ガンダムビルドダイバーズ Re:TURN:TYPE   作:ルシエド

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『未来を切り開く』とは何か

 中学生の時、リクはGBNチャンプ:クジョウ・キョウヤに憧れてGBNを始めた。

 始まりは憧れだった。

 『あんな風に』という憧れから、彼のガンプラバトルは始まった。

 その日からずっと、彼の人生は光り輝いている。

 

 ちょうど、エルドラ人のかの男に憧れて『あんな風に』と思ったエヴィデンス01の逆だ。

 道徳的に見た場合に悪しか居ない一族に生まれ、善人に憧れたことで永遠に罪悪感に苛まれるようになったエヴィデンス01の逆。

 同じなのは、リクもエヴィデンス01も同様に、いつまでも同じ憧れの人の背中を追っているというところくらいだろう。

 

 リクは一旦ログアウトし、まだ精密な調整をしていない、新たな愛機の完成組体―――ダブルオースカイメビウスを読み込ませて、再ログインした。

 

「あ……り、リクさんだ!」

 

「え?」

 

「ふぁ、ふぁふぁふぁふぁふぁ、どれみふぁ、ファンです! す!」

 

 が、ログインしたところで、小さな女の子に絡まれてしまった。

 リクのいいところは他人を雑に扱わないところで、リクの悪いところは他人を雑に扱えないことである。

 小さな女の子はひと目で分かるレベルにアバターをいじっておらず、小学生くらいの女の子であることが即座にわかる。

 ファンの女の子を粗野に扱えもせず、かといって仲間達の下に一秒でも速く駆けつけたいため、リクは困り果ててしまった。

 

「あ、あのですね! ダブルオーダイバーをですね!

 そのまま真似して作ってましてててて!

 大変失礼なことをしてると思いつつ憧れが!

 リクさんがダメというならすぐにでもこのダブルオーダイバーは使わない次第でー!」

 

「ああ、いいよそのくらい。

 懐かしいなあ、ダブルオーダイバー。

 俺の最初の愛機で、最初に作った自分用のガンプ―――」

 

 そこまで言いかけて、リクにある閃きが宿った。

 

 少女が真似して作ったというダブルオーダイバーを、リクは見上げる。

 全体的に拙さはあったが、手にした剣は親が金属質に塗装してくれたGNソードIIを少女が毎日磨いていたのだろうか? 愛を読み取るGBN特有のボーナスが大分入っている。

 ダブルオーダイバーは、リクのGBN最初の愛機である。

 今日ここで、リクが他人の模倣したダブルオーダイバーと出会ったことは、運命だったのか。

 それともリクがGBNで活躍を続けていたがゆえの、必然だったのか。

 

「ねえ、ちょっと頼んでもいいかな」

 

「ひゃ、ひゃい! なんでも! なんでもどうぞ! なんでも言うこと聞きます!」

 

「あはは、そこまでしなくていいよ。

 君のダブルオーダイバーの剣を貸してほしいんだ。

 俺のダブルオースカイメビウスは今日が初陣で、使わせたいんだよ」

 

「リクさんの新作機体の武器に!?!?!?!?!?!!?!?!?!!?」

 

「ダメかな?」

 

「いいです!!!!!!!!! データどうぞ!!!!!!!!!!!!!」

 

「ありがとう。じゃあ借りていくね」

 

 ダブルオーダイバーから、ダブルオースカイメビウスへと、剣が手渡される。

 リクの最新の機体が、最初の機体の剣を持つ。

 懐かしさに思わず、リクの口角が上がった。

 

「リクさんはわたしのあこがれです!

 昔も今もあこがれです!

 ずっとわたしのあこがれでいてください! 失礼します!!!」

 

 叫ぶように、逃げるように、捨て台詞気味に少女は言い捨ててその場から消えた。

 

「……俺が憧れ、か」

 

 誰かに憧れるのはいい。

 けれどいつかは、自分も憧れを与える側に回るのもいい。

 憧れは循環し、子供がいつも憧れと夢をもって入って来る界隈ができる。

 子供に夢を与える大人がいて、夢を与えられた子供が大人になって、また子供に夢を与えて……その循環が回していく世界がある。

 それもまた、この星で輝いているものの一つだ。

 

「情けない自分にならないようにしよう。ガッカリされない俺でいよう」

 

 子供からの視線は、少年を大人の男に変えていく。

 

 かっこいい大人に憧れる少年を、かっこいい大人に変えていく。

 

「チャンプは―――キョウヤさんは、そう在ってくれたんだから」

 

 駆け出すリクの踏み出す足は、とても力強かった。

 

 

 

 

 

 ガンダム00において、ダブルオーガンダムや前身のガンダムエクシアが恐れられていた理由に、その剣があった。

 その名も、GNソード。

 俗称、ガンダム殺しである。

 GNソードは剣の表面にGNフィールドを展開し、GNフィールドの対流に割り込む能力を持っているため、GNフィールドでの防御を貫通するという効果を持っていた。

 近接戦闘技能が低いパイロットは、GNソードを扱う近接戦の達人の前には、ただの紙切れに等しくなってしまうのだ。

 

 リクの最初の愛機、ダブルオーダイバーにGNソードは装備されていた。

 その強化機体、ダブルオーダイバーエースにもGNソードはあった。

 しかしダブルオースカイにはなく、その強化機体であるダブルオースカイメビウスにも無い。

 GBNに最適化した機体を作る過程で、リクの機体からGNソードは失われていった。

 リクは貰ったGNソードを、ダブルオースカイメビウスの腰の後ろに隠すように吊る。

 

 GBNのガンプラの性能数値は、原典によって決定されない。

 作り込み……すなわち『愛』によって決定される。

 原典はあくまで方向性の決定にしか関与しない。

 チャンピオンに憧れたあの日から、ずっと磨いてきたリクの技術の全てを結集したダブルオースカイメビウスは、単純な攻撃数値もハイエンドであった。

 そこに、GNフィールド特攻が加わった。

 無敵に見えたリボーンズガンダムのGNフィールドも、もはや盾にはならないだろう。

 

 ここはGBN。

 ガンダムを知らぬ者は負け、ガンダムを知る者が勝利する。そういう世界だ。

 宇宙を跋扈する上位生命体の端末であろうと、ガンプラを愛する者には勝てない。

 ここでは、愛が勝つ。

 

『うおおおおおおおっ!!』

 

 リクが巧みにGNソードと大型ビームソードを織り交ぜ、斬りかかる。

 GNフィールドで防ごうとすれば、GNソードで切り裂かれる。

 ビームサーベルかシールドで防ごうとすると、大型ビームソードで押し切られる。

 "この距離"ではもはや、リボーンズガンダムに為す術はなかった。

 

 しかも、一度GNフィールドを切り裂かれたことで、リボーンズガンダムは自覚しないまま致命的な隙を見せてしまっていた。

 

『……そこだ!』

 

 ヒュッ、と剣が風切る音が鳴り、金属が砕ける音がする。

 あまりにも素早く無駄のない剣筋に、それがGNフィールド発生器が壊れた音であると、リボーンズガンダムは破壊されてから気付いた。

 

 一度GNフィールドを切り裂かれたなら、GNフィールドは再展開しなければならない。

 ガンダム00の球形GNフィールドは発生器から形成されるため、発生器を破壊されればもうGNフィールドは使えなくなってしまう。

 リクはGNフィールドを切り裂くことで、GNフィールドを再展開させ、GN粒子の初動からGNフィールドの発生器の位置を見切ったのである。

 恐ろしい眼、凄まじい動体視力だ。

 思いついても、それを実行できる本人の能力こそが恐ろしい。

 

 ダブルオースカイメビウスの参戦で、戦いの流れは完全に逆転した。

 

『もっとだ、もっと速くだ! ダブルオースカイメビウス!』

 

 ダブルオースカイ以上の速さで飛翔するダブルオースカイメビウスが、リボーンズガンダムを捉えた……かに、見えた。

 しかしリボーンズガンダムの機体から、奇妙な駆動音が響く。

 明らかにありえない性能の変化が発生し、ダブルオースカイメビウスに並ぶ空戦性能を獲得したリボーンズガンダムが、空中で鋭角な軌道を描いた。

 

『!?』

 

 高速飛翔中のダブルオースカイメビウスの背後をリボーンズガンダムが取り、GNビームサーベルを振り上げる。

 ガンプラ愛を極めた至高の飛翔を、外来種が力任せに上回り、踏み躙る。

 

「踏め、リク殿!」

 

『!』

 

 そんなことを、エヴィデンス01は許さなかった。

 空を走る、銀色の流星。

 それを踏み跳んだダブルオースカイメビウスが、空中で強引に軌道を変え、リボーンズガンダムのビームサーベルは空振った。

 

 ファンネルだ。

 ターンエルスの四肢が分解して飛び、ダブルオースカイメビウスが空中でそれを蹴り、飛行の軌道を捻じ曲げたのである。

 ラグランジアンを始めとする、地球でも未だ研究途中にある"場の理論"の行き着く先にあるターンエルスのファンネルは、重力下でも宇宙でも()()()()()()()ことができた。

 ゆえに、モビルスーツが足場にできる。

 

 光になったダブルオースカイメビウスと銀色の流星が入り乱れ、縦横無尽にジグザグに飛ぶ流星群の如くリボーンズガンダムを惑わす。

 流星を蹴って飛翔軌道を曲げるダブルオースカイメビウスを見て追うことは不可能に近く、リボーンズガンダムの異常に強固な装甲に、袈裟懸けの斬撃が叩き込まれた。

 

 砕け散った装甲を庇うように盾を構え、リボーンズガンダムは急降下。

 されどそこでは、次なる絆の連携が悪魔を包囲する。

 

『どこに行くつもりだ?』

 

 空を翔ぶ銀色の流星はファンネルの階段となって、ウォドムポッドに空を走る権利を与えた。

 ウォドムポッドは空を飛ぶのではなく、友のファンネルを足場として跳び、迎撃するリボーンズガンダムのビームのことごとくを回避しながら、その頭上を取る。

 空中で全体重をかけたウォドムポッドの回し蹴りが、リボーンズガンダムの首を蹴り込んだ。

 

 メギッ、と金属が軋む音がして、構造上非常に弱い首に絶大なダメージが入る。

 空中で駒のように回転しながら、リボーンズガンダムは地面に激突した。

 

 首がへし折れ、もう一度叩けば首が落ちそうになりながらも、リボーンズガンダムは平然と立ち上がる。

 "首が落ちれば生き物は死ぬ"という概念が、この宇宙生物には存在しなかった。

 されど、追撃の手は緩められない。

 

『ジャイロアターックッ!』

 

 完全な球状に変形したモモカプルが、銀色の流星に押されてリボーンズガンダムに激突する。

 ファンネルをブースターとし、野球のジャイロボールのようになったモモ必殺の技である。

 吹っ飛んだリボーンズガンダムが岩山に突っ込んで、岩山が崩壊し、リボーンズガンダムがその崩壊に飲み込まれていく。

 

「やったか!?」

 

『エビ!』

『エビさん!』

『エビちゃんはさぁ……』

 

「え? え? え? 私なんか変なこと言ったか?」

 

 "ガンダムの法則性"が世界の理として在るこの世界において、この流れでリボーンズガンダムが倒されているわけがない。

 

 岩山の瓦礫の中から飛び出して来たリボーンズガンダムの目が光り、嫌な音が鳴った。

 金属を研磨する音と、家屋が軋む音と、赤ん坊の鳴き声が混ざったような音。

 その音と共に、リボーンズガンダムの全身が蠢いていく。

 

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 (アイ)ガンダム。

 GN(ガン)キャノン。

 オリジン・ガンダムモード。

 オリジン・キャノンモード。

 オリジン・タンクモード。

 そして、それらを統べるリボーンズガンダム。

 原典においてリボーンズガンダムの開発過程で図面が引かれ、けれど結局リボーンズガンダムという『自分一人が在ればいいガンダム』に統合されてしまったガンダム達。

 それらが、リボーンズガンダムから再誕生(リボーン)されていた。

 リボーンズガンダム、いや、再誕生されたガンダム達(リボーンガンダムズ)

 

『い……いやいやいや!? 何これ!? 何これえ!?』

 

『モンスター映画の文法だな……いや、SFの侵略者の文法か』

 

 リク達はガンダムのルールで、リボーンズガンダムの圧倒的な力に対抗した。

 

 対しリボーンズガンダムは、SF生命体のルールでガンダムの世界に対抗してきた。

 

「敵は六機!

 私達は四機!

 で、あれば、私が三機受け持つ! 皆、一機ずつ頼む!」

 

『リク! エビが無駄な責任感から無理をする前に二機頼む!』

 

『分かった! メイもボロボロのエビさんのカバーを!』

 

『この流れなんか笑っちゃうから録画して後でユッキー達に見せたいなぁ』

 

「……」

 

 異端の連携を始めるリボーンズガンダム達六機。

 そこに、遥か上空から、特大の火力が叩き込まれた。

 連携しようとした出鼻をくじかれて、散り散りになるリボーンズガンダム達。

 

『SFの侵略者がなんだって?』

 

『お……オーガ!』

 

『ったく、俺が離れた途端こんな面白そうなこと始まってたとはな……俺も混ぜろォ!!』

 

 オーガ、参戦。獰猛に笑う鬼が、戦う者達の戦線に加わる。

 

 散り散りになったリボーンズガンダム達は、ゲームシステム上ありえない火力を持ち、全員が一斉に攻撃することで、エヴィデンス01達を消し去らんとする。

 全機が一斉に火砲を放ち、エヴィデンス01達の視界がGN粒子に埋め尽くされる。

 されど、それら全てが、彼らを守るように包み込んだ『月光蝶』により消し去られた。

 

 原作で地球人類文明を消し去った外宇宙の兵器である月光蝶が、人間達を守り、地球人類文明を消し去る外宇宙からの侵略者の攻撃を、全て消し去っていく。

 

 月の光に照らされた蝶の如く、美しい翅を羽ばたかせたサラの愛機、モビルドール・サラが皆を庇い守るような位置で地に降り立つ。

 誰よりも華奢で、誰よりも女の子らしいモビルスーツが、皆の先頭に立っている。

 されど、サラに怯えはない。

 

『私も、皆と一緒に! リク!』

 

『サラ! 君は戦闘に向いては……』

 

『私をいつも守ってくれてるリクを。

 私を大事にしてくれる仲間の皆を。

 体を張って守ってくれたエビちゃんを。

 今度はちゃんと……私が守る! この胸のありがとうを、皆に返すために!』

 

『……分かった、一緒に戦おう! サラ!』

 

『うん、リク。みんなと一緒に、どこまでも一緒に、いつまでも一緒に』

 

 リボーンズガンダムに統合されたものが五機、リボーンズガンダムも入れて六機。

 リク、サラ、モモ、メイ、オーガ、エヴィデンス01、ごちゃまぜの六人で六機。

 

 万能に進化して、他者の存在を受け入れず、自分達のネットワークに取り込む単一種族。

 万能になんかなれないけど、それぞれができることを精一杯やって、助け合って、支え合って、多様な仲間達で力を合わせて、時に万能にも並ぶ地球の者達。

 

 "我々とその思想だけが在ればいい"という悪魔。

 "皆違って皆良い、皆それぞれの好きがある"という人々。

 

 二つは対峙し、そして、決着の時は来る。

 

「で、あれば。共に行こう。―――共に生きるために!」

 

 ターンエルスの口から発せられるエヴィデンス01の呼びかけに、皆の声が応じた。

 

 十二の機神が、神話の一幕の如く、同時に動き出す。

 

『オーガ!』

『遅れるんじゃねえぞ!』

 

 (アイ)ガンダムとGN(ガン)キャノンが、完璧な連携でビームを放つ。

 元は一つの存在だ。連携に瑕疵などあろうはずもない。

 完璧な連携で、コロニーレーザーに迫る威力のGNビームライフル、GNビームキャノンを連射し、リクとオーガを仕留めにかかる。

 あまりにも容赦のない、無慈悲なビーム。

 

『トランザムインフィニティ!』

『鬼トランザム!』

 

 リクとオーガは、それに対し更に容赦のない無慈悲なトランザムで踏破した。

 

 高速のビームを、神速のトランザムにて凌駕する。

 

 (アイ)ガンダムもGN(ガン)キャノンも、気付けば上半身と下半身が生き別れになっていて、ダブルオースカイメビウスと羅刹天が、拳を突き合わせていた。

 

『合わせて、メイ!』

 

『分かった、姉さん!』

 

 サラが月光蝶を背に飛翔し、メイがウォドムポッドを走らせる。

 リボーンズガンダムのオリジン、そのキャノンモードとタンクモードの二機が二人の少女へと襲いかかった。

 火力が高い二機がビームを雨霰と浴びせにかかるが、月光蝶が相殺する。

 そこで、メイが大口径ビームを発射し、キャノンとタンクは左右に分かれて回避した。

 が。

 ()()()()()メイのビームが、タンクを後ろから貫いた。

 

 サラが操る美しい翅『月光蝶』は、原典の∀においてIフィールドと呼ばれる力場にナノマシンを乗せたというものだ。

 Iフィールドは設定的に、ビームを打ち消したり、収束したり、偏向したりするもので、∀ではビームの完全制御に成功している。

 メイのビームを、サラの翅が曲げて戻し、完璧な奇襲を成立させたのだ。

 

 Iフィールドも、姉妹の絆も理解できない異星人に、この仕組みは分からない。

 愛を持ち、理解しようとする者でなければ、上っ面しか理解できない。

 

 ガンダムへの愛なき者が、他者を理解しない者が、GBNの理に敗れていく。

 

『メイ!』

 

『姉さん!』

 

 残ったキャノンが放つ火砲を紙一重で回避し、サラが空を舞い、メイが地を走ることを選択することで、攻撃を上下に散らして回避しやすい状況を作る。

 そして、一瞬の隙をつき、ウォドムポッドが跳んだ。

 

 跳び上がったウォドムポッドの足裏と、空中のモビルスーツ・サラの足裏が、一瞬、ぴったりと重なる。

 そして同時に、互いを全力で蹴った。

 サラの推力と脚力、ウォドムポッドの脚力が合わさり、ウォドムポッドが瞬時に弾丸を超える速度にまで加速する。

 60tを超えるウォドムポッドの最速落下による文字通りの落下蹴り(ドロップキック)が、キャノンの全身をぺちゃんこに押し潰していった。

 

『お前で最後だー!』

 

 そしてモモはモモカプルで器用にオリジン・ガンダムモードの背後を取り、そのボディを上下逆さまにひっくり返して抱え込み、跳び上がる。

 

『パイルドライバーお腹ビーム!』

 

 モモカプル・パイルドライバーによって、ガンダムの頭部が潰れ、ダメ押しの腹部ビーム砲の発射でガンダムの胴体に大穴が空く。

 モモカプルは満足気に、汗などかくわけがないのに汗を拭く動作をする。

 宇宙よ、これがヤシロ・モモカだ。

 

 ラスト一体。

 残るはリボーンズガンダムのみ。

 相対するはターンエルス。

 だが、ここまであまりにも攻撃を受けすぎたターンエルスは、エヴィデンス01の憑依によってシステムを凌駕していたが、もうとっくに限界を超えていた。

 

 最初に戦闘を終わらせたオーガが、援護しようとする。

 だがリボーンズガンダムのGNビームサーベルと、手にした剣で必死に切り結ぶターンエルスを見て、援護しようとする手を止めた。

 代わりに、大きな声を張り上げる。

 

『しっかりしろ、馬鹿野郎! テメエの戦いだろう、テメエが決着をつけろ!』

 

「で、あるな。そうする。いや、そうしたい。私が背負うべきものがある」

 

 リクもオーガの選択に合わせ、銃を下ろした。

 

 だがリボーンズガンダムは、ここでなんと、ターンエルスに背を向けて逃げ出した。

 

「逃げを選択……で、あるか」

 

『エビ、外に出すな! GBN内で決着をつけろ!』

 

「分かっている!」

 

 サーバー外に出てしまえば、地球なんてあっという間に消せるのだ。

 エヴィデンス02は情報経路を通してここに入って来て、そこでサラを見つけて、何よりも優先してサラを殺そうとしていただけにすぎない。

 それもここまでだ。

 エヴィデンス02は、邪魔をする人類を絶滅させる行動に移行した。

 

 ターンエルスがその後を追う。

 だが追いつけない。

 エリアの端に到達すれば、GBNに入って来た経路を改変し、悪魔が外に出てしまう。

 なのに、追いつく手段がなく、エヴィデンス01は焦る。

 他のガンプラも位置と速度を考えれば、リボーンズガンダムには手が届かない。

 

 そこに横から、敵を倒したモモカプルが飛び込んできた。

 

『ここ、ここ、ここ乗ってー!』

 

 モモカプルが思いっ切り腕を振り、モモカプルが全力で振った腕を踏み台にして、ターンエルスが加速した。

 ターンエルスももう制御できないほどの速度で、リボーンズガンダムに追いすがる。

 

 リボーンズガンダムは全力で逃げたまま、変形した。

 機体の正面と背面、どちらを表にするかだけの非常に簡易で素早い変形が、リボーンズガンダムの持つ強さだ。

 背中側が正面になり、リボーンズキャノンのビームがターンエルスを焼き削っていく。

 

 ターンエルスの右腕が消し飛んだ。両足も消し飛んだ。頭も消し飛んだ。

 右腕が握っていたライフルが消し飛んだ。

 腰にマウントしていた剣も消し飛んだ。

 頭とビームファングも消し飛んだ。

 もはやターンエルスには左腕と、左腕を構築する数機のファンネルしかない。

 リボーンズキャノンを仕留められる武器がない。

 

 かに、見えた。

 

「で、あるからこそ、感謝の言葉は尽きない」

 

 ターンエルスの左腕が、背中に隠したビームサーベルを抜く。

 

 それは、メイが機体の中にあるギミックで仕込んでいたビームサーベル。

 

 GBNの仕様上、使用することが許されている、友のビームサーベルだった。

 

「この星に来て、よかった」

 

 異星人と地球人の出会いには必ず、『理解に苦しむ』がある。

 そこで理解することを選ぶも、理解しないことを選ぶも、その生命の自由だ。

 

 地球の者達には、エヴィデンス01が最初理解できなかった。

 けれど根気強く歩み寄り、互いに理解しようとした。

 結果、彼らは手を取り合い、力を合わせる知性体の輪ができた。

 地球人、電子生命体、波動生命体。全てが手を取り合っている。

 

 ガンプラを理解していなかったからこそ、エヴィデンス02の道筋は敗北に繋がっていった。

 理解と対話を放棄したからこそ、リボーンズガンダムは愛に負ける。

 

 悪の一族の落ちこぼれに生まれ、善なる者に育てられ、理解と愛を得たエヴィデンス01は……いつの間にか、自分を落ちこぼれと定義する同族よりも、もっと豊かなものを手に入れていた。

 

「さらば、我が一族。

 ずっと溶け込みたかった。

 この心を捨ててでも、皆の仲間になりたかった。

 けれどもう、君達と一緒にはいられなくなった」

 

 ターンエルスの友情のビームサーベルが、リボーンズキャノンの胸を貫く。

 

「どう生きてきたのか、もう思い出せない。

 あの頃の私には、もう戻れない。

 どう生きていくのか、教えてほしかった。

 けれどもう、色んな人が教えてくれた。

 もう、どうしたって私は、友のために生きていく。そう決めたから、そう生きていく」

 

 そのまま腕を振り、ターンエルスはリボーンズキャノンを両断し、真っ二つにする。

 

「―――救いようがない君達を、救えなかった。すまない」

 

 宇宙の多くの命の敵となる進化を果たしてしまった同族に向けて。

 同族に取り込まれ、不可逆の変化によって端末にされてしまった知的生命体に向けて。

 彼は、そう言う。

 まるで、墓に向けて両手を合わせるような、決着の一撃だった。

 

 

 

 

 

 力を失ったターンエルスが落下していく。

 気を失ったエヴィデンス01の意識と共に落下していく。

 全ての力を使い切って、地面に向かって一直線。

 

 そんなターンエルスを、空中で機械人形が受け止めた。

 

「よく頑張った。お疲れ様……だな」

 

 きらきら、きらきらと光るGN粒子の残滓の中、美しい女性の姿をした機械人形は、優しくターンエルスを抱きしめ、地上に降りる。

 

 機械人形の名は、モビルドール・メイ。

 ウォドムポッドが外装をパージした、メイの機体の真の姿。

 ウォドムポッドより柔軟で柔らかな動きができるその機体が、ゆったりと地に足をつけた。

 頑張りに頑張った一人の戦士を、できる限り揺らさず、優しく扱うために。

 

「さあ帰ろう。お前が人間を知り、人間がお前を知るための毎日が、日常がお前を待っている」

 

 急いで駆け寄って来るモモ達が、遠目に見える。

 

 彼を少しは静かに休ませておいてやろうと、メイはうるさいモモに向けて、口の前で人指し指を立てるのだった。

 

 

 

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