学園黙示録 オリ主もの   作:染み抜き

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基本書きながら展開考えてるんでどうなるかは分からない。




 ――桜の季節。

 僕は授業をさぼり、屋上に来ていた。

 そこからの桜は、また違った綺麗さがあるからだ。

 授業中だから誰もいないだろう、そんな僕の思いは軽く覆され、一人の男子がいた。

 ま、自分の考えていることなんて、他の人間も考えていることだろうし、別にいいのだが。

 しかし、独り占めできなかったことに若干の惜しい気持ちが出る。

 その男子生徒に、少しきつめの語調で話しかけた。

 

「今は、授業中だと思うが?」

「え?」

 

 振り向いた生徒は、僕の知る人間だった。

 学年が違うからしょっちゅう話すわけではないが、屋上でよく会う人間だ。

 

「二木先輩?」

「小室君か……。今日はどうした、また授業をさぼって」

「そのセリフ、そっくりそのままお返しします」

「くくっ、まったくだ」

 

 僕は小室君の隣に行き、同じように柵に寄りかかる。

 下を見ると綺麗な桜が見えた。

 僕が桜に見とれていると、物憂げな表情の小室君が話しかけてくる。

 

「先輩は何でサボったんですか? 三年ですし、今サボったりしたら危ないんじゃ」

「僕は自分の人生のことなんてどうでもいいんだ」

「え?」

「僕は、先のことなんて何も考えない。今を生きているだけなのさ」

「すっごいダメ人間じゃないですか……」

 

 小室君が呆れた様子で僕を見てくる。

 それも仕方ないだろう。

 小室君は僕と言う人間のことを全くと言っていいほど、理解できてはいないのだから。

 僕は刹那的な享楽を味わいたいのではなく、ただただどうでもいいだけだ。

 僕にとってこの人生は何の意味も持たない。

 言わばおまけのようなものだ。

 カードがついてくる袋菓子のお菓子だけ。

 さらにそれを買った人間はお菓子ではなく、カードが欲しい。

 つまりはあってもなくてもどっちでもいいのだ。

 

「くくっ……」

 

 不意に小さな笑みがこぼれた。

 その笑みは風に乗って消えて、小室君に聞こえることはなかったようだ。

 隣を見ると、小室君はただ虚空を見つめている。

 僕がここに来た時から、なんだかつまらなそうな雰囲気をまとってはいたが、さらにそれが濃くなってきている。

 ま、僕には関係がないが。

 僕が桜に視線を戻すと、突然音が聞こえてきた。

 ガシャン、ガシャン、と何かを揺らす音。

 反射的に校門に視線を動かした。

 

「何だあれ? 不審者ですかね?」 

 

 小室君は僕と同じように視線を動かしそう言った。

 何やら数人が言い合いをしているようだった。

 恐らくは、学校の先生が不審者が入ってくるのを阻止している、のだろう。

 その証拠に、一人の先生がその不審者に手を伸ばしている。

 とっととどこかに行け、そういうことだろうが、やられたほうは全く動じていない様子だ。

 今度は逆に不審者がその先生の腕に噛みついていた。

 思わぬ反撃だったからだろう、その先生は倒れてしまった。

 

「……へえ」

 

 見間違いでなければ、噛まれた先生の腕の肉が削げている。

 明らかに異常だ。

 あの不審者、どこかおかしい。

 何か怪しい薬をやっているとかそういうものじゃなく、もっと根本的な何かが――。

 

「これはこれは……」

「な、何だってんだ一体……」

 

 噛まれた先生は、起き上がったと思ったら近くにいた先生の首筋に噛みついた。

 ふーむ、一体全体どういうこと何だろうか?

 今の流行は噛みつくこととか?

 いや、さすがにそれはないか。

 流行に疎い僕といえど、さすがにそんな間違いはしない。

 

「なあ、小室君、今の流行が噛みつきだなんてそんなことは……あれ?」

 

 隣を見ると既に小室君は居なくなっていた。

 酷い後輩がいたものだ。

 いなくなるときはせめて一言くらい何か言うものだろうに。

 

「ま、とりあえずは」

 

 校門の出来事について、警察に連絡するべきか。

 あの様子では、不審者も入ってきてしまいそうであるし、あの不審者も異常だ。

 そう思いポケットから携帯を取り出し、1、1、0、と押す。

 何回かのコール音の後、

 

『これは録音です。ただいま110番通報が集中している為回線が混みあっております。そのままお待ちになるか、後ほどもう一度掛けなおすかしてください』

「ほほう……」

 

 どうやらこれは、僕が考えているよりも大事なのかもしれない。

 もしかしたら、あの不審者はその前触れ。

 これから何か起こりそうな気がしてきた。

 

「あはははっ! おまけだと思ってた人生だが、どうやら面白くなってきたじゃないか! あはははっ!」

 

 思わず大きな笑いが出てしまった。

 僕の悪い癖だ。

 どうにも感情が高ぶると笑いが出てしまう。

 いつか改善したいものだ。

 改善したいと思っているうちは、改善できないものだとは思うが。

 そこまで考えてまた桜に視線を戻した。

 相も変わらず綺麗な桜だ。

 いつまでも見ていたい気にさせる。

 僕はその魅力にメロメロである。

 

「いつでも桜が咲いていればいいんだがねえ」

 

 僕は桜を見ながら、陽気な天気にうとうとしてきた。

 一度寝てしまおうか。

 そう思って天文台の上にあがった。

 校舎では一番高く、寝心地のいいそこを、僕は気に入っている。

 

「それじゃ、お休み……」

 

 目を瞑り意識を手放す。

 

 

 

 ――誰かが、呼ぶ声が聞こえる。

 

「先輩! ――先輩!」

 

 誰だ?

 僕を呼ぶのは一体誰だ?

 気持ちのいい眠りを妨げるのは、一体――。

 

「二木先輩! 起きてください!」

「……ん、んん……ふわあ……」

 

 あまりにも必死に僕を呼ぶものだから、たまらず起きてしまった。

 目を開ければ、切羽詰まった様子の小室君の顔。

 どういうことだろうか。

 とりあえず体を起こした。

 

「どうしたんだ、小室君。君はさっきここから出ていった……ん?」

 

 改めて周りを見回すと、見知らぬ顔を見つける。

 それに、なんだか周りも騒がしい。

 ガシャガシャと耳障りな音が聞こえてくる。

 

「先輩! 何でここにいるんですか!?」

「いや、何でと言われても寝ていただけなんだが……」

「今どうなってるのか知らないんですか!?」

 

 頷く。

 寝ていたのだから知るわけがない。

 すると小室君と、小室君と一緒にいた宮本さんと井豪君という人たちに説明を受けた。

 簡単にまとめると、バイオハザードが現実に起こっているらしい。

 映画で見たようなものが、実際に起こっている。

 そして学校はそのせいでパニック状態。

 どんどんゾンビ……いや、奴らが増えていっている。

 そういうことらしい。

 

「くくっ、ふふ、あはははっ!」

「な、なに笑ってるんですか! これじゃ僕たちまで危ないんですよ!」

 

 僕が笑い声を上げると、宮本さんと井豪君に冷たい目で見られてしまった。

 小室君は理解できないとその顔で言っている。

 

「……二木先輩。俺たちは本気なんです」

 

 力がなくなって立てないのか、座って柵に寄りかかっている井豪君は、真剣な表情で僕に言ってくる。

 そんなこと、言われずとも分かっている。

 110番が通じなかったのも、そういうことなんだろう。

 だが、だからどうしたというのか。

 

「そうです、私たちは本気なんです! 永も怪我してるし早くこんなところ――」

「がふっ! ごふっ!」

「ひ、永!」

「どうした!?」

 

 宮本さんが何か言っていたが、それは井豪君に阻まれた。

 井豪君は、どうやら血を吐いているようだ。

 それを見て、先ほど聞いた話からピンとくるものがあった。

 ――噛まれたものは、感染する。

 

「井豪君、君は奴らに噛まれたのか?」

「……はい。映画と同じようです……」

「そんな!? だからって永が奴らになることなんてないわ! だって永は特別なのよ!」

「永……」

「孝、それに二木先輩。頼まれてくれないか?」

 

 井豪君は死にかけの体で懇願してくる。

 

「俺を、俺のまま殺してくれ」

「なっ、何言って……」

「俺は奴らになりたくない! ……頼む」

「了解だ」

「なっ、二木先輩!?」

 

 僕は小室君が持っていたバットを奪い取り、そのまま井豪君に近づいていく。

 

「ま、待ってください! 永は、永はなりません! 絶対に、奴らなんかに! ねえ!? 孝もそう思うでしょ!?」

「君は見ないほうが賢明だろう。小室君、君に任せるよ」

「えっ!?」

 

 井豪君から離れようとしない宮本さんを無理やり引きはがし、小室君に投げ飛ばす。

 そして井豪君と向き合った。

 

「……ありがとうございます。二木先輩」

「ああ、じゃあな。安らかに眠りな、井豪君」

 

 バットを井豪君の頭に振り下ろすと、ゴッ、と鈍い音が鳴った。

 それだけで、井豪君は動かぬものになった。

 後ろで宮本さんの悲鳴が聞こえる。

 小室君は茫然としているだろう。

 僕はなんだか現実味がなかった。

 ただ、これだけは分かる。

 ――ああ、僕は、人を殺してしまった。

 自分でも分からぬうちに口角が吊り上がり、笑ってしまっていた。

 

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