『なみーー!!』
「メア!!」
『だいじょうぶ?おねつなおった?えっとえっと…』
「落ち着いて、メア。熱もだいぶ下がったし、まだ完治はしてないけどもう大丈夫よ。」
『そっか!!よかった!!』
メアは城の中、ビビと共に部屋に入るとそこにいたナミに矢継ぎ早に質問する。そしてもう心配が無いと分かるとニコリと満面の笑みを浮かべた。
『なみー、ぎゅーってして?』
「もーしょうがないわね、ほらおいで。」
今までずっとベッドの住民で意識の無かったナミに対して、メアはずっと心配で寂しくて、不安を感じていた。まだ完治はしていないとはいえ、良くなったナミを見て今まで我慢していた分メアは甘えたくなったのだ。ナミもそれを分かっているので腕を広げて応える。
『ぎゅーー!!』
「メアは温かいわね。そうだ、サンジ君から色々聞いたけどちゃんと麓の街で待っててくれたのね。」
『うん!!』
「メア、沢山頑張ったものね。」
ベッドの脇に座るビビもメアの頑張りをよく知っていた。
『なみー』
「なーにメア?」
『なんでもない!よんでみただけー!』
えへへーと可愛いらしく笑うメアの頭をナミは撫でる。サンジから聞いたがどうやらこの城に来るまでの山を登るとメアも言っていたらしい。最終的にはサンジが説得して山の麓の街で待っていてもらうことになったとか。本当に色々心配させちゃったわねと、ナミはその柔らかな藍色の髪を指で梳かしながら考える。
メアは甘えることが出来なかった分を取り戻すようにぎゅうぎゅうと抱きつく。この子はまだ小さい。まだまだ甘えたい盛りなのだろう。ナミは心配をかけてしまった分を存分に甘やかしてあげようと思う。
そしてさっきからドクターくれはによって治療を受けているサンジの悲鳴が響き渡っている。治療とはいえこれは大丈夫なのだろうか。メアは恐ろしくてとても聞いていられない。
「やっぱり悪化してたよ。無理するからさ。」
『さんじ、だいじょぶなの?おばあちゃん?』
「大丈夫さ、チビ助。アタシは医者だよ、ちゃんとした治療さ。」
『…そうなの?』
あのサンジの悲鳴は尋常ではないものだったが。しかしこれ以上この人に何か言うのはちょっと嫌な予感がするのでメアは口を噤んだ。
「さてとドルトン、この城の武器庫の鍵ってのは何処にあるんだい?知ってるね?」
「……?武器庫?何故あなたがそんな物を?」
「どうしようとアタシの勝手さね。」
「あの鍵は昔からワポルが携帯していたので、ずっとそうならワポルと一緒に空へ…」
「何?本当かい?困ったね…」
「ドクトリーヌ。」
そこにナミが声をかける。メアはその声色からして何か交渉をする時の声だと分かった。
「ウチのクルーの治療代なんだけど、全部タダに。それと私を今すぐ退院させてくれない?」
「そりゃあ無理な頼みだと分かってて言ってみただけかい?治療代はお前たちの船の積荷と有り金全部、お前はあと二日はここで安静にしててもらうよ。」
「ナミさん、そうよ、ちゃんと診てもらわなきゃ」
『そうだよなみー』
治療代云々は兎も角としてもナミの体調に関する話はビビとメアはドクトリーヌに同意だ。
「平気よ、だって死ぬ気がしないもん!」
「それは根拠にならないわよ!」
『なみってばー!ちゃんとねてなきゃだよ!』
チャリン
「『あっ』」
「武器庫の鍵、必要なんでしょう?」
ナミが交渉の道具として使ったのはワポルが持っている筈の武器庫の鍵だ。何故かナミが持っていたのか、メアは疑問符を浮かべている。
「なっ!?君が何故その鍵を!?」
「本物なのかい…!?どういうこったい!?」
「スったの。」
あっけらかんといった様子でナミは言う。メアはスるって何?とビビに聞いていた。
「このアタシに条件を突き付けるとはいい度胸だ、ホントに呆れた小娘だよお前は…良いだろう、治療代は要らないよ。ただしそれだけさ。もう一方の条件は呑めないね、医者として。」
「ちょっとまって!!それじゃあ鍵は渡せないわよ!!返して!!」
するとドクトリーヌはナミの方を指さす。
「いいかい小娘!!これからアタシは用事があって部屋空けるよ。奥の部屋にアタシのコートが入ったタンスがあるし、別に誰を見張りに立ててる訳でもない。それに背骨の若造の治療はもう終わってんだ。いいね、決して逃げ出すんじゃないよ!!」
そう言うとドクトリーヌはビッグホーンの住民たちを連れてどこかへ行ってしまった。
「コート着てサンジ君連れて今の内に逃げ出せってさ。」
「私にも、そう聞こえた。」
『えぇ!?そうなの!?』
純粋過ぎるメアだけは意味が分かっていなかったが。
「じゃ、サンジ君連れて早くこの城を出ましょう。」
「そうね。」
『さんじー!だいじょぶー?』
メアはドクトリーヌの治療を受けてぐったりとしているサンジに声をかける。しかし先程の叫び声からも分かるようにとんでもなく痛かったのだろう、返事は無い。
『なみーさんじぐったりしてるよー?どうしよ?』
「しょうがないから私たちで運ぶしかないわね。ビビ、手伝って。」
「えぇ。ナミさんは無理しないでね。」
「大丈夫よ。」
ドルトンは彼女たちの会話を聞き、麦わらの一味との別れが近いことを悟った。
『どるとんさん。』
「ん?何だい?」
サンジの元へ行くのかと思っていたメアが、不意にこちらへとことこ歩いてくる。
『どるとんさんはけが、だいじょぶ?』
「あぁ、ドクターくれはに治療してもらったしね。もう大丈夫だ。」
『そっか!よかった!!』
そう言うとメアは先程ナミに見せた笑顔と同じ笑顔をドルトンにも向ける。それにはついこちらも笑顔になってしまうものだ。
『どるとんさん、どるとんさんはきっといいおうさまになるよ!!』
「え!?いや…私に王なんて…」
『だってどるとんさん、やさしいもん。わぽるはやさしくないから、わたしきらい!』
うえーとメアは顔を顰める。
『だから、だからね、きっとだいじょうぶ。どるとんさんがおうさまなら、きっといいくにになるよ!』
「そうですよ。あなたには国民を思いやる気持ちがある。国王として一番大切なものをもっていると私も思います。」
ねー!とメアはビビと顔を見合わせる。ビビもドルトンが国王になることに賛成のようだ。
「メア!ビビ!そろそろ行きましょう!」
『じゃあね!どるとんさん!』
「それじゃあ!お元気で!」
「あぁ、君たちも体に気をつけてな。」
ばいばーいとメアたちは手を振りながらサンジを引きずって部屋を後にする。ドルトンは彼女たちの姿が見えなくなっても、去り際に残してくれた言葉が胸の中を巡っていた。
『うんしょ!うんしょ!』
「メアは凄いわね。」
『えへへーそうでしょ!そうでしょ!』
サンジをメアのエスパー能力で浮かしながら城の外へと運び出す。ビビはメアのエスパーを使うところを見るのは初めてだったので、最初はとても驚いていた。
「それにしても卵から生まれてエスパーが使えるなんて、メアは不思議だらけね。」
「もうすっかり慣れてたけどやっぱり不思議よね。」
そんな会話をしながらナミ、ビビ、メアの三人は城の外へとサンジを連れて出る。
『あ、となかいちゃんだ!!』
「トニー君?」
どうやらトナカイはルフィの熱烈な勧誘を受けているようだ。
「おいお前一緒に海賊やろう!!なぁ!!」
「…無理だよ」
「無理じゃ無いさァ!!楽しいのに!!」
「いや意味分かんねェから!!」
無茶苦茶なルフィの暴論にウソップがツッコミを入れる。
「…だって…だって俺はトナカイだ!!角だって蹄だってあるし、青っ鼻だし!!」
《お前たちにアイツの心が癒せるかい?》
その言葉にナミはドクトリーヌから言われたことを思い出した。きっとあれが人間からもトナカイからも差別されてきた彼の本心なのだろう。
「そりゃあ海賊にはなりたいけどさ、俺は人間の仲間でも無いんだぞ!!化け物だし!!俺なんかお前たちの仲間にはなれないよ…!だから!!…だから、お礼を。…お前たちには感謝してるんだ。誘ってくれてありがとう。」
一人ぼっちだったのだろう。きっと寂しい思いもしてきたのだろう。彼の辛さは彼にしか分からないけれど、多分嬉しいのだ。彼は、チョッパーは。こんなこと初めててどうしたらいいのか分からないだけなのだろう。
「俺はここに残るけど……いつかまたさ、気が向いたらここヘ…」
「うるせェ!!行こうーーーーーー!!!!」
そんなことどうだっていいといったルフィの勧誘にチョッパーの目には涙が溜まっていく。
「フフフ。」
「フフン。」
「……」
「フフ。」
『よかったね!!』
「うるせェって勧誘があるかよ…」
「おおおわあああああァァァァァァん!!!!」
「おいナミ、お前体の方は本当に大丈夫なのか。」
「平気、バッチリよ!」
「おい、俺たちも挨拶しに行こう。医者の婆さんとドングリのオッサンによ!」
「バカね、ドクトリーヌと二人にしてあげなさいよ。六年間も二人で生活してたのよ、きっと涙のお別れになるんだから…」
ナミのその言葉にメアは何故だかフラグという言葉が思い浮かんだ。
ふらぐってなんだろ?あとでびびにきいてみよ
そんなメアはせっせとウソップを見習って雪だるまを作っていた。体が小さいのでできる雪だるまも小さくて可愛らしいものである。
「ドクトリーヌも表向きはああだけど、本当は心の優しい人なのよ。」
「ふーん。そうかァ?」
「じゃあ俺たちは本当にこのまま行くんだな?」
「勿論よ。チョッパーが来たら山を降りてすぐ出航するわ、アラバスタへ!ビビもこれで納得でしょ?」
「えぇ、医者がついて来てくれるなら。」
「医者ァ?」
『いしゃ?』
一体誰の事だろうとルフィに習ってメアは復唱する。もしかしてチョッパーがお医者さんなのかなとよく当たるメアの勘が告げる。
「そしたらロープウェイの準備をしとこう。おいルフィ!手伝えよ!」
「ロープウェイがあったとはなァ。すげェーなァー!」
『つぎはるふぃつくるー!』
メアは雪だるまを完成させて、次は雪でルフィを作ろうとしていた。だが子供であり、雪で何かを作ったことなど無いメア作のルフィはたいへん無惨なことになっていた。
『…あれれ?』
「メア、何を作ったの?」
ビビが声をかける。“るふぃ”とメアが答えると、ビビは雪像を見て固まってしまった。恐らくはコメントを考えていたのだろうが、かける言葉が無かったのだろう。
「…とっても…ステキね。」
それが精一杯のビビのコメントだった。
「おい、来たぞアイツ。あっ!?」
「えぇ!?どういうこと!?追われてる!?」
ドクトリーヌに別れを告げているはずのチョッパーが、何故かドクトリーヌに追われているではないか。
「おぉい、ロープウェイ出す準備ができ…うぇ?」
「んん?」
「みんなソリに乗って!!山を降りるぞ!!」
「うおおりゃあああああァァァァ!!!!」
「「「「「『何ィィィ!?!?!?』」」」」」
気絶しているサンジ以外の全員が叫ぶ。でも心の中でメアは何となくこうなることが分かっていた気がした。
しょうじき…ここまでのはよそうがいだった…
ドクトリーヌ、パワフル過ぎる…ここにいる全員がそう思った。
「いい気持ちだった!おい、もっかいやってくれ!」
「バカ、もう出航するのよ。」
「し、死ぬかと思った…」
『す!すご!すごかった!!』
「!?ここはどこだ!?」
「あぁ、サンジさん!気がついた?」
ソリで山から降りるのは、先のロープウェイとはまた違う景色や顔に当たる風、ハラハラ感など、メアを興奮させるには十分過ぎるものだった。
――どこからか大砲を撃つ音がした。どうやら城の方角から聞こえてくるようだ。
一味も立ち止まって今来た方を振り返る。
「すっげェ…」
「あぁ…」
「綺麗…」
『めあしってるよ!あれ!』
そこにあったのは満開の
『さくら!!』
ピンク色の桜だった。
「ドクター…ドクトリーヌ……うぅ…ううぅ……うぅ…」
「うおおおおおおおぉぉぉぉん!!!!おおおおおおぉぉぉぉん!!!!」
メア初めての雪だるま。
メアはぎゅーが好きです。幼女なのでまだまだ甘えたなんです。