カナエととら   作:ぶんた

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飛騨にて

 ――鴉からの報を受け、カナエは飛騨の山奥へと急行。そして深夜。元凶である鬼と対峙していた。

 

「花の呼吸。伍ノ型・改 徒の芍薬」

 

 ここん!

 

 鬼はすかさず九つに分断され消滅!その凄まじいまでの威力に、カナエはまじまじとその手が握る獣の槍を見る。

 

「ほう。やるな女。その槍は持ち主に妖を斃す力を与えるわけだが、やはり土台が違えばケタ違いよなぁ」

 

 金色のバケモノは嬉しそうに、にんまりと笑った。

 

「ここまで鍛えあげられた人間が手にするのは初めてかもしれん」

 

 これと闘り合うのはさぞかし楽しかろう。さて、早速。バケモノが身構える。

 

「……うーん」

 

 わさわさとなびいていた髪が消え、槍による超人化がとけたカナエは眉をよせた。

 

「困ったものです。やはり勝手が違います……」

「……なに?」

 

 カナエのつぶやきにバケモノが反応する。

 

「私の得意とする武器は刀でして。得物が違えばあのあり様……。バケモノ様もおわかりでしょう?まったく無様な限りなのですよ」

 

 力なく首を振るカナエをバケモノは凝視する。

 は?これより高みの強さになれるっていってるのかよ?おもしれぇ!この人間の練りあげた最強を叩き潰し、その極上の肉を味わう!これは、たまらんなぁ!

 困り顔で懸命に槍を素振りするカナエは、横でげらげらげらと邪悪に高笑いするバケモノにこれっぽっちも気づいてなかった……。

 

 

 

*****

 

 

 

 そうして暫し後。

 

「……おい、おまえらがアレを殺してくれたのか?」

 

 カナエの前にのっそりと現れたそれは、人間大のイタチだった。

 

「あ、はい」

 

 カナエは、あまりのことに目を瞬かせ固まる。

 

「……鎌鼬かよ」

 

 金色のバケモノがつまらなそうに呟く。いわれてみれてみれば、額から生えている巨大な弧を描く半円状ものが鎌なのだろうか? 驚きにカナエは目を見開いた。

 

「悪さをする、よそものが俺の庭にまぎれこんだようでな。退治せねばと思っていたところだったのさ。人間、礼をいわせてくれ」

 

 左目に傷後のような痣のある鼬は、カナエに優しく微笑んだ。

 

「ええとあなたは様は……。いえ。私は鬼殺隊花柱、胡蝶カナエと申します。以後、お見知りおきを」

 

 狂暴そうな外見ではあるが、その穏やかで理性的な瞳の輝きにカナエは礼をつくすべき相手と判断。居を正しぴしりと頭を下げる。

 

「礼儀正しい人間だなぁ。俺は鎌鼬の十郎さ」

 

 十郎はのんびりと挨拶を返した。

 

「そうだな。とりあえずこんな山奥だ。人間には難儀だろう?俺の家で休むといい」

 

 疲れ切っていたカナエにとって、それはもうなにより嬉しい言葉だった。

 

「ありがとうございます!」

「ちょ、おい!」

 

 カナエはおもわず十郎に抱き着く!

 

「それにしても……」

 

 鬼が居るのだから妖が居てもおかしくはないだろう。とはいえ、今まで見たことのない、これらとこうまで遭遇するのは不思議でならない事だった。十郎のもふりを堪能しつつカナエは首を傾げる。

 

「おまえは獣の槍を抜いたのさ。いやがおうでもバケモノと関わることになるのよ」

 

 金色のバケモノがカナエに答えるように独り言ちた。

 

 

 

******

 

 

 

「まったく、俺を待たすとかあいつも偉くなったもんだな」

 

 小高い丘の大木の横で、片目の男がイライラと不機嫌を垂れ流していた。

 

「こんなところで待ち合わせかぁ?儂が捜して食ってやるよぅ。だからお前は儂に食われなよぅ」

 

 ばぐん!

 

 次の瞬間、にじみ出るように現れた巨大なゴツゴツとした顔の生首の妖が、あんぐりと大きな口を開け、そのまま不機嫌な片目の男をまる飲みにしたのだ!

 そうして巨大な顔はのんびりと口を動かしていたが、ふと眉をよせる。妖の下あごが赤黒く変色。どろどろととろけ、ばしゃりと落ちた。そのどろりとした溜まりから肉がもりもりと盛り上がり、片目の男が再生した。この男、血泥という名の鬼だった。

 

「お前、俺を食ったきでいたんだろ?お前が喰われてたんだぜ?」

「…………!」

「しっかし、妖とかいってもたいしたもんじゃないな。臭くて喰えたものじゃない」

 

 下あごを失った顔の妖はすでに話すことができない。驚愕に歪む巨大な顔を、血泥は不機嫌そうにねめつける。

 

 鬼舞辻無惨が血を与え生み出される鬼は、人間を喰らうことによって力を増すことができる。多くを喰えばそのぶん、鍛え上げられた人間を喰えば格段に。なら、人間を超える妖を喰えばどうだろう?酒の席での思いつきを、試してみたわけだったが……。

 いくつか遭遇した妖も撃退済み。血泥からすれば獣みたいなものだ。鬼殺隊と比べるべくもない。この程度の妖どもに奴が後れをとるとは考えられなかった。そうなるとなにかいいものを見つけて、小躍りしているのかもしれない。

 

「くっそ。むかつくぜ。あーあ。やっぱ食うなら人だな。できれば鬼殺のやつらよ。危険っちゃ危険なんだがさー。やっぱやつらは極上だ。柱とか食えないかな」

 

 深手を負った顔の妖を腹立ちまぎれに踏みつけつつ、血泥は不機嫌そうにぼやき続ける。最近就任した柱は若い女だという。さぞかし旨いだろう。極上のそれを喰えたなら十二鬼月にもなれるかもしれない。

 

「そのためにゃあ臭いメシも我慢するかね」

 

 血泥はどろりと溶け、名のままの赤黒い泥となり顔の妖を覆い尽くした。そしてぶよぶよと吸収しはじめる……。




苦し紛れな続き!

→巨大な顔だけの妖。よくよく調べるとまさに『釣瓶落とし』でありましたよ。



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