エスパー幼女   作:メノメノ

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遅くなってすみません


雪崩

メアたちがルフィとナミ、サンジを見送ってから幾分か時間が経った。

 

「大分激しくなってきたな…」

 

吹雪は止むどころか激しさを増している。

 

うぅ…さむい…

 

さすがにメアもこの吹雪には寒そうに震えている。

 

「(ナミさん…どうか無事で…)」

 

ビビは心の中で祈りを捧げる。ドルトンはその様子をジッと見ていた。

 

「君たちは一体何者なんだね?」

 

「何者って…」

 

「医者も無しでたった六人で旅をするなんて、あまりにも無謀だ。」

 

「俺たちゃ海賊さ。だからアンタたちも銃を向けたんだろ。まぁ人数は少ないけどよォ、この勇敢なる海の戦士ウソップ様がいる限り問題はな『かいぞくだよ!』」

 

「ほぉ…」

 

「でも確かに医者が欲しいことは欲しい。この島でそういうヤツを仲間に出来たらって思ったりもしたんだけど、医者があの城に住む魔女たった一人とはなァ…」

 

「…不思議な組み合わせだ。どうも私たちの想像する海賊とは違うようだ。」

 

『そうかな?』

 

「ドルトンさん!ドルトンさん!」

 

ドルトンに声を掛けたのは、ウソップとルフィがハイキングベアと間違えたおばさんだ。またもや一礼をしているウソップをメアはジト目で見る。

 

「やぁ、これはどうも。」

 

「あなた、Dr.くれはを探してるんですって?」

 

「えぇ、その通りです。が、病人はもう…」

 

「丁度今ね、隣町のココアウィードに来てるらしいわよ!」

 

「「「『なんですとーー!?!?』」」」

 

「それじゃすれ違いかよ!?!?」

 

メアはナミが医者に診せるまではどうにかもってほしいとだけ願う。一同は急いでソリに乗り、隣町のココアウィードに向かった。

 

「スマン、私のミスだ。」

 

「「え?」」

 

「昨日ドクターが山を降りてきたという情報があったもので、もう数日下山は無いと踏んでいたんだが…」

 

「気にすんな!アンタのせいじゃねーよ!」

 

『そうだよ!どるとんさん、いいひとだよ!』

 

「問題はルフィとサンジの異常な体力だ。俺たちが今更雪山を追いかけたところで、とても追いつけねェだろうぜ。」

 

「そのココアウィードって町に魔女がいるんなら、頼んで至急城へ帰ってもらうんだ!」

 

「えぇ、そうね。それ以外方法が無いわ。」

 

「…許してくれ、医者すらままならんこの国を。」

 

「そ、そんな別にドルトンさんが謝ることじゃ無いわ。」

 

「そうだぜ!」

 

『そーだよ!』

 

「……急ごう!!」

 

ドルトンは過去に一体何かあったのだろう…メアは時折暗い表情を見せる彼を心配そうに見ていた。

 

「アンタ、アンタこそ何者なんだ?ただの村人なんかには見えないぜ。アンタの話し方には軍人の匂いがする。」

 

「……私は元国王の、ワポルの部下だったのだ。」

 

「「『!?!?』」」

 

話を聞けばどうやら彼は先代の国王の時代より仕える国の守備隊の隊長だったようだ。だか国王が亡くなり、息子のワポルが王の座に就いたとき、この国は変わってしまったらしい。ワポルは思い付きで二十名の優秀な医者だけを残し、その医者たちをイッシー・トゥエンティと名付け、それ以外の医者は国外へ追放する法律を作り出した。

 

「それじゃあ、病気になったヤツはワポルに縋ってそのイッシー・トゥエンティに診てもらうしかなかったのか!?」

 

「法外な治療費を払ってな。」

 

「それでは国民の命を人質にとって国を支配してるのも同じ…!!そんなのは政治なんかじゃない!!犯罪だわ……!!」

 

『びび…』

 

国民を第一に思う彼女からしてみればこれはとんでもない卑劣な行為なのだろう。いやビビでなくともこの行為は許されざるものであると思う。

 

「(やはりな…間違いない…!)」

 

 

 

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「はあああああぁぁぁぁぁ!?!?何だって!?!?もうこの町を出たって!?それもついさっきだって!?!?」

 

『ありゃりゃ…』

 

「さっき僕の病気を治してくれたんだ!」

 

見れば足に包帯を巻いた少年がソファの横になっている。その表情は元気そうだ。確かに医者として優れているらしい。

 

「ドクターを探してるのかい?ドルトンさん。」

 

「急患なんだ。ドクターの行き先を知らないか?」

 

「Dr.くれはならギャスタの方へ向かったと誰かが言ってたぜ。」

 

「ギャスタへ!?」

 

「どこだ、それ?」

 

「ビッグホーンを挟んでこの町とは反対の方向にある町だ。」

 

「またすれ違いかよ!?」

 

「スケートの盛んな町だ。」

 

「いやそれ関係ないから!聞いてねェし!」

 

「落ち着いてウソップさん!とにかく行きましょう、ここまで来たら迷ってる暇は無いわ。」

 

どうやらまたすれ違いになってしまい、それでも追いかけるしかないとビビは言う。

 

「ドルトンさん!!ここにいたのか……」

 

「君は…確か今日は見張り役では…」

 

「うぅ…」

 

突然怪我だらけの男が入ってきて倒れそうになる、が間一髪、ドルトンが支えこむ。

 

「どうした!?何事だ!?この酷い傷はどうしたというのだ!?」

 

「…俺以外の見張りは全員やられちまった…」

 

「何!?」

 

「突然…海岸から潜水帆船が現れて…みんなアイツらにやられたんだ…」

 

「アイツらとは誰なんだ!!落ち着いて話せ!!」

 

「ドルトンさん!!助けてくれ!!俺たちの力じゃ……!!このままじゃ…!!」

 

「何だ?」

 

事情が全く分からないウソップたちは困惑する。

 

「……ヤツらか!!」

 

「ワポルだ!!ワポルのヤツが帰ってきやがった……!!!」

 

人々の間に衝撃が走る。一瞬にして酒場が騒がしくなった。

 

「あ!おい!ドルトンさん!!」

 

ドルトンはやはりワポルに思うところがあるのだろう。一人港の方へ向かっていってしまった。

 

 

 

 

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「おいビビ、ホントにこっちであってんだろうな?魔女のいるギャスタって町は。」

 

「そう言われるとちょっと自信無いんだけど…」

 

ウソップ、ビビ、メアの三人はドルトンの乗っていたソリを借り、ギャスタへとむかっていた。

 

「自信無いじゃマズイだろ?いいかもしルフィたちがやっとの思いで城に着いて、医者がいなかったらアイツら“おい何やってんだ”ってことになる訳だな。俺たちは早く医者を見つけて城に戻るように言わないと。」

 

「それは分かってるけど…」

 

「分かってんなら何とかしてくれよ、王女だろ?」

 

「そんなこと関係無いでしょう!?」

 

『そんなにいうなら、うそっぷがやればいいじゃん』

 

「それもそうね、ハイ。」

 

メアにも言われ、ビビは地図をウソップに手渡す。

 

「っ馬鹿言うな!!一面雪だらけなんだぜ!?地図なんて…」

 

「要は分からないのね?」

 

「おう!!全く分かりません!!」

 

ウソップは堂々と胸を張る。

 

『…わかんないんだ』

 

「いばんなくても良いでしょう?」

 

そんなウソップにビビとメアは呆れてしまう。

 

「とにかくこの道の途中にギャスタへの看板があるはずなの。それを見落とさないで。」

 

「おう!!任しとけ!!」

 

『うん!!』

 

そう言って通り過ぎた所に、雪に埋もれたギャスタと書かれた看板がひっそりと立っていた。

 

 

 

 

「おい、マズイぞ雪深くて止まっちまった。」

 

「明らかに山を登っちゃったみたい…」

 

『なんか…いやなよかん…』

 

「え?メアどういうこと?」

 

突然地面が揺れ始める。

 

「あ?」

 

「何?この地響き…!?ウソップさん!?まさかこれって…」

 

「…!!あれだ!!雪崩…!!」

 

ウソップとビビはようやくメアの言っていた嫌な予感が分かった。しかしそれならそうともっと早く知りたかった。

 

「おい!!マズイぞ!!逃げろ!!」

 

「でももうそこまで来てる!!」

 

『あわわわ!!』

 

あっという間に三人は雪崩に巻き込まれてしまった。

 

 

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……………

………………

……つめたくて…さむい……

……うぅ………

………なんだか…ねむくなってきた……

 

 

……ア……

 

…………?

……何だろう……?

 

……ア…メ……

………メア……メア!!

 

「メア!!」

 

『び…び?』

 

雪崩に巻き込まれ雪に埋もれていたメアを、何とかビビが救出してくれたようだ。

 

「良かった…無事で。」

 

『たすけてくれてありがと、びび。あ!びび!!ウソップは!?』

 

「そうだったわ!!ウソップさん!?」

 

メアとビビは無事だったもののウソップの姿は見当たらず、二人は焦りを感じる。まさかもっと遠くに流されたのだろうか、二人は必死で辺りを見渡す。

そして雪の中にウソップのトレードマークである長っ鼻がニョッキと飛び出ていた。

二人はウソップの周りの雪をかき分けて何とか救出を試みる。

 

「ウソップさん!!しっかりして!!目を覚まして!!」

 

『うそっぷ!!しっかり!!』

 

二人の懸命な呼び掛けにより、ウソップはほんの少しだけではあるものの身動ぎする。

とりあえずウソップが生きている事にホッとした二人だが、このままでは凍死も時間の問題だと二人でどうにか雪の中からウソップを引きずり出す。

 

「しっかりして!!ウソップさん!!」

 

『おきてー!!』

 

「ウソップさん!!」

 

「なんだよビビ起こすなよ~今綺麗な夢見てたんだ。まるでこの世のものでは無いような綺麗な花畑と綺麗な川と…」

 

「あの世寸前じゃないのよ!?起きて!!寝ちゃだめ!!起きて!!」

 

『うそっぷしんじややだーー!!』

 

まだ生きてはいたものの、あの世まであと一歩の所であるウソップを二人は懸命に呼び戻す。

すると突然ウソップが奇声を上げた。しかしまだ覚醒した訳ではなく、夢半ばといったようだ。

その様子にビビは死んじゃいやとウソップの顔にビンタを繰り返す。それをメアは引き気味に眺めていた。

 

 

 

 

「いやー助かったぜビビ!メア!九死に一生とはこのことだな。生きてて良かったよ、しかし…」

 

心なしか俺の顔腫れてないかとウソップは尋ねる。それにビビは目を合わせずに霜焼けだと必死にフォローする。そんなやり取りを見ていたメアはただ黙って沈黙を貫いた。

 

突然にビビの足元が崩れ何かが現れる。

 

「うおおおーー!?何じゃーー!?」

 

「あー参った参った、花畑が見えちまったぜ…」

 

それは何故か上半身裸のゾロであった。三人は突然のことに唖然としてしまっている。

 

「この寒いのにいきなり雪崩とはツいてねェなァ…でもまァこれも一つの寒中水泳か…?」

 

『ぞろ』

 

「あァン?おォビビ、メア。……?」

 

ウソップの鼻がヒクヒクと動く。

 

「おォウソップか!お前ら何やってんだこんな所で?」

 

「「『それはこっちのセリフだ!!』」」

 

本当にゾロは馬鹿だとメアはつくづく思い直した。

 


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