「あれ?」
髪型がおさげに水色の帯の中原すみは目を瞬かせた。
おっとりとして優しいすみはいつも細かいところにすぐ気づくのだ。
「どうしたの?」
二つの三つ編みを揺らして緑色の帯の高田なほもじっと見つめる。
しっかり者のなほはすかさずきよにつめよる。
「えっと……」
そんな二人からの視線を受けておかっぱに桃色の帯の寺内きよは言い淀む。
すみはおさげ。なほは三つ編みを蝶の髪飾りでまとめていた。きよはそこまで髪は長くはなかったので家長カナエのように頭の両脇につけていたのだが、それが一つしかなかったのだった。
「どうしたの?」
すみとなほは心配してきよを見つめる。
蝶の髪飾りは彼女たちにとって、とてもとても大事なもの。
――はい。これでおそろい。姉妹の印よ。
あの日。そういってカナエがつけてくれたものなのだから。
*****
「ねえ。しのぶ……」
その日。蝶屋敷でカナエは後ろに座らせている、すみ、なほ、きよとともに対するしのぶを見つめる。
「…………」
不機嫌の表情を隠そうともせずしのぶはカナエを見つめた。言われなくたって言いたいことはいやってほどわかる。だからこそ機嫌がいいわけがない。
「しのぶ。この子らを引き取ろうと思うの」
そんなしのぶの様子をうかがいながらカナエはおずおずと切り出す。
「動物は飼えないっていったでしょ?ましてやそんな小さな子供めんどうみきれるわけないじゃない!」
花柱となり蝶屋敷をあたえられはしたものの。カナエもしのぶも鬼殺隊任務のため不在のことが多かったからだ。
「うん。でもほら、ゆくゆくはしのぶの助手として手伝ってくれる子が必要でしょ?」
しのぶの正論にたいし、カナエは小さく反論する。
「小さい頃からなれてもらったほうがいいと思うし……」
「小さすぎるでしょ?」
実際まだ幼い三人をしのぶは見つめる。
「この子たちね?すっごい似ているけど生まれはそれぞれ別なのですって」
カナエは三人を見つめる。
蝶屋敷の近接には医療施設と孤児院があった。医療知識のあるしのぶを中心にそういった施設の助けができるといいかもしれない。そういったカナエの思いはともかく。
任務の合間にカナエはその孤児院をちょくちょく訪問していたのだった。
孤児院という位置づけではあるが、鬼の襲撃に生き残った子供や精神に傷を負った者がそれを癒すための収容施設であり。精神的に落ち着けばその多くは、藤の家紋の家に引き取られていく。
すみ、なほ、きよはそれぞれ別の小さな村の生まれで、鬼の襲撃をうけた際のたった一人の生き残りで。そういった境遇のからか三人は姉妹のように寄り添って過ごしていたのだという。
三人そうしているから安定しているかもしれない。離れ離れになるのはあまりに不憫だという、施設の職員からカナエが相談を受けたのだった。
「だからね?別れ別れにしたくないのよ……」
カナエ自身鬼の襲撃にしのぶと二人で生き残った。そして二人だからこそ頑張れたという気持ちがあるからこそ他人事ではないのだろう。
「ね?ね?」
「…………」
そういった経緯をわかってもらいたくて、両手を胸もとでぎゅうと握りしめながら見つめるカナエの視線を受けて、しのぶは特大のため息を吐く。
そんなことわかってる。なんとかしてあげたいって勿論思うに決まってる。
でも。現実的に面倒をみれるかどうかは別なのに。だから駄目っていってるのに。私だけ意地悪みたいじゃない!もう!姉さんはほんとうにずるい!
「しのぶ?」
カナエは目を閉じて大きな息を吐くしのぶを見つめる。
「……だから。その子たちはまだ幼いでしょ?」
しのぶはそのため息と一緒にその言葉を吐きだす。
だから。だから駄目。
優しすぎる姉を見つめて。なんでもかんでも助けることができないのはわかってるでしょ?しのぶはじっとカナエを見つめる。
「ん。わかったわ」
そのしのぶの言葉を受けてカナエは大きく頷き。
「ええと。いい?」
そして。カナエはすみ、なほ、きよに向き直りじっと見つめた。
「私はあなたたちを妹として迎えようと思ったのですが、子として迎えることとします」
「!」
カナエの静かな言葉に場に衝撃が走る!
「私のことはカナエ母と呼びなさい。そしてこちらはしのぶ叔母と……」
「まって!」
「ん?」
必死の形相で待ったをかけるしのぶをカナエは見つめた。
「おば?しのぶおば?」
「ええ。私が母ならしのぶは叔母でしょ?」
「!!」
カナエの言葉にしのぶは固まる。
「……違くて。そうじゃなくて……。叔母じゃなくて……」
「?」
この年で叔母呼ばわりはいや!ううん違う。違う。そうじゃなくて……。
混乱して、うつろな目でぶつぶついうしのぶにカナエは首を傾げる。
「じゃあ、姉でいい?」
「……え?あ、うん」
なんだか頷くしのぶを見つめてカナエも頷く。
「すみ、なほ、きよ。今日からあなたたちの上姉になる胡蝶カナエです。そして同じく次姉のしのぶです。よろしくおねがいね」
そいういと三人にカナエは頭を下げ、三人も頭を下げて応える。
「あれ?あれれ?まって?まって……」
おいてけぼりにされたしのぶが呆然と目を瞬かせていたのだった。
*****
そうして。蝶の髪飾りはカナエから姉妹の一員としてと贈られたもので。とてもとても大事なものだったのだ。
その髪飾りがない。なぜ?すみ、なほからの視線にきよは小さくなる。
「ええとね?貸してるの」
「「貸し?」」
「うん……」
目を見開く二人にきよはしぶしぶと話し始める……。
*****
――ねえ。
蝶屋敷。夕刻。
薄暗い廊下の向こうから、通りかかったきよに声がかかったのだ。
「ん?」
薄暗い廊下に小さなそれはいた。饅頭を二つ重ねたような姿。上の饅頭には耳のような青い二つの突起があり。いたずら書きのような模様が顔のように見える。下の饅頭には両脇と下に突起。四肢なのだろうか
そのちいさなモノがきよを見つめていたのだった。
――ねえ。それいいね。
そしてそのモノはつぶらな眼できよの蝶の髪飾りを見つめていた。
「え?」
――それいいなって。かして?
そのちいさいモノはそうして髪飾りをじっと見つめる。
「だ、だめだよ!」
――ひとつをちょっとならいいでしょ?
「ええー」
きよはその小さいモノからのつぶらな目玉からの視線の圧に負け。
「ちょっとだよ?」
――うん。ちょっと。
きよは右の頭につけていた蝶の髪飾りをその小さなモノにわたす。
――わあい!
そのモノは蝶の髪飾りを抱えながら暗闇の廊下の奥に去っていったのだったという……。
*****
「そっか……」
きよの告白にすみは目を瞬き。
「よくわからないけどそういうことなら仕方ないよ」
なほは頷く。
きよは素直で明るくて。やさしい性格なのだから。
「うん……」
二人に励まされてきよは元気を取り戻すのだった。
*****
――ねえ。かして?
数日後。
夕方。蝶屋敷薄暗い廊下。
そのちいさいモノがまた、きよに話しかけてきたのだった。
「えっ?」
きよはそちらに視線を見つめて目を瞬かせる。
――ねえ。かして?
ソレはきよを見つめて重ねて言う。
「……貸したでしょ?」
きよは震えながらソレを見つめる。
――だってね。みんながうらやましがってるから。
「!」
――だから。かして?もっとかしてよ。
そのちいさなモノはつぶらな瞳で見つめた。
「これは駄目!」
きよは左の髪飾りをつかんで叫ぶ。
これはカナエ様から頂いた髪飾り。一つもなくなるなんて絶対駄目!
髪飾りを握りしめてきよはソレを見つめる。
――そっか。なら。それじゃあそれをかして?
「それ?」
ソレの視線の先。きよの足元の影だった。
「かげ?」
――うん。
きよは目を見開く。
――いい?
「……わかった」
項垂れるきよを見つめてソレは口角を上げた。
*****
「きよちゃん?」
朝。時間になっても起きないきよになほが声をかけたのだった。
「んー?なに?」
「起きないと」
「えー?」
なほの声にきよは目をこする。
「あ!そうそう!いまきよだからおきなきゃ!」
そうしていきなり動き出すきよを見つめ、なほとすみは首を傾げた。
*****
「いただきます」
カナエしのぶ不在。三人で準備した朝食を食べようとした際。
「えい!」
きよが大声をあげて握りしめた箸で芋を突きだしたのだった!
「!」
びくりと驚くなほとすみからの視線を気にするでもなく。
「えい!えい!」
きよは箸で芋を思いきり突き。だができないことにあきらめると、箸を放り出して手づかみで食べ始めるのだった。
「……」
そんなきよをなほとすみがじっと見つめる。
あの礼儀正しいきよがこんなことをするだろうか?
――うん。うん。そうやって礼儀正しくしてね?
カナエ姉さまに習った食事の礼儀を褒められて顔を見つめあった。
その顔で?その顔でそんな無作法に食べるわけ、ない。
「きよちゃん?」
「ハーイ!」
なほとすみはきよを見つめて唇を噛んでいた。
呼びかけるといつものように返って来る明るい言葉。なのに違う。絶対違う。そんなきよの姿をじっと見つめる。
「きよちゃんじゃないでしょ?」
なほは厳しく見つめ。
「きよちゃんをかえして!」
すみは唇を震わせた。
「え?ぼくはきよだよ?」
ぐるぐるとした瞳で。きよは二人をみつめ。
「かしてもらったから。だから。きよだよ」
そのきよは、にまりとほほ笑んだ。
そして。
「ねえねえ!ふたりもかしてくれる?」
「!」
つぶらな瞳を輝かせながら、きよが二人をみつめて口を開く。
「ねえ。いいでしょ?かしてくれてさ。ともだちもね?にんげんをやってみたいって!」
そうして。じっと見つめてくるのだった。
やっぱりだ。なほとすみにはわかる。これはきよではないきよだ。
「……」
笑顔でにじりよってくるきよを見つめて息が止まる。
なほはすみをかばうように。すみはなほをささえるように。
いつもならそこに励ましてくれるきよがいた。
そのきよが、なにかになって目の前にいる。
こわい。
それがわかったとはいえ。幼い二人にどうにできることもない……。
「ねえ。かしてよ」
「ひっ……」
きよが、なほとすみに歩み寄る。二人はゆっくりと後ろに足をすすめ。壁に背中がつき。そこまでだと。ついにはここまでだと思い、息をのむ。
ああ。まただ。鬼に襲われた時と同じ。なにもできずにやられるのだ。
せっかく三人会えたのに。姉さまに会えたのに……。
溢れる涙に視界が歪む。
なほとすみは身に迫る理不尽に抱き合って唇を震わせる……。
「おい」
そこに不機嫌な声が割り込んだ。
「!」
その場にいた全員が見つめる先には、黄金のバケモノが浮かんでいたのだった。
「何かと思ったらお前らかよ……」
黄金のバケモノは「その」きよを見つめた。
「ながとびまる?」
きよは目を見開いてバケモノを見つめる。
「ああそうだ。それでおまえは『ちいかり』だろ」
黄金のバケモノはきよに成り代わっているモノを見つめて目を細める。
――それは、ちいさくてかりるもの。それから『ちいかり』
そう呼ばれている妖だったのだ。
つまり『軒下貸して母屋取られる』
小さい親しみやすい姿で人間の前に現れ。何かを貸してくれと囁き。
そして何かを貸してしまえば、そのうち存在自体を貸すことになり入れ替わりをするというたちの悪い妖だった。
その小妖を黄金のバケモノがねめつけていたのだ。
「まって!まって!」
そのきよは黄金のバケモノを見上げて震えていた。
ながとびまる。
かつて。
中国から飛来して。日本を混乱のどん底に叩き落した恐怖の存在。白面の者。
その伝説の大妖白面に、ただ一体対等に渡り合ったと語り継がれている妖。
こんなちいさな幼い妖すら知っている存在。それが目の前にいる!?
「まあな。わるさをしなければまあ、みのがしてやったがな」
黄金のバケモノはその『きよ』をぎゅうと見つめる。
「まずは娘を返せ」
――ひい……。
そして。ちいさな影がきよからはなれると体は力を失い、すみとなほが支える。
「よし」
黄金のバケモノはそうしてつまらなそうに呟き指先で潰そうとするが。首を傾げて気を変えた。
「いや。そうだな。おまえらはわしがいないときにこいつらを護れ。わかったな?」
――ええー……。
「わかったな?」
――うん……。
しぶしぶと。ソレがしぶしぶと返事をするやり取りを、なほとすみは震えながら聞いていたのだった。
*****
「ばけものさま。ありがとうございます」
蝶屋敷。陽の当たる縁側で昼寝する黄金のバケモノに、きよはこっそり作ったおにぎりをお供えし手を合わせる。
それはきよ、すみ、なほと交代で行う秘密の日課だった。
きよが去ったあと。その拙いおにぎりに視線を向けるとすでになく。そのおにぎりをこっそりと回収して去っていく、ちいさな存在らをつまらなそうに横目に見め。
「ふん」
バケモノは再び、うたたねに目を閉じるのだった。
※誤字脱字。指摘ありがとうございます!
→深夜に書いて、うへへーってそのまま投稿とかするんですけど。ほんと駄目で。
→だので。それなりにかなり手直ししましたけど。少しはましになったかなぁ?いやもうホラー要素全然アカン……。
→オチもとらだのみという。アカン……。
→ご意見感想等おねがいす!
それで!
GTPさんがいうにはー
・なほ(緑色)→三つ編み。しっかり者
・きよ(桃色)→おかっぱ。明るいあわてんぼう
・すみ(水色)→おさげ。おっとり
なんだってさ!
ほんとかいね?
だからともかく!名前と色はおぼえろよー?これ、試験にでるぞー?
ちなみに。
鬼滅ラヂヲにて、花江夏樹様が彼女たちのわかりやすい覚え方を教えていたそうです。
なほ…三つ編みが『なす』みたいだから。【なす】→【なほ】
きよ…きよの顔を横にした時、飛び出ている前髪に縦線を加えると、片仮名で『キヨ』と見えるから。
すみ…髪の分け目が『すみ』っこにあるから。
(ピクシブ百科事典より
だそうです!
三つ編みがなすな時点で、ちょっとなにいってるかわかんないですね(サンドウィッチマン風
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(追加おまけ!
♪てれれん!れん!れん!れん!「ちいかり!」
すみ「うふふ!」
なほ「うー!やはー!!」
きよ「にんげん!たのしいね!」
(おわり!)ぷ!ぷ!
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(追加おまけ2
♪てれれん!れん!れん!れん!「ちいかり!」
きよ「いいよね!いいよね!にんげんっていいよね!」
すみ「んー!」(でんぐりがえり!)
なほ「うー!やはー!!」(でんぐりがえり!)
きよ「いくよ!」
――でん。でん。でんぐりがえってばいばいばい。
(おわり!)ぷ!ぷ!