※2020/9/14:文章追加。
謎のデフォルメ草――もとい、あかり草と暮らし始めて、早数日が経過した。
初対面時は、何故か自分の部屋。しかも、植木鉢もセットで置いてあったのである。
流石に困惑しつつ、一旦部屋を出て、再び入って現実を確認。
謎の植物が置いてある事に恐怖しながらも、ふと気が付いたことがある。
この謎の植物以前に、植木鉢なんて持っていないし、あっても俺は室内でなく外に置くタイプである。
つまり、誰かが部屋に侵入したという証拠でもあるので、慌てて部屋の確認するも、取られた物は一切ない。
パソコンのデータも、判る範囲では異常無いので、侵入者は謎の植物を置いていっただけだと判断。
マジで訳わからんのだが、あかり草について、ここ数日で判った事がある。
1つ、栄養は光合成と水でなく、人間と同じ食べ物を食べる事が判明。しかも、肉や魚を好む傾向が強い。
なお、お菓子も食べるが、歯を磨いてやらないと行けないので、余り上げないようにしている。俺だけ食べると怒るので、なるべく外で食べていた。
まぁ、臭いで気が付かれるので、最終的には今は一緒に食べている。
ちなみに、虫歯は『砂糖』を摂取する事で発生する現象なので、野生動物が『砂糖』を口にしない限り、虫歯に成らないとの事。
2つ、名前に困っていたが、『あかり』という言葉に反応しているので、『あかり草(そう)』と名付けた。
3つ、俺がインスタントラーメンを食べようとすると、物凄く怒るので、食品の買い出しはしっかりやる様になった事。
そんな感じで、あかり草を堪能している……紲星あかりの代わりとして。
『次のニュースです。ボーカロイド兼声優の紲星あかりさんが、数日前から行方が分らなくなっている事が、関係者のツイッターから判明しました』
とある日の夕食を食べている最中、テレビでニュースが報じられた。
「ってか、ツイッターって」
バカッター再びかよと思いつつ、テレビに耳を傾ける。
『詳細は明らかになっていませんが、取材に応じた関係者からは、数日前のスケジュールの打ち合わせして、夕飯は外で食べると退社してから連絡が取れていないとの事です』
その言葉を聞いて、ご飯を食べる手を止めて、テーブルから立ち上がる。
パソコンを立ち上げて、掲示板を開いて、それらしいスレッドを探して開く。
どうやら、あと数日はスケジュールの関係で様子見だったらしいが、関係者がバカッターをやって発覚したとの事。
どの関係者やらと思いつつ、ネットを落として、パソコンをスリープ状態にする。飯食い終えたらやるので。
で、再びご飯の前に戻るも、一心不乱にフライドチキンを食べるあかり草を見て、ふと思った。
ニュースで紲星あかりが行方不明になったのが数日前で、あかり草が家にいたのが次の日。
「あかり草」
「――ぅん、わぁ?」
口に入った肉を飲み込んでから、茎を傾げながら返事するあかり草。
食べかすが口に付いているが、土の上やテーブルに食べかすを落としてないのを見るに、良くこぼさないなと毎回思う。
「単刀直入に聞く。紲星あかりと関係あるのか?」
「わぁ!? わぁわぁわぁ!!」
俺の問いに驚くも、顔を左右に振って強く否定する。
その姿に、俺はこれ以上、何も聞かない事を決めた。何と無くだが、追及される事を極度に嫌っているので。
ただ、やはりその姿に、あかりが嫌がっている姿が見え隠れした。
「そうか」
とだけ言葉を放ち、残りの夕食を口に運んだ。
そして、パソコンやりつつ、あかり草と戯れれ、風呂入って、また戯れて、歯を磨いて布団へ。
ちなみに、あかり草も歯を磨いているが、俺がやっている。一応磨く事は出来るけど、全部磨く事が出来ないので。
ただ、昔アニメにあった、歯磨きプレイという物を思い出して、少し意識してしまった。
しかも、あかり草も満更でもなく、お互い楽しみの1つになりつつあったりする。
「おし、あかり草、電気消すよ」
「わぁ~、わぁ? わぁ!」
少し眠そうにしていたあかり草に気が付かず、声を掛けたので再び目が覚めてしまった感じである。
が、元々眠そうだったから、少しすれば寝るだろうと思い、電気のスイッチを押して、部屋が暗くなる。
完全な闇でなく、豆電球の淡い光と、カーテンの隙間から漏れる月の光。
俺は、そのまま布団に入るも、あかり草を眺める。
眺める。
眺める。
眺める――この生活が、何時まで続くのかと思いながら。
ただ、視線を感じたのか、目を瞑っていたあかり草が目を開き、俺を見てくる。
互いに声を掛ける事無く、見つめ合うだけ。
その空気は気まずいという雰囲気とは違く、どことなく重く感じるという雰囲気でも無く、それでもどこか心地よかった。
故になのか、やはりと言うべきか、俺は馬鹿な提案をした。
「あかり草」
「わぁ?」
急な俺の問いに、驚く事無く「何か?」という感じで答えるあかり草。
動きは、ゆったりとしていた。まるで、待っていたかの様に。
「キスしていいか?」
「わぁ……わぁ!? わぁわぁわぁ!?」
俺からの爆弾発言。
案の定、俺の言葉に顔を真っ赤に染めながら、困惑している。
例え、あかり草が人だったとしても、行き成り言われれば同じ感じになるのかなと思う。
そんな姿に、俺は構う事無く言葉を続ける。
「俺は、高校時代に好きな人がいた」
「わぁわぁわぁ――わぁ」
その言葉に、あかり草は落ち着きを取り戻す。その姿を確認してから、俺は言葉を放つ。
「夕方のニュースで、紲星あかりっていただろ? 告白してふられた女の子なんだよ」
「わぁ」
「一応、心は切り替えていたつもりだったんだけどな……」
そう言いながら、体を起こしつつ、体を窓側に向けにその場で座る。
カーテンの隙間から、月明かりが入り込んでいるのが、視界に入る。
「お前を見ていて、あかりが好きだった事を思い出してな」
あかりがいる学校の時の挨拶、会話、昼飯、放課後。
そして、休日に友達と共に遊びに行って、笑い合う日々。
でも、俺が告白して、あかりにフラれて、今までの生活が一変した。
あかりがいても、学校では必要最低限の会話。
放課後、休日に行っては、遊びに行く時にあかりがいる時は断る様になった。
自分から、距離を置いて、あかりと関わらない事を選んだ日々。
カーテンを少し開けて、空を見上げる。
雲が一つもない夜空で、星もチラホラ見え、月も今宵は満月である。
「未だに未練たらたらなんだわ……で、お前は、その子をデフォルメ――余は、あかり草みたいな顔をした感じだな」
無言。気配はあるから、いるのは間違いない。
「似ているからというのもあるし……お前、植木鉢から動けないだろ? どこにも行かないじゃん」
どことなく最低な事を言っているが、独占意欲という奴だろう。
「紲星あかりは、もう手の届かない場所にいる。けど、お前は違う。この場に、しかも触れられる位置にいる」
言い切った後、体をあかり草の方に動かし、あかり草の顔を見る。
「だから、紲星あかりを忘れる為に、キスをさせて欲しい……駄目か?」
俺の問いに、あかり草は目を閉じて、考える素振りを見せる。
数秒後に、目を開ける。
「わぁ、わぁわぁわぁ、わぁわぁわ」
相変わらず、何言っているか判らないが、動きから否定と肯定の両方が判る。
「俺の言葉の順番から……紲星あかりを忘れるのは駄目で? キスはOKと?」
「わぁ!!」
全身を動かして答える、あかり草に驚いた。
嫌がられるかと覚悟したけど、キスに関しては良いとして、何故紲星あかりを忘れては駄目なのか?
「なん――いや、いいや、何でもない」
紲星あかりの事を聞こうとしたけど、夕方の事を思い出し、言葉を飲み込んだ。
あの時、聞き返さなかったのだから。あと、動作だけで、あかり草の意思を読み取るのに限界があるから。
ただ、今はしたい事をするだけ。
「改めて……あかり草」
「わぁ」
「分かつ時まで、一緒にいてくれ」
「わぁ♪」
その言葉を皮切りに、俺はあかり草に顔を近づける。
あかり草も、俺の顔が近づくにつれて、目をゆっくり閉じていき、唇同士が触れ合う。
カーテンの隙間から漏れて入ってきた月の光が、優しく2人を照らす。
そして、俺からゆっくりと唇から、唇を離していく。
時間は短いかもしれないが、明日もやればいいだけの話。
互いに見つめ合い、俺は右手であかり草の頬を少し撫でる。
「おやすみなさい」
「わぁ~」
そう言い合って、俺はベッドに入って、目を瞑る。
いままでのつっかえが取れたのか、あっさり意識を手放す。
そして、朝になって目が覚める。と思ったら、まだ夢の中のようだ。
だって、俺に横に、現在行方不明の紲星あかりが寝ているのだから。
可笑しいだろ、昨日は1人で寝た。
この部屋には、人間は俺1人だけで、植物が1体のみ。
部屋に不法侵入されたのなら、話は別だけと、わざわざ俺の横に寝る必要が無い。
それ以前に、行方不明の人間が、何で横で寝ているんだよ。
確かに、未練たらたらなのは自覚あるけど、今まで夢に見る事は無かったぞ。
いや、昨日寝る前のやり取り的に、脳内が天元突破したのかな? ならこれは。
「……夢か」
そう俺は呟き、本日土曜日なので二度寝する事に目を――
「……ぅん、ふぁ~……」
――と、幻覚と思しき紲星あかりが、声を上げながら背伸びし始める。
うん、動くたびに圧力を感じるので、現実としか言えない。
そして、あかりと目が合う。
あかりは、目をパチクリさせて、そのまま体と寄せて密着してくる。
そのまま、手を俺の顔に乗せてくる。
まるで、俺がそこに存在する事を確認する為に。
「おはようございます、リュウくん」
あかりは、そう微笑みながら挨拶をした。
途中の文章に悩む。辿り着くゴールは見えているのに、その道中が見えないのが辛い。辛いけど書ききった。
で、主人公の名前は、メインと同じにすることに決定。
元々、話によっては、主人公の設定も変更されるんだし、外伝は別にしなければならない理由なんて無いし。
ってか、良く書けたな、俺。
これ、見切り発車で続編ガチで未定だったのに、1話目投稿後に話が膨らんで、残りの話のプロット完成済みという。
後は、話を書いていくだけ。
ただ、草で恋愛は無理だったので、結局人間に戻る事に。
何故かは、次の話で。
一人称なので、ご都合主義に見える点もありますが、相手が教えてくれないと判らない場合があるので、丁度良いかも。