私の名前は、紲星あかり。
年齢は、今年で21歳になる、ボーカロイド兼ボイスロイド(声優)をやっています。
高校生時代に、同級生の赤野龍騎くんに、淡い恋心を持っていました。
けど、動画配信で活躍していた、先輩の結月ゆかりさんに憧れを覚え、自分自身もああなりたいと考える様になりました。
ゆかりさんに教えを乞い、動画配信を行う様になり、自分の世界が広がっていくのを感じ、実感していった。
そんな中で、赤野龍騎――リュウくんが、告白してきた。
けど、私は淡い恋心よりも、憧れを優先しました。
「ごめんなさい。私は、ゆかり先輩の様になりたいんです。だから、答えられません」
それ以来、今まで時々帰りに遊びに行く仲だったのに、私にフラれたショックが強かったのか、接点が挨拶程度になってしまった。
多少話す事もあるけど、告白前の様に買い物に付き合う事はありませんでした。
少し寂しい思いが過ぎるも、それ以上にゆかり先輩に近づきたくて、ゆかり先輩といる事が多くなりました。
ゆかり先輩が高校卒業する際、一緒の事務所に来ないかと誘いが来たので、即返事をして家にダッシュ。
両親を何とか説得して、卒業後に業界にデビューする事に。
「紲星あかりです、宜しくお願いしまぁ~す!!」
お披露目会で、元気良く返事した事は、今でも覚えています。
近くで、ゆかり先輩も喜んでくれてました。
けど、デビューしてから2年後に、ゆかり先輩を超えてしまった。
そう、超えてしまったのである。
目標であり、近づきたくて、日々頑張ってきたのに……とあるアニメのヒロイン役を演じた作品が、大ブレイクしたのである。
それを皮切りに、ゆかり先輩以上の仕事が舞い込み、ゆかり先輩中心だった事務所は、私が中心になっていた。
それから、ゆかり先輩と一緒にご飯を食べる事が無くなり、連絡はするけど少し冷たい感じを受けるようになった。
同時に、目標を超えてしまった事で、この業界にいる意味があるのかという考えが過ぎったりする様にもなった。
けど、この業界を辞めたとして、他の仕事が出来るのかという考えに、業界を辞めるという考えは消える。
そんな日々を送っていた、ある日。
「――では、明日から数日間はお休みになるけど、羽目は外し過ぎない様にしてね?」
「はい、判りました」
マネージャーとのスケジュールの確認と、休暇中の注意事項の説明を受けて、席を立ちあがる。
「では、お先に失礼します。お疲れ様です」
「ええ、お疲れ様。あ、一応聞いておくけど、この後は?」
「あ、ちょっと1人で居酒屋に。食べてみたいものがあったので……その、人の目を気にしないで食べたいから」
「ああ、席に人がいると、モノによっては食べ辛いモノもあるからね。判ったわ、気を付けてね?」
「はい。それでは、失礼します」
というやり取りをして、事務所を退社。
そのまま、前々から気になっていた居酒屋へ入店し、1人で座敷を占拠。
お酒をチビチビ飲みつつ、色んなモノを食べ始める。
年の為に、お昼の量を減らしていたので、夕飯が進む。
ふと、後ろの仕切り越しから声が聞こえる。
「――ぷはぁ!!」
ダン!! と叩きつける音。
「ちょ!? ゆかりん、駄目だよ!? 次やったら、ここでお酒飲めなくなるって注意されたじゃん!!」
「分かってます、分かってますよ、マキさん」
ゆかり先輩と、弦巻マキ先輩のお二方。
今日は2人だけなのかと思い、何と無く耳を傾けるが――すぐに顔を出せば良かったと、後悔しました。
「後輩のあかりが、私をあっさり超えていったんですよ!? 私に近づきたいと言っておきながら、あっさりと!!」
「うん、でも偶然としか――」
「ええ、そうです!! 偶然なのは分かりますが、運も実力の内っていうじゃないですか」
そう、確かに私は、ゆかり先輩の様になりたいと、日々頑張ってきた。
でも、偶々ヒロインをやっていたアニメが、大ブレイクしたと同時に、ヒロイン役だった私の株も一気に上がった。
まだ関係者以外秘密だけど、そのアニメの続編も決まっていて、役も続投が確定している。
「高校時代に、動画配信の仕方を教えて下さいと、頭を下げに来た時は嬉しかったですよ? でも、今となってはあかりが上の状態」
吐き捨てる様に、言葉を放つゆかり先輩。
けど、次の言葉に、私の心は滅茶苦茶になった。
「こんな事になるなら、この業界に誘う――ううん、動画配信の仕方、教えなきゃ良かった」
「ゆかりん!?」
仕切り越しに、怒号が飛び交うけど、私の耳には入ってこなかった。
いや、私自身が、これ以上聞く事を拒否しているから、認知出来ないんだと思う。
けど、これ以上この場に居たくなかったので、まだ残っている&これから来る品の代金を全て払い、店を出ていった。
なお、これから来る品は、先輩たちに押し付けた。
若干お酒は入っているとはいえ、人自体見たくないと思い、適当な横道に入る。
そこは、人気のないかつ灯りが少ない道で、自分は丁度求めていた場所。
心神喪失な状態だったんだろうか、普段なら恐怖で足が竦む道だが、気にすることなく足を動かす。
暗い道と、街頭に照られた道、時折点滅する外灯。
そんな道を進んでいると、外灯の下にいる人を認識する。
「……露店?」
遠目と外灯から判断出来るモノが、全身フード付きのローブの人が椅子に座り、目の前には道端で占い師使うようなテーブル。
その中心に、水晶でなく、何かが置かれていた。
私は、気になって近くまで移動した。
外灯の下にいるとはいえ、少し薄暗くて判らなかったけど、近くで見たら土の入った植木鉢だった。
「やぁ、お客さん……心がお疲れのご様子ですが、何かありましたか?」
その言葉に、衝撃を覚えた。
答えるべきか、立ち去るべきか、数秒……いや数分かな? 考えて、話す事にした。
「……なるほど、なるほど」
ローブの人は、言葉を言いながら頷き、右手を左の袖に入れて、何かを取り出して差し出してきた。
理科の実験で使う、細長い試験管。その中には、緑色の液体が入っていた。
「この液体を飲んでみてはいかがでしょうか? 少なくとも、心が安らぐ事が出来るかもしれません」
その言葉に疑いを持つも、もし本当なら、欲しいと思ってしまった。
「ただし、可能性を提示するだけで、絶対に安らぐ事が出来る訳ではありません。下手すれば、今以上の疲れが、心に圧し掛かるでしょう」
私は、その言葉を聞いて、試験管を受け取り、臭いを確認する事も無く一気に飲み干した。
ふぁ、と言いながら、ローブの人を見る。
躊躇なく飲んだ事に驚いたのか、固まっている。
「……渡しておいてなんだけど、せめて確認くらいしておかんかね? まぁ、飲んだ以上、後戻りは出来ないからな」
その言葉と同時に、体の力が抜けて、その場に座り込む。
手に持っていた試験管も落とすも、ローブの人が身を乗り出して、宙で掴み取る。
「そのまま眠りなさい。そして、起きてからが、勝負だよ」
その言葉を耳にしながら、意識が遠くなるのを感じながら、体が地面に倒れるのだった。
そして、気が付いたら、見た事無い部屋だった。
部屋には、本棚やパソコン、ベッドやポスターがある、一般的な部屋の筈。
ポスターは、私の期間限定販売のグラビアバージョンである。恥ずかしい。
と、顔を手に当てようとしたら、自分の体に違和感を覚えた。
いや、それ以前に、自分のいる場所が可笑しい事に気が付いた。
首を下向けて、ある筈の手を見る――葉っぱ。そう、葉っぱである。
しかも、茎の根本から生えていて――
「わぁ!? ――わぁ? わぁわぁわぁ!?」
――しかも、『わぁ』しかしゃべれない。
植木鉢を認識して、自分が何かの植物であると認識した瞬間である。最も、少し後になるけど、部屋の主が鏡を持ってきて自分の全身を確認した時、流石に絶句したけど。
私の顔のデフォルメは良いとして、それ以外が何で植物なの。
混乱しているうちに、ドアノブが動き、ドアが開く。
そして、部屋に入ってくる人物を見て、心の底から驚いた。
かつてフった男子――リュウくんが入ってきたのだから。
同時に、色褪せたと思っていた、淡い恋心が溢れ出してきた。
フった理由は、ゆかり先輩の様になりたいから。だけど、超えてしまった今、どうしようもない状態でいる私。
夢でも良いから、リュウくんの傍にいたい。
そう、強く思ってしまった。
まさかの全4話構成作品になるとは、思ってもみなかった。
この話を3話目に持ってこようと思ったけど、ジョジョ5部の様に、本当の始まりを最後に持ってくる感じにしてみました。
とりあえず、勢いで書いたので、1・2話目の薄っぺらを直して行こうかと思ってます。
あかり草関係の話は、これにておしまい。
次は、別の設定で話を書いていきます。