ガンダムビルドダイバーズ Re:TURN:TYPE   作:ルシエド

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『ターンエルスの弱点』のロジック

 エヴィデンス01にとって、アストレイノーネイムは未知なる存在だった。

 集めた知識に断片的に似たものは散見される。

 だが、理解にはまだ程遠い。

 それは何故か?

 この機体が、不合理とロマンの塊であるからである。

 

 アストレイノーネイムは、ガンプラバトルでガンプラが壊れる時代からのシバの愛機である。

 何度も共に戦った。

 何度も壊された。

 何度も直した。

 何度も改造した。

 そしてまた戦った。

 そうして出来たのが、この左右非対称のガンダム、アストレイノーネイムである。

 

 愛機と共に戦い、勝って泣いた。

 負けて愛機を壊され、泣いた。

 愛機を壊されながらも最後の一撃を放ち、勝ち、泣いた。

 シバにとって青春の全ては、仲間と共に戦った過去の全ては、このノーネイムと共に在る。

 

 左右非対称なのは、壊れては直してを繰り返したから。

 右半身をマント状の金属系武装ユニットで覆っているのは、破壊・修理・強化によって生まれた左右の非対称性という歪みすらも取り込んで、完成された外見とするため。

 まるで、強い動物を繋ぎ合わせたキメラのような奇形で、だが同時に最初からこの造形にすることを目指したかのような統一感もある。

 

 多くの異星人は、この機体を理解できないだろう。

 

 左右非対称でない方が機体の重量バランスはよくなる。

 壊れたガンプラを直すより、新品を改造した方が自由度が高い分、強くなるはずだ。

 左右のアンバランスな損壊を、造形的なバランスを取って直しても、自己満足の面が強い。

 壊れた機体を修復したところで、それが美しいと思う異星人も多くない。

 

 だがロボが好きな多くの地球人は、この機体のロマンに深く頷くことだろう。

 

 破壊されたものを修復した美しさ。

 壊れてもなお相棒を変えない一途さ。

 アンバランスで左右非対称な造形だからこそ感じる格好良さ。

 アストレイノーネイムには、シバ・ツカサの愛するもの、皆が好ましく思うものがこれでもかと詰まっている。

 "皆の好き"が詰まっているGBNらしい、そんな機体であった。

 

 だが地球人と似た精神性と文化を持つ異星人しか、これをいいものだとは思うまい。

 このアストレイノーネイムに込められた美は地球人全てに共通するものでもないため、趣味でない地球人もいるだろう。

 しからば、これが理解できない異星人には、アストレイノーネイムはあえて不必要と不効率を込めた不合理の極みにしか見えないだろう。

 

 ―――ここに、地球人と異星人の差異がある。

 

 地球人同士ならいいのだ。

 地球人がアストレイノーネイムを見て趣味が合わないと思うのは良い。

 趣味であり、"好きなもの"でしかないため、そのロマンに共感しなくてもいい。

 だが地球人は不理解を当たり前として生きているので、「君はそれが好きなんだね」でさらっと流して交流することができる。

 共感も理解も必要もない。

 ただ、"そういうのが好きな人もいる"ということを知り、それを知った上で振る舞うことができるなら、地球人はそれでいい。

 

 だが、エヴィデンス01は違う。

 

 彼は不理解を理解に変えるためにここにいる。

 地球人との交流の主目的は、地球人を理解することだ。

 そうであればこそ、ノーネイムはエヴィデンス01にとって、特異な存在となる。

 エヴィデンス01の生来の感覚には何も引っかかることがない造形。

 されど地球人の、特に男性のロボ好きに引っかかる造形。

 『エヴィデンス01がまだ理解していない地球人の象徴』の如く、それは立ち塞がる。

 

 破損した右腕を覆う装甲。

 左右で色の違う足。

 色も装甲も違う右半身を覆うマント状のユニット。

 エヴィデンス01は、今は地球人の男の容姿をしているというのに、それらに"格好良い"と思う地球の男の子の心を持ち合わせていなかった。

 

 彼にはまだ、男のロマン―――その心がない。

 

 

 

 

 

 バトルスタートの合図と同時に、両者は前に出た。

 ノーネイムは右半身を覆うノーネイムユニットを前にして。

 ターンエルスは大剣を握り締め。

 両者の距離が、0に近づいていく。

 

 瞬間、ノーネイムが体をよじった。

 

『!』

 

 ターンエルスは目を見開く。

 

 左右の重量バランス違いを利用し、マント状のユニット『ノーネイムユニット』のスラスターを吹かし、本体のスラスターを選択的に吹かす。

 すると、どうなるか?

 斜めに、滑るように、ねじり込むように飛ぶ。

 日常生活で見る分にはいかなる鳥もしないような曲芸飛行。

 ノーネイムはターンエルスの大剣をマントで受け流しつつ、斜め下方向に滑り込むように飛翔してターンエルスの横を抜け、斜め上にねじるような軌道で急上昇し、ターンエルスの後方頭上のポジショニングを一瞬で取った。

 

 ジェット噴射の一部が壊れて螺旋状にくねくねと飛ぶスペースシャトルのような、凄まじい速さと蛇行する飛行機動のコラボレーション。

 初見の人間では、まず目で追えない、曲線の芸術であった。

 

『反応がおせえ!』

 

 エヴィデンス01は反応が遅れ、ノーネイムはその脳天に右腕ガントレットが発する大型ビームサーベルを振り下ろす。

 後ろも見ないまま、ターンエルスはそれを大剣で防ぎ、肩関節も肘関節も真っ当でない腕で、前に振り下ろすのと同速度で後方頭上のノーネイムに剣を振り上げる。

 

 異星人の概念で作られた、異星の常識の関節による異形斬撃。

 少し前まではレベルが低かったエヴィデンス01の近接技能は、モモの特訓によってかなりのレベルに到達していた。

 だが、シバもさるもの。

 冷や汗をかきながら大型ビームサーベルでそれを受け流し、その勢いを殺さず空中で素早く一回転、ターンエルスの首部分へと強烈な蹴りを叩き込んだ。

 

 だが、効かない。

 ノーネイム、全高17.53m、重量52.1t。

 ターンエルス、全高20m、1万t。

 『人型ロボの重量の常識の違い』が、近接格闘の効力を軽減する。

 ターンエルスの追撃の大剣一閃をかわし、ノーネイムは一旦距離を取った。

 

『チッ』

 

『これは……で、あれば、油断すると一瞬で負けるな』

 

 一度の交錯で、両者は互いの強さを感じ取る。

 シバは異星人の異様な強さの質を。

 エヴィデンス01はシバの鍛え上げられた歴戦の戦士の強さを。

 それぞれ感じ、考えていた戦術を修正した。

 

『……ああ、なるほどな。

 テメエ、そういや人間じゃなかったか。

 そりゃあ、目が二個しかねえ人類とは視点の持ち方が違えよな』

 

『何、今は君達と同じ二つ目(フタツメ)だ。言うほどの差はない』

 

『言うじゃねえかァ!』

 

 アストレイノーネイムの右半身を覆うノーネイムユニットが、揺れる。

 ノーネイムはターンエルスの周囲を円を描くように回り始める。

 凄まじい飛翔速度だ。

 ターンエルスの射撃をかわしつつターンエルスの側面か背面を取り、そこから一気に仕留めるという算段だろう。

 

 だが、エヴィデンス01はただ直進しているだけなら、いかに速くとも当てられる。

 彼は今のアバターに縛られてはいるが、本来光速の世界の住人だからだ。

 GBNではビームライフルとして扱われる原子破壊光線銃の照準を0.01秒とかからず合わせ、ターンエルスは引き金を引く。

 ビームがノーネイムに向かって直進し―――雨を払うマントが如く、ノーネイムユニットに弾き散らされた。

 

『……! そういうことか!』

 

 エヴィデンス01は左腕を8のファンネルに分解する。

 8つのファンネルを周囲に浮かし、右手で持ったライフルと同時に九門同時の精密射撃。だがしかし、九本のビーム全てが当たっても、ノーネイムユニットに弾き散らされてしまう。

 水鉄砲の原理で撃ち出されるのが宇宙物理学で解釈されるビームなら、その光景は防水加工されたマントが水を弾くような光景であった。

 

 エヴィデンス01は、初手でノーネイムがマントを前に構えるようにして突っ込んで来た理由を理解した。

 普通にビームで迎撃していたら、あそこで終わっていたかもしれない。

 

『耐ビームコーティング。で、あるな』

 

『テメエのガンダムは武装が偏りすぎてんだよ!』

 

 ノーネイムユニットが防御形態"Dエクステンション"から、射撃形態"Bスマートガン"に変形し、凄まじい極太のビームが発射された。

 光の柱が、ターンエルスに迫る。

 

 ターンエルスは瞬時に分離し、バラバラになった両手足と小さくなった胴体を飛ばして『どこに本体があるか』をごまかし、一瞬混乱させ、ビームの横に回って回避する。

 光の柱をかわす、無数の銀色の流星。

 GBNの空を駆け、銀色の流星はノーネイムを包囲せんとする。

 

 だが、追いつけない。

 スラスターを全力で吹かしたノーネイムに、ターンエルスのファンネルはまるで届かない。

 ガンプラの出来が良いからか、元のMSの特徴を伸ばしているからか、飛行速度が非常に速く、ターンエルスのファンネル速度では追いつけないのだ。

 これではファンネルは、ターンエルスの背中を追いながらビームを撃つしかない。

 そして一方向からのビームなら、ノーネイムはノーネイムユニット一つで防いでしまう。

 

 32のファンネルの一斉射撃を鋼鉄のマントが打ち払い、光の粒子が空に舞う。

 

 ここはGBN。

 ガンプラへの愛が力になる世界。

 "それ"を見せつけるように、ノーネイムは凄まじい基礎性能を見せつけていた。

 

『テメエの周りの奴は初心者のお前を気遣ったのか?

 それともテメエの穴を共闘で埋めてやればいいとでも考えたのか?

 だが俺は言ってやる! テメエのガンプラは初心者の域を出てねえんだ!』

 

 ターンエルスはファンネルを戻し、手足を再構築。ビームライフルでの狙撃を始めたが、ノーネイムのノーネイムユニットが一振りされるだけで打ち払われる。

 ターンエルスが接近しようとしても、速度が足りない。

 返しの反撃――ノーネイムの高威力ビーム――が回避するターンエルスに当たりかけ、エヴィデンス01はにっちもさっちもいかなくなってしまった。

 

 ターンエルスに搭載されている遠距離武装は、GBNの仕様上、ビームしかないのだ。

 なら、もう届かない。

 もしもライトバトル設定のダメージ許容値がもっと低かったなら、攻撃がかすった程度のダメージで、エヴィデンス01は敗北判定になってしまうだろう。

 こんな勝ち目のない攻防を何度も繰り返していれば、いつかは負ける。

 

 打てる手はなし。

 すなわち詰み。

 劇的な一手もなく、勝敗を懸けた博打もなく、徹底した対策もなく、シバは『経験値と経験値を元にしたガンプラ作り』のみでエヴィデンス01を完全に圧倒していた。

 

 たとえ、地球そのものを一撃で砕いてしまうような上位生命が相手でも。

 ガンプラバトルでだけは、負けない。

 ガンプラへの愛でだけは、負けない。

 そんなシバの心の熱が、意思の圧が、エヴィデンス01とターンエルスを押し込んでいく。

 

『相互理解のための戦い!

 ハッ、かっこいいお題目だなァ!

 だがそいつは"勝つための戦い"じゃあねえんだろうが!』

 

『くっ』

 

 エヴィデンス01は回避に徹し、シバの焦りを誘おうとする。

 だが、エヴィデンス01の攻撃の圧力が失せたことで、ノーネイムはBスマートガンの狙いをより正確にしてきた。

 当然だ。

 一方的に撃っていられる状況ほど楽なものはない。

 ターンエルスはエヴィデンス01の桁外れに高い思考能力で回避を続け、かわしきれず、盾で受ける……が。あまりの威力に、盾が軋んだ。

 シバとノーネイムは速く、巧く、そして強い。

 

『重い……!』

 

『テメェはコミュニケーションに興味はあってもガンプラバトルに興味がねえんだよ!』

 

『!』

 

『遊びならまあいい!

 遊びでやってる奴らの中に混じってろ!

 だが本気の奴らの中にそのガンプラで混じってくんじゃねえ!』

 

 背後の地面スレスレから急浮上してくる刃の存在を感知し、ターンエルスはぐるっと体を回して盾で受け流す。

 それは赤銅色の、刃の如き飛翔体だった。

 切り返して再度突撃してきた赤銅色の飛翔体を再度かわし、同時に両手両足を分解してバラバラに飛ばすことで、ノーネイムのビームもなんとかかわした。

 

 目を凝らせば、Bスマートガンの一部が分離し、ファンネルのように飛び回っている。

 否。

 ノーネイムがガンダムSEED系の機体であるなら、挙動がファンネルであっても、これはファンネルではない。

 普通の初心者のガンプラであれば一撃で粉砕可能な威力を纏い飛び回っているこれは、ファンネルとは似て非なるもの。

 

『……ファンネル、いや、ドラグーンか』

 

『無自覚なエンジョイ勢が混ざってくると、誰にとってもよくねえんだよ!』

 

 シバ・ツカサは、GBNが生まれる前からガンプラバトルをやってきた。

 彼の中には、無尽蔵のガンプラバトル経験が詰め込まれている。

 ガンプラバトルを見ているだけで、見込みのある人間を見極められる。

 直接戦えば、相手への理解を進めることができる。

 なればこそ。

 

 エヴィデンス01の知能と能力、ターンエルスの性能があれば、ここまで攻勢が弱いはずがないということを、シバは理解していた。

 

『相手を傷付ける時だけ僅かに手控える!

 それで"壁"を越えられるわけがねえ!

 加害者になる自分が怖いか? ビビってガンプラバトルから逃げてんじゃねえぞ!』

 

『―――』

 

『やるならやる!

 やらねえならやらねえ!

 自分で決めろ! 決めたら踏み出せ! 迷うな!』

 

 エヴィデンス01は、自分が嫌いだ。自分の生まれが嫌いだ。自分の種族が嫌いだ。

 加害者であった過去の自分も、加害者で在り続ける一族も憎い。

 彼は上位生命が他知的生命体を攻撃することそのものに嫌悪感がある。

 だから自分の一族に攻撃する分には迷いがない。

 だが、地球人戦う時、その攻撃にほんの僅かな迷いが出る。

 それはほとんどの者が気付きもしない、ほんの僅かな躊躇いだった。

 

 裏事情を知り、豊富なガンプラバトル経験を持ち、"真剣勝負にこだわる"シバだからこそ、それに気付き、それを指摘する。

 戦いとなればテンションが上がるのがシバの癖だが、その言葉に更に熱が乗った。

 

『ガンプラバトルは!

 誰かを殺す戦争じゃねえ!

 皆が適当にやってるヌルいお遊びでもねえ!

 本気でやんだよ!

 ゲームだから本気でやるんだろうが!

 本気でやるから最高に楽しくて、最高に悔しくて、最高に夢中になれる!』

 

 ノーネイムの一方的なビームの連射を大剣で切り払いながら、エヴィデンス01はシバの言葉に耳を傾ける。

 

『お前が本気を出して敵を倒しても文句は言われねえ!

 遺恨も残らねえ! 恨む方が悪い! それがガンプラバトルだ!

 本気を出せ、エイリアン野朗!

 地球人相手だからって手ぇ抜いてんじゃねえ!

 相手の本気を本気で受け止めろ!

 自分の本気を受け止めてもらえ!

 本気の本気を見せて始めて、テメエのことを分かってくれる相手ができる!』

 

『……!』

 

『額面上の"戦いの中で分かり合う"を知っただけで、相互理解なんてできるかよッ!』

 

 転がるようにビームをかわすターンエルス。

 

 シバの熱が伝わるように、熱さに心が引きずられるように、エヴィデンス01の声に熱が入った。

 

『―――言いたいように言ってくれるな!』

 

 メイやモモが引き出した"エヴィデンス01の地球人のような感情"が、ここに来てようやく熱と共に出てきたことに、シバは人知れずほくそ笑んだ。

 

 ターンエルスのビームが飛び、ノーネイムユニット防御形態Dエクステンションがそれを弾く。

 ノーネイムユニットは瞬時に変形、射撃形態Bスマートガンとなってビームを放つ。

 それをターンエルスが盾で防ぐ間に、シバはノーネイムユニットを背中に回した。

 盾になるマント、強力なビーム砲、その二つに次ぐ第三の形態―――ノーネイムのシステムフルアクト、Xコネクトへと変わった。

 

 マントであったはずのものが、砲塔であったはずのものが、背にて広がる翼となった。

 翼は一部を切り離し、それらがブレイドドラグーンとして飛び回り始める。

 防御の外套、攻撃の砲、全力の翼。

 単一の武装ユニットを次々変形させ、一つの武器だけで無駄なく多くの仕事を完遂するその万能性に、それを形にする設計製造技術に、エヴィデンス01は舌を巻く。

 

 これは、道具の概念を持たない鯨の民からは決して生まれない兵器概念である。

 エヴィデンス01はシバのノーネイムが新たな強さを見せるたび、ターンエルスの汎用性の低さという弱点に気付かされる思いであった。

 5つのブレイドドラグーンが、ターンエルスの首に迫る。

 

『こちらもだ!』

 

 ターンエルスも両手足をバラバラにしてファンネルフル展開で対抗する。

 が。

 32のファンネルが、5つのドラグーンに押し込まれていく。

 

 このブレイドドラグーンは、耐ビームコーティングがなされたノーネイムユニットの一部が分離したもの。

 つまり、このドラグーンにもビームは効かない。

 撃ち落とすことは不可能だ。

 ブレイドドラグーンは体当たりでファンネルを次々蹴散らしながらターンエルスの本体を狙い、異星常識によって作られた頑丈で重いファンネルがそれを妨害する。

 

 赤銅の刃が空を駆け、32の流星が銀河を作る。

 平凡な地球人の目では到底追いきれない、ファンネルとドラグーンの泥臭い体当たりの応酬。

 響く金属音が、まるでロックンローラーのライブ会場の如く騒音を鳴り響かせる。

 

 エヴィデンス01の思考能力、情報処理能力は、このアバターでも非常に高い。

 32のファンネル全てを同時に生物的に操ることができるのは、地球人の脳の処理能力を考えれば絶対的に不可能だ。

 なのに、押されている。

 なのに、ブレイドドラグーンが推している。

 経験を下地にしているシバは戦術的な思考をしてはいるが、ドラグーンの操作を経験則と反射でやっている。所要時間はほとんどない。

 対し、エヴィデンス01は反射的な操作を一切行わず、全てのファンネルの動きを細かく思考し、全体的な動きも計算しながら動かしている。ゆえに、全てが思考。

 

 シバは『反射と思考の融合』によって、エヴィデンス01との生物的格差を凌駕しているのだ。

 

 知恵が、経験に圧倒されている。

 

『くっ』

 

 エヴィデンス01は考える。

 シバは明確に格上だ。

 初心者や中級者ではまず勝てず、最上位ランカーでようやく勝負になるレベルだろう。

 だがこれはライトバトル設定。

 一撃当てればいいのなら、まだやりようはある。

 

 必要なのは、最低三手。

 シバが"予想外の一手を打ってくることを想定している"のなら、そこを詰めるのに一手。

 そこからシバの予想を外して攻撃を叩き込むのに一手。

 だがそれだけで終わらせるべきではない。

 "シバ・ツカサならば二手では足りない"―――そう、彼の量子演算が答えを出す。

 ならば、トドメの一手が必要となる。

 

 戦闘者としての才覚に溢れた者なら、追い込まれてからの爆発力でどうにかなるだろう。

 だがエヴィデンス01は、過去に自分がそういう風に勝った記憶がない。

 記憶にある勝利のほとんどは、絶対的な強者として蹂躙したものばかり。

 ならば。

 考えるしかない。

 考えに考えて、シバの予想を超える三手を打ち込むしかないだろう。

 

 この恐ろしいくらいに愛が込められたガンプラに勝つには、他に道がない。

 

『ガンプラを愛してねえ偽物は!

 俺には絶対に勝てねぇんだよ!

 俺に勝てるのは……ガンプラを愛してる奴だけだッ!!』

 

『!』

 

 ドラグーン、ファンネルが、両者の手元に戻り、エネルギーを補充する。

 そこから、別種の戦闘の展開が始まった。

 

 ノーネイムが接近して来たため、反射的にターンエルスは大剣を振り下ろすが、ノーネイムはするりとかわし、少し距離を取り、また接近する。

 距離という優位を捨ててまで接近する理由が、エヴィデンス01には分からなかった。

 だがすぐにそれを理解する。

 

 ノーネイムが離れようとすればターンエルスは追いつけない。

 ノーネイムが接近するフェイントを見せれば、ターンエルスは反応するしかない。

 ブレイドドラグーンと、ノーネイムが左右に持ったビームサーベルを織り交ぜられると、ターンエルスは反撃にも回避にも窮してしまう。

 

 両機の距離は50m。

 20mの体躯で50m。

 遠距離でも至近距離でもない絶妙な距離で、ノーネイムはターンエルスを翻弄する。

 ターンエルスが距離を詰めれば離れ、ターンエルスが離れようとすれば近付く。

 ターンエルスの大剣が届かない距離と、ノーネイムのビームサーベルが届く距離を、ノーネイムは巧みに行ったり来たり。なんともいやらしい立ち回りだ。

 

 これが、"機動力に差がある"ということ。

 機動力がGBN最上位レベルのガンプラを使うリクが、並大抵の敵には負けない根源的な理由であった。

 

 まるで乱暴な教師のように、戦闘と暴力という教導で、シバがエヴィデンス01に『ガンプラバトルの戦いの理』を教え込んでいくような、そんな攻勢。

 結果論ではあるが、それはもはや教導だった。

 

『愛があるとは、口が裂けても言えない。

 私に地球人と同じ心が備わったとは到底言えない。

 ……で、あるが。それでも! 三度も! 応援された上で負けていられるものか!』

 

『熱くなってきたじゃねえか!

 ……感情も無さそうなエイリアンにはもう見えねえなァ!』

 

 声が聞こえる。

 ずっと聞こえている。

 モモの声。

 応援してくれている声だ。

 何度も応援してもらった。

 なのに、そのたびに負けた。

 悔しいだのと、悲しいだのと思う前に―――情けなかった。

 

 男が奮い立つ理由は十人十色、千差万別。

 シバのように本気で挑んで本気で負けて本気で悔しがるのも男。

 女の子に応援してもらっておきながら負けた、その気持ちが燻るのもまた男である。

 シバの叱咤、モモの応援が、エヴィデンス01に熱を加えていく。

 

 チリチリと火に炙られるように熱が入っていく戦いを、コウイチが微笑み見守っていた。

 

『テメエがメイの言った通りの奴なら!

 そこで叫ぶ言葉はそうじゃねえだろ!

 テメエも自分のガンプラを愛してるなら、その愛を、"好き"を叫んでみろや!』

 

『愛している……好き?

 私が?

 ターンエルスを? この、私のガンプラを?』

 

『そうに決まってんだろ!』

 

『いや……私の中に道具を愛でる概念は……そんなものは今まで……』

 

 ノーネイムはノーネイムユニットを背中から右腕に移動、XコネクトをDエクステンションにシフトし、マントを巨大な爪ある手に変形させる。

 それは、怪物の爪にしててであった。

 地球から4.2億光年離れた彼方にあるおたまじゃくし銀河の向こう、宇宙怪獣の生息地帯に住まう、"彗星の爪の民"に似た爪―――そう思った時には既に、エヴィデンス01も動いていた。

 

 エヴィデンス01は瞬時に左腕両足を分解し、四肢三つ分のファンネルを右腕に合体、"彗星の爪の民"と同じ形の爪を作り出し、鏡合わせの如くぶつける。

 経験が作り上げたガンプラに、知性で対抗する一撃。

 轟音が鳴り響き、衝突音が周囲の大地の砂を巻き上げ、葉を揺らす。

 

『そのガンプラの顔はどうした? 一瞬で思いついたか?』

 

『……いや、よく考えた。

 地球人が見るだけで発狂するものは選ばないように。

 だが、地球に存在するフェイスデザインを模倣しようとは思わなかった』

 

『そのファンネルの手足を思いついた時はどうだった? 無感情じゃねえだろ』

 

『……で、あるな。地球に合わせた形で、私の知識を落とし込めたのは、嬉しかった』

 

『ガンダム作品見直しただろ?

 見たシーンを思い出してただろ?

 どんなガンプラを作るかあれこれ考えただろ?

 その過程が楽しくなかっただなんて言わせねえぞ、クソエイリアン』

 

『……ああ。で、あるからこそ、このターンエルスが出来上がった』

 

『ターンX。ガンダムレギルス。ELS。全部ピンときたから組み込んだんだろうがよ』

 

『そうだ』

 

 ガキンッ、と音が鳴り響き、爪と爪がぶつかり合う。

 振り下ろされる錆びた赤銅の爪。

 振り上げられる白銀の爪。

 縦横無尽に振るわれる爪はバーチャルの大気を裂き、大地を捲り上げ、暴風なのか爆風なのかも分からない豪快な衝突音を響かせる。

 

『もっとテメエの愛したガンプラを見ろ!

 戦いを見て、周りを見て、ガンプラを見ろ!

 そうしてりゃこんなビームばっかのままの機体のままにはならねえ!

 フォースに入ってもねえソロの奴のガンプラがこうはならねえ!

 "こうした方が良い"っていう改造をしてるはずだからなァ! 分かるかエイリアン!』

 

 ガンプラは心の鏡。

 適当に作ったガンプラも、本気で作ったガンプラも、見れば分かる。

 初心者ゆえに最初にバランス悪く作ってしまった機体も、最初に作ってそれっきりだった機体も、ガンプラバトルを繰り返すうちに改造を繰り返された機体も見れば分かる。

 シバほどの者になれば、異星人の心を言葉によって理解することはできなくとも、ガンプラを見て理解することはできる。

 

 地面を足で踏み締め、ノーネイムが全力で爪を突き出す。

 空を胴体で踏み締め、ターンエルスが全力で爪を振り下ろす。

 爪と爪が衝突し、『踏ん張りの質』の差で、ターンエルスが弾き飛ばされた。

 

『テメエのガンプラが! テメエにもっと信頼されたがってんだろうがッ!!』

 

『―――』

 

『自分の中の"好き"を自分で否定してんじゃねえ!

 ここはGBNだ!

 テメエのガンプラを好きだって気持ちを否定すんな!

 信じろ! 自分の内側に在るもんを!

 テメエがガンプラを愛してることを自覚すりゃあ、お前のガンプラはまだ強くなる!』

 

 ターンエルスの鋭い反撃を後退してかわしつつ、ノーネイムユニットを背中に回してXコネクトにシフトし、シバは声を上げる。

 その声が、エヴィデンス01の内側にまでよく響く。

 

 距離を取られれば、ターンエルスには為す術がない。

 

『……理解できない主張だが、胸に響く!

 で、あれば! この胸に留め! 検討しておく!』

 

『ハッ! 負けた後存分に悔しがって、叫んで、反省を活かして改造でもしてなァ!』

 

『いいや、勝つのは―――』

 

 そう、思われていた。

 

 だが、違う。

 

 この位置にこそ勝機があった。

 

『―――私だ!』

 

『!?』

 

 その一瞬。またしても、経験と知性がしのぎを削る。

 

 ターンエルスを正面に捉えながら後退するノーネイムの背中側に、ビームが飛んだ。

 意表を突く一撃。

 完全に意識外の一撃。

 しかしセンサー込みでよく作り込まれたノーネイムはその奇襲に即座にアラートを鳴らし、シバは反射的にノーネイムユニットの羽を広げながら素早く下ろした。

 広げられた鉄の羽が振り下ろされ、ギロチンのごとくビームを切り散らす。

 

 アンチビームのノーネイムユニットがXコネクトである時、背後からのビーム攻撃は有用性を失ってしまう。

 歴戦の戦士が背中の守りを疎かにするわけがない、ということだ。

 しかし、何が起きたのか。

 シバは警戒を怠ってはいなかった。

 なのに背後から奇襲のビーム。

 ありえぬ奇襲。

 存在しない虚空からの攻撃。

 一対一でそれを如何ようにして為したのか、シバは一瞬で理解し、驚愕していた。

 

『仕込みファンネルだと!?』

 

 ターンエルスの手足はやや長い。

 その両手足をそれぞれ八分割し、ファンネルとすることが可能なのがターンエルスである。

 ゆえに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、地面に潜ませていた。

 腕の長さの長短の変化は分かり難く、身長の変化は足の長さの1/8。

 これでは動き回る戦闘中に分かるはずもない。

 

 両手足から一つずつ引き抜いたファンネルを設置し、そこから狙える位置にノーネイムが来るまで根気強く待つ。

 これが第一手。

 初手は成った。

 ここにきて初めて、シバの目線がターンエルスから外れた。

 

『ターンエルス!』

 

 地面に設置したファンネルが4つ。

 ターンエルスは右腕にファンネルを8つ固め、右腕を作る。

 そして残る20のファンネルを自分の後ろに配置し、右腕で大剣を強く握った。

 

『―――応えろッ!!』

 

 叫ぶようにターンエルスに呼びかけると、ターンエルスのカメラアイが輝く。

 

 背面に構えられる大剣。と、同時に、20のファンネルが光を吐いた。

 

『!?』

 

 シバが驚く間もなく、瞬時にターンエルスが両者の距離を0にする。

 

 これは、ガンダムSEEDのスターゲイザーガンダムのそれと同じ。

 "ビームによる推進"だ。

 背中に大剣を構え、そこにビームを受けることで通常ありえないほどの加速を得て、シバの予想外の急加速で接近したのである。

 ガンダムSEEDのような光の帆の翼(ビームセイル)ではない、地球外の概念により構築された大剣を帆とする、『メタルセイル』にビームを受けた極超音速移動。

 

 初見であれば、SSランクダイバーですら敗北必至の反則奇策。奇形の二手目。

 

『舐めんなァ!』

 

 だが、シバは瞬時に右腕のガントレットからビームサーベルを出力し、極超音速の一撃を受け止める。

 なんという反応速度か。

 が、シバ本人も"もう一度やれ"と言われたところでできないだろう。

 経験が蓄積された体が勝手に動いただけで、頭で考えたわけではない。

 見ようによっては運良く成功した防御、別の味方をすれば経験が生んだ必然。

 エヴィデンス01の『予想外の二手では足りない』という思考は、正しかった。

 

 そして、ここから最後の一手を詰める。

 

 エヴィデンス01は最後の一撃を何にするか決めていた。

 ビームライフルを直接突き込んでの距離零射撃。

 ライフルを物理的に叩き込みながらフルパワーでビームライフルを発射し、それによって決め手となるダメージを与える。

 大剣を防御することに意識が行っているノーネイムなら防げまい……という算段だ。

 

 流れの計算は完璧にできた。

 完璧に先も読み切っている。

 予定していた攻撃の組み立ても完璧に成功した。

 しからば統計的に勝率が最も高くなる完璧な道筋をなぞれたと言える。

 あとは完璧な形で最後の一撃を撃てばいい。

 エヴィデンス01は大剣を手放し、背中側のマウントにセットしたライフルを掴むべく、背面に手を伸ばし。

 

 

 

―――"完璧なあなた"になんてなる必要はない。

 

 

 

 ふと、ヒロトの言葉が、頭をよぎった。

 

 選択肢が、二つあった。

 完璧な選択肢と、それを投げ出す選択肢があった。

 "完璧なあなた"と、"完璧でないことで何かを守れるあなた"の、どちらにも成れた。

 一瞬の逡巡もなく、エヴィデンス01はヒロトの言葉を信じ、選んだ。

 

 エヴィデンス01が背面のライフルを掴み、エネルギーを注ぐ。

 同時、Xコネクト状態だったノーネイムユニットが変形し、Dエクステンションに戻る。

 エヴィデンス01が銃を撃つのではなく、投げる。

 同時、Dエクステンションがノーネイムの前面を守り、その合間からビームサーベルを出す。

 

 エネルギーを込められて投げられたライフルが、Dエクステンションの合間から突き出されたビームサーベルに衝突し、爆発した。

 

『!?』

 

 エヴィデンス01が完璧な自分を選んでいたなら、ここでライフルによる攻撃は防がれ、Dエクステンションの合間から突き出されたビームサーベルに貫かれて負けていただろう。

 ここまでの戦いの中で、経験豊富なシバは無意識にエヴィデンス01の攻撃リズムに合わせて自分の攻撃感覚を調律していた。

 完璧を選び、最適解を選ぼうとするエヴィデンス01に、完璧なカウンターを合わせることが可能であった。

 エヴィデンス01が完璧な攻撃を選んでいたなら、勝っていたのはシバだっただろう。

 だが、そうはならなかった。

 

 爆発したライフルがノーネイムにたたらを踏ませ、爆炎と爆煙が視界を塞ぐ。

 三手目は目くらましに終わる。

 そして、四手目が放たれる。

 

 炎と煙を切り裂いて、光の刃が軌跡を描いた。

 

 エヴィデンス01の手に握られた"ビームサーベル"が、ノーネイムの顔面を覆うフェイスガードを両断し、それがカランッと地に落ちる。

 

『オイ……テメエ……なんだ、そりゃ』

 

『以前、メイと共に強敵と戦った。

 その時、メイからビームサーベルを一本借りた。

 それがトドメになった。

 戦いの後、私は彼女からそのデータを譲り受けた。

 お守り代わりだと。近接武器をもう一つ持っていてもいいと。

 そう言われて彼女から貰った、隠しの奥の手。借り受けた剣だ』

 

『……ああ、なるほどな』

 

 選択肢が、二つあった。

 確かなものを信じて完璧な戦術を組み立てる選択肢と、不確かなものを信じる選択肢。

 エヴィデンス01は的中確率の高い未来予測ではなく、不確かな友情を信じた。

 

 シバは深く深く息を吐き、GBNが表示する敗北の通達をじっと眺めていた。

 

『そのビームサーベルは、俺がメイに持たせたやつだ。

 あいつのモビルドールを設計した時に俺が持たせた。

 ……ハァ、クソ、因果だな……ったく、あのひよっこは……』

 

『……』

 

『オイ、どうだ?』

 

『?』

 

『楽しいだろ、本気と本気を全力でぶつけ合うガンプラバトル』

 

『……で、あるな』

 

 通信越しに敗北を悔しがる少し不機嫌なシバの声が聞こえて、その直後、クックックッと笑うシバの声が聞こえる。

 

 悔しがりながら楽しそうに笑うシバが理解できなくて、エヴィデンス01は首を傾げる。

 

《 BATTLE ENDED WINNER EVIDENCE01 》

 

 分からないことは多いけれど。

 画面の表示を見て自分の心が浮き立つ理由は、エヴィデンス01にも理解できていた。

 

 GBNに来て、初めて普通のガンプラバトルで勝った瞬間。

 全ての初心者が味わう"GBNに心底夢中になる瞬間"を、彼もその身に感じていた。

 

 

 

 

 

 飛び上がるように、モモが喜ぶ。

 

「よっしゃー! エビちゃーん!

 よくやったー! かっこいいよー!」

 

 モモがコウイチの隣からエヴィデンス01の下に全力で駆け寄っていき、入れ替わるように戻って来たシバハロがコウイチの隣に腰を下ろした。

 

「お疲れ様、ツカサ」

 

「フン」

 

「……リクくんには感謝しないとね」

 

「あ? 何がだ?」

 

「すっかり昔のツカサに戻ってる。

 再会してすぐの頃は一瞬ツカサだと思わなかったしね」

 

「ケッ」

 

 エヴィデンス01は言った。

 シバは心配しているだけだと。

 コウイチは言った。

 シバは自分の好きなものには過保護だと。

 

「メイちゃんの話聞いて、好ましくは思ってただろ、お前も。

 ……メイちゃんと急に仲良くなったからってチンピラみたいに絡んでたのも本心だろうけど」

 

「んなわけねえだろ」

 

「でも、メイちゃんの珍しい語りを見て不安になった。

 実際に出て来た彼を見てちょっと不安になった。

 心配になったんだろう?

 彼らが、人間もGBNもよく知らないことが。

 人間を知らない善良な異星人とELダイバーは、人間に騙されやすいだろうから」

 

「心配なんてしてねえよ」

 

 試すような戦いであり、視界を広げるような戦いだった。

 

 これがライトバトル設定でなければ、シバ・ツカサが全力を出して最初から仕留めに行っていたら、勝敗はわからなかっただろう。

 

 シバはGBNの仕様を利用して、エヴィデンス01を一人で胴上げしているモモ、無表情でなすがままにされるエヴィデンス01を遠目に眺める。

 

「心配なんてする必要もねえ奴だ」

 

 余計なお節介をした、と、シバは思う。

 口には出さないが。

 能面のような顔をしたエヴィデンス01の手を引き、モモがシバの前まで駆けてくる。

 

「わっはっは! どうよ! エビちゃん初勝利!」

 

「そうかよ。よかったな」

 

「んふふ、やっぱりベテランは気遣いの鬼だよね。

 流石コーシバコンビ。メイちゃんの代わりに私がお礼申し上げます!」

 

「……」

 

 チッ、とシバが舌打ちする。

 こういう感情の機微には敏く、察しがいいのがモモという女の子である。

 こういうこの純真な目線を向けられると、コウイチは"もっとちゃんとしないと"と思うし、シバは"過大に見るな"という風に舌打ちして顔を逸らすのだ。

 

「ツカサが戦ってる間にデータも取っておいたよ。

 微調整も済んだ。彼用のモビルドールはすぐにでも動かせると思う」

 

「そうか。おい、エイリアン」

 

 シバとエヴィデンス01の視線が交わる。

 

「GBNは何もかもが気に食わねえ。

 気に食わねえ。

 気に食わねえが。

 ……GBNは、テメエの"好き"を受け入れられないほど、小さい世界じゃねえ、らしいぞ」

 

 エヴィデンス01は、深々と頭を下げる。

 

「御指導御鞭撻、感謝する。

 新たな出会いに宿る価値の心臓とは、互いを知ること。

 そして互いに教え合うことだと私は考えている。

 で、あれば、このひとときにも黄金の価値があった。

 感謝しよう。星の彼方で君と出会えた運命を喜ばしく思う」

 

「堅苦しいんだよ」

 

 分かり合った確信があった。

 繋がり合った実感があった。

 エヴィデンス01とシバの間に、星々の海を越えた相互理解が生まれる。

 

「ガンプラバトルで分かった。

 テメエは不器用なやつだ。

 悪い奴じゃねえんだろうが、器用でもねえ。

 ……異星人なのも相まって、誤解を招くことも多いだろうな。

 だが、一線交えりゃ分かる。お前はメイのやつに指一本触れちゃいないだろう」

 

「いやメイの胸は揉んだな」

 

 しばのびーむきゃのん!

 

 こうかはばつぐんだ!

 

 えゔぃでんすぜろわんはひんしになった!

 

 

 

 

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