カナエととら   作:ぶんた

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「双六大好き善逸のー!今日の一振り!せーのー!」

 がしりっ!

「なっ!?」

 その時ッ!賽子を振ろうとする善逸のその手首が、何者かにつかまれたのだッ!

(続く!)


【番外編捌】ある日の蝶屋敷編

 蝶屋敷。

 

「カナヲ!」

 

 かけられた声にカナヲが視線を向けると、暖かな日の光さす縁側に座っているカナエが、おいでおいでと手を揺らしていた。

 カナヲは目を瞬かせ、そちらに歩を進める。

 

「いらっしゃい。カナヲ」

 

 カナエは近くにきたカナヲに微笑みつつ、隣に座るように促した。

 カナヲは大人しく隣に座る。

 

「ふふふー。カナヲは相変わらず可愛いわね!」

「……」

 

 ご機嫌なカナエに抱きしめられたカナヲは、無言でされるがままになっていた。

 

「どう?この屋敷の庭は綺麗でしょう?私はここからの眺めがお気に入りなのよ」

 

 そんなカナヲにおかまないなしにカナエは話し続ける。

 二人の前には蝶屋敷の庭が一望できた。広い日本庭園。様々な植物が配置されている。鍛錬用の広場や小さな池も眺めることもできた。

 

「初代花柱のお屋敷を私が引き継いだわけなのだけれど。代々ここの庭を手入れしてくれている庭師の家の方がいてね?」

「……」

「季節ごとに美しい花が見れるようにしてくれているのよ。それぞれ見事なのだけれどー。やっぱりあれね」

 

 カナエの視線の先を、カナヲも見つめる。

 そこには大きく立派な巨木が葉を茂らせていた。

 

「あれは『必勝』と名付けられた桜なの。春、満開のときはー。それはそれは綺麗で見事なのよ!今度その時はみんなでお花見しましょうね?」

 

 カナエは抱きかかえたカナヲを揺らしつつ微笑む。

 

「私らでご馳走を作ってー。知り合いをたくさん呼んでー。ふふふっ。きっと。とてもとても楽しいわよ?楽しみね。……ん?」

 

 カナエは違和感を覚えカナヲを見つめる。カナヲは目をつぶり寝ているようだった。

 

「あらあら?うふふ。お昼寝にもってこいよね?こんなにいいお天気なのだもの」

 

 カナエはカナヲの頭を撫でつつ目を細めた。

 

「ん」

 

 そんなカナエがふいと視線を向ける。そこには寺内きよが通りかかっていた。

 

「きよ!」

「!」

 

 カナエから声を掛けられたきよはびくりと肩を震わせ、カナエを見つめる。

 そんなきよにカナエは微笑みかけ、おいでおいでと手招きをするのだった。

 

 

*****

 

 

「…………」

 

 無言なしのぶの視線の先。

 その縁側にはカナエを中心にカナヲ、きよ、すみ、なほ。そしてアオイまでもが一塊になり、すうすうと気持ちよさそうに眠っていたのだった。

 カナエが皆を呼び込み、こうなったであろうことは想像に難くない……。

 

「もう!やっぱり姉さんの仕業だったのね?」

 

 しのぶは毒づきつつ歩み寄り。

 

「んー。でも、気持ちよさそう……。本当に気持ちよさそうね」

 

 少しだけ。そう少しだけ……。

 

「はあう……」

 

 大きなあくびをこぼしつつ、しのぶは大好きな姉妹たちに抱き着いて瞼を閉じるのだった。 

 

 

*****

 

 

「!!!」

 

 しのぶが、はっと目を覚ますと、そこは薄暗い自室。

 慌てて居間に向かえば、カナエをはじめ姉妹たちは食事中だった。

 

「あら、しのぶ。起きたのね?」

 

 そうして騒々しく入室したしのぶに、カナエはすかさず声を掛ける。

 

「お食事にする?すぐよそうわね?」

 

 腰を上げたアオイを制し、カナエはにこにこと給仕に動く。

 

「ちょっ!姉さん!なんで起こしてくれないの!私だけ寝坊助みたいじゃない!」

 

 すかさず、しのぶは姉に不満をぶつけた。

 

「しのぶは頑張り屋さんで疲れているもの。ゆっくり寝ないとでしょ?たまには寝坊助くらいでちょうどいいのよ」

 

 そんなしのぶの抗議など、カナエはどこ吹く風という有様。

 

「っ……!」

「しのぶったらぐっすり寝っちゃってー。よっぽど気持ちよかったのね?うふふ。ひさしぶりにしのぶの可愛い寝顔が見れて嬉しかったわよ?」

「ぐぬぬー」

 

 カナエからそうして微笑まれると、しのぶとしては返す言葉もない。

 悔しいけれどやっぱり、この親愛なる姉様には敵わないと思ってしまう。

 

「もう!姉さんの拉弗来写(らふれしあ)!」

「んんん?何?それ?」

「世界最大の花の名前よ!」

「あら、褒められた?」

「まーね!」

 

 首を傾げるカナエに、しのぶは頬を膨らませ不満げに返事をしたのだった。

 

 

*****

 

 

 そしてまたある日の蝶屋敷。

 カナエお気に入りの縁側を通りかかったカナヲは、ふと視線を向けびくりと肩を震わせた。

 金色の妖がのんびりと居眠りをしていたからだ。

 

「……」

 

 カナヲはまじまじと見つめつつ、ゆっくりと近寄り。

 さわさわとそっとその毛並みを触ってみても妖に反応はない。

 

 ぴん!

 

 カナヲは宙高くコインを弾いた。が、そのコインはするりと動いた妖の鬣の一房が彼方へ弾いてしまった!無意識に虫でも追い払ったようなものかもしれない。

 

「……」

 

 カナヲは無表情にそのまま暫く佇み。

 その後。そっと妖に身を寄せてあくびをひとつ。すうすうと寝息を立て始める……。

 

 

*****

 

 

「んんー」

 

 金色の妖はゆっくりと身じろぎをした後、目を覚ました。

 

「ったく。あの娘の屋敷だけあってほんと呑気な場所よ。すっかり瞼が重くなっちまう……。ん?」

 

 身を起こそうとした妖は違和感に動きを止め視線を向ける。そこには自分に寄りかかるように屋敷の娘達が寝ていたのだ!

 

「なあーっ!いつの間に!」

 

 敵意なく近寄られたため気づくことができなかったのだろうか。

 呑気なあの娘にすっかり毒されて、緩んでいるのを自覚する……。

 

「…………」

 

 ――妖は獣の槍に数百年縫い付けられていた。

 光無い暗闇。その肩に刺さるは自分を滅するであろう妖器物。不思議と自分を滅せようとはしないようだが、自分の力を封じ、じくじくと自分を蝕む異物を常に感じ、休息する時など一刻もなかった。人ならば耐えることができず、即座に正気を失うであろう状態であったのだ。

 

「むう、まぁいいか……。あの娘の妹どもだ。無理に起こしてああなられても面倒だしな……」

 

 そもそも妖には睡眠など必要ではない。

 が、折角解放されたのだ。少しはゆっくりしてもよいだろう。

 妖は大きなあくびをひとつこぼし。

 娘達を起こさぬよう、二度寝を満喫することにするのだった。

 

 

****

 

 

 ――姉ちゃん!

 ――しっ!■ャ■■シ■様、珍しくうたた寝してるのよ?

 ――ほんとだ!いつもたいへんだものな!

 ――ええ。お疲れなのだもの。ゆっくり寝かせてあげましょう?

 

 

*****

 

 

 妖のまどろむそんな夢の中。ふいと浮かんだその懐かしい記憶の破片は、そのまま淡く消えた。




→ねえしってるー?拉弗来写と書いてラフレシアと読むのだってー。まめしばー!

→ラフレシア・アルノルディイって人が見つけたからラフレシアだそうですよ?

→→すいません。正確にはラフレシア・アルノルディイさんが発見したのではな く、発見者であるトーマス・ラッフルズとジョゼフ・アーノルドの2人によりそう名付けられた、が正解でした!
 ラン様のおかげで発覚!
 盛大にほらふいてました……(汗)。我ながらびっくり!ラフレシアジョーク!ということで!

→ラフレシアの花言葉は『夢現』だそうです
 なんかもういろいろぴったりで震えましたがー
 臭いってやつがーうーん。
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