「しのぶ。……怒ってる?」
目覚めたカナエは状況を把握した後、慌てて妹の元に向かう。カナエのおずおずと掛けられた声に、しのぶの背中に反応はない。
「あの、あのね。私、すっごく疲れてて……。ごめんね?」
「……姉さんの寝起き、酷いから気を付けてって、前もいったよね?」
「あ、はい」
「柱会議に遅れそうだから起こしてあげようとした時だよ?憶えてる?」
「う、うん……。ごめんなさい」
その言葉に振り返ったしのぶは、怒りの表情でカナエを睨みつけた。
「それだけじゃないよ!ぼろぼろの恰好で倒れてて!怪我はなくても意識はなくて!何日も起きなくて!どれだけ心配したと思ってるのよ!やっと起きたかと思ったら、怒られるし!動物を飼っちゃ駄目っていっつもいってるのに、あんなの拾ってきてるし!姉さんなんて、嫌い!」
叩きつけられた言葉にカナエの瞳は大きく見開かれる。
「ああ……」
カナエは力なく膝を着く。
「ごめん、ごめんなさい。しのぶに嫌われたりしたら私……」
しのぶにとって美点の塊のような姉だが、寝起きの悪さにはあきれるしかない。
「……もう起こされても怒らない?」
ため息まじりにしのぶの言葉に、カナエは顔を上げる。
「ええ、気を付けます!」
「……わかった」
「しのぶ!」
「……それと、おかえりなさい」
最愛の妹の不器用な一言に、幸せがこみ上げる。
「ただいま!心配かけてごめんなさいね」
抱き着くカナエを、しのぶはやさしく抱き返してくれるのだった。
*****
何が起こったのか?カナエの話にしのぶはただただ混乱した。
「それでええと、これが獣の槍?」
「そう、これのおかげで怪我は全部治ったみたい」
姉妹は槍を眺める。穂首に赤い布の巻き付いたそれは、かなり古いもののように見える。
「おうよ。それが妖の天敵。妖を斃すための妖器物、獣の槍よ」
ふわりと出現したバケモノに、二人は身を固めた。
「そいつはな。所持者の魂を代償に、妖と闘う力を与えてくれるのさ。回復力もそのひとつよ。人間、運がよかったな」
「あ、はい……」
頬を染めてうつむく姉に、しのぶは怪訝な視線をむける。
「妖必殺とかいいながら刺されてたあなた、死んでないじゃない。眉唾よね」
「……ああ?わしほどの大妖だから、なんとかなったってわけだろ?」
「逆もありえるよね?その槍に敵って思われないほどの雑魚とかさ」
「なにぃ?」
一触即発の二人にカナエは慌てる。
「ちょ、ちょっと落ち着いて?二人とも……」
「鬼を殺した後に姉さんを食う?そんなの認めるわけないじゃない。コイツは気にいらない!」
「ああ?気が合うじゃねえか。わしも身の程知らずのクソガキは気にいらんのよ」
胸元に両手を合わせ、火花散らす二人を交互に忙しく見ていたカナエのまゆがはねる。
「ちょっとしか会っていないのに、気が合ってるの?いつの間のに仲良しさんなの?ずるい!二人ともずるい!」
「ええ?」
カナエの発言に二人は活動停止。錆びた動きでぎりりとカナエに首を向けた。
「喧嘩するほど仲がいいといいます!私だけ仲間外れとかずるいですよ!私も仲間に入れてください!」
困惑に固まる二人に、カナエは歓声をあげつつ抱きつくのだった。
コソコソ話
前でおわったら、しのぶさんにあんまりだからと短いのを投稿しようとしたら、
1000文字ないとだめなんですって……!
おっふ……
追加をひねりだしつつ、
夏休みの感想文埋めてる気分を思い出しました。