『さん、にい、いち!あけましておめでとうございます!今年は寅年ですね!……』
とらはTVの前でぼうっとその画面を眺めていた。その後ろで。
「おお!うしお!見たか?見てたか?父は年越しの瞬間、この地上にはいなかったのだぞ!」
「やかましい!いい歳した大人がはしゃぐな!」
ぎゃーぎゃー騒ぎ立てジャンプを繰り返す紫暮を、うしおは半眼のジト目で怒鳴りつけていた!
「くそ、みっともねぇ。どうしてあれは、ああなのか……」
父、紫暮のはしゃぐ様子にうしおは肩を落とす。そしてうしおは金色の妖に視線を移した。
「おい、とら。ちゃんと年越しそばは食ってんのかよ?」
「あ?なんというかずいぶんな出来だったがよ。まあ、食ってやったがな」
「それは俺が作ってやったもんだろうがよ?喧嘩うってるのか?」
「ああ?事実をいったまでだろうがよ。あそこで食べた料理に比べれば、おまえのなんかもうゴミ屑よ」
「あそこ?」
眉をよせるうしおに、とらは首を傾げる。
「ああ、あそこよ。だが……」
あたたかい雰囲気。やさしい娘達のいるあれは……。長い黒髪。蝶の髪飾りをした娘が微笑む……。
「とら!」
めずらしく考え込むとらに、うしおは声を掛けた。
「あ?ああ、なんでもねえ」
乱暴にとらは言い捨てる。
「ふーん?まあよ?今年は寅年なんだぜ?」
「?」
「いろいろ大変な年だけどよ。とら!おまえの年じゃねえか!だから張り切ってくれって言ってんのよ!」
「ああ?わけわからん」
「ははっ!そうだろうな!まあ真由子がたらふくハンバーガーもってきてくれてるからよ!それでがまんしろや!」
困惑するとらをうしおはバシバシ叩きながら笑いかける!
「…………」
そんなうしおをとらはめんどくさそうに眺めた。
*****
「バケモノ様。年越しそばはいかかですか?」
掛けられた声にバケモノは我に返った。
「あ?ああ、これはどうして、なかなかのものよな」
バケモノは丼によそわれたそばを、そのまま口に注ぎ込む。
「あらあら!ふふ!さすがアオイ渾身の年越しそば!お気に召していただき、私もとても嬉しいです!それに、今年は寅年。なんとなく、バケモノ様はとても縁起が良い気がします!」
バケモノの食いっぷりに、カナエは満面の笑みを浮かべていた。
「……うむ。これに比べれば、アレはまったくよ……」
「なにと比べると、ですか?」
バケモノの言葉を拾い、カナエは目を瞬かせる。
「む?」
カナエの反応にバケモノは視線を彷徨わせた。
生意気そうな小僧が騒いでいたような……。
「ああ?なんでもねえ!それより、もっと食い物をもってこい!」
「はい!ただいま!」
バケモノの大きな声に、カナエは満面の笑みで答えた!
「あとは、はんばっかだな」
「はい?はんばっかとは何ですか?」
「うん?なんだったか……」
「?」
顔を合わせたカナエとバケモノは目を瞬かさせ、首を傾げるのだった。
今年もたいへんな年になりそうですがー。
とら年ですもの!はりきっていきませうー!(注2022(寅)投稿)
→日本におけるハンバーガーは第二次世界大戦後、佐世保の駐留した米軍からだそうです。
ハンバーガーの原型は18世紀だとか。てれやけばっかはまだまだ先ですねぇ