カナエととら   作:ぶんた

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蝶屋敷にて 其ノ弐

「しのぶ。……怒ってる?」

 

  目覚めたカナエは状況を把握した後、慌てて妹の元に向かう。カナエのおずおずと掛けられた声に、しのぶの背中に反応はない。

 

「あの、あのね。私、すっごく疲れてて……。ごめんね?」

「……姉さんの寝起き、酷いから気を付けてって、前もいったよね?」

「あ、はい」

「柱会議に遅れそうだから起こしてあげようとした時だよ?憶えてる?」

「う、うん……。ごめんなさい」

 

 その言葉に振り返ったしのぶは、怒りの表情でカナエを睨みつけた。

 

「それだけじゃないよ!ぼろぼろの恰好で倒れてて!怪我はなくても意識はなくて!何日も起きなくて!どれだけ心配したと思ってるのよ!やっと起きたかと思ったら、怒られるし!動物を飼っちゃ駄目っていっつもいってるのに、あんなの拾ってきてるし!姉さんなんて、嫌い!」

 

 叩きつけられた言葉にカナエの瞳は大きく見開かれる。

 

「ああ……」

 

 カナエは力なく膝を着く。

 

「ごめん、ごめんなさい。しのぶに嫌われたりしたら私……」

 

 しのぶにとって美点の塊のような姉だが、寝起きの悪さにはあきれるしかない。

 

「……もう起こされても怒らない?」

 

 ため息まじりにしのぶの言葉に、カナエは顔を上げる。

 

「ええ、気を付けます!」

「……わかった」

「しのぶ!」

「……それと、おかえりなさい」

 

 最愛の妹の不器用な一言に、幸せがこみ上げる。

 

「ただいま!心配かけてごめんなさいね」

 

 抱き着くカナエを、しのぶはやさしく抱き返してくれるのだった。

 

 

*****

 

 

 何が起こったのか?カナエの話にしのぶはただただ混乱した。

 

「それでええと、これが獣の槍?」

「そう、これのおかげで怪我は全部治ったみたい」

 

 姉妹は槍を眺める。穂首に赤い布の巻き付いたそれは、かなり古いもののように見える。

 

「おうよ。それが妖の天敵。妖を斃すための妖器物、獣の槍よ」

 

 ふわりと出現したバケモノに、二人は身を固めた。

 

「そいつはな。所持者の魂を代償に、妖と闘う力を与えてくれるのさ。回復力もそのひとつよ。人間、運がよかったな」

「あ、はい……」

 

 頬を染めてうつむく姉に、しのぶは怪訝な視線をむける。

 

「妖必殺とかいいながら刺されてたあなた、死んでないじゃない。眉唾よね」

「……ああ?わしほどの大妖だから、なんとかなったってわけだろ?」

「逆もありえるよね?その槍に敵って思われないほどの雑魚とかさ」

「なにぃ?」

 

 一触即発の二人にカナエは慌てる。

 

「ちょ、ちょっと落ち着いて?二人とも……」

「鬼を殺した後に姉さんを食う?そんなの認めるわけないじゃない。コイツは気にいらない!」

「ああ?気が合うじゃねえか。わしも身の程知らずのクソガキは気にいらんのよ」

 

 胸元に両手を合わせ、火花散らす二人を交互に忙しく見ていたカナエのまゆがはねる。

 

「ちょっとしか会っていないのに、気が合ってるの?いつの間のに仲良しさんなの?ずるい!二人ともずるい!」

「ええ?」

 

 カナエの発言に二人は活動停止。錆びた動きでぎりりとカナエに首を向けた。

 

「喧嘩するほど仲がいいといいます!私だけ仲間外れとかずるいですよ!私も仲間に入れてください!」

 

 困惑に固まる二人に、カナエは歓声をあげつつ抱きつくのだった。




コソコソ話
前でおわったら、しのぶさんにあんまりだからと短いのを投稿しようとしたら、
1000文字ないとだめなんですって……!
おっふ……
追加をひねりだしつつ、
夏休みの感想文埋めてる気分を思い出しました。
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