カナエととら   作:ぶんた

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浅草にて 其ノ参

 その暫し前。

 

「むうぅー」

 

 闇に沈む街。背の高い建物の上でカナエは唸っていた。

 現場で見かけた不穏な関係者への警告と、とりあえず大見えを切ったものの。大きな街だ、どこから捜したものか。カナエは途方に暮れていたのだ。勿論カナエだけが捜しているのではない。鬼殺隊の協力者は多い。

 今回の事件は男児が七人も被害にあっていた。少年達は両目を抉られ、その臀部を削ぎ取られるという凄惨なもの。さらに酷い暴行を受けて死んだそうだ。その猟奇的な事件の捜査を行っていた下位隊員もその被害にあったのだろう。無残な屍が隠に回収されていた。

 女に執着する上限弐のように、人間だった頃の思いを拗らせ、異常なこだわりをもつ鬼は多い。どれだけの思いがそうした凶行を引き起こさせているのだろうか……。カナエの気は沈む。

 だが、どんな背景があろうと凶行の理由にはならない。なっていいわけがない。

 これ以上の被害者を出すことは許されない。だが捜索は、はかどっていないのだった。

 

「…………」

「そんな目で見ても、わしゃしらんぞ。大抵のことができるわしだが、捜しもののようなちまちましたことは性に合わんのよ」

「はうぅ」

 

 街並みを珍しそうに眺めていたバケモノの、カナエからの神頼みならぬバケモノ頼りの視線を受けてのつれない返事に、カナエは肩を落とす。

 その時。

 夜の街に響く銃声をカナエの耳が捉えたのだ!

 

「ちょっといってきますね」

 

 バケモノが振り向くと、すでにカナエの姿はなく。 

 槍の力で超人となって、それこそすっ跳んでいったのだろう。長い髪と白い羽織をたなびかせた後ろ姿があっという間に小さくなった。

 

「やれやれ。いそがしいやつよ」

 

 バケモノは呆れたようにつぶやいた。

 

「ん?あれは……」

 

 異様な気配を感じたバケモノは、ふわりと夜の街を飛んだ。

 

 

*****

 

 

「無惨様の血を頂きながら、全然だめじゃないか」

 

 鬼殺隊に瞬殺された怪人の末路を見届け、逞しい体躯に着物を纏った、髭面の男は渋い顔をしつつ帰還していた。その片目には「伍」の文字。

 

 無惨は白面の提案を受け、捕縛した河童に血を与えてみたのだ。人間のように溶けるような事はなかったが、すっかり正気を失っていた。能力自体は向上しているようだが、これではとても使い物にならない。

 

「ちっ。やはり獣風情の浅知恵か」

 

 ふらふらと街へ解き放たれた怪人を無惨は見送った。一応の経過観察として下弦伍が派遣され、その様子を窺っていたのだった。

 

「おい。おまえ」

「!」

 

 その下弦伍の前に突如、長い鬣の金色のバケモノが現れたのだ。

 

「おまえ、人ではないな。あの娘の追う鬼とかいうやつか?」

「…………!」

 

 そのバケモノが発する異様な圧力に下弦伍は唾を呑む。この圧力は無惨様から受けたものにも匹敵する!いやそれ以上の……。

 

「あ、ああああ……」

「どうなのよ?」

 

 目を細めてねめつけるバケモノの前。下弦伍の全身がギシギシと金属に覆われ始める。

 下弦伍の異能は全身鋼鉄化。鋼の皮膚は刀を弾き、鋼の拳はまさに鉄槌の一撃。勢いをつけた突進はその重量もともなって城壁すら破壊する!単純な能力だからこその純粋な強さ。

 

「俺は全身を鋼にすることができる!こうなった俺はまさにくろがねのしろ……」

 

 ごいん!

 

 バケモノの撃ち下ろす無造作な右拳が下弦伍の胸に炸裂!できのわるい鐘のような音が響き、続けて盛大な爆発音とともに土煙が上がる!下弦伍はふっ飛んで大の字の仰向けに地面に叩きつけられ、めり込んでいた。

 

「鋼がなによ?」

「ぁぁぁ……」

 

 バケモノはつまらなそうに下弦伍を見下ろす。

 打撃を受けた胸には穴が空いていたが、すでに回復がはじまっていた。

 無防備な下弦伍にバケモノは手を伸ばす。

 

 ぼぎん!

 

 バケモノは下弦伍の頭を捥ぎり、まじまじと見つめた。

 

「頚を外すだけじゃ死なんのか。ん?それだけじゃないな。こいつをとおして、おまえ、視てるのか?」

 

 バケモノは目を細め下弦伍の瞳を見つめる。

 すると、その首がぶくぶくと膨らむはじめた!

 

「なにっ!」

 

 目を見開いたバケモノは慌てて、その頭を投げ捨てる。

 

 ばん!

 

 次の瞬間。下弦伍の頭が血を飛び散らせ爆散した!

 

「うおお!ばっちい!」

 

 かろうじて避けたものの、わずかに飛沫を浴びたバケモノは顔を曇らせる。

 

「くそ。臭くてかなわん」

 

 バケモノは身を清めようと水場へと飛んだ。

 

 

*****

 

 

「なっ……。い、いまの妖はっ……!」

 

 感知されぬようにと下弦伍を自爆させ、繋がりを切った無惨は小さく呟いた。

 今の時代にあれほどの妖がいようとは。

 無惨の産まれたのは人知を超えた亜神や大妖が存在する、人と人外の境界が曖昧だった時代だった。

 あの金色のバケモノはそういった中でもとびきり力を持つ存在に間違いない。

 白面の者が接触してきたことに関係があるのだろうか?

 無惨は視線を下げ、思考をめぐらせる……。




 ¥¥様の感想から、無惨様のとら……。ごほんごほん。バケモノへの評価を上げてみました

 さらに追記
 わざわざこれを読んでくださる方はやっぱりこうだろうと、無惨様をびびらせてみました。
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