カナエととら   作:ぶんた

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【番外編弐】蝶屋敷ばれんたいん編

 蝶屋敷。大広間。

 上座の胡蝶カナエは並んで座る妹達を見やる。

 

「皆、わざわざありがとうね」

 

 カナエは静かに語りだす。

 

「さて。実は本日、外国ではお祭りなのだそうです」

「お祭り?」

 

 カナエの言葉にしのぶが眉をよせる。

 

「ええ。『ばてれん・ばれたいん』というそうです」

「……なに?その縛り首確定みたいなの?」

「名前はともかく!女子が集まってお菓子を食べて親睦を深める、といったものだそうです」

「ひな祭りみたいな?へえ、外国にもそういうものがあるのね」

「我が家にぴったりな催しだと思わない?そこで、急遽開催したいと思います!」

「ええっ!」

「ちゃんと特別指南も呼んでるのよ?甘露寺蜜璃ちゃんです!」

 

 カナエは横に座していた娘を妹達に紹介する。

 二つの三つ編みにした長髪は目にも鮮やかな桃色で先のほうだけ緑色というもの。端麗な容姿と凹凸のあるスタイルという凄まじい存在感のある娘であった。

 

「甘露寺蜜璃です。よろしくおねがいします……」

「蜜璃ちゃんは煉獄様のところで修行をしている娘ですが、すっごい筋がいいのよ。しのぶの次くらいに!それだけでなく、お料理が得意で洋食もすっごい美味しいの!それでね、外国のお菓子も作れるそうなので、煉獄様にお願いして来てもらったの!」

 

 キャー!唯一の女性の柱、憧れのカナエ様に注目されてたなんて!今日はがんばらなきゃ!

 蜜璃はキュンキュン!興奮していた。

 

 

*****

 

 

「『ばれんたいん』で食するお菓子は「ここあ・ぱうだあ」から作られた「ちょこれいと」を使用するものとなります」

 

 前掛けを着衣し準備万端の一同は、厨房で蜜璃の講釈に注目していた。

 

「「ちょこれいと」!あの板みたいなのよね!すごく甘くて美味しいの!」

 

 カナエが興奮して叫ぶ。

 

「ええ。ですが慣れていない人ではなかなかうまくはあつかえません。大抵、ぎゃー!ってなって、しょぼんなのです。なので今日はこう、ひゅっと離れて、びゅん!さささっとーずどん!って感じにやってみようと思います!」

「???」

 

 蜜璃の熱のこもった説明を理解できない蝶屋敷の娘達は、とりあえずおとなしく従うこととした。

 

 

*****

 

 

 数時間後。甘い香り漂う蝶屋敷。

 大広間の座卓には数々の菓子がならんでいた。

 蜜璃の説明では「ちょこれいとけーき」「ちょこれいとわっふる」「ちょこれいとましゅまろ」「ぶらっくここあさぶれ」そして「ここあおれ」となる。

 その豪華な品揃えに娘達は大興奮!にんまりと視線を合わせる。

 

「いただきます!」

 

 宴の始まりだ!

 

「美味しー!」

 

 それぞれが落ちそうな頬をおさえ、幸せに身を震わせる!

 

「蜜璃ちゃんはほんと凄いわね!煉獄様に掛け合って、うちの子になってもらおうかしら……」

「ちょっと、姉さん!」

 

 珍しく不穏な圧をダダ漏らすカナエにしのぶが待ったをかける。

 

「あははっ!嬉しいお言葉ですけど、煉獄家の皆様には、よくしてもらっていますので……」

「そっか。それじゃあしかたないわね……。でもいつでも遊びにきてね。もっと仲良くなりたいもの」

 

 カナエは蜜璃をじっと見つめ、その手をぎゅっと掴む。

 

「あ、はい……」

 

 蜜璃はキュンキュン!と真っ赤になって俯いた。

 

「ああん?これはなんのにおいだ?」

「バケモノ様!」

「!!!」

 

 突如出現した金色の妖に、蜜璃は固まった!

 

「こりゃまた旨そうだな」

「ええ。どれも外国のお菓子なのですよ。おひとつ如何ですか?」

 

 蜜璃を眺めるバケモノに、カナエは微笑みながら菓子を勧める。

 

「ふん。どれ……」

 

 差し出された菓子を口に放り込み、むしゃむしゃと味わう。

 

「あ、あのカナエ様。こちらの方は?」

「ええ。私が大変お世話になっている妖の方です」

「は、はぁ」

 

 蜜璃はバケモノを観察する。大きなネコみたいで可愛いっ!思わずキュンとしてしまう。

 

「あっあのっ!少しだけ、触ってみても?」

「ああ?駄目にき……」

「このバケモノ様はまさに大妖!寛大なお方なのです!小娘の小さなお願いを無下にするような器ではないのですよ。お菓子のお礼ですもの。ささ、触らせてもらいなさいな!」

「……ちっ。勝手にしろ」

「わあい!」

 

 蜜璃はバケモノの鬣を撫で始めた。

 

「バケモノ様。お菓子は如何ですか?」

「ああ。わるくない。だが、甘ったるいな。よくもまぁこんなんばっか食っていられるな」

「殿方にはそうなのかもですね。甘さ控えめで、いくらでも食べれそうですけれど」

「ふうん。まあお前はもうちょっと肥えた方が食い応えもありそうだ」

「!!」

「この「ここあ」の菓子はとても栄養が多いので、太るにはもってこいですよー」

「!!!」

 

 蜜璃の発言に、場が凍り付く!

 

「蜜璃ちゃん……?太るのはね、困るの。いろいろとね?すごく。ほんとうに」

 

 カナエが発する圧に、蜜璃は狼狽えた。

 

「えっ!余分な栄養を消化すれば問題ないのでは?その分運動をするとか……」

「なるほど。では稽古をしましょう!」

「えっ!」

「皆一斉にでもかまいませんよ?」

「ふうん。いったわね、姉さん。悪いけどぎゃふん!といわせるよ?甘露寺さん、やるよ!」

「ええっ!」

 

 バケモノがのんびり居眠りしつつ浮かぶ蝶屋敷。

 ばれんたいんからの総稽古とその日はひと際、華やかであった。




 ばれんたいんコソコソ
 日本におけるバレンタインは1958~なそうなので、かなりのフライング
 チョコは「しょくらあと」として江戸時代寛政九年オランダ人から遊女がもらったものが日本初となるそうです
 あれれ?するとバレンタイン、日本で最初に思い人にチョコを送ったのが、これってことになっちゃいますかもよ?
 
 蜜璃のバレンタイン菓子の講釈は「ちはやふる」二十六からのまるぱくり
 ちはやふる、すっごいおもろいですよねー!
 
→『ばてれん・ばれたいん』いいたかっただけってとこはあります。てへ!

→→蜜璃の説明っぽくしてみました。

 本編続きは……。
 着地点を思い悩んでおります;
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