アラバスタ前に書いて置きたかった話です。
アラバスタへと進むゴーイング・メリー号。その船の上でメアは一人考えていた。今の自分は皆に比べ力不足である。その証拠にドラム島では自分は何も出来なかった。アラバスタへ着けば当然バロックワークスとの戦闘があるだろう。そして今度こそ皆の役に立ちたい。だからメアは決心したのだ。
自分の能力の特訓をしようということを。
『よし!』
やる気は十二分に満ち溢れている。しかし困ったことに、どうやって特訓をすれば良いのかは全くと言っていいほど分からない。
ふとメアの頭には一つのアイデアが浮かんだ。いつも修行をしているゾロに話を聞いてみることだ。それ以外に考えが思い付かなかったのもあり、取り敢えずメアはゾロの所へ足を運んだ。
『ぞろ!』
「何だメアか、どうした?」
メアの考えていたようにゾロは甲板でいつものように修行をしていた。普段は修行をしているゾロの邪魔はしないようにしているメアが話しかけて来たことにゾロは不思議に感じているようだった。
『めあもとっくんするの!!』
「はァ??」
ゾロからすればメアの話の流れがさっぱり分からないので頭に疑問符を浮かべている。
どういうことかと聞き出せば要は強くなりたいのだということだ。なるほど、それで自分の所へ来たのかとゾロやっと納得したようだ。
だが普通の人間ならともかくメアの能力については何が出来るのか、どれくらいの力が秘められているのか何もかもがさっぱり分からない。メアの希望は能力の強化だ。これでは特訓のしようが無い。
「そもそもどれくらい能力を使えるんだ?」
『わかんない。』
あっけらかんとメアは言う。それに対してゾロはじゃあ今やってみたら良いじゃねえかと、試しに自分が持っていたダンベルを浮かせてみろとメアに言った。
じゃあいくねーとメアがダンベルを浮かせてみせる。己の手から完全に離れた所でゾロはカウントを始めた。
一、二、三……
最初は余裕そうなメアであったが徐々に限界は近づいてくる。
十七、十八、十九……
『~~~!!』
二十を超えたあたりから、メアの手は段々プルプルと小刻みに震え始めてきた。
『~~!!もうむり!!』
最後の方は根気だけで何とか凌いでいたが、それも限界を迎え、メアはダンベルを落としそうになったが、それをゾロは難なく拾う。
「記録は三十五秒だな。」
『はぁはぁ…』
限界ギリギリまで能力を使ったことなど無かったメアは息も絶え絶えといった様子だ。
「おい、大丈夫か?」
『はー…はー…』
これは思った以上に疲れるなとメアは開始五分もしない内に床に突っ伏していた。
「よし、じゃあ次は四十秒を目指してみたらどうだ?」
『………』
「どうした?」
『…なんか、きもちわるい……』
「お、おい!?チョッパー!!」
ゾロが慌ててチョッパーを呼ぶ。チョッパーはその声の様子に何事かとすぐに駆けつけてくれ、女部屋までメアを運んでいった。そのチョッパーの見立てによれば、能力の副作用の可能性が高いということだ。安静にしていれば収まるであろうと言う。
「メア、大丈夫か?」
『うん…ちょっと、らくになったから。』
メアは今女部屋のベッドに横になっていた。
しかしこれでは、何だか全く特訓どころではなくなってしまった。
『めあ、だめだめだね…』
「え!?何でた!?」
事情の分からないチョッパーに今までの経緯を説明する。そうしている内にますます自分の不甲斐なさでメアは凹んでしまう。
「メアは全然ダメダメなんかじゃないぞ!!」
『でもめあは、いっつもみんなにまもってもらってる。ほんとはわたしもみんなといっしょにたたかいたいの!!』
「メア…」
もう守られてばかりでは居たくない、自分も皆を守りたいのだ。
それが嘘偽りの無い、メアの本音だった。
『やっぱりわたし、とっくんつづけるよ!!』
「えぇ!?でも無茶は…」
『びびのためだもん!!こんなのどうってことないよ!!』
そう言うとメアはぴょんとベッドから飛び降りて部屋を出ていってしまう。
「メア!?待てよ!?」
その後をチョッパーは慌てて追いかける。
『ぞろー!!やっぱりわたし、とっくんするよ!!』
「さっき倒れたばっかじゃねェか、大丈夫なのかよ?」
特訓するといって聞かないメアに対し、チョッパーと同じくゾロも難色を示す。
『だって…だって…これじゃあだめなの!!もっとつよくなりたいの!!』
「………」
その言葉を聞きゾロは暫し考える。メアは今までは生まれたばかりということもあって、特にサンジやナミ辺りが過保護とも言えるくらいに戦いからは遠ざけていた。しかしこれから向かうアラバスタではそうも言っていられないだろう。ただでさえこの一味は少数であり、バロックワークスを相手取るとあればメアのことを守りながら戦えるとは限らない。メアが強くなろうとしているのであれば、これは良いことなのではないかとゾロは思う。
「よし!その特訓俺が付き合ってやる!」
「えぇ!?」
『ほんと!?』
わーいとはしゃぐメアとは対称的にチョッパーはどこか心配そうな顔である。ゾロはチョッパーの頭をガシガシと撫でると心配ねェよと声をかける。
「いきなり無茶はさせねェよ。あのラブコックとナミのヤツに怒られちまうからな。」
『あ、ちょっぱーばっかりずるい!めあもなでて!』
「あーほら、分かったから騒ぐなよ。」
『んふふー!』
ゾロはメアのおねだりを聞いてやり右手でチョッパー、左手でメアの頭を撫でる。特訓するとは言ったものの、こういうところはまだまだ甘えん坊だとは思う。
そのメアの様子を見ていたチョッパーは、先程女部屋で自分自身の思いを語っていた時とは違い、なんだかとても幼くて守ってあげなくてはいけないような気持ちになった。
「一度特訓するってテメェで言ったんだ、俺は厳しいぞ。」
『だいじょうぶだよ!!がんばる!!』
「ホントかァ?」
『ほんとだもん!やれるから!』
えいえいおー!とメアはやる気満々だ。チョッパーもゾロと同じくメアの特訓に付き合うことにした。また倒れられては大変だからという理由もあるが、チョッパーの中でメアは何となく目が離せないような存在になっていた。
「こいつはいつもこうなんだ。まだまだ危なっかくてな。」
ボソリとゾロはメアに聞こえないような声でチョッパーに呟く。
恐らくゾロも、いやゾロ以外の皆も自分と同じような思いなのだとチョッパーは何となく気付いた。
「お前も気長に見守ってやってくれ。」
そうゾロは言い、メアと特訓の内容についてああでもない、こうでもないと話し合う。
「(何だか…妹みたいだな…)」
チョッパーはそんな感情を胸に、特訓に勤しむ二人を見つめていた。
特訓の成果はアラバスタ編で書きたいと思います。