血鬼術によって花開いた氷の蓮の花々に防がれる。

 

「くっ」

 

 接敵を果たしたカナエはそのまま連続して斬撃を放つが、童磨はその全てを両手の鉄扇でいなす。

 

「いいね。とてもいい。花柱。君は最高だね」

「…………」

「だからとっておきの送り花を捧げよう。血鬼術 蓮葉氷」

「くっ!花の呼吸!弐ノ型 御影梅」

 

 咲き乱れる氷の花にカナエは最速の斬撃を放ち、その威力をぎりぎり相殺する。

 呼吸を制限される苦しい状況ではあるが、距離を離すことはできない。この鬼は遠距離を得意としているのだ。距離を取ったなら、そのまま距離を維持しつつ嬲りものにされるだろう。

 童磨はどうやら武術のようなものを習得してはいないようだ。感知能力や反応速度を含めた肉体性能が技など関係のない次元まで大きく人間を超えているため、力押しでなんとでもなるのだろう。

 本気で双扇で守りに入り、血鬼術を使われては万に一つの勝ち筋もない。

 だが。にまにまといやらしく嗤うこの鬼は自分を侮っている。つけ入るならそこだ。カナエは目を細めた。

 

「ほらほら。もっと頑張らないと!」

 

 童磨が左の扇で斬撃を狙うが、その一撃は空を切る。

 

「花の呼吸。陸ノ型 渦桃!」 

 

 それを紙一重で躱したカナエは童磨の左腕を斬り飛ばす!その勢いのまま連撃の返す刀が頚を襲う!

 

 ギャリン!

 

「くっ!」

 

 カナエが唇を噛む。

 必殺の一撃は頚を覆う氷に防がれていたためだ!

 

「びっくりしたな。可愛い顔して油断ならないね」

 

 童磨の左腕はすかさず再生。しかし当然扇はない。

 

「伍ノ型 徒の芍薬!」

 

 童磨の左に回り込み、間髪を入れずカナエは連撃を放つ!

 

「なっ!」

 

 その連撃も再び防がれる。

 カナエの攻撃を防いだのは、童磨を模した氷人形だった!

 

「結晶ノ御子」

 

 童磨は小さく答える。

 

「ごめんね。それは僕の分身さ。だからね?君の攻撃は僕に届かないってことなんだ。それだけじゃない。僕と君との差を見せてあげるよ」

 

 童磨はさも嬉しそうに、にまりと微笑む。

 

「血鬼術 。霧氷 睡蓮菩薩」

 

 童磨の背後に氷でできた仏像が出現!大技を連発し固まるカナエに衝撃波が放たれた!

 

「きゃっ……!」

 

 カナエは冷気を伴った圧倒的な攻撃をもろにくらい、氷柱に破壊された倉の中へと吹き飛ばされる!その勢いで床下の入り口さえも破壊し、その下へと転がり落ちたのだった。

 

 

*****

 

 

「くう……」

 

 カナエはのろのろと身を起こした。

 その大ダメージを呼吸を整えているときだった。

 

「人間か……」

 

 ふいに、暗闇から声が掛けられのだ。カナエが視線をそちらにむける。

 そこに居たのは黄金の異形。長い鬣に大柄の人ほどの四脚獣だった。釣りあがった双眼に、歌舞伎のような隈取。狂暴な牙の並ぶ口蓋。

 

「おい、この槍をぬきな……。娘」

 

 カナエは驚きに目を瞬かせて息をのんだ。柱として多くの鬼と闘ったカナエだ。相対した相手の戦力を肌で感じることができる。このバケモノは桁違いだ。新たな捕食者の出現に身体が固まる。

 

「あー違う。お前、追われてるんだろ?助けてやるからこの槍をぬけといっているのよ。忌々しいことに、人間にしかぬけんのさ」

 

 右肩に突き刺さった槍が、バケモノを壁に縫い付けていた。

 

「……それをぬいたら、私を助けてくれるのですか?」

「応よ。お前は旨そうでもったいないけど、苦痛を感じないように一口で丸のみにしてやるよ。その後、お前の敵をすりつぶし、ここら一帯の人間を満足するまで食ってやるのよ」

「……ねえ、あなた。そんなこと聞いて、私がそれをぬくと思うの?」

「あ?でもおまえ、ぼろぼろだしどのみち死ぬぞ?ああ、そうだな。じゃあ、お前を食うのはその追ってきてる奴をズタボロにぶっ殺してからにしてやるよ。それなら気もすむだろ?」

「…………」

 

 近づいてきている鬼の気配を感じる。追いつかれれば、日の当たらぬ蔵の地下だ。あのいやらしい笑みを浮かべる鬼にぞんぶんに喰われるだろう。

 

 人間を喰らう鬼は、当然人間をエサのように見る。

 でも、それだけじゃあない。あの鬼のねばつくような視線……。女だからこそわかる、女に執着する視線。体だけでなく、命、そして魂までも穢し貶めて喰らい、それを心の底から愉悦する存在。

 どんな境遇に生きたら、そんな心境になるのだろう?そうなるであろう境遇には同情もわく。そうだからといって、なにをしてもいいというものではない。ああなってしまったアイツにただ喰われるわけにはいかない。多くの女を喰らっている存在なのだ。アイツは斃さねばならない。

 アイツに喰われるくらいなら……。このバケモノに食われるほうが全然いいのではなかろうか?うん、よくみれば大きな猫のようで愛らしいし。私を見てよだれなんかもたらしてる。よっぽどお腹が空いてるのかな?舌舐めづりなんかしてる。可愛い。このバケモノが私を食べるのは、たぶん私が鶏や魚を食するのと同じなのだ。圧倒的強者であるこのバケモノに食べられるのなら、しかたない。納得できる。私の肉を美味しい、美味しいと満面の笑みで食べるのだろうか。うふふ。なんか嬉しい。

 

 ……そんなにがっつかないで?ほら、ここも美味しいのよ

 

 ケモノの食事する様を思い描き、癒される。私、美味しく食べられちゃうの?頬を染めたカナエは熱い息をもらす。

 

「……わかりました。私の敵を斃し、憂いを無くしてくれるなら貴方に食べられます」

「よしよし。じゃあ、早速その槍をぬけ」

 

 カナエは小さく頷いて、槍に手を伸ばした時だった。冷気をまとった衝撃がカナエを吹き飛ばし、壁に叩きつける!

 

「かはっ!」

 

 床にどさりと落ちる。大きく肩が動いているので死んではいないが、かなりのダメージを負ったのは間違いない。

 

「お、おい!人間だいじょうぶか?しっかりしろ」

「こんなところに逃げ込んだら、袋のネズミなのにね。でも、その必死さが愛おしいよ」

 

 満面の笑みを浮かべた鬼がそこに立っていた。

 

「お前がその娘の敵かよ。殺してやるからちょっと待て」

「ううん?変な気配は感じていたけどここに封じられていたバケモノなのかな?」

 

 童磨は眉をよせ、黄金のバケモノを品定めする。

 

「バケモノだかケダモノだかしらないが、ずいぶん長い間封印されていたのだね。ここはくさくてたまらないよ」

 

 扇で鼻下を覆いつつ、バケモノを見下した。

 

「僕は彼女を迎えに来ただけだ。関係のない君は封印されていなよ」

「ふざけるな。その娘はわしのものよ。おまえがすり潰されるのを眺めたのちに、ゆっくりとわしに食われるのよ」

 

 童磨の眉が跳ね上がる。

 

「は?ケダモノがなにをいってるんだい?俺に勝てるとでも?」

「そういってるのよ。だからちょっとまってろ」

「ふうん。そこそこ高位なバケモノなのはわかるけどね。わからせてあげるよ。鬼血術 寒烈の白姫」

 

 笑みを浮かべた童磨の前に、氷でできた乙女が現れ、そして死の息吹を放った!

 

「ぐうぅ!」

 

 槍によって縫い付けたられたバケモノに避けるすべもなく、その凍てつく息吹をまともにくらう。

 

「君みたいなバケモノはなかなか死ななくて面倒だからね。そのまま永遠、この地下で凍り付くがいいよ」

 

 ビキビキと音を立てて氷が生え、バケモノを覆い始める。

 

「くそっ!」

「……これをぬいたら、私の敵をみんなたおしてくれるのでしょ?」

 

 バケモノの目が大きく見ひきられる。瀕死のうえ凍気にあてられた、まさに満身創痍のカナエが槍にすがりついてバケモノに微笑みかけていたのだった。

 

「お、おいっ!」

「……そして、私を美味しく食べてくれるのよね?」

 

 死相の頬を染めてささやく。さしものバケモノも息を飲む。

 

「わかった!いいからはやくぬけ!わしは死肉は食わんぞ!」

「あ、はい」

 

 目も虚ろな花柱をも納得させる一言に、残る力を振り絞り槍はひきぬかれた!

 

「ちっ!こいつやばいな……」

 

 瀕死のカナエを抱えてバケモノは困惑する。極限まで鍛えられた適齢の生娘。最上の肉がむざむざ無駄になる!

 

「おい、バケモノ。それは俺のだっていったろうが!血鬼術 蔓蓮華!」

 

 怒りのこもった笑顔の童磨から絶凍の蔓が伸び、バケモノに襲い掛かる!

 

「ぐうぅ!」

 

 動きを阻害しようと巻き付く蔓を、その鬣で防ぎ鬼に近寄る。

 

「おい、起きろ!このままだとお前は死ぬ。死にたくなかったら、その槍で奴を刺せ」

 

 バケモノは槍をつかんだカナエの細腕を支え、上限弐に襲い掛かる。当然そんな攻撃が有効なわけもなく、童磨の腕をかすめる程度。

 

「そんなものじゃあ、お話にならないよ」

 

 だが。童磨の浮かべていた笑みが固まる。バケモノに抱えられていた花柱の髪が異様にわさわさと伸び、なびきはじめたのだ。そのうねる髪ごしの視線に、上限弐は目を見開く。さっきまでの花柱の眼ではない。異形の瞳っ……!

 

「……今日はここまでにしてあげるよ」

 

 圧倒的力を持つ鬼は、想定外の事態を侮らずに撤退する選択肢を選ばない。それを選べるからこその上弦弐ではあるのだ。

 

「お、おい、逃げるな!」

 

 そしてバケモノはカナエを抱えたまま追うこともできず、文句を言うことしかできなかった。

 

「槍が教えてくれました……。これは妖怪を退治するためにだけに二千年も昔、古代中国でつくられた獣の槍。あなたはこれだけのものに封じられていたのですね……」

 

 槍の異能によって生えた髪が落ち、疲れきったカナエの顔があらわになる。しかし、そのまま目を閉じ意識も手放してしまう。

 

「おっ、おい!くそ、これどうすりゃいいんだよ!」

 

 バケモノが怒号を上げる!

 

 

 ――しのぶと部隊の者が、寺の倉地下で倒れているカナエを発見するのは、暫し後の事だった。




 休日の酔っ払いが勢い余って初投稿でこのありさま。
 いろいろいたらなくってほんとごめんなさい。

 これの続きは……ヤンデレなカナエさんがR18展開……
 ……アカン!

 少しでも楽しんでくれた方にはマジ感謝!
 アカンかった方はごめんなさい。


 追記、コソコソ話。
 カナエさんは童磨にも同情してたんだって!マジ聖女。
 わたしの、童磨許すまじがにじみでちゃいましたね……。

→速攻逃げるのもなんなんで、ちょっとかえました

→ひい!Cranさんご指摘ありがとうです!
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