それはのそりと動きだし、抱きしめていたものに名残惜し気に身を寄せ、さらにぎゅうと抱きしめた。体ほぐした後大きく伸びをする。
「……んんんん」
「洗面所はこっちだ」
いまだにまぶたを閉じて項垂れているそれは誘導に従い、のそのそと移動を開始する……。
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焼魚、卵焼き、味噌汁、白米、漬物。質素だが実に美味しそうなお膳を前にカナエの意識は戻った。大広間の真ん中に一人きり。起床時間がずれるカナエにとってはあるあるな光景ではあるのだけれど。
――人間もよく寝るのだな。食事の準備をしている。人間の口にあうはずだ。
優しい、あきれたような言葉をもらったきがする。ちょっとやらかしただろうか?恥ずかしい。
……しのぶ、ごめんなさい。項垂れた首を追って長い黒い髪が揺れる。なにはともあれ。
「いただきます」
胸元で両手を合わせた後、箸を手に取る。卵焼きを箸で小さく取り分けて一口。その美味しさに小さく一息。これを準備してくれたのは人間ではなく妖なのだ。ここまで人間である私の事を思ってくれたのかな。その思いに胸が一杯になる。
ご馳走にカナエの持つ箸がカカッと閃く!
「ご馳走様でした」
すかさず完食したカナエは手を合わせ、深く頭を下げるのだった。
***
「今更ながら。まずは一宿一飯の恩義、誠にありがとうございました」
「礼にはおよばない。十郎に聞いている。はぐれを斃してくれたのだろう?」
大広間で三人の家主に向き合い、正座したカナエは頭を下げた。上座の男が頷く。
「まずは自己紹介を。私、胡蝶カナエと申します」
「私が雷信。隣が弟、十郎。末席が妹、かがりとなる」
いかにも真面目そうな面構えの雷信。端麗な顔に優しそうな表情の十郎。同じく端麗な顔をなぜか赤く染め俯くかがり。
「それと、我らは妖である鎌鼬。故合ってこのように人間のなりをしている。礼を逸すれば教えて欲しい」
カナエは小さく頷く。
「お主はこの山にさ迷いこんだ、はぐれを捜していた、ということだったか?」
「はい。その通りです。ですが……」
カナエの歯切れの悪さに、鎌鼬等は眉をよせる。
「私が受けた報告では、複数体なのです」
「なんと」
雷信が目を細める。
「あつかましいとは思いますが、他の鬼の探索に力を貸してはもらえませんでしょうか?」
カナエは指を付き、頭を下げて発言した。
「おまえにいわれずとも、はぐれは排除する。ここは俺の庭だしな」
「私が同行しても?」
「ああ、かまわない」
「ありがとうございます」
十郎の言葉にカナエは頭を下げる。
「鬼舞辻無惨という名をご存知ですか?」
「いや、知らんな」
「さようですか。その鬼舞辻によって鬼になった者は、日に当たるか、日輪刀で首を跳ねなければ滅びませぬ」
「……死鬼の類か。厄介だな」
鎌鼬らは、不快げに眉をよせた。
「私は、その鬼舞辻を追う集団のものです」
「ふむ……」
雷信は腕を組み、思案する。
「われらは、この山のみで世間に触れてこなかったため情報には疎い。だが長であればなにかしらご存知かもしれぬ」
「長?」
「ああ。東の妖を統べる長よ」
「そのお方と会うことはできませんか?」
「さてな。長の心次第よ。我らにはなんともいえん」
「そうですか……」
カナエは視線を下げつつ、思案する。まずは当初の任務である鬼の討伐だ。それが終わってからにしよう……。
「鬼討伐にご協力、深くお願い申し上げます」
カナエは深く一礼した。
祝!劇場版公開!
こんな、にわか作品ですが、すこしでも!