「この度はご助力、まことにありがとうございました」
上座に座るバケモノにピシリとカナエは土下座した。
「わしはなんもしてないしな。そーゆーのはいらんのよ」
鷹揚に答えるバケモノに、並んで土下座するしのぶの眉がはねる。顔を伏していたので、見られはしなかったが。
「それと改めて自己紹介を。私がここの主、胡蝶カナエと申します。鬼殺隊にて花柱を務めております。
後ろに控えるは胡蝶しのぶ。栗花落カナヲ。神崎アオイ。それと高田なほ、寺内きよ、中原すみ。皆、私の可愛い妹達になります。以後、お見知りおきを」
「人間の名なぞ、どうでもよいわ」
「それと、貴方様のことはなんとお呼びすればよいでしょうか?さぞかし名高いバケモノ様とお見受けしますが……」
「……そんなものはないね」
「さようでございますか……」
頬に手をあてて、カナエは視線を下げた。
「それよりも、わしは腹が減ってるのさ」
「あ、はい。すぐに食事の準備をしますね」
「おい、人間を食わせろ」
いそいそと退出しようとしたカナエ達が固まる。
「あ、じゃあ、私が……」
頬を染めつつカナエがバケモノを見る。
「うーん。オマエは美味そうなんだけど、敵を斃してからだったよな?美味そうなのが一杯いるだろ?どれかでいいや」
ぴきり。空気が固まる。
「……バケモノ様。私を美味しく食べてくれるっていいましたよね?」
不穏な圧を漂わせるカナエ。そしてその手にいつのまにか獣の槍が。
「あ?おう……」
「その私を差し置いて、他の女に手を出すとか、おかしくないですか?」
「ええっ……?!」
バケモノだけでなく、しのぶもおもわず声がでる。
「あの子たちが納得するなら文句があるはずもありません。でも、私を差し置いてとか、納得できません!私が一番だって、いってくれたでしょう?」
「え?いったっけ?」
「私の敵を全部倒してからっていいました!」
「えええっ?!」
ああ、姉さん……。
固まるバケモノに、しのぶは同情した。最愛の姉は、まったくもってああなのだ。なんだか変な魅力と勢いで、周りぐりぐり巻き込むのだ。
*****
「いかがでしょうか?」
並んだ料理をかたっぱしに口に落とし込むバケモノに、にこにことカナエは問い掛けた。
「ああ?どれもわるくねぇ。特にそれよ」
「鯖の煮込みですか?お目が高い!アオイ渾身の作なのです!アオイはとても真面目な頑張り屋さんで、私自慢の妹なのですよ!料理もすっごく頑張っていて、とても可愛いのです!さあさあ、バケモノ様!可愛いアオイを褒めてくださいまし!」
すかさずアオイを抱きしめて、カナエはずりずりとバケモノの方に移動する。
「あ?おう。ちっこいくせになかなかじゃねえか」
「……あ、ありがとうございます」
困惑のまま褒めるバケモノと、気恥ずかしさにアオイは俯く。その横で、カナエは満面の微笑みを浮かべていた。
――姉さん。いつも褒めてくれるのは素直に嬉しいのだけれど……。その、そういうところよ?恒例のほめ殺し公開処刑に、いたたまれずにしゅんとする妹たちだった……。
勢いからはじめたこれですが、思うところは全てぶっこんだ感。やばい。成仏しそう。
叩き起こされる理不尽に、ピクリと思うところがあるひととは握手!うぇひー!
やばい。明日?今日やばい。おやすみなさい……。